「先生、頼んどいたテーピングと冷却スプレー取りに来ましたー。」
昼休み、ガラガラガラと保健室の扉が開いた。
「こっちの棚の中にあるから持って行ってくれて構いませんよ。」
養護教諭の玉置先生に頼んでおいた部活用の品を取りに来たショウゴ。
「ん?先生、その子は?」
「ああ、この子はシガタさんです、2年生ですよ。」
「ふーん、よろしく。」
「えっと、あの、どうも・・・」
笑いながらショウゴは言ったが、ゴツいショウゴに少しオドオドするシガタ。
「ショウゴ。分かってるとは思うけど」
「勧誘はしませんよ先生。流石に僕でも空気は読みますって。」
「・・・?」
「ショウゴ君は柔道部の部長なんです。
いろんな人に部活に入らないかーって誘ってるんですよ。」
「まぁまぁ先生、それはそれ、これはこれですよ。」
「そうですね。あぁ、そういえば前に行ったテーピング講座、役に立ってます?」
「ええ、まあ。」
「目をそらすな。なんだ、ちゃんとしてないんですか?」
「動きづらいからっつって皆独自のアレンジ加えてますね。」
「それじゃ意味ない…ん?」
玉置先生の横を通り過ぎようとしたその時、目がすうっと細くなった。
「・・・どうしたんすか先生。なんで俺を睨んでるんですか?」
言った瞬間に拳骨を食らったショウゴ。思わず蹲る。
「~~~~!~~~ッ~~~~~!」
「腰のモンは何だバカタレ。」
「イタタ・・・おもちゃですよおもちゃ、誰かさんみたいに実銃振り回してないだけましじゃないですか・・・
それに制服の下に隠してるのに良くわかりましたね・・・」
「喧嘩売ってんのか?腰の膨らみなんざ、見る奴が見ればすぐ分かるぞ。ほら出せ。」
「いや勘弁して下さいよ・・・。」
「そのテーピングでグルグル巻きにされたいのか。あ?」
(完全に裏に入ってるよー、誰か助けてくれー!)
その時、ガラガラガラと扉を開けて一人の女の子が入ってきた。
「あれっ?先輩だー。」
「ん?ああ、ののかさんか。」
「どーしたのたまちゃん先生?」
「ショウゴ君が腰に変なものを持っているので叱ってたところです。ののかさんはどうしたんですか?」
「マサムネと遊びに来たよー!先輩、腰に何持ってるの?」
そろりそろりと保健室から出ようとしていたところをののかに見つかったショウゴ。
「へ?い、いや別に何も・・・」
「待てショウゴ。・・・今日は夕方に皆で飯でも食いに行きましょうか。その時までこれは没収。」
玉置先生の手にはモデルガン二丁が。
「げっ、いつの間に・・・。」
そんなこんなで来た場所は…
「いらっしゃい。」
レストランだった。
「やぁ。」
「おや、珍しいね。・・・見かけない顔もいるようだけど。」
「コイツにちょっと説教と話し合いをしようと思ったんで。」
「生徒とこんなとこに来ていいの?まぁ、私は良いけどね。」
笑いながら水を差し出す店長。
「今日は魚のいいのが入ってるから、お薦めは煮付けと刺身のセットかな。
通常メニューの方も今日は材料が残ってるよ?」
「んじゃお薦め3セット。」
「早っ!僕らの意見は無視ですか先生っ!?」
「うるせぇ。あ、ののかさんはパフェも?」
「食べるー!」
「セット3にパフェね。・・・環ちゃん、調子いいみたいで何よりだわ。」
玉置先生説教中・・・。・・・? *****
「おまちどうさまー!」
「ああ、ありがとうございます。」
「途中から動物談議にかわってましたね・・・。」
ののかちゃんのおかげで論点がずれていった結果である。
カランコロン
「あー!たまちゃんだ!それにぶちょーさんも!」
「あれ、本当だ。それにののか達も。珍しいメンバーだな。」
「席空いてるか・・・?」
トキコ、スザク、
シスイの三人がやってきた。
トキコに合うのはアレ以降久々だったが、既にショウゴの中では一つの結論が出ていた。
(・・・あの時の事は一旦忘れておこう。)
「やぁ。三人で遊びにでも行ってたのかい?」
「えへへー!楽しかったよー?」
「ショウゴ、どうして君はここに?」
「いや、先生が飯おごってくれるってんでついてきたんだよ。」
「わたしもー!」
「ちょっと待て、ショウゴ。俺はお前に説教するために来たんであって、おごるなんて一言も」
「僕らお金持ってきてないですよ。」
「ごめんタマちゃん、今度お菓子持ってくるから!」
「あ、あの・・・私は持ってますけど…その」
「諦めなさいよセ・ン・セ・イ。」
ポンと手を置く店長。
「ショウゴ。明日道場に顔出す。」
ショウゴの顔がちょっと引き攣る。軍隊仕込みの格闘技でフルボッコにされるのは勘弁である。
それ以前に・・・。
「あっ、トキコちゃん!この前ぶち抜いた畳と壁何とかしてくれよ!」
「あっかんべー」
「えっ・・・トキコ道場で何したんだ?」
「ないしょー!明日みんなで道場に遊びにいこー!」
そんなこんなで、皆ご飯を食べ終わり帰路に着く。
玉置先生と別れ、トキコと別れ、ののかと別れ、環と別れ・・・ストラウル跡地付近の住宅街を歩く3人。
角を曲がった直後、それまで笑い合っていた皆の顔に緊張が走る。
「クソッ、どういう事だ!?」
「
パニッシャー・・・こんな所で!」
シスイとスザクが身構えた。10体前後のパニッシャーと、ライダースーツにメット
―ショウゴを除く3人はすぐに気付いたが、バトルドレスである―を来た人間が1人、
暗闇から現れた。
朱雀とシスイが歯ぎしりする。ここはまばらではあるが住宅がいくつかある。
不用意に暴れれば二次被害は避けられない。
しかし。
「おい、俺があいつらを川まで吹き飛ばすからよろしくな。」
幸い、数100メートル先には河川敷が広がっていた。あそこなら、まだかろうじて周りへの被害が軽く済む。
シスイやスザクが何か言おうとしたが、それ以前にショウゴは動いた。裾へ手を伸ばし、
モデルガンを持ち上げ、銃身を水平に持ち上げ連射を開始するまでに1秒掛からなかった。
しかも前へ走りながらの動作である。
「ショウゴ!無茶するな!」
スザクが叫んだが、ショウゴの耳には届いていなかった。
そもそもスザク達はSAAを構えるショウゴに驚いていたのだ。
(あれはおもちゃのはずじゃ?どうするつもり・・・え!?)
