いかせのごれ高校、某日朝。
「おはよ~、一角君」
「え? ああ、おはよう」
いつもと同じ、登校風景。その中でかわされる、朝の挨拶。
僕、火波スザクも、その中にいる。
「鳥さんおはよ~」
「・・・・・・ああ、おはよう」
いつものごとくフレンドリーに話しかけて来るトキコに、無機質に返す。これも、いつものことだ。
誰が見ても仲良しではないのが一目瞭然だと思うが、ののかとかは僕らを友達だと思っているらしい。
ほら、今日も聞こえる。
「しゅざくっちとトキちゃんだ~。今日も仲いいね~」
「……ののか。本当に眼科行け、一度でいいから」
「思うのはいいけど口に出すな。怒られるから、マジで」
「……怒りゃしないよ、この程度で。もう慣れたし」
ぽつりと呟いた言葉が見事に聞こえたらしく、ののかの後ろにいたユウイとユズキが凍りつくのが目の端に映った。
そんな彼らをちらりと一瞥した後、僕はトキコをぶら下げたまま教室へ向かう。
「……あれ」
教室に入ると、いつもは見かけない顔が真ん中の席にいた。蒼崎 啓介……最近欠席続きのクラスメイトだ。
2年ほど前に妹の真衣ちゃんがいなくなってからそれっきりだったのだが、今日はどうしたのだろうか。
「おはよう、啓介」
「おはよー、レーダー君」
「……ああ」
ぶっきらぼうに、それだけ返って来た。相変わらず、トキコのあだ名の付け方はワケがわからない。
僕が「鳥さん」なのはまあいいとして、何で啓介が「レーダー」?
「どうしたんだ、今日は」
「別に。たまには顔を出さんと進級できなくてな。お前のように」
「うっ」
痛い所を突かれた。去年は「奴」を探してはぐれ能力者と戦ってばかりいたので、出席日数が足りず留年してしまった苦い思い出がある。
しかも今思えば、あの時普通に進級してればトキコと毎日顔を合わせる事もなかったような気がする。
今言っても仕方ないが。
「鳥さん、今度は進級できるといいね」
「うるさい、トキコ。二年もダブってたまるか」
言い返しつつ自分の席に座る。小柄なトキコは僕が席に座ると、今度は後ろから抱きついて来た。もはや振りほどく気も起きないので、そのまま話しかける。
「トキコ、一つ聞かせろ」
「ん~、なーに」
「僕が『鳥さん』なのはまだわかる。何で啓介が『レーダー』なんだ」
「だって、啓介君危ない所には行かないもん。絶対」
「……まあ、それはそうだけど」
確かに、啓介の行く先に事故や事件が起こったことはない。異様なまでにカンが鋭く、そう言う場所を避けて歩くのだ。
だからレーダー……なんか微妙だ。
「……それじゃ、シスイが『一角君』っていうのは? あれはさっぱりだ」
「ん~……」
少しの間考えた後、トキコは耳元で囁いてきた。
(一角君の能力は「天子麒麟」でしょ。だからだよ~)
(……なるほど。麒麟だから「一角君」なのか)
なかなか面白い発想だ。だが……その論理には悲しいかな、一つ間違いがある。
(トキコ、教えてやる。麒麟の角は二本だ。一角じゃユニコーンだな)
してやったり、的な笑みを浮かべて、僕は自信満々に言ってやった。
ところが、トキコは変わらぬ笑みを浮かべて言う。
(鳥さんこそ知らないのー? 麒麟は元々角一本だよー。二本なのは間違い。……もしかして、ビールのパッケージとかでしか知らなかったりするー?)
(…………………………)
―――――とりあえず、その日はもうトキコと口をきかないことにした。
| 作者 | 登場人物 |
| スゴロク | 火波 スザク、トキコ、都シスイ、緑音ののか、榛名 有依、ユズキ |
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