『過去(むかし)の僕と現在(いま)の僕』
「おーい、ユズキー」
「……」
「また目開けて寝てんのかよッ!」
ある学校の日の昼下がり、睡眠中だった僕は、友人の由衣に叩き起こされた。
せっかくのお昼寝タイムを…
「…何の用?」
「用っていうか、話に来たんだけど」
「じゃあ寝る」
「寝るなッ!」
またしても叩かれた。
「前から聞きたかったんだけどさ」
「何?」
「
ユズキって、昔どんな感じだった?」
「どんなって…今とあんま変わんないけど…あ、でも」
「でも?」
「友達、1人もいなかった」
すると僕の言葉に由衣は目を丸くして言った。
「…意外」
「あれ、そうなの?」
僕的には、逆にそう思われてそうだけど。
まあ、今は
ケイイチ達とも仲良いけどね。
「そりゃあ、お前は自己中に見えるけど、友達の事第一に考えてるじゃん」
自己中は余計だよ。
「何て言うかさ、馴染めなかったんだよね。こういうキャラだから」
自分が興味無いものには一切関わらない。
いつも同じ様な表情を浮かべている顔。
不思議な雰囲気。
だから周りとは全くと言ってもいいほど相成れなかった。
「でも今は違うじゃん」
「今と昔は違うよ。第一この学校、僕以外にもクセのある奴いっぱいいるし」
「まあな…」
でも周りに馴染めなかったのはもうひとつ理由がある。
それは僕の周りにいた大人達。
そして僕が
トモコ先生以外の教師達が嫌いな理由でもある。
まず両親。
両親はいつも夜遅くまで働いていた。
学校行事には一度も来てくれなかったくらいだ。
なのに僕を見れば「宿題はしたのか」とか、「ちゃんと友達作れてるか」とか聞いてくる。
ふざけるなって思った。
親らしいこと何一つもしてない癖に、そんな事言われる筋合いはない。
生活費を稼ぐ為に働いてるだけで、自分の子供の事を理解しない両親が、僕は嫌いだった。
次に教師。
僕が中学生になった時、周りにいた教師達は僕に対していつもああしろ、こうしろと言ってくる。
あいつらにとって、いつも不真面目なツラで興味のない物には関与しない僕が問題児に見えてたんだろう。
だからって何だ?
不真面目なのもお前らがそう決めつけてるだけで、興味のない物に関わらないのを注意するのだって、都合の良いようにさせたいからだろ?
だから僕は両親が嫌いになった。
だから僕は教師が嫌いになった。
だから僕は―――大人が嫌いになった。
当時は、大人以外で僕の事を理解してくれる奴なんていなかったから、心の色は白そのもの。
まっさらな、何も描かれていない、キャンパスやスケッチブックと同じ、白。
たがら、その白を何かで埋めたくて、いつも絵を描いていた。
そして、不思議な力で描いたそれを―――『産み出していた』。
この力が身に付いたのは、小学校の頃。
いつもの様に絵を描いていると、突然、描いたものと同じものが現実に現れた。
最初は驚いたけど、これは神様からの贈り物だと、その頃の僕はそう思った。
それからは楽しかった。
誰かと遊びたくなると、動物や自分が考えた生き物を描いて遊んだし、何か欲しいなと思ったら、それを描いて手にいれた。
描いた絵を消せば、現実に現れたものも消えるから、誰にも気づかれなかった。
でも、心の色は白いまま。
楽しい筈なのに。
寂しくない筈なのに。
変わらなかった。
そして―――僕は高校生になった。
自分のキャラもあって、僕は落ちこぼれ学校でもあるいかせのごれ高等学校に入学した。
両親のがっかりした表情に、苛立ちを感じたのも今もはっきり覚えている。
今までとあまり変わらない生活―――の筈だった。
―――おうお前、名前何て言うんじゃ?
―――あ、ごめん。てっきり女の子かと思ってたよ。
―――これから一緒のクラスだね、よろしくね。
―――なあ、俺らバンドやってんだけど見にこねえか?
―――へー、あんた絵うまいじゃん
僕の周りに、いない筈の人達。
『友達』が、集まり始めた。
その時、気づいた。
僕の心の白が、色で、絵で、埋まっていく。
白く、無くなっていく。
そしてようやく分かった。
絵が産み出した現実は、確かに僕を楽しくさせてくれた。
でもそれは僕の『願望』という幻想にしか過ぎなくて。
僕の『理想』を形にしただけで。
僕の心の白を無くすことは出来なかったんだ。
皆という形だけじゃない、僕を理解してくれる『存在』が。
僕の心を色んな色や絵で埋め尽くしてくれた。
だから皆と接する興味も湧いた。
だからあの時―――由衣に話しかけたんだ。
僕の心の色や絵を分けてあげたくて。
「ユズキ?」
「あ、ごめん。昔の事考えてた」
「昔?」
「うん」
そう、これは。
過去(むかし)の僕から現在(いま)の僕になるときの、絵物語。
最終更新:2011年04月26日 21:42