「…こんにちはー。」
「ん?…おお、正人!バイト来るの久しぶりじゃね?」
由衣は、裏口から入って来た黒髪の青年に声をかけた。
赤と黒のオッドアイをもつ彼は、店長の
レストランでバイトをしている。
ただこのところ学校でも姿を見ておらず、由衣は心配していたのだった。
「店長も心配してたぜ。ちょっと顔出してきな。」
「ああ、そのつもりだったし。」
正人は笑うと、中に入って行った。
店長はその顔を見るなり、ふっと微笑んだ。
「やっと来たね、正人。」
「お待たせしました、姉さん。」
「ごめんね、急にあんな頼み事しちゃって。」
「いいんです。少しでも役に立てるのなら。」
正人は近くの椅子を引っぱりだすと、店長に向かい合って座った。
「
ノルンとノア…でしたよね。間違いないようです。」
「やっぱり本気だったか…。ま、疑ってたわけではないんだけどね。」
「ただ、それを向こうがつかんでる可能性もあります。そうでなくとも、つかむのは遠くないでしょう。」
「…。」
どうしたものかね、と店長は頭をかいた。
「できれば無事に抜けさせて、ここで預かりたいんだけどねぇ…。」
「外部の者に何もできないのは、どんなところでも同じでしょう?」
「分かってる。でも心配でね。
ホウオウ抜けるって、絶対ただ事じゃすまない気がしてさ。」
「確かに…。」
「…他人に見えないんだよね、ノルンのことが。」
「えっ…?」
おかしいかもしれないけど、と前置きをし、店長は語りだした。
「私さ、やっと物心ついたくらいに襲われてさ。お父さんとお母さんと弟二人、なくしたんだよね。」
「!」
「で、当てもなくウロウロしてたら、アースセイバーに拾われたって次第。」
「…そうだったんですか…。」
「でも、3年前、ノルンに…てったって、あの時は生物兵器になり済ましてたわけだけど、出会ってはっとした。」
ちらりと正人を見、店長は言った。
「初対面なのに、他人な気がしなかった。そして、直感で、この子を守りたいと思ったのよ。」
「…。」
「…おかしいよね、ホウオウグループの味方を、ウスワイヤがするなんてさ。」
「…そんなことないと思います。」
「えっ?」
顔を上げた店長。正人は彼女を真っすぐ見据えていた。
「守りたいものを守る。自分の信念を曲げない。それが大切なのは、貴方が何より知っているはずです。」
「…。」
「俺はこれ以上、姉さんに後悔させませんから。」
「…信じて、いいのよね。」
「勿論です。」
その返事に、安堵の笑みを浮かべ、そっと抱き寄せた。
「店長ー!注文入りましたー!」
カウンターから由衣の元気な声。
店長は正人の頭をなでると、カウンターへと出ていった。
残された正人は、しばらく自分の手を見つめると、皿洗いのためにスポンジを手に取った。
最終更新:2011年02月24日 15:41