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「病める翼(仮)」

「……学校生活は楽しいか、スザク」
「ああ、もちろんだとも、ゲンブ」

いかせのごれのアンダーグラウンドとも言うべき、ストラウル跡地。ここに呼び出したスザクは、いつものように不敵な態度でそう答えた。

「そうか。それは何よりだ」
「そんなことは思っていないだろう? 本心を言ったらどうだ」
「……」
「お前は、ホウオウグループであるトキコと不必要に接触している僕を信用していない。だからこうして呼びだした。違うか?」
「その通りだ」

否定する意味はない。俺は正直に応えた。そうだ。あの高校には、最低でも3人、ホウオウグループの手先がいる。
特に、今スザクが言ったトキコという女の子は危険に過ぎる。スザクも気付いているようだが、純真無垢なその裏には狂気―――否、狂信が隠れている。

「……命の取り合いの約束までしたらしいな。何のつもりだ」
「何のつもりとは、また陳腐な質問だな。僕はあいつをこの手で殺したい。それだけだ」
「なぜ殺す? なぜ拘る? その理由は」

俺の質問に、スザクはすぐに答えない。―――嫌な感じだ。こいつがこうして答えを溜める時は、大抵……。
果たして、

「他の誰かの手にかけさせるには、あいつは惜しい。僕の手で、僕の剣で殺したい」
「またそれか。愛情を抱いた相手に対する殺意。それしか愛情表現を知らんのか」
「知らないわけじゃない。ただ、これが一番手っ取り早いんだ」

ため息が出た。相変わらずのようだ。おかげで、何度俺がフォローに奔走した事か。
しかも今回は、本気の本気で狂っているあのトキコが対象だ。アルマから聞いた話では嫌っているとのことだったが、どうやらある一点で反転してしまったらしい。

「わかっていると思うが、奴は敵だぞ。その時がくれば、奴も容赦はしないだろう」
「そうだな。トキコは本気で僕を殺しに来るだろう。ホウオウグループの一員として、僕を壊しに来るだろう」

釘を刺すつもりだったのだが効果なし。どこか楽しげに、スザクは語る。

「いいのか。お前が死ぬかもしれないぞ」
「そうなったら、そうなっただ。シスイやコロネ達には悪いけどな」
「……命が惜しくないのか」

ここで、ただ、惜しい、と答えてくれれば、まだやりようはあった。だが、

「ああ、惜しい。少なくとも、トキコと殺し合うまでは」

……これはダメだ。完全にトキコにのめり込んでいる。こうなると、対象を殺すまでスザクは止まらない。
ホウオウグループに所属していた、その代償がこれだ。今まで何度、スザクを叩きのめして正気に戻す羽目になったか。

「……今回は相手が相手だ、見逃してやる。だが」
「一般人や味方に刃を向けるな、だろ? わかってる」

そう言って立ち去るスザクの姿は、学校に通う頼れる姉貴分のスザクではなく、殺害と言う形でしか愛を表せない、歪んだ少女だった。
そんな彼女を見て、思わずため息が零れた。今日で何度目か。

「……少しは自戒してくれると、ありがたいんだが」
「全面対決になったら考えてやるよ」

この性癖さえ、これさえなければ頼れる姉貴分なのだが。
友人は全力で守ろうとするのに、好きになったら殺意が芽生えるというこの性癖さえなければ。
まあ、アースセイバーや一般人にそれが向いていないだけマシかもしれないが。

「じゃあな、水波 ゲンブ。縁があったらまた会おう」
「出来れば、火波 スザク。次も味方として会いたいものだ」


余談。

「あの少女、ホウオウから救う気はないか?」
「無理だな。それに、それじゃ困るんだよ。トキコを殺せなくなるじゃないか」
(……やはり、ダメか)
 


 

作者 登場人物
スゴロク 火波 スザク水波 ゲンブ


投下順
朱鷺と少女と研究者← 41話~80話 →「僕」と「私」(仮)

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最終更新:2013年06月19日 21:23