蹴り上げた彼女の身体は、ふわりと宙を舞った。
「あぐっ!!」
鈍い音を立てて地面へと落ちれば、苦しそうな声をあげて何度か転がった。
彼女からもそんな声が出るのだと、そう思ったらなんだか変におかしくて笑えた。
だって、まるで天女を思わせるような美しい女が、人間の下卑た呻き声をあげるだなんて、変だよね。
「・・・っげほ、げほっ・・・」
それでも、私に向ける眼から光がなくなることはなかった。
身体を数回痛めつけたにも関わらず、命乞いもせずに未だに刃向かおうとするその姿勢は、
アースセイバーとしては正しい反応かな。
でも、私は知ってるよ。貴方の本当の姿。
「・・・スーイネちゃんはさぁ、元々
ホウオウグループだったんだよねぇ?」
「っ・・・」
かつて
ファスネイ・アイズと呼ばれ、今はスイネと名乗っているその子の表情は、強張った。
そして私に向けるその眼は、驚愕の色で染まっていた。
「
サイナから聞いたんだ、むかーしむかし、人工神同士の交配実験で生み出された、『奇跡の子』がいるって。
ホウオウさまにすごーく愛されてて、ちょーあいを受けていたんだって。」
「・・・・・・・・・」
「なのにホウオウさまを裏切って、ウスワイヤに逃げたんだって?その上、好きな人がいるケイくんに恋しちゃったんだって?」
ケタケタと笑えば、スイネちゃんは俯いた。違うって言わないから肯定してるってことでいいんだよね。
「ケイくんはマナちゃんのことが好きなのに、それでもスイネちゃんはケイくんのことを想い続けてるんだー。
へぇー・・・報われないのにねぇ?」
「・・・っ・・・」
あぁ、辛そう。でも、当然の報いだよ。だってホウオウさまを裏切ったんだから!
私の口から、スイネちゃんを「壊したい」言葉がどんどん溢れ出てくる。
「ホウオウさまは貴方を愛していたんだよ?貴方だって、ホウオウさまがすべてだって思ってたじゃない。
それなのに裏切った、ホウオウさまに楯突くあいつに恋をした。思い続けたって、絶対報われないのに。
ばっかみたい、愛されてるのも分からないで、いつか気付いて貰えると思って、勘違いだけの恋をして!
スイネちゃんは馬鹿だよ!最っ高に馬鹿だよ!!ッアハハハハ!!!」
「・・・・・・・・・」
スイネちゃんはただ俯いたまま、何も言ってこなかった。
…もしかして、死んだ?
「ねぇ、」
前髪を掴んで、無理矢理視線を合わせる。
スイネちゃんはそれでも下を向いたままで、表情は分からなかった。
「なんか言ってみてよ。それとも何、言い返せなくて泣いちゃう?」
クスクス笑いながら、言葉で追い詰める。
どうせ泣きそうな気持ちなんだろう、そう思っていた。
けれど、やっと顔を上げた彼女の表情は、私の予想と反して、初めに見た時のままだった。
あんなこと言ったのに、たくさん心を壊したと思ってたのに、スイネちゃんの眼から光は消え失せていなかったのだ。
「・・・・・・あなたは、」
ゆっくりと、彼女が口を動かす。
「あなたは、哀れね・・・」
「・・・・・・・・・」
アナタハ、アワレネ
「・・・っ・・・!!」
「っうぐ!!」
掴んだまま、スイネちゃんを向こうへ投げ飛ばした。
ぶち、と少しだけ彼女の綺麗な青い髪が、私の力で少しだけ抜けてしまった。
それに触れることすら、今は気持ち悪い。
スイネちゃんが、・・・あんな女が、あんなスイネちゃんが・・・!!
「っスイネちゃんは・・・」
投げ飛ばした、玩具に近付く。
「スイネちゃんは、もう、いないのに」
一歩、一歩。
「なんで、まだ、いるの」
追い詰めてるのは私なはずなのに、息が苦しい。
「今は、あたしのほうが、そばにいるのに」
傷付いている彼女の身体以上に、心が痛い。
「スイネちゃんは、っいつも、そうやって、いつも・・・いいところ、ばかりもっていって・・・!!」
彼女の細い首を掴む。母の時以上に細く、柔らかく、そして弱い首。
けれども、へし折れる自信は、なかった。
「スイネちゃんなんて、っスイネちゃんなんて・・・!!」
「っトキ・・・!!」
「うわああぁぁあああぁぁああああ!!!!!!」
朱鷺と青の奇跡
(叫びにかき消された)
(だいっきらいという最大の拒絶)
※加筆修正有り(2013/06/15)
最終更新:2013年06月15日 10:25