俺達とジングウとの戦いが始まった。
こちらは五人に対し、向こうは一人。楽な相手ではないと思っていたが、それでもこの数なら有利だと思っていた。
だけど、敵と俺達の力量差は、そんな事で埋まるほど生易しい相手ではなかった。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
身体能力強化施した俺と、彫刻刀を武器にリオト、二刀の短剣を武器にハヤトが肉薄する。
同時一方向から仕掛けても効果は薄い。だから三人で三角形を作るように、ジングウへと攻撃を仕掛ける。
だけど、ジングウはまるで三百六十度すべての方向が見えているかのように、俺達の攻撃をかわし、或いは防いでくる。
「退け、三人とも!」
距離を離し、攻撃の準備をしていた光一が叫ぶ。それに合わせて俺達が飛び退くと、そのすぐ後に強烈な光が大気を切り裂いた。光一の溜め攻撃、加粒子砲にも匹敵する強力なレーザーだ。それは光の速さで進むが故に、理論上「攻撃を見てからの回避」は不可能だ。
しかし俺が飛び退いた瞬間、ありえないものが見えた。奴の口元に、余裕の笑みが浮かんでいたのだ。それも、これから何が来るのか分かっているかのように。
「無駄だ!」
最初は、レーザーが奴の身体を捉えたように見えた。しかし、実際は違っていた。ジングウがレーザーに向かって翳した手の前に、バリアのようなものが出現していたのだ。
「嘘だろ!? 光一のレーザーを!?」
あれの威力は知っている。いくら能力があるからと言って、生身で受けて無事で済むわけが無い。にも関わらず、ジングウは放たれたレーザーを受けきり、涼しい顔を見せていた。
「無茶苦茶だろ、アイツ!?」
「大口叩くだけの事はある、っつーわけか!」
再び俺達が向かうが、結果は同じ。すべての攻撃を容易く相手は凌いでしまう。
「リオト、ハヤト、下がれ!」
相手の動きを観察していたのか、ここでスザクが入ってきた。彼女の声に対応し、二人はジングウから距離を離す。
「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」」
俺とスザクの連携攻撃が始まった。幻龍剣が縦横無尽に振られ、俺の拳が大気を凪ぐ。先程よりも勢い付いたせいか、ジングウの動きについていけるようになっている。
「お、お? やりますね」
「そんな風に余裕ぶっていられるのも――」
「――今の内だけだ!」
俺とスザクが更に加速する。俺達の攻撃について来れなくなってきたのか、ジングウの動きに攻撃の「防ぎこぼし」が見えてきた。
そして――
「今だ、スザク!」
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
俺が奴の腕を大振りに弾き、その結果ジングウの動きに大きな隙が出来た。それを見逃さず、スザクが幻龍剣を叩き込む。
ザシュ、と言う肉の切れる音と共に、奴の右肩から左のわき腹にかけて袈裟懸けに傷が出来た。
「よっし!」
攻撃が届いたのを見て、ハヤトがガッツポーズをとる。
いける。ジングウは、決して倒せない相手じゃない!
