『……子供がこんなところに、こんな時間にくるものじゃないわよ』
『ぶーっ!また子供って言ったなぁ!』
バーには心地のよいクラシックの音楽が流れていて
シックな照明は落ち着いた雰囲気を滲ませている
アダルトなこの場所にそぐわない朱髪な少女はカウンターに座り
アルコールの無いストロベリーカクテルを飲んでいた
『カクテルをストローで飲む時点で十分子供じゃない』
『あれ、これジュースじゃないの?』
『……』
少女…トキコは、カクテルにあるまじきじゅるじゅるという音を立てて
グラス一杯になみなみとつがれたカクテルを飲み干した
『おかわり』
『飲みすぎよ』
『いいじゃん。おいしいんだもんコレ。綺麗な色だし』
『……』
ロゼは、その美しい瞳を少女の瞳に重ね合わせた
ロゼの脳裏に浮かんだのは
そのカクテルと同じ赤い髪を持つ少女だった
『(トキコではない…だとすれば)』
しばらく思案していると
不思議そうにトキコが見つめかえされて
咄嗟に取り繕うための言葉が零れた
『トキコは赤色が好きなの?』
『うん!昔は嫌いだったけど、今は好き』
トキコがこのバーに来るのは今回が初めてではない
彼女と初めて出会ったとき
初対面の人間には無意識に発動してしまいがちな能力は
トキコに対しても例外ではなく
彼女の情報が流れ込んだときには
それこそ吐き気を催した
なんて鮮明な記憶だろうと
ホウオウグループに属していて、
血なまぐさいことに関しては実際に見たり、視たりしていて
この少女が特別でないことぐらいわかる
けれどこの幼さの残る明るい少女の過去は
その存在を疑うほど、今の彼女に結び付くとは思えないほどのものだ
彼女に対する興味は尽きない
『大事な人と同じ色だから』
『だいじなひと?』
『友達…だと思ってた。けど…実は敵でぇ…あれ?でも大事で、あれ?』
『ややこしいのね』
『よくわかんないや。』
『…好きなの?』
『好き?………あー、なるほど』
『何よ』
『そうなのかも。うん。鳥さんは私に…嘘、つかないし』
『(好きの意味理解してるのかしら)』
『おーかーわーりー』
『…はいはい』
新しいストロベリーカクテルを作ろうとボトルを出そうとすると、トキコはなにかを食い入るように見つめていた。
視線をたどると、そこには
一時間前に今は退出されたホウオウ様が注文した
【ブルーアイズブルー】だった
『(ちっ…捨て忘れていたか)』
『それなに?』
『お酒よ。トキコには飲めないわ』
『ロゼ。私ね。もうひとり大切な友達がいるの。鳥さんとはまたちょっと違うんだけど』
『…』
何故だろうか
聞きたくない
トキコの話にはいつだって興味があって
いつだって聞きたくてたまらないはずなのに
何故だろうか、やめろと警告を発してる
『その子は美人なのに可愛くて、好きな人がいて
お人形さんみたいで初めて会ったときはぎこちなかったのに
笑ったり、焦ったり、困ったり、
最近は色んな顔を見せてくれるようになって
…本当に、女の子の"理想"』
やめて
やめて
やめて
『ちょうど、そのお酒みたいな色の瞳と髪をしてる子なの』
ガシャン
『わっ、ロゼ?!大丈夫?!』
『…けが、は、してないわ』
まさか、まさか、まさかそんな
吐き気を催すほどの悪寒
視るのが怖くてトキコの顔を直視できない
…私の知っている"あれ"とは
トキコの"それ"とだいぶ違うような印象を受けたが
この動悸は、なんだ
記憶のカクテル
(まさかまさかまさか)
(考察に考察を重ね)
(私は答えにたどり着く)
最終更新:2011年03月27日 00:39