白と青と赤と
夕陽を容易に眺められる、高校の屋上。
そのフェンスに身を預け、スザクは夕陽を眺めていた。
「…おや、またいらしてましたか。」
後ろから声がする。
振り向くと、そこには
ノルンが立っていた。
「…またお前か。」
そういうスザクは、微笑んでいた。
「お邪魔でしたか?」
「いや。夕陽を見ていただけだ。」
「…隣、よろしいですか?」
「ああ。」
スザクは、正面から少しずれた。
「…いやぁ、今日の夕陽も綺麗ですね。」
「…ああ。」
他愛もない、意味もない会話。
それでも二人には、待ち焦がれていたもの。
ある意味、施設での経験がなければ、二人はひきあってなかっただろう。
「生物兵器」同然だったからこそ。
数奇な運命がいくつもからみついたからこそ。
今こうやって並んで、夕陽を見られるのだ。
「…あのときは、ありがとうございました。」
「いや、僕もあんな乱暴な方法でしか止められなくて…。」
「ああでもしないと、止まりませんでしたよ。洗脳されていましたから。」
ホウオウを抜ける時、後ろから襲われてノア共々洗脳を受けてしまった。
そして、生物兵器としてそのまま店長達を襲ってしまったのだ。
「完全に油断してました。姉さんには頭もあがりません。」
「仕方ないだろう?不意打ちとはホウオウも汚いぜ。」
「…汚い、でしょうね。」
ノルンは小声で呟いていた。
そもそもノルンは、自分の生きる意味を探すためにホウオウを抜けた。
即ち、完全なる反対ではない。
「親」であるホウオウを悪く言われると、すこしだけ、胸が痛むのだ。
「…あっ、悪い…。」
「いえ、いいんです。僕もあの時は流石に信じられずにいましたから。」
「それで、生きる意味は…?」
「…まだ、かけらも。」
ノルンは眼を伏せた。
スザクにはそれが、あまりにもつらそうに見えたのだ。
元ホウオウ下級幹部。
しかしそのホウオウにも迫害を受けた。
ノアや店長以外に、彼に身寄りはない。
二人がいなくなれば、彼は独りだ。
――まるで、自分みたいじゃないか。
「…ノルン、抱え込まなくていい。」
「え?」
「なんかあったら直ぐ僕に言うんだ。悩みくらい聞いてあげられるし。役に立たないかもしれないけど…。」
「…いいんですか?」
ノルンは驚いたように顔を上げていた。
「当たり前だよ。お前が認めてなくても、僕は「友達」と思ってるから。」
スザクは、笑顔を見せた。
「…じゃあ、一つだけ、いいでしょうか?」
「ん?」
ノルンは、少し恥ずかしがって顔を上げた。
「僕も、スザクさんのこと、「鳥さん」って、呼んでいいですか?」
ノルンはその呼び方に、特別な意味を持たせようとしていた。
やっと見えた希望の光の一つを、確実につかみたかった。
その思いはスザクにも伝わったのだろう。
彼女は答えていた
「勿論だよ。」
最終更新:2011年03月22日 01:21