「……やれやれ、なんて事してくれるんですか」
攻撃の勢いに押され、数メートル程後ろに下がったジングウがそう呟いた。
「私の一張羅が台無しですよ、まったく。後で誰が弁償してくれるんです?」
「誰も弁償なんかしない。お前はここで終わりだ!」
スザクが幻龍剣を突きつける。しかしジングウは、それがさも可笑しい事であるかのように、くっくっくと不敵な笑みを浮かべた。
「終わり? 私が? 馬鹿な事を言わないでくださいよ。服は確かに切れましたが、私自身にはまだ傷なんてありませんよ」
そう言ってジングウは白衣を脱ぎ捨てた。その下に着ている黒い服にも幻龍剣の切れ後は残っているが、奴の胸には傷が無い。
「な!? 馬鹿な、確かに手応えは……」
「……再生能力か」
今までのウイルス感染者にも、強力な再生能力があった。今のジングウは、そのウイルスの感染源でありキャリアーだ。母体である奴自身に再生能力があっても不思議じゃない。
「一気にダメージを与えて、再生する暇も与えずに倒す……これしかなさそうだな」
「ああ、そのようだ」
スザクが後退するのを合図にして、俺、ハヤト、リオトの三人で再び仕掛ける。
「ははははは、何度やっても無駄な事だ!」
ジングウもこちらの動きに慣れてきたのか、ただ防ぐだけでなく反撃も仕掛けてくるようになった。鋭い手刀が突き出され、それが俺の頬を掠めた。
「い……」
「ああ、そうそう。分かっていると思いますが、私は今ウイルスのキャリアーになっています……そのキャリアーの攻撃をまともに受ければどうなるか……」
「分かりますね?」。そこまで告げる事はなかったが、言わなくても奴の行動がすべて物語っていた。こいつの攻撃をまともに受け、その結果ウイルスが体内に侵入するような事になれば……俺達も、あの怪物のようになってしまうと言う事だ。
「ちっくしょ、やり辛ぇ!」
ハヤトの言うとおりだ。この男、実にやり辛い。向こうはどれだけ攻撃を食らおうとビクともしないが、こちらは一撃たりとも受けてはいけないのだ。本当にやり辛い。
「ハヤト」
その時、突然リオトがハヤトを呼んだ。攻撃を続けながらも、「ああ?」とハヤトがそれに反応する。
「俺がこの間やった攻撃、お前見てたか?」
「ああ、見てた見てた」
「……じゃあ、後は任せる」
「え……ちょ、おま!?」
何をするつもりか、と俺が思っていると、いきなりリオトは自分の得物を自らの頚動脈に突き立てた。突然の出来事で何が起きたのか分からなかったが、リオトは痛みを意に介する事なく彫刻刀を突き立てた左手を相手に向ける。
「食らえ!」
噴水のように、リオトの傷口から血しぶきが上がる。それは最初、ただの血液のように俺には見えたが、どう言うわけか、それがジングウに降りかかるとまるでショットガンでも食らったかのように、奴の身体じゅうに傷が出来た。
「がほ――そ、その手で来ましたか」
突然の事態に対応出来なかったのか、ジングウはまともにその攻撃を食らっていた。と言うか、あんな攻撃を受けて即座に対応出来る奴なんてそうそういないだろう。どうやらリオトの能力は、自分の血液をコントロールする力らしい。
「おいリオト、大丈夫か?」
「いや、あんまし良くない。頭がぐらぐらする」
「ったくも、世話かかせんなー!」
血を失い過ぎたのか、リオトの身体から力が抜けていくのが分かった。それを抱きかかえると、大急ぎでハヤトが戦線から離れていく。
そろそろ頃合かと思って、後ろに視線を向ける。すると、二つの光球がそこに輝いているのが見えた。
「シスイ、避けろー!!」
スザクの声が聞こえる。それに応え、俺はすぐさまその場から飛び退いた。
それまで俺がいた空間を、二つの光が突き進んでいく。一つは光一のレーザーであり、もう一つはスザクの龍精落だ。大きな二つの力が束になり、ジングウへと襲い掛かっていく。
「俺もやるぜ!」
リオトを巻き込まれない場所まで運ぶと、今度はハヤトも攻撃に加わった。二つのエネルギー流に、ハヤトの収束音波砲も加わり、更に破壊力が増す。
「……やった……か?」
射線上にあるものすべてを薙ぎ倒す暴力の渦。それが通り過ぎ去った後には、エネルギーの熱量に焼かれた大地の後だけが残っている。アスファルトは融解し湯気を立て、その先にあったビルすらも音を建てながら崩れている。
これだけの惨事を起こした攻撃だ、まともに受けて生きていられるわけがない。
誰もが、そう思っていた。
しかし――
「やれやれ、容赦無いですね」
『!?』
全員が思わず目を向いた。建物が崩れて起きた砂埃の向こうから、ゆっくりと人影が歩いてくる。衣服は吹き飛び、上半身が剥き出しになっているが、そこには無傷のジングウが立っていた。
「ば……馬鹿な!? あの攻撃を受けて無傷って……」
「おいおい、チートにも程があるんじゃねーの?」
ハヤトが軽く言うが、その顔には冷や汗が浮かんでいる。光一やスザクは驚愕の表情を浮かべたまま固まっていた。
「君達の攻撃は終わりですか? ――では、今度はこちらの番ですよ」
そう言うと、ジングウは右腕を掲げた。その先に、無数の図形が浮かんでいく。やがて空中を覆い尽くしたのは、密教に出てくる曼荼羅のような円図形だった。
「塵となれ」
掲げた掌を、ぐっと握り締めた。それに対応する形で、曼荼羅から無数のエネルギー流が放たれる。まるで雨のように、ビームの嵐が俺達に向かって降り注いだ。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁ!!」
突然の事態に、俺は成す術が無かった。スザクは龍義鏡によってかろうじて防げているようであるが、防御手段を持たないハヤトや光一はそうではなかった。爆風やエネルギー流そのものに煽られ、俺の視界はぐるぐると回転し、どっちが天と地なのかさっぱり分からない程だった。
「……やれやれ、この程度とは呆気無い」
若干、がっかりしたような調子のジングウの声が聞こえる。
戦場は酷い有様だった。エネルギーの暴風に晒され、そこを固めていたコンクリートの床が粉々になっている。まるで砂利を敷き詰めた状態にまで変貌しており、その上に俺達は倒れていた。
「く……」
力を振り絞って起き上がろうとするが、全身に激痛が走る。思わずまた倒れ込みそうになるのを、歯を食い縛って堪える。
なんて奴だ。今までずっと、本気で戦っていなかったのか……!
