「…どういうことなの」
それは、とあるレストランでユウイが発した言葉だった。
目の前にはパーティーでもしているかのように沢山の料理が並んでいる。
このレストランに来ている他の客が二度見どころか三、四度見してしまいそうな程の料理の多さだ。
呆然としている彼女の目の前には凄い勢いで並べられた料理を食べているリオトがいた。
みるみるうちに料理が減って…いや、消え去っていくと言うべきか。
「…リオ君や」
「……ん?」
「そんなに食べて腹壊さないの?」
「全然」
それだけの短い会話を終えるとリオトは再び料理を口に運ぶ。一体、彼の胃はどういう造りになっているのか。
ユウイは周りの客の唖然とした表情に気付き、苦笑いをしながら自分が注文したチョコパフェを一口分口に入れた。
口いっぱいに甘い味が広がって…
「…………こない。」
ユウイはスプーンをくわえたまま固まっていたが、五秒程すれば自分の口からスプーンを取り出す。
銀色のスプーン。すっからかんになったパフェと皿。
そして、リオトの口元についている茶色のソースのようなもの。
『……ちょっと待て』
とユウイは心の中で呟いた。
『アタシがこのパフェから目を逸らしたのは十秒くらい前だろ?……え?この短時間で何があったの?』
「リ、オト?」
「何?」
「アタシの…食べた?」
「おう、食べた」
「へー……そう……ってぇえ!?どうやって!?…じゃなくて…、なんでアタシの食べんだよ!」
「オレの腹がパフェを呼んでたから」
「あ、そう…アハ、アハハハ…」
リオトの冷静な切り返しにユウイはもう失笑しかすることが出来なかった。
数分後、彼女達はレストランを出た。
勿論、目玉が飛び出る程の金額だったが全てリオトが払ってくれた。
「おふくろから貰った」
とか言っていたが、本当なんだろうか。
暫く二人で並んで歩いていると、近くから『ぐぅ』という間抜けな音が聞こえてきた。
ユウイはその妙に嫌な予感のする音に、顔をひきつらせながらリオトを見た。
「……」
「ユウイ…」
「ま、まさか…お前…」
「腹…減った…」
あぁやっぱり!とユウイは頭を両手で抱えた。
リオトの方は一時間前に物凄い量の料理を腹に入れたというのに、力無くふらふらとしていた。
そんな死にかけの彼を支えながら周りを見渡すと、前方に自分の知り合いが見えた。
緑音ののか、というユウイ達の後輩だ。
「ののっ!助けてくれ!緊急事態!emergency!このままじゃリオトが餓死しちまうっ」
ユウイはそう叫びながらリオトを引きずるようにして運び、驚愕の表情を浮かべている後輩、ののかのもとへと走りだした。
…手に巻いてある幾つかの包帯が気になったけど、対したことではない……と思う。
その後、リオトは菓子を分けてもらい、なんとか一命をとりとめたそうな。
| 作者 | 登場人物 |
| 紅麗 | 榛名 有依、高嶺 利央兎、緑音ののか |