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店長の素性 -プレステージ‐(仮)

『謎の生物兵器が暴走 即急に現場へ向かえ』
その指令が下ってから、既に30分は経過しただろう。
現場にはとっくについて、非難も行った。
ただ後一つ。

「生物兵器」が強すぎる。

「チックショー…。」
口に付いた血をぬぐいながら、「彼女」は呟いていた。
「なんであんなに撃ったのに、動じないんだ…。」
「ちょっとKEA、手加減してるわけじゃないだろうね?」
「なんで俺なんだよ!手加減するわけないだろ!」
「ってことは…あいつの防御力が半端じゃないってことか…。」

見るからに「ドラゴン」のようなその生物兵器。
ただ、脚の代わりに両腕が特化しており、太い爪に斬り裂かれるまいと逃げ回っていた。
しかし、遠距離を保ちながらの戦闘は、KEAも「彼女」も苦手だった。

「このやろォ!!」
やけになってKEAが突っ込んだ。「彼女」がそれに気づいて止めるのが、一瞬遅かった。
「止めろKEA!!」
幻龍剣を作り出し、思い切り飛び上がる。
が、先を見越していたかのようにドラゴンは片腕を上げていた。

「!!」
飛び上がったままの体制では、よけられない。
ドラゴンの爪は、そのまま振り下ろされ…。

「龍精落!」

横から放たれた光が、爪にあたる。
不意打ちに起動がぶれ、KEAのすれすれを通って地面に下ろされた。
風圧でKEAは飛ばされるが、怪我はないようだった。
「彼女」はKEAに駆け寄る。

「大丈夫か!?」
「ああ…っ!姉さん!上!!」
KEAが叫ぶ。「彼女」の頭上に爪が振り下ろされていた
「!!」
頭を押さえ、その場にうずくまった。

…が、いつまでたっても爪が襲ってこない。
おそるおそる「彼女」は顔を上げた。
「…!?」
二人の前に人が立ちはだかり、見たことのある「鏡」で爪を防いでいた。
燃え盛る炎を切り取ったような赤い髪。それと同じ赤い目。
力のかかり方こそ違ったものの、「彼女」はその鏡を、初めてみた気がしなかった。
強いて言うなら、これが「3人目」か。

「何をしている!今だ!攻撃しろ!」
その声にはっとし、「彼女」は立ち上がった。
精神をドラゴンに向け集中する。そして…。
「…っは!」
「彼女」の両腕が消える。
そして、ドラゴンの肩から2本の「腕」が生え、ドラゴンの腕を取り押さえた。
「KEA!」
「よしきたァ!」

その時、鏡を使っていた女も同時に飛び上がった。
そして、KEAと息を合わせるように、その光を両手に集め…!

 



「分かってるな。お前はこれを最後に戦線離脱だ。」
「…はい。」

アキヒロに宣告され、「彼女」は素直にうなづいた。
反抗したのは、KEAだけである。
「なんでだよ!姉さんが何かしたってのか!?」
「さっき言った通りだ。被害にあった施設は、まだ自覚のない能力者を収容するものだった。」
「でも、避難させたと油断しきって、私はその施設の能力者に「能力」を教えてしまった。」
「だからって!あれはあの生物兵器が…。」
「言い訳する気はないよ、私は。」

「彼女」は立ち上がった。
引きとめるようにKEAも立ち上がったが、一歩が出なかった。
「…お世話になりました、アキヒロさん。」
「…なに、これが別れじゃないんだ。」
KEAの肩に手を置き、アキヒロは言った。

「『戦線離脱』をするだけだ。彼女にはまだ、能力者に貢献してもらおうと思っている。」
「貢献?」
「能力者が気軽に使える施設というものは少ないからな。食堂を、やってもらおうと思ってるんだ。」
「そうそう。私の「能力」、無駄にはならないし?」
「『人体移動(ボディムーヴメント)』。自らの体の一部を他の場所に移動させる能力。一人で経営するには十分だ。」

「そういうことだよ、KEA。私はウスワイアから抜けるわけじゃない。」
「彼女」はKEAに笑って見せた。
「いつでもおいで、私のレストランに。ちょっとくらいサービスしてやるよ。」
「姉さん…。」
二人を見て、アキヒロは微笑んだ。

「…じゃあ、食堂については、お前に任せるよ…。」



――楠原 亜音。
 

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最終更新:2011年03月02日 17:32