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天河 星の記憶

地下の白い床を踏むのは何時振りだろうか。
所属してはいたが、もうそれだけここには来ていない。
チサトに先に連絡をつけてもらい、更に階下に降りていく。
目当てはもちろん、「過去の記憶」だった。

「…あ、いた!」
「お、来たね、星ちゃん。」
「お久しぶりです、獏也さん!」

「今日、月光君は?」
「亜音さんのとこにいってくるといってました。今回は別行動です。」
笑顔で星は言った。が。
「…私の苦しむ姿、見てほしくないですし。」
と付け加えた。

その心情を察したように、獏也は問う。
「本当にいいのか?記憶が戻ってこれば、君は毎日苦しむことになるだろうに。」
「…それでも、この「左目」を奪った張本人に会って、どれだけ苦しんだか教えてやりたいんです。」
「でもその「左目」があるから…いや、「ないから」、君は能力を使えるんだろう?」
「かまいやしませんよ。私の能力が二つあるの、知ってるでしょう?「重力操作」がなくなっても、やっていけます。」
「ならいいんだけど…。」

獏也は星を個室に連れて行った。
「…本当にいいんだね?」
「…はい。」
「君からは二回、記憶を預かってるわけだけど…。」
「先に預けた方を返してほしいです。完全じゃなくてもかまわないので。」
「…分かった。そこに寝て。」

星がソファに寝転がると、その額に獏也が手を置いた。
「…いくよ。」
獏也が目を閉じる。掌に集中された精神は、空気伝いに星の脳へと移って行った。

と、その直後だ。
「っ!!」
星がかっと眼を開き、起き上がった。
「うあぁ!うっ…う、いやあああ!!」
そのまま左目を包帯越しに抑えて悶えだす。
獏也は慌ててもう一度手を伸ばすが、それを星は制した。

「ば…獏也さんっ…うっ;わ、私は…大丈、夫ですかr…うあっ!」
「何処が大丈夫だ!待ってろ、直ぐに記憶を…。」
「これで…いいんですっ;こ…れでっ…手掛かりが…っ!ああああっ!;」
断りながらももがく星を、獏也は見守るしかなかった。
89%でこの様だ。もし100%記憶が戻ってきていたら、どうなっていたかわからない。
しかし、これも星の強い意志。
自分には何もできないと、獏也は自覚していた。

結局、星が落ちつくまで30分そこらはかかったらしい。
何事もなかったように笑顔を見せて帰ったが、獏也は正直心配していた。
これから毎日、彼女に「悪夢」が付きまとうことになったから…。

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最終更新:2011年03月05日 15:51