「はあ、お見舞いにねぇ…。わざわざ悪いな、気遣ってもらって」
「い、いや…取り込み中なら、後で、」
「あーあー、気にするな。取り込み中って程取り込んでもねぇよ」
「そう…それなら、いいんだけど」
スザクの言葉を遮って、長久が手を振りつつ笑う。
それにスザクは少しホッとしたように笑った。
「あ、これ…よかったら、どうぞ」
「あ、こりゃどうも」
『わー、おいしそう!!ねえねえ長久、ちょうだいちょうだい!!』
「がっつくなっ」
ごつん、と軽く拳骨を落とされ、アーサーがひぃん、と悲鳴をあげる。
「…まあ、せっかくだ。みんなで頂いちまってもいいか?」
「勿論。じゃあ、僕はこれで…」
「ん?何だよ、もう帰るのか。せっかくあんたが持ってきたんだし、一緒に食ってけ」
「え?いや、でも…」
「遠慮するなって。…それに、今の話はあんたにも関係なくはないかもしれないしな」
「………?」
すれ違いざまに肩を叩かれ告げられた言葉に、スザクは軽く首を傾げた。
「ほれ。ハヅルほど綺麗じゃないけど、まあいいだろ」
『長久ぶきっちょー。りんごでっこぼこだよー』
「やかましい!!その胴体限界まで引き伸ばしたろかコノヤロウ!!!」
パペットを握って縦に力いっぱい引っ張られ『ぬわあー!人形いじめはんたーい!!』と叫ぶロッギーを見て、スザクは呆然とし、京とアンは小さく苦笑する。
「長久くん。ロッギーくんが可哀想だから、そろそろやめてあげましょう?」
「……………ちっ」
小さく舌打ちをして長久が手を放すと、アーサーは慌ててロッギーを抱きかかえ、労わるように頭を撫でる。
その様子を、皮をむかれて切られた少し歪なリンゴを一足先に口にしながら、理人が笑って見ていた。
「いーやー、仲がいいーっていーいねー」
「………。んで、さっきの話なんだけど」
ソファに座りなおすと、皿に乗ったリンゴを爪楊枝で勢い良く突き刺し、やや強引に話を戻す。
「協力の件は、ハヅルの意見も聞かないと何ともいえないけど、有事の際には何かしら手助けを頼むことがあるかもしれない。…それは、その時によろしく頼むとして…理人、だっけか。あんたが言ってた「連中は滅ぶべきだろう」って問いかけ。ハヅルやオーナー、それと他の奴らはどうか知らないが、俺たちはYesともNoとも言えない」
「…どうしてだい?」
「…知らないからさ。何も」
長久の答えを、アーサーが引き継ぐ。
『僕らも、長久も、普通に生きてきたんだ。普通にお父さんとお母さんの間に生まれて、普通に育って、勉強して、友達と遊んで…』
「だから正直言うと、UHラボの所業や邪悪を聞いても、いまいち自分の身として考えられないんだ。もちろん、資料を見れば連中のやってきたことはひどいもんだぜ。文字で見ているだけでも嫌な気分になるし、吐き気もする。…ただ、あんた達の憎しみや怒りや考えってのは、完全に理解することは出来ない。ぶっちゃけてしまえば連中が滅びよう生き延びようが、俺は知ったこっちゃない」
けどな、とリンゴの欠片を口に放り込み、長久は続ける。
「…あの男は…オーナー達の幸せに、蒼介の心と人生をぶっ壊した。それは、許されることじゃねぇし、許す気もさらさらねぇ。UHラボとか関係なく、アイツには自分のしたことの落とし前をつけてもらう。…それだけだ。ただ、それだけなんだ」
一言一言区切るように、自身に言い聞かせるように、拳を握り締めて長久は言う。
その声は暗く、重く、そして固い決意に覆われていた。
ただ、それだけ
「ソウスケ…?」
「17年間行方不明だった、オーナーの甥っ子だよ。
カチナ…って名前の方が、あんたは馴染みがあるかもしれないな」
最終更新:2013年12月02日 19:17