氏型環の保健室生活
「先生、この瓶は向こうの棚ですよね?」
「ああ、そこの3段目に入れておいて。」
引き戸を開き、彼女は瓶を仕舞った。
旅行から数日。シドウに自分の体質が「能力」であることを諭され、その使い方を教わった。
その結果能力にオンオフがつき、日常生活に支障がなくなった。
学校で大事故を起こすこともなくなったのだ。
そのまま教室で勉強しててもよかったのだが、過去の経験上人と触れ合うのを苦手とする彼女は保健室登校から始めたのだった。
養護教諭の玉置先生には優しくしてもらい、「遊びに」来るののかちゃんとはいくらか仲良くなった。
彼女自身も玉置先生の仕事を手伝いながら少しずつ勉強している。
「環ちゃん、さっきの棚の2番目から湿布とってくれる?」
「あ、はいー。」
環は立ち上がると、先程の戸棚を開いた。
と、その時。重なっていた湿布がばらばらと落ちてきた。
避ける間もなく頭の上の落ち、そのまま転んでしまった。
「ちょ、大丈夫!?;」
「てて;大丈夫です;」
「しかしなんだ?急に湿布が落ちてきたような気が…。」
「あ、それ私のせいなんです。」
環はてれたように頭をかいた。
「シドウさんに教えてもらったんです。私のは「不幸を呼びこむ能力」じゃなくて「物質に意志を持たせる能力」なんだって。だったら、意志を持った物質が意図的に私を嫌ってたんだと思うんです。」
湿布を整理しながら環は話す。
「なら、私が皆に好かれるようにならないとって。そして、能力を使わないんじゃなくて、うまく使えるようになるんだって。」
彼女の様子を見、玉置先生は思った。
特別頭の悪い子ではない。引きこもりがちだったために色白で細いが、栄養を取った上で体を動かせば中肉中背になると思う。
引きこもる原因は性格にあったと考えるのが妥当なわけだ。
しかし今、彼女は少しながら前を向いている。
このまま流れに乗れば、彼女は普通の学生になれるかもしれない。
彼はそう思いながら湿布を仕舞う環を見ていた。
その環を、扉越しに誰かが覗いているとも知らずに。
最終更新:2011年04月01日 15:57