出来事という出来事は
必然か偶然かなどということはどうでもいいと思っている。起きてしまったら、もう変えることはできないからだ。
起きてしまうことに必然や偶然などつける必要がないとおもっていた。
いまのいままでずっとそうおもって生きていたのに
いかせのごれ高校の放課後のチャイムが鳴る
やっと終わったかといわんばかりに眠そうに目を擦る、瞼がまだ重たい、まだ寝たりない。重たい体を起こしながらゆっくりと席を立つ
すると後ろからゆらりと近寄ってくる女性はその起き上がったばかりのミオの首辺りに腕を回し思いっきり抱きついた
「っ…!」
「ミーオーちゃんっ!この私がじきじきに会いにきてやったのだ!感謝したまへ
どうだい? 元気してたかい!」
「……苦しいよ、ユキ」
抱きつかれ若干首を絞められているような格好になったミオはユキと呼ばれた女性の手をゆっくりとどかしながら小さく苦笑を浮かべながら呟いた。
それを聞いたユキは「おっと」といいながらよっかかっていた体を起こすように後ろへ後ずさり首から手をどかした
そして苦笑を浮かべ後頭部に手を回しユキは申し訳なさそうにしながらも相変わらずのテンションの高さで声をあげた
「申し訳ないねぇ!ついキミを抱きしめる時に力がはいっちゃうみたいでさ!
テンションがあがっちゃうんだよねー」
「…………そう、そりゃ、嬉しいね」
ミオは相変わらずの低いテンションで答えても笑顔でいてくれるユキ。ミオはその対応に安堵を覚えていた。それと同時に、楽だったのだ。
この人物との付き合いに、遠慮しあうこともない、と。
ユキはミオを見据えると目を細めながらも笑顔で相手に近寄る
「後ミオ、今日なんだけどさ」
「…ん」
「ごめん!先に帰っててくれる?今日アタシ補習になっちゃって残らされちゃうんだよねー!
しかも体育でめんどいから!」
両手をあわせて頭の上にもってくると頭を勢いよく下げて謝った彼女を驚いたように見据える。
目をぱちくりと瞬きをさせるとミオは小さく口元に笑みを浮かべてやわらかく笑った
「……あぁ、そう、わかった。……がんばれよ」
「うん!じゃあねー!」
学校帰り、一人で夕方の道を歩いている。
いつもユキ、他のクラスの自分の友と帰っていたからなんだか変な感じがする。そんな違和感を感じながら帰りの道を歩いている
――……補修か、そういや明日俺も補修だったか……クソたりぃ…………。確か数学だったか?
数字の羅列を見るのはごめんこうむりたいんだがな……。
……
「……ん?」
ふと地面に目を落とすと赤い液体のようなものが地面にあるのに気づく。しゃがみこんで眺めると、鉄のような匂いが鼻にツンときた
「………これは、血……か?」
赤く、まだ新しい血はひきずられた跡のように生々しく残っている。その跡を目で追うと、血は路地裏のほうへ続いているのがわかった。
眉間に皺を寄せながらも、立ち上がり、その血をおそるおそる追うようにして歩いていく。
暗い路地裏の中にゆっくりと入っていくとそこには、多くの血が流れている、だけれどもそれは人の血だけではなかった。
引き裂かれた人の死骸だけではない、犬の残骸までもがそこに落ちていた。その血生臭さと異常な光景に顔を青ざめさせた
「ひぃっ…!」
後ろに下がった途端、足から力がぬけたのか尻もちをつく。
気持ちが悪い、それ以上に何故こんな状況に自分はでくわしてしまったのか、考えるうちに脳内がごちゃごちゃとなっていくのが手にとるようにわかる
「…ッ……な、なんだよコレ……」
――こんなの、あっていいのかよ、こんな、こんなこと……!!
