「……ああ、やっと見つけました」
思わず、安堵のため息が零れました。
朝、珍しく早くに登校した姉様でしたが、昼前になっても姿を見せないので、心配していました。そこで、昼休憩を使って屋上に来てみたのですが、
「案の定、ここにおられましたのね」
姉様にとってここは憩いの場所。姿がないのなら、必ずここにいると思いました。
床に転がり、どうやらお昼寝の最中のようでした。
(お疲れなのですね……)
何しろ、ここ数日は色々なことがありすぎましたもの、ね。先生方には上手く話して置きますから、今はゆっくりとお休みなさいませ。
―――その時、なぜ無理にでも姉様を起こさなかったのか。
「………やれやれ、何てことですか」
思わずワタシはそう呟いていました。
「まさか、このワタシが『操り返される』とは」
あのシギという男をどう破滅させるか、考え考え道を歩いていた、ついさっきのことでした。ワタシの目に、何かが映ったのです。最初は通行人だと思いました。次に、周りの人間がその人を気にしていないことに気付きました。そして、その人が生きていないことに気付いたのです。そして、その人が能力を持っている事も。
(下手に手を出したばかりに……)
能力者の幽霊など聞いたことが在りません。物珍しさから「マニピュレイト」をかけたのですが……それが失敗。目が合った瞬間に意識が飛び、気が付いたら「跡地」にいました。
おぼろげな記憶に残るのは、どこかの屋上で眠る赤い髪の少女。
「意図はわかりませんが……実に、女は強し、ですねぇ……」
「…………姉様?」
昼休憩の終わりを告げるチャイムがなり、そろそろ授業へ戻ろうと姉様に声をかけ、わたくしはようやく異変に気付きました。
思えば、先ほどから姉様の反応がまるでありません。胸が上下していることから呼吸はしているようですが、肉体的な反応、寝返りを打ったり光に瞼が動いたりなどが、まるでなかったのです。
「姉様、どうなさいましたの?」
軽くゆすって声をかけます。――――答えは、ありません。
どころか、姉様の表情は欠片も動きません。
「姉様……ねえ、さま?」
言い知れぬ恐怖にかられ、激しく揺り動かし……何も、変わりません。
「姉様!? スザク姉様!?」
「………」
姉様は答えてくれません。何、ひとつ。
「姉様、姉様! 目を開けて、返事をしてくださいませ! 姉様、答えて!!」
思わず抱き上げ―――その温かさに一瞬安堵し、直後、その重さに、その感覚に戦慄しました。
―――心が。
「――――ッ!!」
瞬間、全てが真っ白に――――
「綾音姉様ぁぁぁぁぁっ!!!」
朱雀が墜ちた日
(羽ばたく力を)
(飛ぶべき空を)
(なくした鳥は、墜ちて行く)
最終更新:2011年04月03日 16:39