吹雪と嵐と凪
「なぁ、風真…君もうすぐパパになるんだよね。おめでとう。」
「ありがとな。ちなみに女の子だぜ、お前にも早く見せてやりたいよ。」
「ふふ、ありがとう。ところで名前は決まってるのかい?」
「実はまだなんだよなーw」
俺は、凪が生まれる少し前まで親友の雪斗とフリーの戦闘員をしていた。
雪斗は名前の通り、雪を自在に操ることができる。頭も切れ、雪斗が作戦を立てて俺がそれにあわせて突撃するという戦闘スタイルで今まで何度も勝ってきた。
そして、今日も俺達は正体不明の機械兵器と戦っていた。予想以上に防御力が高く、特に雪斗が苦戦していた。
「く…こいつ、思ったより強いな…。雪斗、大丈夫か?」
「…持久戦は好きじゃない。一気に決めるよ。」
「あぁ。」
俺が暴風を発生させ、雪斗がそれに雪を乗せる。
雪は暴風と交わって威力を増し、猛吹雪となる。
「「クロス・ブリザード!!」」
機械兵がパーツをばらまきながら倒れる。俺達の勝ちだ。
「止まったか。出し惜しみしねーで最初からやっとけばよかったなw」
「全くだな。風真、奥さん怖いんだろ?早く帰らないと。」
「そうだったw帰r」
「-っ!」
倒したと思った機械兵がビームを放ち、雪斗を貫いた。
「う…っ」
「ゆ…雪斗!てめえ…よくも雪斗を」
手の中に風を集め、一気に放つ。それでもまだ向かってくる機械兵器を空気の刃で切り裂く。
「この、クソ野郎!雪斗に何しやがる!」
「ふ…うま…?」
「立ってくるんじゃねぇ!お前なんか粉々にしてやる!」
雪斗を傷つけられたのと、強い相手をぶちのめせるという状況。この二つが重なったとき、俺は完全にスイッチが入ってしまった。
「くっ…あはははは!どうした?もっと、楽しませろよ!!」
機械兵を本能のままに切り裂く。堪らなく、楽しい。ねじ伏せる事がここまで楽しいとは。
傷つけられた親友の姿は、俺の中に認識されていなかった。
機械兵は完全に沈黙した。
5分もかかっていないだろう。
「はぁ…機械の分際で俺にたてつくからいけないんだよ。さ、雪斗、帰ろうぜ」
返事はない
「雪斗ー、寝ちゃったか?だったら俺が背負って…ッ!?」
頭にのぼっていた血が一気に下がり、状況が認識される。
「ゆ、きと…雪斗ぉっ!ごめん!今からでも病院連れてくからな!絶対死ぬなよ」
「いいよ。お腹に穴空いてんだから…助からないって。がはっ!」
「しゃべるな!最高速度で行くから」
「…風真、今までありがと。楽しかったよ…。僕の分まで、生きて…」
「そ…んな…おい、雪斗!雪斗ーっ!」
俺の戦友の最期は、雪のように儚かった。
あの時、向かって行かずに雪斗を病院に運んでいれば…
『風真、敵を倒すのもいいけど、大切なものは見失っちゃだめだよ。』
以前、雪斗がこう言った。
全くその通りだよ。敵を倒すことばかり考えて、お前が…一番大切なものが見えていなかった。
俺って本当にバカだよなぁ。
こんなバカについてきてくれてありがとう、さようなら。雪斗。
俺も楽しかったよ。
数日後、俺は娘に「凪」と名付けた。
時に優しく、時に荒々しく吹き荒れる「風」
俺はどちらかというと後者の方が大きかったようだ。
そのせいで、大切なものを失ってしまった。
娘よ、お前の父さんは友達見捨てて相手に突っ込んでいくようなバカだ。
それでもお前には幸せになってほしいから、俺と真逆の名前をつけた。
何物にも揺らぐことなく、静寂を保つ「凪」
お前の進む道が、どうか平和でありますように
最終更新:2011年05月02日 01:15