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はじめての言葉(仮)

小さなレストランに、さんさんと朝日は降り注ぐ。
一面ガラス張りの店内には、朝日から夕陽まではいってくる。
電気代の節約と、店長が考え出したものだ。

開店1時間後。
今日は日曜日とあって、朝早くから高校生の客が多い。
「たく、なんでこんな小さなとこに好んで来るかねぇ…。」
「まぁ、いいじゃないの。能力者が集まると言えば、こんなとこしかないんだろうからさ。」
朝からフライパンを振りまわしっぱなしの由衣を、店長はなだめるように言う。
基本的に、厨房には由衣と店長の二人が立つようにしており、会計は奏がうけもっている。
規模が小さいからこそできる連携だ。

「あ、おい店長!また片腕消えてるぞ!さぼってるんじゃねぇの!?」
「誰がさぼるか。鍋が邪魔だったんだよ。」
店長はそういうと、取り上げてた鍋を上に放り投げた。
その先には、壁から生える「腕」。
それが鍋をキャッチし、上の戸棚に鍋を直して消えた。
「…便利な能力だこと;」
「いつもやってることでしょうが。」
そういう店長には、何事もなかったかのように両腕がきちんとあった。

「ごめんくださーい。」
そっとドアを押し、入口から誰かが入って来た。
すぐさま奏が出迎える
「いらっしゃいませ!」
「あの、カウンター席、開いてますか?」
「はい!こちらにどうぞ。」
そう言って奏は、椅子を引いた

「おー!ネイロじゃないか!」
厨房から顔をのぞかせた由衣は、真っ先にその名前を呼んでいた。
きれいな黒髪に青い目。上から下までフリッフリのゴスロリの彼女は、由衣を見て軽く笑い、手を振った。
が、その直後、由衣の頭上からフライパンが叩き落とされた。
「こら由衣!さぼってんじゃないよ!今月家賃まだもらってないからね!」
「~~~っ;」
頭を押さえながら、引きずられるようにして奥に戻って行った。

「お待たせいたしました、チョコレートパフェです。」
テーブルにおかれるグラスを前に、ネイロはスプーンをとりながら喜んだ。
「まってました!おいしそうw」
いただきます!と一声あげ、彼女はパフェについていたポッキーを取り上げた。

「…ねぇ、奏ちゃん…だっけ?」
あっという間に半分ほど食べ終えたネイロは、奏をよんだ。
「あ、はい。」
「奏ちゃんも、能力使えるの?」
言葉に詰まる。今までそんな質問されたことなかったからだ。
悩んでるのが先方にも通じたのだろう。ネイロは慌てて両手を振った。
「あ、いや別に、聞きたくて聞いてるんだから答えなくてもいいの。ただここって、能力者の間で有名だったから…。」
「そんなに有名だったんですか?」
「だって、進んで能力者の相手するなんてなかなか聞かない話だもの。だから、店員も能力者なのかなって。」
「ええと…そうなんです。私もお姉ちゃんも店長も…。」
「そっかw」

ネイロはスプーンをグラスに差し込んだ。
「なら、仲良くなれそうだね、私たちって。」
「え…?」
「私、由衣ちゃんとも学校で仲良くしてるんだ。その妹でしょ?なら仲良くして当然じゃない!」

はじめて言われた言葉。
借金取りに追われていたあの頃、絶対にかけられることのなかった言葉。
うれしすぎて、戸惑いさえ覚えた。

「…いいんですか、私が…?」
「勿論!数少ない能力者じゃない!」
…業務中なのに涙が…。
やばい、店長に怒られちゃう。なのに…。

「…ありがとう。」

この言葉だけで通じたかな。
私の…気持ち。



追記

「そのくらいで私が怒るわけないじゃんw」
「ありがとうございます…。」
(私には結構怒ってる気がするんだけど…なんで?;)
 


 

作者 登場人物
大黒屋 夏香 由衣夏香 奏ネイロ店長


投下順
スザクの一日(仮)← 81話~120話 →皆に講話中「イリオモテヤマネコ」

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最終更新:2013年06月21日 22:56