「はあぁぁぁぁぁ!!」
「スザク!?」
まともに攻撃を受けた俺達は無事じゃなかったが、龍義鏡で攻撃を防いでいたスザクはそうじゃなかった。彼女は幻龍剣を顕現させ向かっていく。
(だ、だけど無謀だ! 俺とハヤト、リオトの三人がかりでも傷一つ付けられなかったのに……!)
しかも龍精落を使用した直後のせいか、動きにキレがない。スザクの攻撃をひらり、ひらりと、まるで嘲笑うかのようにジングウがかわしていく。
「無駄な抵抗は諦めろ。私の力は十分分かっただろう?」
「だからって、はいそうですか、って諦める程僕達は物分りはいいわけじゃない!」
「ふむ……ならば、仕方が無い」
ドン、とスザクの身体をジングウが蹴り飛ばした。彼女の身体は砂利の上を滑っていき、勢いを失ったところで止まった。
「スザク、大丈夫か!?」
「う……く……」
命に別状はなさそうだけど、でも彼女にもこれ以上の戦闘は無理だろう。これでこちら側に、戦える者は誰一人いなくなった。そんな俺達に見せ付けるように、空中に再び曼荼羅のような模様が浮かんでいく。
「さらばだ! なかなか楽しかったよ」
曼荼羅が発光する。再び、エネルギーの嵐が降り注ぐ。
俺達の視界を、絶望が塗り潰していった。
「ふふふ……意外にしぶといですね、皆さん」
そう言いながら、ジングウは満足そうに目の前の光景を眺めていた。
粉々に砕かれた瓦礫の上。その上に投げ出されるようにして、シスイ達の姿があった。
皆、酷い有様だった。衣類は引き裂かれ、剥き出しになった皮膚のいたるところに傷がある。かろうじて上下している胸が、彼らがまだ生きていると言う事を物語っていた。
「では、そろそろトドメといきましょうか」
ざっざっざ、と音を立てながら、ジングウが歩み寄ってくる。
しかしその行く手を遮るようにして、一人の少年が立ち塞がった。
「おやおや、リオト君。何の真似ですか?」
それはリオトだった。彼の身体には、自分でつけた手首の傷以外にはどこにも傷は見当たらない。彼だけは、ジングウの攻撃範囲の外にいたおかげで無傷で済んだのだ。
「……悪いが、ここから先へは通さない」
「正気ですか? あなた一人で、一体何が出来るって言うのです?」
「勝とうが勝てまいが、そんなのは関係無い……大事なのは、お前が俺達の日常を壊そうとしている事だ」
リオトが構える。それを見て、ジングウは鼻で笑った。
「逃げるなら今の内ですよ」
「生憎だが、俺はホウオウグループである前に一人の人間、高嶺利央兎だッ!!」
リオトには、ジングウの存在がどうしても認められなかった。
それは、ジングウが存在する事でホウオウグループの存在が危うくなるからなのか、それともユウイの身に危険が訪れるからなのか。そのどちらなのか、今の彼には判断がつかない。
ほとんど衝動的に、彼はジングウへと向かっていた。
「う……ぐ……」
俺は悲鳴を上げる身体に活を入れ、無理矢理起き上がっていた。
顔を上げると、その先でリオトがたった一人で戦っていた。彼だって血を流して消耗しすぎているのに、しかも一人で戦うなんて無茶だ。
加勢しようとした時、俺の腕を掴む者がいた。咄嗟に振り返る。
「スザク!?」
「止せ……お前一人行ったところで、状況は変わらない……」
「だけど、リオトが……あいつ一人で戦わせてなんかいられないよ!」
見れば、それは戦いなどと到底呼べるものではなかった。リオトの攻撃はことごとくかわされ、あしらわれ、ジングウに弄ばれているのがはっきりと分かった。そんな状況を見せられて、じっとしてなんかいられない。
「冷静になれ、シスイ! 今この状況でどうやってあの男、ジングウに勝つか。それを考えなきゃいけないんだろう!?」
「ッ!!」
何時の間に起きていたのか、光一が俺を一喝した。その隣には、同じくボロボロになったハヤトもいる。
……その通りだった。今血気に逸って突っ込んでいっても、同じ目に会うだけだ。今重要なのは、どうにかしてジングウを止める事だ。
「スザク、もう一度龍精落行けるか?」
「ギリギリ……まさか、もう一度あれをやるつもりか?」
「ああ……だけど、今度はもっと強力なやつだ」
光一の視線が俺へと向けられる。なるほど、そういう事か。
「さっきのに、今度は俺の能力でブーストをかけるわけか」
「ああ、そうだ」
