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運命交差点・繋

三人が転移で到着したのは、病院の廊下の端だった。幸い時間が時間だけに人に見つかるコトはなかったが、正直理人も肝を冷やした。

「お、おー……あーぶなかったなあ。人に見られたらえーらいコトになってましたよ」
「ゴ、ゴメン……ちょっと目測誤った……」
「……行く」

雨里の呟きを無視し、茉理が一人で廊下の奥へと進む。案内板を見ると待合室がそちらにあるようだ。理人、そして雨里もそれに倣い、進む。

「それで、実際どうするつもり?」
「んー……まーずは、このパペット、ロッギー君を持ち主に返すのが先でーすな。そーれから後は、情報屋のみーなさんの現状しーだいというコトで」
「協力するのは確定ってコトね? わかったわ」
「ですな。コトと次第によーっては……あ、いや、これはアトにしましょー」

不明瞭な物言いに首を傾げた雨里だったが、その思考はすぐに中断された。

「到着」

先頭を歩いていた茉理が、そう言って足を止めたからだ。その見る先には、二人の女性と一人の少女。

「……あら、編集長。こんばんわ」
「……雨里ちゃん? 何、何か雰囲気違うんだけど」

職場以外では何気に初となる対面を果たした雨里に、京が僅か目を見開く。一方彼女の服を引っ張っていた少女―――アーサーは、理人の手に在るロッギーを見て驚愕しきっているようだ。そちらに目を向けた京の表情が、驚きに染まる。

「……それ、ロッギー君よね?」
「そーの通りですな」
「どうして……あんなにひどい状態だったのに」
「あー、自分がなーおしました。あーのままだと、話もろーくに聞けなかったんでね」
「話? いえ、そもそもどうやってあの状態から無傷に」

アンの問いには答えず、理人はロッギーを手から外してアーサーに渡す。

「ほい、相方君はなーおりましたよ、っと」
「……!」

慌てるあまり引っ手繰るようにして、アーサーはロッギーを受け取る。矯めつ眇めつして完全に直っているコトを確かめると、片手に嵌めて大きく息をついた。

『……ああー、やれやれ。酷い目にあったよ』

言葉を発したのは、ロッギーの方。既に接し方のわかっている京とアンは、互いに目配せをすると話の口火を切る。

「生還おめでとう……と、喜んでばかりもいられないけれどね」
「ええ、ハヅル様と長久様は危険を脱しましたが、紅様は未だ予断を許さない状況です。ロッギー様、そちらは大丈夫でしょうか?」
『……正直不安で仕方がないよ。蒼介はいなくなっちゃったし、ベニー姉さんはまだ危ないし……』

今にして思えば、と続ける。

『ブラウって人が来た時、ハヅルを襲ったのがベニー姉さんに縁のある人……蒼介なんだけど、その人だって言ったんだ。その時アーサーが感じた嫌な予感って、このコトだったのかな』
「……かもしれません。ですが、起きてしまった以上、そのコトを悔いても解決にはつながりません。まずは、紅様のご無事を祈りましょう」

真面目て融通の利かないところもあるが、アンはアンで紅を案じている。それを理解しているからこそ、誰も何も言わない。少しの静寂を破ったのは、茉理に目で促された雨里だった。

「……えぇと、編集長?」
「はい?」

――――少しの時間をかけて、雨里はここに至るまでの状況を簡単に説明した。自分が二重人格の片方であり、表の雨里はそれを知らないコトや、こうなる以前に理人と何度か行動した経験があるコト、茉理がここにいる理由、そして自分達がこの件に協力する気であるコト。

「まあ、私は表の雨里の関係もありますから、編集長がダメと言えば手を引きます」
「けーど、僕と茉理ちゃんは最後まで付き合いますよ。……正直、『連中』には借りがあるんでね」

珍しく怒気を孕んだ低い声で、理人が意思表明をする。茉理もそれに倣い、こくりと頷くコトで肯定を現した。

「……私も、同じ」
「そう……そうね……」

どうしたものか、と思案する京の服の裾を、アーサーが引っ張る。

「? どうしたの、アーサーちゃん」
『あぁ……いや、その、アンさん、京姉さん。少しだけ』



『……助けに来てくれて、ありがとう』




運命交差点・繋

(二つの道が重なる)
(次なる運命は、何か)

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最終更新:2013年07月16日 20:46