『ひどい傷ですね…化膿しそうになっているので薬を出します』
スイネちゃんが病院に着いてきてくれた
傷の理由を話したくないとスイネちゃんにお願いして、
誤って山道を滑り落ちてしまったというふうに説明してもらった
いつものように笑えない。
スイネちゃんは、ずっと肩を抱いていてくれた
『トキコ。昨日からなにも食べていないんでしょ。
自販機の野菜スープだけど…
なにか口にしたほうがいいわ』
『…』
『いい子ね』
ぽん、と頭を撫でられてまた胸がざわつく
優しい、優しいスイネちゃん
ロゼに話したように、私の大切な友達
…ほんとうにそれだけ?
『トキコ。少し休まないと…
あなたの家よりわたしのマンションの方が近いわ。
歩ける?』
『うん…』
能力者だから優しくしてくれてる?
いや、違う。スイネちゃんは私が能力者であることを知らない
ならなんで?
数分歩くと、マンションに招き入れられる。
エレベーターで上へ上る
頭が朦朧としていて
階数までは見られなかったけれどそれなりに登った気がする
そのフロアの一番端の部屋に入ると、そこはスイネちゃんの匂いで満たされた、殺風景で生活感のない部屋だった
とても、白い
『ベッドを貸すわ。寝なさい』
『ねぇ、スイネちゃん』
『なに?痛む?』
『…どうしてこんなに優しくしてくれるの?』
『…どうして?』
スイネちゃんは、私の大好きな柔らかい笑みを浮かべて
私の頭を撫でた
『“友達を助けるのに意味はない。”そう教えてくれたのはあなたじゃない』
『スイネちゃ…!』
ああ、そうか
この微笑みは
『う…わあああああん!!』
優しかった頃の、『お母さん』に、にているんだ
。
トキコが眠りについたのを確認すると、携帯電話を握りしめて意識を集中させる
擬似的なもの。こんな能力の使い方はしたことがないから
うまくいくかはわからない
でも、今のトキコに必要なのは
きっと私ではなく
『…スザクさんですか』
《だれ…スイネ?!なんでお前僕の携帯…》
『トキコがうちにいます。はやく来てください』
《…?!トキコに何があったんだ?!》
『説明は後程させていただきます
意識として部屋の場所を飛ばします
…わたしは、別の用事があるもので』
《スイネ、おい、スイ》
電話を切ってトキコの額に触れた
…あの日以来、この能力を使うのは初めてだ
トキコの頭の中に流れる時間を逆行する。
浮かび上がる男の顔
『トキコ、少し待っていて。スザクさんが来てくれるわ』
スイネの双眼が緋と蒼に揺らめき、
彼女は重たい鉄の扉を開け放ち
外へ足を踏み出した
交差する、点と線
(ツキススメ)
最終更新:2011年03月27日 00:52