「だけど、それじゃあリオトを巻き込むんじゃないか?」
「それに関しては少々酷な役目だけど、ハヤトにお願いしたい……出来るか?」
「正直、足腰きてるからあんまり頼まれたくないんだけど……やるしかない、よな」
全員が頷く。これが、最後のチャンスだ。
「ははははは、どうしました? そんな事では、張り合いがありませんよ」
「く……っそ……!」
リオトの攻撃は、その一つとしてジングウに掠りすらしていなかった。
遊ばれている。その事実がリオトから正常な判断力を奪い、時間と共に彼の体力も奪っている。既に血のショットガンを使用してリオトの力はもはや限界だ。
「さて、そろそろこの戯れにも飽きたので、終わりといきましょうか!」
ジングウの右手が、手刀の形を作る。それが何を意味するのかリオトにも分かり、悪寒が背筋を駆け抜けた。
「貴方も私の僕となりなさい!」
眼前に手刀が迫る。もはや体力も尽きかけた今、リオトにそれをかわせる余裕なんかどこにも無い。
(やられる――!)
そう思って、思わずリオトは目を閉じてしまう。
「リオトー!!」
その直後、自分の身体が横から誰かに突き飛ばされるのが分かった。目を開くとそれはハヤトであり、二人とももつれ合うようにして転がっていく。
「おやおや、ご友人の助けが入って良かったですね。もっとも、私の僕になるまでの時間が、ほんの少しだけ延びただけですが」
「へ。誰がてめぇなんかの手下になんかなるか、っつーの。そんな事だったら、今のままアースセイバーにいた方が百倍マシだ」
「減らず口を……」
ジングウが二人に迫る。しかし、ハヤトの口元には不敵な笑みが浮かんでいた。
「今だやれ、三人とも!」
「なッ!?」
ジングウが振り返ると、そこには既に攻撃の準備を終えたシスイ達がいた。スザクと光一の手の中にある光球は、今やはちきれんばかりにまで膨れ上がっている。
『いっけえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!』
弓から手を離す。極限まで威力を高められた破魔の矢が、その手から放たれる。
「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
その光が、ジングウを飲み込んだ。
「――そんな!?」
手応えあり。そう俺は感じ取ったが、光の向こうから奴の高笑いが聞こえてきて俺はゾッとした。
網膜を焼きそうなほど強烈な光。少しでも気を抜いたら、溢れ出る光に飲み込まれてしまいそうだ。
そんな凄まじいエネルギーに晒されていながら、ジングウはまだ倒れていなかった。
「くは、くはははははは! やりますねぇ、本当に……危うくやられるところでした」
「くそ、またあのバリアか!?」
光一の最大出力のレーザーを易々と防いだ、あの光の障壁が頭に浮かぶ。スザク、光一、ハヤトの三連攻撃を防いだのも、おそらくあのバリアの力なのだろう。
「く、くそぉ……」
「ここまで来て……」
二人の表情を見て、もはや限界だというのが分かった。正直俺自身、もうこれを凌がれてしまったら後が無い。
「く、くそ……」
光が、少しずつ弱くなっていくのが分かる。それを否定するように、俺はなけなしの力を注ぎ込む。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ! こんなところで負けるなんて――そんなの嫌だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そう叫んだ、その時だった。
「な、なんだ!?」
足元から、何か俺の中に入り込んでくるのが分かる。それは何かの力で、それは俺に力を貸してくれていた。消えかけていた「天子麒麟」の力が、再び光を取り戻していく。
(この感覚は……)
その感覚に、俺は覚えがあった。
まだ俺が小さかった頃、俺が弱気になるといつも爺やと婆やが励ましてくれていたけれども、俺を励ましてくれていたのは何も二人だけじゃなかった。耳を澄ませれば、木や、風や、大地が、俺に語りかけ、俺に「負けるな」、「頑張れ」と声をかけてくれていた。
町に出てから、すっかり忘れていた。子供の頃の俺にとって、俺の故郷であるあの山全部が味方だった。そして今、このいかせのごれの大地が、俺に負けるなって力を貸してくれている!
