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現実と非現実

現実と非現実

『「秋山 春美」?』
電話越しに星は訊き返していた。
「ああ。ホウオウの地下牢に収容されている能力者だ。聞いたことあるか?」
『有るも何も、月光の親戚じゃねぇか。』
「は!?マジかよ!」
『春美のことについて聞きたいんだったら、月光と変わるから。私数回あっただけだしよ。』
「ああ、頼む。」

大げさに驚いては見たが、まぁ予想の範疇であった。
昨晩、「切り裂き魔」に頼まれてそれらしい能力者を探したところ、「まだまだ若い」と思しき能力者は極端な話、春美だけだった。
名字が名字だけに星や月光なら知っているかもしれないと、電話をかけた次第だ。
「しかし、親戚だったとはなぁ…。」

『…もしもし?』
「もしもし。星から用件はきいたか?」
『勿論ぜよ。春美殿のことじゃね?』
「ああ。」

『春美殿は、あしの姪にあたるぜよ。あしと違って昔から陰陽師としての能力を発揮できとった。』
月光の生まれは陰陽師。能力者とはまた違い、霊や妖怪に通ずる一族だ。
剣術ばかり鍛えていた月光は陰陽師特有の術を使うことはできないが、霊や妖怪を見ることはできる。
『元々不思議な子じゃとは言われていたぜよ。あしらにも見えないような霊と遊んどった。』
「本人は霊とか全く怖がらなかったってことだね。」
『それどころか、興味を持ち始めて怪談話結構読んどったぜよ。』

成程、道理で一度見回りに行った時、薄暗い地下牢でも平気にしていたわけだ。
というか、霊が見える彼女はあそこをさびしいものだと思っていなかったのではなかろうか。
…考えてたらこちらが気分悪くなってきた。

「…もうひとつ聞きたいんだけど、『切り裂き魔』って、知ってる?」
『切り裂き…?ああ、キリのことがか。』
「キリ?」
『春美の一番の信頼者ぜよ。あれも妖怪なんじゃけど。』
妖怪。道理で禍々しいオーラが漂っていたわけである。

「その妖怪と彼女は何処で知り合ったか知ってる?」
『知り合った、というか…。』
月光が言葉を濁す。気になるのだが、せかすわけにもいかないのでじっと待つ。
やがて、思い切ったように月光が口を開いた。

『キリは…、春美が「能力」で生み出した妖怪じゃ。』

「生み出した…!?」
『春美がしゃべれるようになって、怪談話を読むようになった頃くらいから、妖怪の目撃件数が多くなったんじゃ。それも、話には聞いたことあっても見たことがない妖怪ばかり。』
「それって、もしかして…。」
ここまでくると、彼にも予測がついた。月光はゆっくり言った。
『春美は、先天性の能力で、妖怪を作り出すことができる能力を備えていたんじゃ。』

『作り出すには「本当に本当の話」と前置きをわざと口にし、怪談を一つ語ればいいぜよ。そうすれば、怪談に出てくる妖怪が作り出される。現れる場所は決まってないんじゃけどな。』
「成程…。」
つまり、ホウオウは春美に怪談を語らせ、妖怪をとらえて生物兵器として使おうと思ったのだろう。
『春美殿の能力が封じられても、キリは本来の力が抑えられだけで自由行動ができたはずじゃ。他の妖怪はどうじゃったか覚えとらんけど;』

「ありがとう。また何かあったら連絡するよ。」
『なぁ、春美殿が幽閉されてるとは、本当がか?』
心配そうに月光が尋ねる。
「…ああ。むこうは君に任せるよ。何かしら理由をつけて、しばらく陰陽師一家を落ちつかせておいてほしい。」
『わかったぜよ。でも妖怪に通ずることじゃ。できるだけ、あしや星殿も協力するぜよ。』
「本当に助かるよ。ありがとう。」

電話を切り、空を仰いだ。
少なくともこのことは、エミとウミに知られているだろう。
おまけに依頼主が非現実的な妖怪と来た。
こんな状況下で、自分は小さな女の子をすくい出せるのだろうか?

「…分からない。」
それが、彼に出せる最大の答えだった。

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最終更新:2011年03月22日 21:11