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嘘と思惑と真実と

嘘と思惑と真実と

放課後。生徒たちは皆部活に向かったり家路をたどってりで、教室前の廊下には誰もいない。
一足遅く屋上から降りてきた「獄王」は、傘立てに立てていたブレラを引っぱりだしていた。
『ちょ、ちょっと!乱暴に引っぱらないでよ;』
(ああ、悪かったの;)
紙製の傘を、しかもこの晴れた日に持ってくるのは獄王位だろう。

「…獄王!」
「ん?」
後ろから声をかけられ、振り返る。
面識はあった。同じクラスのエミとウミだ。呼びかけたのはエミの方だろう。

「部活いかないの?」
「いんや。このまま帰るつもりじゃ。部活も入るつもりないしの。」
「ふぅん、そうなんだ。」
返答する言葉に、興味ありげな響きはなかった。

「ねぇ、ちょっと私たちに付き合ってよ。いかせのごれ案内してあげる!」
満面の笑顔を浮かべながら、エミが提案してきた。
「ついでに家まで送ってあげるし。」

「いや、いいわ。誘ってくれてありがとうなw」
獄王はエミに負けないくらいの笑顔で即答した。
ところがその答えにエミが食い下がる。
「いいの?いかせのごれって結構広いんだよ?見せ場とか沢山あるし。」
「わかっとるわ。案内は嬉しいんじゃけど…。」

「ちいと、「嘘」が気になってのう。」

「え?「嘘」?」
「案内なんて、目的なくぶらぶら歩くつもりじゃないじゃろ?強いて言うなら、目的地があった。違うか?」
獄王の質問に、エミはへぇ、と呟いた。
「何でわかったの?」
「「嘘」を見抜くのは得意での。面白いやつなら食い付くところじゃが、そうでもないみたいじゃのう…。」
踵を返し、正面切って前を見る。

「そんなにわしに興味があるか?「能力者」として。」
「まぁね。自己紹介のときとか、結構おもしろかったし。」
いつもの笑顔のまま、エミは言った。
「どんだけふざけても「地獄から来た」なんて言わないと思うからね。」

「それで?わしを何処に連れていく気だったん?」
「それは…。」
「直ぐには答えられない「やばい」所じゃの。なら尚更ついていくわけにはいかん。あきらめるんじゃな。」





「そんなこといって。いいのかなー?「探し物」手伝おうと思ってたのに。」
「!」
獄王がすこし驚く。その表情を見ながらエミは続けた。
「昔奪われた武器を探してるんでしょ?ちょっと派手だけど何処にでもありそうな鉄槌かな?」
「…それで動揺でも図るつもりかの?」
「だとしたら大成功だねw」

「…その段だと知ってそうじゃのう、わしの「本当の姿」。」
「あ、やっぱりばれた?」
「見抜いたのはお前じゃな、ウミ?」
目線をウミの方に向ける。彼女は無言で一度、こくりと頷いた。

「ま、これではっきりしたじゃろ。」
ため息交じりに獄王は切り出した。
「わしらは互いに互いを見抜いている。態々聞く情報なんてありもせん。敵対するつもりがないなら学校で位仲良くやろうってことで結論でいいかの?」
「そうだねー、仲良くしてあげてもいいけど、やっぱりこっちはまだ聞きたいことがあるって言うか…。」
「…しょうがないのう…。」

獄王は軽く俯く。
同時に、獄王の心中を「聞いて」いたウミの頭の中に、何かが流れ出した。
意味のない言葉ともつかないような音の羅列。
しかし、その音に本能的に危険を察した。
「ウミ!きをつけ…。」

一際高く廊下を踏みならす音がした。
足元に違和感を感じた瞬間、ものすごい勢いで床から何かが突きあがって来た。
白銀に光る円錐状の「針」。
それを幾本も認識した時には、その針は何箇所も二人の体を貫いていた――

「――なんての。」
獄王の口が笑った。
途端に今までの針が幻覚のように消え去った。貫かれた部位にも全く穴が開いていない。
しかし、あまりにリアルすぎた感触に、二人は驚愕の眼を向けるしかなかった。

「今ので本来の力の3割じゃ。もしわしが鉄槌を取り戻してみぃ。」
獄王が踵を返し、ブレラを担ぐと一言、
「…死ぬぞ。」
といって歩を進め出した。
その後ろ姿を、二人はただ茫然と見送るしかなかった。


寺に向けて歩を進めていると、後ろから誰かが追い越した。
いかせのごれ高校の制服。おそらく同じ高2だろうと察しがついた。
そのすれ違う一瞬、彼は感じ取った。
「…『鉄槌』の、気配…?」

歩を止めた彼の目線の先には、家路を急ぐと思われる黒緑色の長い髪があった。

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最終更新:2011年05月13日 23:15