「・・・んー、こないなぁ・・・
まぁ、流石に一日ですぐ来るわけないよな・・・うん。」
こうやって何度も携帯画面を見つめては落胆する。
こんな気持ちになるなんて初恋をした時以来だと、俺は思いながら、
いかせのごれを歩き回っていた。
今日はロビンさんの付き添いとしてウスワイヤに来てたんだけど、
別件の方で慌しく、まともに情報交換出来るような雰囲気ではなかった。
ロビンさんはロビーのソファに座りながら、
「僕なら待てるから、アルト君先戻ってて良いよ。」
と俺に告げるや否や、携帯を取り出して電話をかけていた。
・・・多分、その内奥さんと繋がって惚気出すと思うから、俺はその言葉に素直に従って、
一足先にホテルに戻ることにした。
そういうわけで今俺はホテルへと向かっているんだが、
実は昨日スザクちゃんにあれを渡して以来、ずっと携帯を弄りっぱなしだ。
もちろんこれからのことについて話したい、というのもあるんだが、
あんまりゆっくりしていられないからでもある。
「・・・はぁ、タイムリミットまで、後・・・何日だったかな。」
タイムリミット、それは俺達が仕事を終えて
カルーアトラズ刑務所に戻るまでの期日。
その期間は約一週間、仕事が早く終われば早く戻れるが、
何か滞って仕事がもし遅れてしまっても、別のチームが派遣、そして交換される為、
猶予は一週間しかない。
それが何を意味しているのか、といえばトキコちゃんのことだ。
恐らくシギは仕事が終わるまでにトキコちゃんが決められなかったら、
連れて行くつもりだ。カルーアトラズへ。
カルーアトラズ刑務所に収容するわけではない、おそらく、家庭の事情と偽って
彼女と彼女の友達と引き離す為だろう。
シギが望むのはきっと、『
ホウオウグループ』としてのトキコちゃん。
その方が犠牲が少ないし、何より余計な事を考えずに身を流すことが出来る。
・・・そう、トキコちゃんにとってホウオウはもう切っても切り離せない存在にある。
「・・・そこが問題なんだよな。」
今のトキコちゃんにとってホウオウを裏切るという行為は、
まさしく『死』を意味する。
仮に誰かがトキコちゃんを諭してホウオウグループから抜かしてしまえばどうなる?
その時トキコちゃんは一時的な感情で判断してしまうかもしれない、
けど・・・やがては自分の行いを悔い始めるだろう、そして裏切り者のレッテルを
背負いながら、彼女は再びホウオウと対峙しなければならない。
その時、彼女は自我を保てるか?・・・出来るわけないよな、
絶望の淵から救い、彼女を解放し、今この場を与えた男の存在はまさしく、
救世主に等しい。その人を裏切る、とはどれほど罪深く、そして身勝手な行いか。
だからシギは、トキコちゃんに決断を迫った。
『ホウオウ』か、『ホウオウグループに害する友人達』を。
「・・・まぁ、それとシギの暴力は関係無いけどな。」
しかしよく考えてみれば結果としては、娘の意志を尊重・・・はしているし、
何より彼女の為を思って行っている行為になるだろう。
そんなことシギに言ったら警棒でしこたま殴られるけど。
思うに、あの親子は無意識が多いんだよなぁ・・・自分が意識してなくても本当は、と
言うのだろうか。
トキコちゃんは母を嫌いながらもどこか母の温もりを求める。
シギは娘を嫌いながらもどこか彼女を護ろうとする。
長らく付き合ってなきゃ、そういう違いが分からないよなぁ・・・
なんて感傷に浸るけど、実際トキコちゃんが、シギがそう思ってるかと言われれば、
単なる憶測だ。
でもあの親子は親子だ、似てるとこたくさんあるし。子供っぽいとことか。
ふと、俺は腕時計に目を遣った。
まだ時間はある。
「・・・スザクちゃんを探しに行くか。」
もしかしたら、あの時のように偶然に会えるかもしれない。
そんなことを思いながら、しばらく一人で歩いていた。
すると、向こうからバタバタと誰かが駆けてくる。
女の子が、女の子を抱えてる。
(なんかシュール。)
特に深い意味はなくそんなことを考え、彼女達の横を通り過ぎようとした。
(・・・ん?)
雪のような真っ白い髪をした少女。
どこか最近見たような気がする。
そしてそのまま彼女達は通り過ぎていった。
ちらり、と見えた赤い髪。
どこか、最近見たような気がする。
「・・・・・・っまさか!?」
人違いであって欲しい。
まさか、今抱えられていた少女が昨日自分が希望を託した少女だなんて。
そんな嫌な偶然起こすなよ、なぁ神様!?
或る男、走る
(冷静さを欠いた男は)
(彼女の妹の背を追った)
最終更新:2011年04月06日 14:37