ストラウル跡地。
廃墟と化したその後も争いが絶えず、つい先日も激しい戦闘が行われた後だ。
そんな場所に、一人の男が現れた。
赤いザンバラの髪、浮浪者のようなボロボロの衣服。しかし、不思議と不潔さは感じられない。
精悍な顔付きのその男は、とある場所までやって来ると周囲を見渡した。
そこは、荒れ果てた「跡地」の中でも一際凄まじい破壊の後が残っていた。地面を固めているコンクリートは粉々になり、まるで砂利を敷き詰めたような状態へと変貌している。周囲に建っていたであろう建物も、瓦礫の山と化していた。
「…………」
男は無言のまま、その場所をじっと見つめている。表情に変化が無いので、一体何を考えているのか分からない。
「紅蓮」
すると、周囲に男以外誰もいないように見えたが、もう一人いたようだった。名を呼ばれた男――紅蓮がそちらに視線を向けると、そこにいたのは一人の少年だった。
年齢の程、九歳位の少年。この齢の子供であるならば明るい表情を浮かべていそうなものだが、この少年は無表情だった。まるで水底のような、冷たい眼差しをしている。
『ここで何があった、ガング』
紅蓮は声を発さず、代わりに背中に背負っていた看板を少年に見えるように見せた。そこには、その少年に対する質問と、少年の名前らしきものが書かれている。
「ジングウと、アースセイバーの戦闘があった。アースセイバーの側には五人。麒麟の子と、朱雀の子もいた」
『ジングウ……だと?』
「ジングウの事、貴方は知ってるよね。貴方は六年前、彼と何度か戦っている筈だから」
『だが、そのジングウは風の噂で死んだと聞いた』
「いや、死んでいなかった。まぁ、正確な事を言えば、確かに一度死んだのだけれども、新しい身体を得て蘇ったんだ」
『……なるほど。だがしかし、蘇ったが再び滅ぼされた。この場に残る思念は、地球の守護者達が勝ったのだと俺に教えてくれる』
「その通り……だけど」
そこで一旦言葉を区切ると、ガングは遠く彼方の方を見つめた。
「邪悪な気配は、まだ完全には消えていない」
『何?』
「ホウオウは何度でも姿を成す。それと同じ。今のジングウは、ホウオウと同等の存在だ」
『……なるほどな』
そう言うと、紅蓮は踵を返してその場から立ち去ろうとする。
「どうするつもり?」
『知れた事、対極するものは滅ぼし合うが定め。奴は悪をも超えた邪悪な存在だ。滅ぼさない道理は無い』
「なるほど、仕事熱心な事だ……だけど、僕は言ったよ。今の奴は、ホウオウと同等の存在だって」
『ならば、何度でも打ち滅ぼすだけだ……俺は、その為にここにいる』
そして紅蓮は、そこから去っていった。後には、ガングの姿だけが残る。
「……救世主は、今まで幾度と無く暗黒神を滅ぼしてきた。けれども暗黒神は、その度に新たな力をつけて蘇る」
誰に聞かせるでもなく、ぽつり、ぽつりとガングは呟く。
「回る、回る。争いの螺旋は回る。人が争いを求めるのか、争いが人を求めるのか……」
おそらくこの問いに答えられる人間は、この世には存在しないのだろう。そう、ガングは思った。
| 作者 | 登場人物 |
| akiyakan | 紅蓮、ガング |
投下順
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