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ヤンキーガール

夕方。
凪、冬也、不動の三人は、時折雑談しながら、帰路を歩いていた。

「そうか、美琴は元気になってきたんだな」
「うん。いつもの調子が見えてきたって」
「これなら、学校に来るのもそう遠くないな」

と、しばらく歩いていると、凪が右の曲がり角付近で足を止めた。

「どうしたの? 凪姉」
「あ、いや。今日はこの近道通ろうかと」
「急いでたの? 言ってくれれば、誘わなかったのに」
「んー…急ぎの用、って訳じゃなくてな。親父が早く帰ってきてくれって五月蝿いんだ」
「大変ですね、先輩」
「全くだ。で、一緒に帰ってもいいが…どうする?」
「折角だから、僕も行くよ」
「俺も」


「それでさ、ささみかさん見る度に張間さん、泣きながら逃げるんだよ~」
「まあ…だろうなあ。…ん?」

「マジあの先公ムカつくよなー!」
「ギャハハハハ!」

「…見るからに不良だな、アレ」
「シッ、聞こえるよ!」
「とにかく、無視して行くぞ。あ、少し話しながらな」

不良グループに目をつけられないように進む三人。
…だったが。

「おい、そこの姉ちゃん!」
(チッ……)
(気付かれちゃったね……)
「俺達、後でゲーセン寄るんだよね~」
「だからさ、金寄越してくんない?」
「(全く訳がわからん)……すまんが、私らは持ち合わせてないぞ。行こう」
「う、うん」
「おう」

バン!

「!」

グループの一人が、腕で遮るようにして立っている。

「そんなこと言って、ホントは持ってんだろ?」
「さっさと渡さないと、痛い目見るぜ」
(しつこいな……)

すると、この間ずっと口をつぐんでいた冬也が。

「…………さい」
「あ?」
「やめて下さいっ!」
「冬也……」
「……いい度胸してるじゃねえか、チビ」
「凪姉が、困ってるじゃないですか! それに、その、僕達、本当にお金持ってません!」
「そうだぜクソ不良共。早くどいてくれ」
「っ、舐めた口効きやがって!」
「ガ…ッ!?」

殴られ、地面に倒れる不動。

「ってえ……」
「不動く…うわっ!?」

今度は冬也がフードを掴まれ、宙ぶらりんの状態になった。

「ん~? お前、よく見たら女みてえな顔だなァ」
「うわ、ホントだ!」
「しかもヘアピンなんかしてるぜ、コイツ!」
「アハハハハ!」

凪は自分の中で、堪忍袋の緒が切れたのが分かった。
弟分までコケにしやがって――掴みかかろうとした、その時。


「何してんだ」

声の方を見てみる。
主は少年…と思いきや、よくみると顔は女そのもので、少なからずふくよかさが見受けられた。
短い黒髪、睨むような目付き、バットの持ち手が覗く鞄。
頭に、赤い帽子。

「あ? 誰だテメェ……」
「! アレ、まさか…『オツユウの赤帽子』!?」
「何だって!?」

「あの人…僕達と同じ学校の人みたいだけど……」
「見ない顔だな」
「…カオルコ
「え?」
「間違いない。めちゃめちゃ変わってるけど……アイツ、カオルコだ」
「えっ、知ってるの? 凪姉」
「中二の時、一緒のクラスだった。けど……その頃は、もっと女の子らしかった筈だ。あんな、ヤンキーみたいな感じじゃない」

凪は信じられないように言った。
一方、当人のカオルコはどこ吹く風な態度。
ただ不良達を見据えている。

「ハッ。ただの噂に決まってんだろ。あんな女の蹴り一つが入れるかよ」

リーダー格の不良が言う。
だがカオルコは無言のまま。
代わりに一言、こう言っただけだ。

「今すぐどっか行けよ」
「は? …誰に向かって言ってんだゴラ!!!」
「カオルコ!」

思わず叫ぶ凪。
カオルコは鞄からバットを取り出した、と同時に走り出す。
バットには釘が打ち付けられていた。
右ストレートを打ち出した拳が、彼女の顔面に当たる――刹那。

右目が白く光ったのを、凪は見逃さなかった。
そして。

ドゴッ!

「ぐおっ…がっ?!」
「な……」
(今のスピード…!)

不意打ち同然の攻撃を、あっさりと躱したたと同時に、釘バットの先端を腹に打ち当てた。
普通なら有り得ない筈。
凪の目は更に訝しいものになった。

「カオルコ、まさかお前……」

――『力』を持ってるのか?
だが、その言葉が口から出ない。
躍起になった不良達は、一斉にカオルコに突撃する。
その時、またしてもカオルコの右目が光った。
釘バットを盾代わりにしつつ、拳で、足で。
無駄の無い速さと動きで、不良達を薙ぎ倒していく。
最後の一人に蹴りを入れたところで、彼女は不敵な笑みを浮かべた。

「甘ェんだよ、お前ら。所詮は犬っころだな……獣みてェに吼えてみろよ」
「…っうるせぇぇええええ!!!」

リーダー格の不良が、立ち上がって再び殴りかかってきた。

「へぇ、根性だけはあるのか。けど――」

バキィッ!

「――弱いヤツに力振るうようじゃあ、三流の犬っころ以下だぜ」

倒れた音で、静寂が訪れる。
たった一人の、それも女子生徒にやられた彼らは、ヘコヘコとその場から逃げていった。

「……凄い」
「瞬殺、ってやつか」

感嘆の声を上げる冬也と不動。
一方、凪は偶然にもいきなり、再会した知り合いに、それも突然の変わり様に、中々口が動かない。
それでも、なんとか勇気を出し。

「……久し振り」
「ん……ああ、そうだな」


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最終更新:2013年07月16日 20:50