アットウィキロゴ

『蛇が蛇になった日1』

『蛇が蛇になった日』

「あー、疲れた」

アースセイバー独立隊員でありながら、いかせのごれ高校に通う能力者、ミユカ。
現在、彼女はとあるアパートで暮らしている。

「ご飯つくろ…」

夕飯を作る為に台所に向かおうとした時、ミユカの目にある物が止まる。

「…お父さん、お母さん…」

ミユカの視線の先にある、二人の男女と幼い少女の写真。
白髪の優男の様な外見の男性は、明るくて真っ直ぐな笑顔をこちらに向けている。
その隣にいる、紫の瞳の女性は優しい微笑みを浮かべていた。
そして―――男性と同じ白い髪と女性と同じ紫の瞳を持ち、幸せいっぱいに笑っている少女は、男性と女性の手を繋いでいる。
幼少期のミユカと、今は亡き彼女の両親である。
幸せそうに写っている自分と両親の写真を手に取り、ミユカは両親が死に、自身がナイトメアアナボライザーになった『あの時』を思い出していた。


「キシシシッ!もう登れないのー?」
ミユカちゃんが凄すぎるんだよぉ」
「そうだそうだ!ずるいぞ!」

とある空き地で、3人の子供が木に登って遊んでいた。
2人の少女の内の1人は、白い髪を上に一つ結びにしており、紫の瞳には好奇心の色が浮んでいる。
この少女こそ、幼い頃のミユカである。

「ねぇ、暗くなるからそろそろ帰ろうよ」
「そうだね、もう空からお日様が無くなっちゃうしね」

東の空が藍色に、西の空が緋色に染まっていく。
ミユカはかなりの高さまで登っていたが、臆する事も無く地面に飛び降りた。
ミユカに続いて、他の2人も木から降りる。

「ミユカ!今度こそ俺が一番高い所まで登るからなっ」
「よっちゃんには無理だよ、キシシシシッ」
「何ーッ!」
「ふ、二人とも喧嘩しちゃ駄目だよ…」

ミユカとよっちゃんと呼ばれた少年、ヨウヘイの間で、いかにもおとなしそうな少女が、困った様に目配せする。

「とにかく!ぜってー負けねーからな!」

捨て台詞を言って、ヨウヘイは猛ダッシュでその場を去って行った。

「そう言って、7回連続私に負けてるくせに。ねぇユリッペ」
「あははは…」

ミユカの口から出た明らかな勝敗成績に、ユリッペと呼ばれた少女、ユリエは苦笑する。

「じゃあミユカちゃん、また明日ね」
「うん、ばいばーい」

ミユカとユリエは互いに手を振って別れた。
そこでミユカが思い出したように声を上げる。

「そういえば、お母さんが今日ビーフシチュー作るって言ってたっけ。早くかーえろ♪」

鼻歌混じりにミユカは帰路を走っていった。

「ただいまー!」

勢いよくドアを開け、リビングに駆けつけるミユカ。
そこには、自分と同じ紫の瞳を持つ女性―――ミユカの母アミがおり、テーブルに料理を並べていた。

「あら、お帰り。ちょうどご飯が出来たところよ」
「やったぁ!」

はしゃぐミユカを見て、アミは優しげに笑う。
とそこへ、白髪の男性―――ミユカの父ソウマがリビングに入ってきた。

「お、良い匂いだな」
「あなた、お仕事終わったの?」
「いや?」
「大丈夫?この前だって、夕食の時中断して、徹夜してたじゃない」
「なあに、後でも出来るさ。飯食う時ぐらいは、家族揃って食べたほうがいいだろ」
「あら」

アミは困ったような笑顔を浮ばせるものの、声にはどこか喜色を含んでいる様に聞こえる。
ソウマもまた、いたずらっ子のような笑みを溢す。

「ねーねー、早く食べようよぉ。シチュー冷めちゃう」
「おっと、そうだったな。アミ、早く食うぞ」
「はいはい」

ミユカは幸せだった。
明るくて物知りな父。
優しくて料理が上手い母。
いつも遊んでくれる友達。
これ以上の幸せなどないだろう―――そう思っていた。

この幸せが、ずっとずっと…続きますように。

そう、願っていた。
だがその願い―――幸せは突然崩れた。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月01日 21:06