―第×話、幻視する話―
遥は俺の親友だった。
思えば記憶の中のアイツはあの時からずっと笑っていたんだっけか。
まるで大人の、それこそ母親のそれみたいな微笑み。
歳にしちゃあまりにも不自然で、違和感を感じるほどアイツは大人びていた。
実際そう思ったのは俺だけでは無かったらしく、周囲からは「良くできた子」「優しい子」
「苦労のかからない子」とか言われていた。
しかも、それは作られたような性格じゃなくて本心からのものだったらしい。
俺の眼はそういったのも『視える』から、それがウソだったり、作られた性格だったら
すぐにわかってしまう。
でも、そうじゃなかった。
アイツは元々そういう奴だった。
確か一度、直接『どうしていつも微笑んでいるのか』って聞いたことがあったはず。
その時、遥の奴は『悲しい顔を見てると、悲しくなっちゃうでしょ?だからせめて私だけは
いつも笑顔で、誰も悲しまないようにしたいの。それができなくても、私が笑っていたら、安心して泣ける
人ができると思うし』なんて言ってたな。
余りにも自虐的な献身性じゃないのか?
遥はいつも誰かの為ばっかで自分の為なんて言葉が無かった。
俺と一緒になってからはずっと俺の為にばかりだった。
それすらも『私は私にできること、私がしたいことをやってるだけだよ』って言うだけだった。
勿論、一切の迷いも偽りも無く。
最期、自殺する時までその意志は変わらず、俺の目でも変化を悟ることは出来なかった。
微笑みを浮かべた遥かの遺体を視て、その経緯を視るまでは。
いじめの事実も、破綻しかけていた遥の心も、俺は知らなかった。
理由は簡単…遥が視させなかったからだ。
全部あの笑顔げ上からそういったのを塗り潰して、そういった像ぼやけさせてしまっていたから。
何でそれができたのかすら、俺には分からない。
その理由すら、笑顔が隠してしまっていたのだから。
『成見君、どうしたの?』
「…なぁ、遥はどうして俺の眼を欺けるんだ?」
『さぁ?どうしてかな?』
答えは、残滓に尋ねてもあの日と変わらなかった。
<To be continued>
最終更新:2013年08月23日 19:59