「もうウスワイアには慣れた?」
「まだ。だから色々見て回ってる」
「そっかー」
そこで会話が途切れ、沈黙が流れる。
と、
シグマが再び言葉を発した。
「なあ、
ミユカ」
「んー?」
「外って、本当に面白い物があるのか?」
「あるけど…どうしたの急に」
「俺、あの森の外に行った事無い」
「そっか…」
ミユカはシグマを見下ろす。
ホウオウグループの都合にで生み出され、捨てられたシグマ。
広い外の世界を知る事なく、只々命を繋ぐ為に生きてきた彼が、外の世界に興味を持つのも無理は無い。
そんな事を思いながら、ミユカは考え込むような表情をし、シグマにこう言った。
「シグたん、一緒に外に行かない?」
「…へ?」
ミユカの口から出てきた突然の言葉に、シグマは驚きを隠せなかった。
「だから、私と一緒に外に行こうよ」
「で、でも俺…まだアースセイバーに入ってないし…」
戦闘能力を持つシグマは、アースセイバーに入る訓練生とはいえ、身分はまだ『ウスワイアに管理されている能力者』。
安易に外に出る事は出来ない。
しかしミユカは―――。
「大丈夫、大丈夫!アースセイバーに入る前に、外の事を色々知っておいたほうがいいと思うし、問題さえ起こさなきゃ怒られないから!」
「ほ、ホントに…大丈夫?」
「私が保証する!」
自信満々に胸を叩くミユカ。
その姿に安心したのか、シグマは笑顔を浮かべた。
「じゃあ、行く!」
「そうこなくっちゃ!」
「お、ミユカにシグマじゃないっすか」
2人に声をかけたのは、アースセイバーの知恵袋的存在の、ナイトメアアナボライザー、シノである。
「あ、百科事典さんに真衣ちゃんだ」
「相変わらず変なあだ名つけるっすねー。気にしてないけど」
「ひゃ、ひゃかじえん…?」
聞き慣れない上に(自分にとって)発音しにくい言葉に戸惑うシグマ。
笑いを堪えながらも、ミユカはシグマに「百科事典」の発音を教える。
「ひゃ、ひゃっか…じてん?」
「そうそう、オッケー」
「シグマも随分元気になったみたいっすね」
「そういえば、シグたんを見つけたのって、百科事典さんだよね」
「そうっすよ。首輪にホウオウグループのマークついてた時はびっくりしたっす」
趣味であるバイク乗りで街を駆け回っていたシノは、森の中に何かがいるのに気づき、入ってみると、骨と皮だけの様な体つきになっていたシグマを見つける。
その時、首輪にホウオウグループのマークがついてるのを見つけ、ホウオウグループに捨てられた能力者である事に気づいたシノは、すぐさまシグマをバイクに乗せ、ウスワイアへ連れて来た。
色々調べた結果、シグマが人間をベースに、様々な動物の遺伝子を組み込まれた生物兵器である事が判明したのだ。
「3日間は何も食べなかったみたいすから、発見が遅れたら餓死してたかもしれないっす」
「……」
「シグたん?」
シグマの様子に疑問を感じるミユカ。
すると、シグマが小声で話し始めた。
「あ、あの……ありがとう…」
「…別にいいっすよ」
シグマのお礼に、シノは笑みを浮べ、シグマの頭を優しく撫でた。
最終更新:2011年03月27日 00:53