タカユキは苛立っていた
あれからもう何時間か、待合室で待たされたまま
一向に人の気配はない
不自然なまでに
どうなっている?
爪先を地面に叩きつける音が大きくなっていく。……おとなしく待っているべきだとは思うが
そう思っていた瞬間、バン!と勢いよく診療所のドアが開いた
先ほどあの医者が鍵をかけていたはずなのに、妙だな
そう思ってそちら側を振り向くと
息を切らした朱の髪の少女が、顔を涙で濡らしてそこにいた
『タカさん?!ねぇ、スイネちゃん知らない?!
スイネちゃんは?!』
『てめぇ、なんか知ってんのか』
『いないの!スイネちゃんの部屋でずっと待ってたのに、いなくて…!!いなくて…!!』
ガキィン!と凄まじい音がして、思わず振り返ると
無惨な姿になったドアと
緑髪の少女と幼さの残る少年がそこにいた
『スイネが大変なんだって?』
『大丈夫?!僕が来たときにはまだ手術中だって…』
『手…術…?』
顔を真っ青にさせたトキコが、手術室へと駆けていき
止めようとしたが妙な気配の無さに不信感を募らせていたタカユキは
無言でそれに続いた
『スイネ…スイネちゃん!』
驚異的な破壊力で手術中のランプが光る厚いドアを蹴破り中にはいる少女
続いた三人は、その場の光景を見て唖然とした
『あ…あ…』
手術台にはおびただしいまでの血液。
手のつけられていない手術道具
それが意味するものは
『どこ?!どこなの?!手術中なんじゃないの?!
なんでスイネちゃん、怪我してるの?!』
『トキコ、落ち着け!』
『凪ちゃん、ねぇ、どうして、どこにいっちゃったの?!』
『落ち着いてよトキコさん!
…手分けして探そう。もしかしたら別の病院に
輸送されたのかもしれな…』
『おい!タカユキどこに!』
凪の制止の声も聞かずに病院を飛び出したタカユキ
力無くうなだれたトキコの肩をだく凪は、ギリリと唇を噛んだ
エダは、ゴム手袋をした手を患部にゆっくり沈めていく
シスイの力が流れたスイネの体は、徐々にエダの能力を受け入れ始めた
『…よし、いいぞ!』
『シスイ、もう少しだけ頑張って』
『おお…!』
『術後の拒否反応が心配ね。本来効かない能力を無理に増幅させてるわけだもの』
『それでも、ここで死なせるよりはマシだろ。
……クッソ、ここにこいつの設計者でもいたらよかったんだが』
『……設計者?スイネは人間だぞ!?』
『シスイ!気を乱さないで!』
『
ハヤトどうなってる?!』
『ああよかったスザク!……じゃねぇし。なんで由衣?』
『スイネの容態は?!』
『いや、話を聞けって…』
到着した由衣は、手術室の前に待機していたハヤトに掴みかかる勢いで詰め寄っていた
それに若干押されながらも状況を説明するハヤトだが、
この場にいないスザクが気がかりだった
『スザクは?』
『スザクは…よくわからない。いけなくなったって…』
『あの馬鹿…あいつがいなくちゃ話になんねぇのに』
『スイネの様子は確かに変だったらしい。
けど心当たりはないそうだ』
『そっか…』
『助かりそうか?』
『今必死だよ、みんな』
『ついたね。キリ』
『そうでありマスね』
『中はだいぶ慌ただしいみたい。中に入るのはあまり得策じゃないかも』
『困りましたなぁ…』
《まったくー。迷惑ばっかりかけるんだから》
『え?』
《あれ?》
ウスワイヤの付近に到着したキリと春美は、明るい少女の声を聞いた
しかし、生の声ではなく、浴槽で響くようなエコーのかかった
ある種人間離れしたそんな声を
《わぁ、すごい。見えるひとがいた》
『あなたは?』
『…!』
『キリ!大丈夫。この人敵じゃないよ!』
《そ、そ。ていうかあたしは
あなたたちに直接何もできないし。あはは~》
『で、あなたは?』
《あ、失礼。こん中で死にかけてる子の……姉妹?かな?》
『いや、聞かれてもさ…』
《…思いの外ひとが集まってきてて嬉しいな。
もしかしたらあの子。助かるかもしれない》
『え?』
《あなたの身体を貸して?……みんなで“スイネ”、迎えにいこ?》
そして救済へ
(全員の意識が溶ける)
(彼女の深層のプールへ)
最終更新:2011年04月02日 00:25