「…っ…?」
後ろから人の足音が聞こえる。暗がりから聞こえる見えない何かの足音に怯えるように立ち上がる
そしてその足音が止まったのと同時におそるおそるミオは顔をあげる。路地裏の入り口のほうに人影が見える、だけども、暗く、逆光で人相が全くわからない
「…………だ、……だれだよ、アンタ……ッ!」
上ずった声、震える体を押さえつけながら声を上げる
冷静になりたくてもなれない自分の事を呪いたくてもそこまでの余裕がなく、がたがたと震えるだけ。
路地裏の入り口にいる人影は何も答えずこちらに手を向けた。そこから明るい水色の光が集まるのが見える。そして、その光は光線となってこちらに放たれた。
右頬を掠り、後ろの死体もろとも吹っ飛ばした。
「…ッ!?……は……っ?」
――なんだよ今の!?冗談だろ……ッ!?
目の前で起きた状況に信じられず目を見開く。右頬から感じる痛み、熱く、血が冷たい。現実だ、夢じゃない。そう再認識させられた瞬間更なる恐怖が身を貫くような
そんな気分に襲われて、両腕をぐっと自らを抱きしめるように握り締めた
そんな時に二発目の光線が飛んでくるのに気づいた
「…え? うわああっ!」
必死にその光線を避ける、その光線が壁にあたって崩れ煙がたつのを感じる。あんなのくらったら跡形も無く吹き飛んでしまう
早く起き上がろうと地面に手をついて体を起こしたときにパイプ管のようなものが目の前に転がってるのをみて、無意識に拾い上げると立ち上がっていた
「こ、こんのッ……!!」
走り出し人影に向かって無我夢中になりながらもパイプ管を振りかぶり思い切り振り下ろした
「うらぁあああああああああああ!」
その人影はパイプ管を頭に直撃した瞬間霧のような煙になってしまった。その光景を目の前にしてミオは更に訳がわからなくなり、呆然と地面に付いたパイプ管を見た
さっきまで此処に確かに居たのに、自分を殺そうとしていたのにそいつは…
「…は!? …どういうことだよ…? ……なんだよソレ、なんだよソレ…ッ! んなのありかよ!!」
そう叫んだ途端に、突如後ろから首を絞められる感覚に襲われる。凄い力で首を締められ息ができない
「…ぁっ!?…ぐ、…くぅぁ……ッ…は…ッ」
バタバタと暴れるがその人影は脱走を許さないといわんばかりに首を絞める腕に更に力をこめてきた。
暴れる度に空気がすえなくなる、苦しくなる。声にならない声が喉からあがるのを聞いていた
「……ぁっ、が……ぅ………ぁぅぐ……」
――痛い、…痛い…ッ
「…ぁ゛っ…!!ぁ…あ……」
意識が薄れていく中、腹部に強烈な痛みが走った。
ミオは腹部をあの水色の光線に貫かれていた。その光線は剣のような形状でミオの腹部に数本刺さっている。
人影はミオを締めている腕をゆるめミオを地面に落とした。地面に叩きつけられた体は痛さを感じない。
冷たい地面、痛い腹部、だけども痛みさえもだんだんわからなくなっていくのを感じる。体を動かそうとも動かない。色々な思い出が頭の中を走馬灯のように走る
――…何も、感じなくなってきた…。
ああ……俺、ここで死ぬんだ
……ユキ……
…
人影はどこか満足したように踵を返した。
だが、後ろからジャリ、と足音が聞こえ勢いよく振り返った。
そこには、今殺したはずの女が水色に怪しく目を光らせ、手に水色の光を集めていた。その光はいくつもの光の針となり、人影を襲った
それは全て避けきれず体に突き刺さり人影は地面に膝をついた。痛みに耐えながらも起き上がろうとしたその人影の腹部を、光線が貫いた。
倒れたその人物の顔が明るみにでてミオは初めて気がついた
友達というものは、ただの空想の産物でしかなかったってこと。
「…ユ、キ…」
確かにそこで貫いた人物、確かに自分を攻撃した人影は自分の唯一の友だと自負していた人で
それを見た瞬間に自分の空想が砕かれた音がしたような気がした。
ふらりと体が揺れ、ミオは意識を手放した
いつもいつも
あの時の出来事は全てただの悪夢だったんじゃないか。
そう思っていたけどそれは必然に起きたこと。偶然ではなかったあの出来事。必然に起きた出来事を始めて憎んだ俺は
許されなくていい
ユキという女性の墓の前に、小さな花束を置いて、しばらく、立ち尽くした
最終更新:2011年03月03日 22:25