気分転換
「はぁ!?店長が休み!?」
素っ頓狂な声を由衣はあげていた。
「疲れがたまって寝込んでしまったんです。状態は悪くはないんですけどね。」
「店は好きにしていいって言ってた。どうする?今日は閉めておくか?」
由衣は少し考えたが、すぐに首を横に振った。
「うちは年中無休も売りの一つなんだろ?この期に及んで休めるか!」
そう言うと由衣は店の鍵を開け、「close」の札をひっくり返した。
「今日は忙しくなるぜ!」
薄い色の天井を見上げていた亜音は、頭まですっぽりと毛布に埋もれた。
目より上までを毛布から出し、きょろきょろとあたりを見回した。
「タマキ」に核心を突かれ、動揺してしまった自分は、その後の仕事に手が回らなかった。
このままでは皆に迷惑をかけると思い、勝手ながら休んで部屋に籠っていた。
『人と付き合えば自分は傷付く、だから他人と自分とに一線を置いて接触を極力拒む。
他人がずけずけと自分の中に入って、壊されないようにする為に。』
「…まったくもってその通りだよ。」
ため息交じりに呟いた。
あんたは何も知らないなんて反抗したけど、全く持って逆だ。
長年の付き合いだ。タマキ…玉置が自分のことをこれっぽっちも知らないわけがなかった。
タマキだったからあんな言い方されたものの、言われなくてもすぐに崩れていたことだろう。
「かといってもうすこし優しい言い方できなかったのかね…。」
人間不信。
たったそれだけだが、店を営む彼女にとっては大きな障害となった。
笑って相談を受けて、アドバイスをしていた自分が、どういう人間だったのかさえ思い出せない。
「っはぁ…。」
スランプならいっそその方が楽だろうなと、思った。
「今ウスワイヤ行ったら迷惑よね…。」
ふと、そんな考えが頭をよぎった。
ずっと店に籠りっぱなしだったのだ。いい加減外に赴いた方がいいかもしれない。
「気分転換も兼ねて、ちょっとごたごたの整理の手伝いに行ってくるか。」
布団から出、着替えるとかるく靴をつっかけてウスワイヤに向かった。
最終更新:2011年04月06日 14:33