情報屋「Varmilion」を辞して数日。自宅に戻っていた京は、ここ数日でいくつかの案件を片付けていた。
一線を退いたとはいえ、腕の立つ隊員だった事実は残っている。それを買われて、こうして簡単な、あるいは後処理の必要な案件が回ってくることがたまにあるのだ。
「……じゃ、この件は終了ね。アン、連絡を」
「畏まりました」
一礼して退室するアンを見送り、京は椅子を立って窓から外を見る。すっかり日が暮れて暗くなってきている。この窓は東を向いているため、夕陽が入らないのが少々不満だった。
「んー、改築すべきかしら」
そんなことを本気で呟く京の片足は、以前とは異なる頑丈そうなものへと変わっていた。アンが随分前に
トライアルアークスに発注していた戦闘用の義足が、昨日になってようやく届いたのである。と言っても、いざという時の自衛レベルであり、さすがに能力者相手に真っ向からやり合えるほどではない。
京自身、戦闘力はそんなに高い方ではない。あらゆるものを「施錠」して封じる、という特異な能力を持ってはいるものの、それは周りにアースセイバーの仲間達がいてこそ真価を発揮していた。
「………あの時ドジを踏まなければねぇ」
はぁ、と重いため息をつく。ドアがノックされ、アンが戻ってくる。
「連絡は終わりました。後の案件は必要に応じて処理を、とのことです」
「それはつまり、私に丸投げってことね。わかったわ、時間を見て潰していきましょう」
言いつつ、京は机の上に広げていた書類
その他をてきぱきと揃え、アンが受け取って所定の場所に仕舞い込む。一切の滞りなく、後片付けはものの数十秒で終わった。合図も、指示もいらない、まさに完璧なコンビネーションであった。
一通りの作業が済んだところで、京はカーテンを閉めつつ、アンに話しかける。
「今、さし当り気になる事象はある?」
「二つほど。ただ、一つはウスワイヤに回っていますので、動くとすればもう一方でしょう」
「そう。で、そのもう一方っていうのは?」
「実は先ほどの連絡で知ったのですが、UHラボ関連で動きがみられます」
ラボの名が出た途端、京の表情が曇る。他でもない、そのラボに関わる戦いで、彼女は片足をなくしたのである。
「……その名をまた聞こうとは思わなかったわ」
「……申し訳ありません」
「いいわ。それより、具体的なところは? まだわからない?」
「はい、詳細は伏せられています。ただ、初動が確認されたのがかなり前ですので、情報収集は不可能ではない、かと」
「……なら、ちょっと遅いけど、あそこに連絡してみようかしら」
京が言う間に、いつの間にかアンが電話機を持ってきていた。専用の皿に本体を乗せて保持するという古風極まるスタイルだった。
「ありがとう。さて……」
これまた古めかしいダイヤル式の電話を回し、連絡した先はあの情報屋。数コールほど待ってから繋がったが、
「……? もしもし?」
どうにも様子がおかしい。何度か呼びかけるが、苦しげな息遣いが聞こえるだけで返事が帰って来ない。そうしている内、
『ぅ、ぅう゛………ぅああぁぁぁああぁ……!!』
今度は慟哭が聞こえた。何かあったに違いない、しかも最悪に近い何かが。
「大丈夫? 今すぐそっちに行くわ、ちょっと待ってなさい」
早口にそういうと、京は電話を切ってアンに呼びかける。
「情報屋にいくわよ、アン」
「仕度は整っております」
「OK、急ぐわよ!! コトによると、コトによるわよ、これは……」
運命交差点・承
(その一点に)
(二つの運命が、届く)
最終更新:2013年05月14日 11:03