数年前の、ある日の出来事。
「後始末屋」から「教官」への転換点の話。
「モノクロさ~ん、起きてますか~?」
「起きてますよー、どうしたんですかシノさん?」
―――モノクロという、あからさまに人名でない呼称に振り返る男がいた。
しかし、彼を表現するには最適かつ端的にして病的にマッチする。
髪、眼、服が白と黒。中肉中背で老け顔の青年。
・・・いつか「七篠獏也」と呼ばれる男である。
「
アキヒロさんからの連絡っす。
『保護した一般人が居るから対処を頼む』だそうです。
これ報告書っす。詳細は病室へ移動しながらでいいすか?」
「あー、ハイ。分かりました」
今回の用件は、いつも通りの事だった。
市街地での能力者の戦闘に巻き込まれた一般人の記憶の操作、封印。
機密保持や、混乱を防ぐのを目的とした、いわゆる『裏方作業』だ。
皮肉を込め「後始末屋」と呼ばれてはいるが、特に気にして無い。
「えーと、学生さんがですね、戦闘に巻き込まれたんですよ。
市街地のはずれでですね、
ホウオウグループのエネルギー反応があったんす。
そこを聖さんが調査してたらあちらさんから出てきたらしくて。
で、止むを得ず戦闘、終了後の散索中に発見、だそうです」
「・・・で、回収班がここまで護送したんですね」
「その通りっすね。っと、ここっす。アキヒロさーん、連れて来ましたよ~」
「で、何で即刻立ち去るんだシノ?」
「あはは~、そんな事はないっすよ?」
壁にもたれて書類に目を通しながら、受け答えるアキヒロ。
ベッドには、少年が横たわっていた。
「所長さん、この子が今回の?」
「あぁ。話が通ってるなら、早速だが始めてくれ」
「了解です。」
ベッドの横のイスに腰掛け、少年の頭に右腕を伸ばす。
目を閉じて、掌に精神を集中し、能力を使用する。
―光・音・匂い・感情といった「記憶」が瞼の裏に再生される。
『ギリで電車に間にあ~・・・うと良いなぁ。ダリぃパターンだぁ』
その少年は市街地を自転車で走っていた。
教師の呼び出しで帰宅が遅れそうなのか、近道をしてるらしい。
(シノさんの報告にあった地点の周辺、ですね。
・・・この辺りから消去しますか。)
突然、遠くからの爆音。音源の方角からは砂煙。
『爆発、だよなぁ今の。。・・・(ニィ)レッツ野次馬根性ッ』
(戦闘があった地点と一致しますね。これが原因で巻き込まれるとは;;)
砂煙の地点に、どんどん近づいて行く。
ガキィン!!ザザッ!!
ヒュッ!!ドガッ!!
『う~わ、何このバトルちっく効果音w不良同士のケンカか?』
音が近くに感じれる処。その建物の影に自転車を停め、そっと覗き込む。
少年の妄想は、半分正解だった。
そして、常識外だった。
「チッ。逃がすかよっ![石礫衝]っ!!」
「単調になってんぞ、スーツ野郎」
「テメェだってリーマンスーツだろうが!!」
「じゃ、タイツにアメフト防具に訂正」
「その説明口調がイラつくっつてんだろ!!」
「声が、でかい」
「~~~~~~~っ!」
『・・・何でヤクザと戦隊が闘ってんの?いやこの光景自体が非常識だわ』
(スーツにハンドガンが蒼井さんで、戦隊タイツがホウオウグループですね。
戦闘中なのに珍しく冷静だ・・・。むしろからかって楽しんでる;;)
戦隊タイツが、拳で、脚で、地面を殴りつける。
その度に地割れか、衝撃波が走る。
それをヒラヒラと避けつつ銃撃する聖。ワンサイドゲームが完成していた。
『目の前の超常現象はスルーして、とりま携帯スタンバイッ(ポチポチ)
あーでも、あの馬鹿力なタイツ(?)はどーなってんのか気になる』
「なんだ。なんか、ツマらん」
「なら、本気見せてやんよゴルァ!」
「っオーケー、待ってやるがヘボかったら潰すぞボケがっ!」
・・・互いの動きが止まる。場の空気が一気に張り詰める。
(あ~、矢張熱くなった。)
戦隊タイツが右腕を振り上げ、力を溜める。
そして、叫びながら一気に地面に叩き突く!
「砕破っ!棍衝陣っ!」
拳から聖に向かって、かなりの地割れと衝撃波が発生する。
『うっわヤベェ!ww』
戦隊スーツと聖を挟む形で位置取っていた少年にも、容赦なく襲いかかる。
しかし2人は、彼の存在を知らない。
「それで、どぅしたぁ!!」
「まだまだぁ!!」
戦隊スーツが左腕も叩き突ける。
すると地割れをなぞる様に岩の柱が隆起する!
「避けてみやがれっ!!」
「っは!!余裕余裕っと!」
(危ない、こっちにも来るっ!)
迫り来る岩。吹き飛ぶ少年。そして、二人から更に離れた所へ墜落する。
少年の目の前には、千切れた自分の右腕。
『・・・痛ェ。いや何ともない、のは死ぬからか。 。』
少年の。モノクロの視界はそこでフェードアウトする。
(え?報告書には五体満足で発見、と・・・!?)
・・・・・・・・・。
・・・・・・。
・・・。
『 死ぬとか マジで ダリぃパターンだぁ。
あー、どんなので死んだっけ。
確かこういう安物の鎧っぽいので。
地面 殴って。 出ろや衝撃波・・・!』
その衝撃波は。現実と成って。
今尚戦闘を続ける2人へ向かって行く。
「ワンモアっ!砕破っ!棍衝陣っ!」
「いい加減、見あきたぞ!」
(傷が治って、・・・じゃなくて何が一体どうなって????)
最終更新:2011年03月05日 18:02