吠える仔犬と吠えられる閻魔
その転校生は前触れもなく隣のクラスに現れたらしい。
昔からの「仲間」の一人だった彼女は、今日誰が転校するのかしっかり把握していた。
しかし、噂に聞き耳を立てれば、とんでもない失態を犯したというのだ。
その真偽を確かめるべく、彼女は昼休み、屋上へと駆け上がっていた。
「起きろ、馬鹿閻魔ッ!!」
「うぇっ!?」
案の定屋上で昼寝をしていた男に、彼女は耳元で大声を出して起こした。
「な、なんじゃぁ…ノラか。吃驚したわ;」
「なんじゃでもかんじゃでもない!
ゴクオー、あんた自己紹介の時なんて言ったの!?」
「え、普通に…。」
「あたしも人のこといえないけど、とんでもないこと口走ったらしいじゃないのっ!」
ノラが聞いた話では。
朝、担任に引き連れられ教室に入ったゴクオーは、皆にこう言ったらしいのだ。
「平塚 獄王。ゴクオーとよんでくれ。好きなものは甘いものと面白い「嘘」。嫌いなものは根性腐れ。」
「「地獄」からきた。よろしく。」
「誰が「地獄」なんて信じるもんかっ!何なの?馬鹿なの?死ぬの?」
「自己紹介で嘘なんてつけるもんかと。」
「ココアシガレットごと粉砕してやろうか!いい加減常識ってものを知ってよ!もう何年ここにいるの!」
罵倒しながらもあきれるノラ。
「一応私たちが「妖怪」ってことは伏せてるんだからね。一般人もいるのに、パニックになったらたまらないじゃん。」
「成程のう…。」
「ったく、フェニさんはぽかんとするし、箱舟君も女神君もリアクションに迷ったし、流石のトキちゃんも引いたってきいたよ;」
「道理でなんか静かだったわけか;」
「あーもー、これで成績が異常なまでにいいから腹立つ;」
「…で、鉄槌探しは進行してるの?」
「とりあえずアースセイバーに協力は要請しとるけの。どの道片っ端から捜すつもりじゃ。」
「ならいいんだけどさ。」
「ま、どうせまた
ホウオウ絡みじゃろ。急いで動いてもどうにもならん。」
「そりゃそうだね。」
「じゃ、またあとでここに来るよ。どの道学校にいる間は
ブレラ持ち歩けないし、あたしは学校内にいるからさ。」
「ふいふーい。ありがとうな。」
寝転がったまま片手を上げるのを見、ノラはため息交じりに屋上を出て行った。
「全く、あの人本当に力抑えられている自覚あるのかなぁ?」
階段を降りながらノラは呟く。
「3割の力…『幻覚』と『痛覚神経操作』だけじゃ、何にもならないのにさぁ…。」
追記
「…しかし、エミとウミとかいう双子だけは、興味津々でわしを見とったのう。なんでじゃろ?」
最終更新:2011年05月10日 20:35