「おやおや? DS-X001、ミツは一度開発されたものの、能力の再現が甘かったので廃棄処分、ですか……基礎設計が甘かったですかねぇ……いや、能力に関してはゼアに一任されていた筈だから、私に落ち度は無い、か」
「おおーい、給仕。お茶」
「あ、はいー。今参りますー」
(小走りで人が走る音。その後、お茶を注ぐ音)
「……っと……ん? 兵器化能力者製造施設も大破……この間見た龍義もどきの能力使いになんだか見覚えがあったと思えば……なるほど、そういう背景が……」
「ちょっと給仕ー。こっちにもお茶ー」
「はいはい、只今参りますー」
(小走りで走る後、再びお茶を注ぐ音)
「ふぅ……ん? 多脚型の高機動戦車ダルセノンに、高機動型の武装艦バラトストラ……相変わらずセキ君は、面白い物……じゃなかった、良い仕事をしますねぇ……」
「おい給仕、お茶ー」
「……はーい」
……全く、私に落ち度がある事を良い事に、どいつもこいつもコキ使ってくれますね。
まぁ、無理も無いでしょうか。この場において、私は「ユダ」みたいなものなのですから。
しかし――
「女性が着るなら分かりますが、何故私はメイド服を着てお茶汲みなどしなければいけないのですか!?」
今の私は、ヘッドドレスまで完備したフリル満載のメイド服を着せられている。おまけに私自身は包帯塗れなので、「怪人:木乃伊冥土」と言うわけの分からん状態です。
一体誰の提案ですか、全く。嫌がらせする気満々じゃないですか。
「ああ、それですか。確かユウムが、ゼアに提案していたと思います」
……ご丁寧に説明ありがとうございます、リイ君。
ユウムと言えば、確か現在いかせのごれ高等学校に潜入しているメンバーの一人でしたか。のほほんとした外見に似合わず腹黒と言う噂でしたが、どうやら本当のようですね……
まぁ、これも今しばらくの辛抱です。周りの心象が良くなれば、幾分かこの状況も改善される事でしょうし。
(と言うか、ラボに入れさせてもらえないからには何ともなりません……)
現在私は、ラボやそれに類する施設への立ち入りを禁止されています。監視がついているのですから、何もここまで厳しくする事無いでしょうに……
(……と、言っても)
私が振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。無表情のまま直立不動で、私の方を見つめている。
一見すると、ごく普通の人間に見える。しかし実際は、擬人兵の出来損ないだ。入力された命令通りにしか動く事の出来ない、融通の利かないお人形だ。
(これが監視じゃ、頼りないってのも分かりますがね……私の位の技術があれば、この程度の擬人兵ならハッキングなど容易ですから)
でも出来るからと言って、何も考えずにやるのは愚者の行いだ。戻ってきてそうそう問題を起こしてしまったら、ここにはもう二度といられない。それは困る。
(別に、グループに戻らなくても良かったんですけどね……しかしそれでは、効率が悪い。ホウオウ的に言えば、合理的ではない、と言ったところですか)
アースセイバーとの戦闘で消耗した私の肉体はひどく傷付いている。再生にはもう暫く時間が必要ですし、何より今の私には設備も人員も無い。まぁ、無い事は無いのですが、実質無いと言ってもいい。こんな状態では、参加者の皆さんを楽しませられるようなゲームは出来ません。
(待っていてください、プレイヤーの皆さん……準備が終わりましたら、すぐにゲームを再開しますからね……)
その時がああ、実に待ち遠しい……想像しただけで、私は頬が綻んでしまう……
「給仕、お茶ー」
「……はいはい。今、参りますよー」
……取り合えずは、今置かれている状況を頑張りますか。