イマニオリタエンマ
カツンと音を鳴らしたのは、鳥居の天辺だった。
夜風吹き抜けるいかせのごれ。彼はそのなかにある、とある神社の鳥居に降り立っていた。
「何年ぶりかのう、ここに来るのは。」
呑気そうな声を吐きながら、彼は夜風にあたっていた。
肩にかかる黒髪。僅かにとって結んだ髪もさらさらと風になびく。
黒い薄手のコートに袖を通している。肌寒い夜のためではなさそうではあるが。
見た目高校2年生の男子。しかしその姿はあまりに浮いていた。
右目の下に赤い刺青。素足に下駄。
首にかかる赤く大きな首飾りには、逆さの「獄」が刻まれている。
なにより人眼を引くであろうものは、彼が差している「傘」だろう。
雨は降っていないのだが、竹の骨組の傘は紫の紙を大きく広げていた。
「ちぃと見ない間にずいぶんかわったもんじゃのう。」
「確かにね。前来た時ストラウルとかあんなにボロボロだった?」
鳥居の上には一人しかいない。しかし、声は二人分。
よくみれば、傘の柄に小さな口がついているのだが、鳥居に上っている以上、よく見ないと気付けない口は誰にも分からない。
「これが無常感、とかいうやつか。」
「それはいいけど、あんた今日は早く寝なくていいの?明日からいかせのごれ高校?に行くんじゃないの?」
「わしらにとっちゃ昼も夜も関係ないから大丈夫じゃ。そもそも何年も寝ずに過ごしてたんだしの。」
手をひらひらさせながら男は言う。
「しかし、「学校」とかいうものは面白いんかのぅ?聞いた話、人間ばかり集まるらしいし。」
「あそこはただの学校じゃないわよ。能力者ばかり。事件とかおこりそうだし、あんたも暇せずに済むんじゃない?」
「ほう!もしかしたら面白い「嘘」とか聞けるかもしれんのう!」
「あんたそればっかり;」
「ンハハ、いいじゃろうが。」
「ていうかあんた、本来の目的忘れないでよね。」
「ああ、勿論。」
彼の目的。
それは彼自身の失態にあたる。
何年前かは忘れたが、僅かな油断がきっかけで彼は「武器」を奪われた。
見た目は小さな鉄槌。しかし、彼は自らの力をその武器により100%引き出すことができる。
その武器を奪われ、力を押さえられたまま行方を追っていたところ、
このいかせのごれに流れ着いたと聞き付け、舞い戻って来たのだ。
「もう暫くの辛抱じゃけぇのう。頑張ってくれや、『
ブレラ』。」
「分かってる。あんたの鉄槌が見つかるまでは、協力してやるわよ。」
「ありがとうな。」
そう言い、彼は思い切り蹴りだした。
鳥居から転落することはなく、そのまま宙を歩く様に飛んでいた。
「寺に戻るわよ。なにはともあれとりあえず明日の学校が先ね。」
「『スクールライフ』なるものか。…楽しみじゃのう!」
その飛んでいる姿を目撃したのは、一体何人だっただろうか。
追記
「明日は歩いていきなさいよ;」
「えっ;でも寺から遠くないかの?」
「一応一般人もいるからね、あの学校;飛んでいくとこ目撃されたらどうするのよ;」
最終更新:2011年05月08日 17:07