単純複雑
何もかも、一足遅すぎた。
自分が動き出した頃には、眼の前にトキコもスザクもおらず、アースセイバーにはいって初めて耳に飛び込んだ報告は、スイネの危機だったのだから。
ストラウル跡地には何故か幹久朗の姿はなく、由衣は一人で瓦礫の山に座り込んでいた。
ハヤト曰く、スイネが何者かに襲撃を受け生死の境をさまよっているらしい。
その前にも彼女は過去2回、謎の人物による襲撃を受けていた。
関係あるにしろないにしろ、あんなに明るくふるまっていたスイネは、常に危険と隣り合わせだったという。
「一体…誰がそんなことを…。」
分かるはずのない問いを口にし、由衣は憤りをこらえていた。
と、眼の前を何者かが通り過ぎた。
見たことのある風貌。たしかあれは、隣のクラスのスザクだったか。
髪の色が違う気がするが。
スザクは確か学校を休んでいるはずだ。
ここで走っているということは、怪我や病気ではないらしい。
由衣は彼女を呼びとめていた。
「おい!スザク!何処に行くんだ!」
「!…由衣か。話は後だ。急ぎの用が…。」
「その先、確かウスワイヤあったよな?」
「!」
もどかしそうに足踏みをしていたスザクだったが、やがてこちらに走って向かってきた。
由衣の立場を察したのだろう。
そのまま彼女の手首をつかむと、由衣を引きずるように元の道を走り出した。
「わっ!な、何だよ!」
「だから話は後だ!黙ってついてこい!」
ウスワイヤに向かう足取りが徐々に速まっていく。
今由衣の頭に浮かぶウスワイヤ絡みの出来事と言えば、スイネのことしかでてこなかった。
スイネは自分と同じクラスだ。
隣のスザクと頻繁にあっている様子はないし、特別仲がいいとも思えなかった。
しかし、眼の前の彼女は焦っている。
(スイネを通して何かあった…とか?それとも、アースセイバーの結束が元々強いとか?)
元々頭が悪い上に切羽詰まった状態の頭にはそのくらいしか出てこなかった。
とにかくもたついている暇はないだろう。
由衣は引きずられていた足をなんとか地面と反発させ、スザクについていくように手をひかれたまま走り出した。
最終更新:2011年04月01日 15:51