暖人騒然
夕刻、一瞬何かが寺の横を通り過ぎるのを本を読んでいた春美は感じた。
「ん?」
本から顔を上げ、少しあたりを見回す。
「…キリ君、今寺の外誰か通らなかった?」
「…いや、何も感じなかったのでありマス。」
「そう?おかしいなぁ…。」
春美はそう言いながら立ち上がった。
「気になるからちょっと見てくるよ。危険じゃないだろうし。」
寺の外に顔を出すと、遠くの方に誰かが見えた。
「…なんだ、あの人か…。」
山吹色の髪を揺らしながら急いでいる後ろ姿。
「滅多に見るもの」ではないので、暫くその後ろ姿を眼で追っていた。
「誰かいたのでありマスか?」
後から来たキリも顔を出す。
「うん。女の人が走って通って行ったみたい。」
「しかし、寺の外を通る人…霊とかも含め、結構な人数がいるはずでありマスが、なんであの方だけ?」
「あの人、多分「精神体」だよ。」
「「精神体」というと、本人が死亡した後その当人が強く思っていたことが具現化する、あの…。」
「実際に見るのは初めてだけどね。浄土に行かずに彷徨っている霊とはわけが違うし。」
そう言いながら、春美は道端に出た。
「あの人、かなり穏やかな人だと思うよ。まとっていた空気がそうだった。でも、その人が急いでるってことは、何かあったんじゃないのかな?」
「あの先…確かウスワイヤがあったかと。」
「能力者絡みかな?そう決まったわけじゃないけど。でもただ事ではなさそうね。」
春美は一度寺に戻り、小さな鞄をとって戻って来た。
「追ってみよう。何かあるかもしれない。」
「了解でありマス。」
キリの姿が消えたのを確認し(当然春美には見えるわけだが)、先程女性が走って行った道をたどりだした。
最終更新:2011年04月01日 15:56