「……あれ?」
「? 姉様?」
目を覚ましてからしばらく、ランカ達と一緒に近況(と言ってもここ数日のことだけど)について話をしていた僕は、ふと、あることに気付いた。
母さんから聞かされた今のトキコと、こうなる前の自分。共通して、何か矛盾しているような気がした。
(強さと、弱さ……あれ、ん、うわっ)
確信した。何だ、そりゃ矛盾もいいところだ。歪んで当然だ。
「おい、スザク? どうした」
怪訝そうなゲンブの声に我に返り、思わず頭を押さえつつ言う。
「………ようやっと気付いた。馬鹿だろ、僕」
「は?」
「いや、こうなる前の僕の話。こうなる前、僕はどういう存在だった?」
何かを言おうとしたゲンブを遮るように、マナが全くいつもの調子で言う。
「弱さを振り切ったつもりで、縛られたまま。だから弱さを殺して、強さだけになった。そんな存在だった」
「そう、それだ。その認識からして、そもそも間違ってたんだ」
「え、えと……どういう、ことかな、綾ちゃん」
「つまり、だ」
僕が気付いた矛盾というのは、
「『強さ』と『弱さ』っていうのは互いの対義語だろ? どっちかを殺したら、バランス取れなくなるじゃないか」
「! それは、確かに」
「??」
「……なるほど。歪むのも当然、か」
ランカだけ理解できていないようだ。それでもいいんだけど、この場で置き去りにするのはちょっと気がとがめた。それを察したかのように、ゲンブが代わりに口を開く。
「人間の心というものは、強さと弱さが混じり合って出来ている。その片方を無理に外す、殺すのは、言ってみれば柱時計から振り子を外すようなものだ」
「え、それって」
「ああ。振り子をなくしても時計は動くが、大体狂う。心も同じだ。無理に弱さを、あるいは強さを殺せば、そこから歪みが生じる」
「更に言えば、スザクの言うとおり二つの言葉は互いの対義語。裏を返せば、それぞれがお互いを定義しているということ。だから、片方がなくなれば」
「! そっか、強さ、弱さっていう定義自体から外れちゃうんだ」
マナの言葉でようやくランカにも得心が言ったらしく、そっかぁ、と頷く。
「強さあってこその弱さ、弱さあってこその強さ。だから、それを無理に分けてた前の僕は、酷く歪んでた」
分かれてしまえば、それは方向性の違う歪みでしかない。それに気付かず、使い分けて(いるつもりで)いたんだから、そりゃ歪んで当然だ。
「歪みで歪みを正そうとして、余計状況は悪くなる一方。だから、僕は一つに戻る決断をした」
「結果がそれか。確かに、今までより落ちついて見えるぞ」
「それはどうも」
かすかに頷いた所で、
(あっ)
視界にアオイが入った所で唐突に思いだした。そうだ、そういえば。
「…………ああ、ところでゲンブ?」
「なんだ?」
「旅行の件なんだけど」
唐突にゲンブが固まった。
「…………な、なんのこと、だ?」
「後で話があるから、ヨ・ロ・シ・ク♪」
目覚めて早々に何だけど……「出歯亀」呼ばわりで済むと思ったら大間違いだ。誰の何を見ようとしたのか、たっぷりと思い知らせてやる。
「姉様、お手伝いしますわ」
アオイもいそいそと近づき、そう言う。――――何で知ってるのかはまあいい。多分マナだろう。
視線を向けると、くすりと笑った。やっぱりそうらしい。
「ま、待て、お前たち」
「いやあ、それは難しいな。なあ、アオイ?」
「ええ、そろそろ限界ですもの。ねぇ、スザク姉様?」
『フフフフフ……』
「???(妙な迫力の二人に首を傾げる)」
「………(予想通りの展開にため息をつく)」
「………(末路を予想して冷や汗)」
―――――合掌。
火波姉妹、「後片付け」をする
(例え朱鷺が忘れても)
(朱雀は決して忘れない)
(未遂で済んでも報いは与える)
というわけで、ゲンブの災難でした(ぇ
最終更新:2011年04月12日 23:33