アットウィキロゴ

継ぎ接ぎだらけの人形

立ち込める煙と、血の臭い
べったりと赤が張り付いたこの鎌はきっともう使うことができないんだろうな
ガラリとわたしの手のひらから滑り落ちた鎌の音に、
はっとしたように我に返った目の前にいる糸目の少年は、
カラカラな喉を振り絞って声を出した
『きみは…?』
『…あなたは…!?』
少年は、わたしの足元に散らばる骸たちをみて口元を押さえた
きっと、胃から何かが逆流してきているのだと思う
こういう類いのものは、嘔吐を誘うと言うから

わたしにはよくわからないのだけれど

実際、ひとの感情というものを感じたことがないのだから、
仕方がないのかもしれないけれど
『くるしいの…?』
『あなたは…だれだ!』
『わたし…?』
名前のことを聞かれてるのかな。
それとも立場のことを聞かれているのかな?
こういう場合はどう答えたらいいのかしら
『わたしは、ファスネイ・アイズ。“神の子”なの。ホウオウさまの、女神』
『…な…っ』
『きみは、だあれ?』
問いかけ返すと、がたがたと震えた唇から、
微かにケイイチという音が聴こえてきた
けいいち…これが、きみの名前かな

『はじめ、まして?』
『あ…ああ…っ』
『なぜ震えるの?』
『……なんて』
『え?』
『なんて、ひどい…!』

瞼を痙攣さえさせて、液体を垂れ流しているその瞳は、
ガラスのように透き通っていた
『なにが、ひどいの?』
『あなたのこと、知っています。
 以前ホウオウ直属の研究所を爆破したときに…
 人工神に受胎されている状態で』
『そうなんだ』
『あなたの存在意義を、その時に、そばにいた研究員に』
わたしの存在意義。改めて他人に確認させられたことはないな。
わたしの存在意義、それは
『ホウオウの…、慰みもの、だと…!』
『そうだね』
『あなたの意思じゃないはずだ!!』
『イシ…?』
イシってなんだろう。石、医師、縊死…もしかして意思のことだろうか
おかしなことを言う子だな
『わたしの意思はないよ?わたしはホウオウさまの“理想”だもの』
『……っ!?』
その場に崩れ落ちて嘔吐しはじめた“けいいち”を、少しだけ驚いて見つめる
驚く…?驚くって、これが?

『…あなたはまだ、こっちにくることができる』
『え…?』
『あなたはまだ一度も自分の意思で行動していないからだ!!』
『…な』
『こっちと一緒にいこう、間に合うから!さあ!』
差し出された幼い小さな手のひらに、ぐらりと足元が揺れた気がした
…この胸が粟立つ感じは、なに?わたしはこんな感覚はしらない
『…けいいち』
『…!?』
『じかんだから、…またころしにくるね』

はじめてついた、
情報としてしか認識していなかった“ウソ”をついて、
震える喉を押さえつけながら跳躍した
嫌だ嫌だ嫌だ。心拍数上昇。異常事態


継ぎ接ぎだらけの人形

(この異常事態をホウオウ様に報告すると、寝台に縫い付けられた)
(厚い胸板にきつく抱き締められると、
サイレンが鳴り響くようにわたしの頭には“けいいち”という音が響音して、
何故か初めての“嘔吐感”を覚えた)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年03月13日 14:43