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個人特訓

個人特訓

ぐっと廃ビルの瓦礫を踏みしめ、由衣はもう一度あたりを見回した。
先日のスイネの件でなんだかいつもより疲れたのもあったが、いつもの調子が出ないような気がしていた。
今日も何故かスザクの姿を見なかった。
まぁ、昨日の様子もあるし、風邪はひいていないだろう。

「…っかしいな、今日も来てないのかよ?」
いつもなら来ている男の姿を、ここ数日見ていない。
アースセイバーにはいったのだから態々ここで特訓する必要はないが、報告だけでも入れようと思い、学校の帰りにはここにきている。
「しゃーねーな。一人でやってるか。」

帰り道で拾ったポイ捨ての空き缶を数個、適当な位置に並べる。
「今日はこれ、つかってみるか。」
鞄を開け、中から小さな袋を取り出す。
中を開くとそこには、黒い粉が入っていた。
少し手にとり、掌に神経を集中させる。

砂鉄が黒い粉…火薬を包み込んで形を成す。
出来上がったのは拳銃だった。小型のものだが、完成度に申し分はないだろう。
「…でも、見たことあるけど撃ったことないんだよなぁ;」
出来上がった銃を見ながら、由衣は呟いた。

両手でしっかりと握り、正面にある缶に銃口を向ける。
変に力が入りながらも、その引き金を引いた。

大きな音とともに由衣の上体が反り返る。
「ってぇ!;」
尻もちをついた由衣は震える両手を見た。
(甘く見てた…。大きいものになると屈強な男でも肩が飛ぶと言うが、ここまで衝撃が強いとは…;)
正面を見る。狙っていた缶は微動だにしていなかった。

「…これ、危ないだろうなぁ;命中率も保証できないし…。」
拳銃が形を変える。小さなカプセルに変わると、由衣はそれを元の袋に収めた。
「拳銃が駄目だったら何があるんだろ?」
威力もスピードも申し分ないが、今の由衣には早すぎる。
かといって街中の戦闘であの鉄柱を振りまわすわけにもいかない。

「…今度聖さんあたりにでも訊いてみるかな。」
由衣は立ち上がり、指を缶に向けた。
指先に砂鉄が集まり、一気に缶に向かって放たれた。

軽快な音を立てて缶に突き刺さったのは、3本の針。
しかし、先端部分だけで貫通はできていなかった。
「こっちは威力がない…か;あーあ、うまくいかねえな;」

不良だった当時の感覚だけではなんとかならないのは分かっていた。
しかし、ここまで行き詰るのも予想外だった。
今まで一人でやって来たせいだろうか。
とにかくここまで強さを求めることを今までしなかった。
勿論、能力者としての話だが。

「…やっぱ帰るか。一人じゃすすまねぇや。」
並べていた缶を集めると、由衣は鞄を拾い上げた。
砂埃を払い、レストランへと向かった。

「…そういや幹久朗さん、能力者っつってたけど、能力使ったところ見たことないな…。なんでだろ?」

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最終更新:2011年04月12日 23:33