圧縮した空気の弾をバラ撒き、パニッシャーもBDの1人も暴風で真っ直ぐ河川敷まで吹き飛ばす。
更に河川敷まで走るショウゴ。
「こいつらが例のグループか!成程確かに厄介だな!」
後ろからスザクとシスイが追いつく。
「ショウゴ!流石に一般人の君がこれ以上無茶しちゃいけない!どういう弾を
使ったのか知らないけど、その改造モデルガンで戦い続けられないだろう!?」
「僕達に任せてください!」
「よーしなら前は任せた、後方支援に回る!」
ショウゴが立ち止まり、堤防の上で片膝立ちでコルトパイソンを構える。
その間にシスイとスザクはパニッシャーとBDへと肉薄した。
マシンガンを龍義鏡で跳ね返し、爆風による攻撃の為に
パニッシャーがグレネード弾に切り替えようとした、その一瞬の隙に
装甲の薄い所へと刃を突き刺すスザク。
一方シスイはかなり低い姿勢で走り、パニッシャーのマシンガンの
弾幕をかいくぐると足を払ってひっくり返し、同士討ちを狙って無理矢理マシンガンをひねる。
二人の攻撃圏内から逃れ、距離を取ろうとしているパニッシャーには、
ショウゴのコルトパイソンから撃ち出された、パチンコ玉を削って作られた特製弾丸が雨あられと降り注ぐ。
みるみるうちにパニッシャーの数が減らされていく。
最後の2体がシスイとスザクに潰される頃にはBDを来た者が逃げようとしていた。
「逃がすかよっ!」
BDを着ていた男は、ショウゴへ真っ直ぐ走ってきた。弾丸を込める前に
接近してきたのは、ショウゴが遠距離戦型だと思ったからだろう。
「甘い!」
ナイフを瞬時に抜き、突くようにして斬りかかってきたBDの男に対して、
ショウゴはモデルガンを地面に落とし相手の腕を流れるように掴むと投げ飛ばした。
勿論トドメに関節をキメて動けなくする。どんなに力が強かろうが、
人間である以上構造的に関節を極められたら成す術は無いからだ。
「よーし、一件落着だな!」
しかし、そう言った瞬間BDを着た男のヘルメットの中でくぐもった爆発音がし、血がダバダバと流れてきた。
「うわっ・・・自殺か!?」
「捕まるよりかって事か、それとも洗脳されていて捨てられたか・・・クソッ」
ショウゴは土手に大の字になって倒れ、夜空を見上げた。
「なんつーこった・・・ったく。」
「成程・・・あのアナボライザー、そこそこやりますね。しかしその辺のチンピラを
BDに詰め込んだのは失敗でしたか…。いや、しかし貴重な戦力を割く訳にもいきませんから、まぁ良しとしましょうか」
遠くの橋の上で見物をしていたメイド服の男と女、そして子供。踵を返すと、首謀者は夜の闇に消えていった。
シスイはアースセイバーに電話をした後、ショウゴに疑問をぶつけた。
「先輩。・・・もしかして先輩はアナボライザーですか?」
「あの、一度死んだ者が蘇ってうんたらかんたら、ってあれか?ハハッ、今回の俺の戦い見たろ?
ただの改造モデルガンを使った戦法さ。」
「そうなんですけど・・・なんか引っ掛かってるんですよね、なんだろう・・・?」
スザクは土手の反対側で敵や報道陣など誰か来ないか見張っている。よってそこにはシスイとショウゴしかいなかった。
本当は玉置先生がいたらすぐに解決することだったが、シスイが気付く事は無かった。
「まぁ・・・先輩が違うってんならそうなんですかね?うーん・・・。」
「んじゃ俺はそろそろ帰るわ。どうせこの後アースセイバーが来て色々やるんだろ?
邪魔にならないようにとっとと退散するよ。またなんかあったら呼んでくれ、多少の助けにゃなれるはずだから。」
結局気付いてはいなかったが、シスイの言葉にショウゴが『否定』をする事は無かった。
そしてシスイの違和感の正体・・・それは、空気弾を撃っていた時の『リロード』。
ショウゴの能力では、圧縮した空気弾ならばリロードの動作無しで撃つ事が出来る。そのためリロードの動作が無かった。
シスイはその動作が無かった事に違和感を感じていたのである。
しかし、彼はそれには気付かなかった。
そうしてまた、ショウゴはアースセイバーに気付かれること無く一難を逃れた。
- いや、本当に難を逃れたのだろうか。もしかしたら彼は更なる深みに嵌ってしまったのかもしれなかった。
最終更新:2011年04月26日 21:46