返還と受託
学校から帰るなり、
ゴクオーはアースセイバーの廊下を走っていた。
案外あっさりと主と連絡がつき、冬也が談話室で待っているという話を受けたのだ。
今日、冬也は「風邪で休み」という話になっている。
ということは、今朝方からずっとアースセイバーにいることになるのだ。
監視役を務めているということは、時間はさほど取れない筈だ。
そう思って歩を進めていたが、ふと、ある疑問が頭をよぎった。
(…鉄槌のこと、どう説明しよう;というか一重に信じてもらえるじゃろうか…;)
その答えを出す前に談話室についてしまい、仕方なく戸を開けた。
音に気がつきこちらを向いた少年。
肩まで伸びた藍色の髪。左側には青と緑のヘアピン。
青いパーカーとズボンというラフな格好は、できるだけ体に負担をかけないためか。
…古傘を背負った一風変わったゴクオーを、この時彼はどんな目で見ていたことか。
「あ、えと…。」
案の定少し引いている少年に、彼は慌てて言った。
「その、冬也君じゃな?」
「はい。面会の…?」
「そうじゃ。わしが「平塚 獄王」。主…春美ちゃんからきいたじゃろ?」
話してみると簡単に打ち解けた。
互いに能力者と知っての上か、さほど隠すこともないので笑って話しあえた。
最初の段階で獄王が「凪」の名前を出したおかげもあるだろう。
…その話題の時だけ冬也の目つきが少しきつかったのは気のせいか。
「…それで、そろそろ本題に入らせてもらうんじゃけど…。」
様子を見ながら獄王が切り出した。
冬也と向き合った瞬間に、彼は直ぐに確信したのだ。
「お前…何処かで『鉄槌』拾うたかの?」
「え、なんでそれを…?」
「やっぱりの。」
冬也が取り出した鉄槌を受け取り、電灯に透かすように獄王は眺めた。
「…間違いない。わしの鉄槌じゃ。」
「道理で透視が通用しないわけですね;」
「すまないの、ずっと預かってもらってた様で。」
「いいんです。僕も気になって拾って、そのまま持っていただけですので。」
このまま自ら持って帰ってもかまわない。
だが、鉄槌の所在を掴めた時点で、獄王はあることを決めていた。
「…のう、もしよかったら、これからもお前がこの鉄槌、預かってくれんか?」
「えっ?何で…?」
「言うたじゃろ?わしは『妖怪』。何時力の暴走が起こるか分からん。」
彼は自らの考えを全て冬也に話した。
「勿論ただで預かってくれとは言わん。鉄槌自身も微量の妖気を持っておる。所在がつかめればその妖気をわしは掴めるんでな。もし冬也自身に異変が起こった時に直ぐに助けに行ける。それでどうじゃ?」
「…そうですね。分かりました。」
少し考え込んだが、冬也は笑顔で了承してくれた。
「本当に悪いのう;じゃけど、できることなら何でもするつもりじゃき、遠慮はいらんけの。」
獄王は冬也の肩を軽く叩いて笑いかけ、鉄槌を冬也に「預けた」。
冬也もその鉄槌を受け取り、笑顔を返した。
思えばこれが、いかせのごれに来て初めてみた「純粋な笑顔」。
獄王はその笑顔を、嬉しく思わずには居られなかった。
追記
「…ただ、僕の助けは無用ですよ。」
「ん?何でじゃ?」
「僕には「ナイト」がついてますので。」
最終更新:2011年05月18日 21:03