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紆余曲折

紆余曲折

「…確認させてくれ。確かお前とクランケは、春美に呼び出されて寺にいったんだよな?」
「そうぜよ。」
「用件は確か、クランケへのお礼だったよな?」
「そうぜよ。」
「…なんか一人増えてる気がするんだが、錯覚じゃないよな?」
「…現実ぜよ。」

閑散としていた天河探偵事務所
クランケが転がり込んでからぎりぎりの生活ながらも楽しくやってきていた。
しかし、何の前触れもなく一人増えるとは聞いていない。
というかこのオーラ、どう考えても…。

「…妖怪だろ?」
「その通りじゃ;」

先まで手入れされた綺麗な黒髪。
エナメルで統一された赤いコートと黒いインナーとズボン。同じく黒のブーツ。
それに相反するように白い肌。抜群のプロポーション。
そこまで聞けばかなり綺麗なお姉さんなのだ。

…赤い目と、大きすぎるマスクを除いては。

「こいつばっかりはきいたことあるぞ。一時期はやった都市伝説とかに出てきた『口裂け女』そのものじゃねぇか。」
「春美は「ミサキ」と呼んでいたぜよ。苦手なものが減っただけで、星殿の知ってる口裂け女と相違ないとおもうぜよ;」
ミサキはとりあえず申し訳なさそうに端の方に座っている。

「…とりあえず説明しろ。なんでミサキがここにいるんだ。」
「話せば長くなるぜよ…;」


春美に呼び出されたのは今朝方のこと。
春美を救出したクランケに、どうしてもお礼がしたいという用件だった。
星だけが事務所に残り、月光とクランケは寺院へ向かった。

陰陽師が集う寺院は他とまるで「世界が違う」。
慣れていないクランケの背筋が、しぜんとのびてくる。
そんなに固くならなくてもいい、と月光は言ったが、格式ある場所なのだろうと自負していると、やはり気がたってしまうのだった。

「お父様―。」
門から顔をのぞかせ、月光が声を上げる。遠くから声が返って来た。
「なんだ、月光か。裏にまわってこい。春美がまっておる。」
月光がクランケを連れてうらにまわると、縁側で何故か師範とキリが碁をうっていた。

「キリ、春美殿は?」
「この奥にいるのでありマス。ここからあがってもよいかと。っと。」
「あーっ!ま、待て!待ってくれ!」
「待ったなしをいい出したのは師範のほうでありマスw」
こいつ本当に悪い妖怪なんだろうか…;





キリに言われた通り、すぐ近くの座敷で春美が待っていた。
「…あ、月光さん!クランケさん!」
「久しぶりじゃな、春美殿。大丈夫がか?」
「はい、平気です。大分落ちついてきました。」
春美は笑顔を見せた。

「あれから、お礼どうしようか悩んだんですよ。」
クランケを見ながら、春美は切り出していた。クランケはあわてて両手を振る。
「いやいや、気を使わなくてもよかったんだよ?いうようにキリに頼まれて助けたんだし。」
「そうは仰いますが、やはり個人的には気になりますので。厚かましい贈り物だと思ってくださってかまいませんからw」

自分の感謝を伝えようとする気持ちは、クランケには十分伝わった。
流石にこれ以上断るのも癪になって来たので、
「じゃあ、気持ちだけでもうれしいけど、受け取るよ。」
と承諾したのだ。


「…で、そのお礼が『妖怪の護衛』だったってことか;」
「春美殿を助けたクランケ殿は、既に妖怪の中では「第二の主」として通っとるらしいんじゃ。ミサキも襲うことはないから安心してほしいと言ってたぜよ。」
「…のわりにクランケ、あの状態だぜ?;」
星が指さした先には、ただでさえ白い印象のあるクランケが完全に燃え尽きて真っ白になったとでも言わんばかりに放心している姿。

「あれを襲ったと言わないでなんという?」
「クランケ殿、実は霊とか妖怪が苦手らしくて、あの一件さえ乗り越えればなんとかなると思ってたらしいんじゃ。」
「…成程な;」

隅にいたミサキが立ち上がり、クランケに近づく。
「あの…大丈夫?もしかして、私いない方がよさそうかしら?」
「あ、いや、大丈夫。はは、あははは…;」
だめだこいつ。早くなんとかしないと。


「それで、星殿のほうは、留守中に何かあったんがか?」
「ああ。例の「異能殺し」が、またうちに来た。」
「旅行以来週1のペースできとるみたいじゃね。今日は何を?」

「娘を捨ててまで追っていた「奴」を、見つけたらしい…。」



追記
「これを機に、少しずつ妖怪になれることにします…。」
「ごめんなさいね。これも「主」の命だから…;」

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最終更新:2011年03月28日 00:58