「う――おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
滾る。力が溢れ出す。
まだだ。まだ俺達は、これ位で負けたりなんかしない!
「こ、これは!?」
「力が、戻ってくる……!」
俺の身体から溢れた力を浴びて、スザク達にも力が戻ってきた。
「二人とも、もっとだ! もっと力を込めろ!」
俺が促すと、それに応えて二人も再び光に力を注ぎ込む。光に再び勢いが戻り、それどころかさっきよりも勢いを増していく。
「な、なん、だと……!?」
光の向こうで、ジングウが戸惑っている声が聞こえた。
バリアがもう持たないのか!? 後もう一息だ!
「二度と――」
「姿を――」
「成すんじゃ――ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
最後の最後、俺達の覇気と呼応するように、光が最大級の輝きを放った。その力がジングウのバリアを砕き、奴自身も飲み込んでいくのが分かる。
「ば、馬鹿な……私が、この私が……ホウオウさえも超えた、この私があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ジングウが残した最後の言葉はそれだった。
光が抜けていった先には、もはや何も残っていない。
それが意味するところはつまり、ジングウと言う人物がこの世から消え去った事を意味し、
それは即ち、俺達の勝利を意味していた。
「か、勝った……」
勝利を確信すると、俺達三人はその場にへたり込んだ。もう無理だ、一歩も動けない。
「おおーい!」
ハヤトが興奮気味に近付いてくる。彼は俺達を見下ろしながら、ガッツポーズを取った。
「やったじゃねぇか! 俺達、あいつを倒したんだぜ!?」
「ああ、そのようで……」
「くー……まだ興奮が抜け切らないぜ!」
「しょーじき、もっかいあんな戦いやれとかこりごりだけどな」
「まったくだ」
ジングウを直接ぶっ飛ばした俺達三人は、思わずため息をつく。
正直、今回は「本当なら負けていた」戦いだった。奴に勝てたのは時の運と、俺に力を貸してくれた「いかせのごれ」の大地のおかげだ。
「ありがとうな……」
思えば、山に住んでいた頃は自然に対する恩恵を常に感じながら生きていた。けれども、町に出て暮らすようになってからは、そう言った事をあまり考えられないようになっていた。
それでもこの大地は、俺達をずっと見守ってくれて、そして今回力を貸してくれたんだ。まったく、頭が下がる。
「今、本部に連絡した。迎えを寄越してくれるって」
「うわ、マジで助かる。もう一歩も動けねぇよ」
「……あれ? リオトはどうした?」
「んー? あれ、あいつどこ行ったんだ?」
ハヤトが周囲を見渡すが、どこにもそれらしい姿は無い。まさかあれだけの戦闘の後なのに、自力で家まで戻ったのか?
「あいつはあいつで事情があるんだろ」
「ま、だろうな」
「取り合えず――」
今はゆっくり休みたい。それがこの場にいる、全員の共通意思だった。
※劇中、シスイが大地から力を借りていますが、あれは彼自身の能力と言うより「都シスイ」という人間に備わった「徳性」のようなものです。
| 作者 | 登場人物 |
| akiyakan | 都シスイ、火波 スザク、ハヤト、高嶺 利央兎、闇野 光一、ジングウ |
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