アットウィキロゴ

企画されたキャラを小説化してみませんか?_ログ-301~350

  企画されたキャラを小説化してみませんか?

1サイコロ:2008/04/19(土) 08:47:37
男擬人ムリ香さんが立ち上げた「キャラ企画つれっど」で企画されたキャラを
ショートショートストーリー化(短編のアナザーストーリー化)してみませんか?
age sage構いません。
それと、できるだけ自分の企画したキャラを搭乗させましょう。
ナイアナのキャラは、性格を変えないように。

気に入らなければ消してください、(有)さん…

301ネモ:2011/02/05(土) 01:22:51
すぐ目を離すと名作が増えるから最近のナイアナは困る(良い意味で。)
感想を分かりやすく纏めるとスゲーって事で。。

>>262 akiyakanさん
今更ですが。纏の字には「ソウ」の読みは無かった事に気付く;
鎧装(ガイソウ)と鎧纏(ガイテン)のどっちに修正するか悩む。(勝手にしろってねエェ
死因?パワードスーツ着用のホウオウメンバー(制御不能)の巻添。
これならナイアナは成立・発動するハズ・・・。。ですよね?(考えて無いΣ

302(六x・):2011/02/05(土) 01:34:33
>>245 しらにゅいさん

まさかの王様ゲームw
凪たんはドS…正解です。
SかMか聞かれて「私?Mだけど?(服のサイズだと思っている)」って返すような子だからよけい怖いね。


トキコさんお借りして、勝手に後日談的なのやってしまいました。

タイトル↓
爪ス;-◇-ス(・言・ハ

「ケイイチ君が気の毒でならない件について」
「凪っちが変な命令するからでしょー」
「いや、トキコが盛大に回したからだろ。」

ハ・言・)ズモモモ

「はい、私が悪かったです。悪うございました。だからそんな顔するな。私、トキコとやりあって勝てる気がしないから。」
「うん。凪っち細いもんね、すぐ折れそうね。」
「折るなよ。」
「…(もにゅ)」
「きゃんっ!」
「私より大きい…」
「いや、あまり変わらんだろうが。周りが発育よろしすぎるだけなのだよ。彼氏になんか言われたのか?そんな、女の価値を乳で判断するようなクソ野郎なら別れてしまえ。」
「違うよー。凪っちこそ彼氏いるの?」
「いるように見えるか?残念ながらいないのだよ。」
「そっかー。黒い変な服着て、ムチで叩いて『この豚野郎!』とかしてるんじゃないかなって思ったんだけどw」
「そんなことしません。あとそれは彼氏じゃなくて、文字通りドM豚なのだよ…」
「えー。…さっきはああ言ったけど、凪っち実は結構いい線行ったりしてね。」
「なんだよそれwだから無理だって」
「できるよ。凪っちは視線だけで凍らせるような冷たい目をしてるから。」
「うわー酷いなぁ。君さ、ホントは私のこと嫌いだろ」
「嫌いだったらこうやって話してないよぉ^^」
「そう?だったらいいけどな。」

最後が腹の探り合いみたいになってすみません。
凪の能力を一回も見ていないのに遠回しに当ててしまったトキコさんは怖いで…
この二人はたぶん無いけど戦うとなれば、BASARAの幸村と政宗みたいな感じになるんじゃないかなと思ってたり。

凪の戦闘シーンを書きたいが、私にはダメだったようだ(^q^;)
素敵な戦闘シーンやシリアスを書ける人が羨ましい…
誰か書いてェ…(サスケェ…風に)

303akiyakan:2011/02/05(土) 09:34:07
>>301 >ネモさん
コヨリの例を考えれば可能だとは思うのですが、パワードスーツの暴走だとそれは「事故」なのでナイアナにならないと思います。有さんの発言を借りれば、明確な「悪意」、「敵意」、「殺意」による死因でなければ、ナイアナは誕生しないらしいので。
後、「死因がパワードスーツ由来」のものでなければ、「鎧纏の悪夢」にはならないと考察します。と言うのも、パワードスーツに搭載された兵装(例えばビームであったり、ミサイルであったり)で殺された場合はともかく、パワードスーツ装着者のパンチで殴り殺されたとすれば、威力に違いがあるだけで普通に殴り殺された事と結果は変わらないので、それは「撲殺の悪夢」になってしまうと思います。
正直、何がアナボライザーにとっての「天敵」になるかが悩みどころですね。コヨリの戦闘能力をB子が受け継いだのは、コヨリが「コヨラ」と言う一個の兵器として認識した結果なのでしょう(戦車は機関銃や戦車砲など様々な兵器の塊ですが、「戦車」として一個の兵器に括ってるじゃないですか)。しかし、シゲナガを例に挙げれば、死因は転落死なので「重力」が天敵なのは分かりますが、その殺害実行をしたミキに重力を操る能力なんかありませんから。

>>302 >(六x・) さん
腹の探り合いというか、友人同士のじゃれ合いですね、これw
凪の能力は瞬間冷却か……相当寒い状態で凍死したんですね。
ただこれ、普通の雪崩だと「事故」なので、雪崩の発生原因が人為的かつ「悪意」、「敵意」のあるものでなければ、ナイアナとして成立しないですよ(汗)

304鶯色:2011/02/05(土) 16:20:36
おや、時系列のことで色々あるようですね、今後の為にちょっと意見を。
私個人としては本編以降のお話は以前にもありましたので自由でもいいんじゃないかなーと思っています
今回のような連載物になってくると辻褄合わせも大変でしょうけど;

とりあえずwikiに説明文を追加しておきました、文章の変更などご意見あればどうぞ申しつけ下さい

305スゴロク:2011/02/05(土) 16:24:34
>鶯色さん 
確かにアナザーで連載はちょっと難しかったですね。説明文確認しました。

306akiyakan:2011/02/05(土) 18:03:39
※スゴロクさんの「火波スザク」、ネモさんの「三葉莉絵」、十字メシアさんの「シノ」。会話文中キャラで「七篠獏也」、遊び盛りの学生Lv15さんから「ゼア」、本家様から「ケイイチ」、「KEA」をお借りしました。
※十字メシアさん、すみません。タイトル通りシノさんにちょっとした受難が降りかかってます……

 シノ先生の仕事もとい受難

「能力の使用禁止か。また随分と難儀な事になったな」

 もはや日常的になった、屋上での情報交換。俺の右腕を見て、スザクはそんな事を言った。

「正直大げさって考えが無いでも無いんだけど、特殊能力は未だに未知の領域だからなー。何が起こるか分かったものじゃないし、莉絵さん止める理由も分からなくはないんだけど」

 けれども正直、気が焦る。今すぐ治せるものを遅々とした自然治癒に任せているというのもあるが、この傷が足枷になってろくすっぽ戦闘なんて出来やしない。

 こういうところで、俺はやはりケイイチさんの足元にも及んでいないのだと実感する。あの人は日常と非日常の切り替えが上手だ。いつもはごくごく普通の学生然としているのに、いざ戦いとなればすぐさま気持ちを入れ替える事が出来る。

 今の俺は、メリハリがついていない。日常になりきれていないし、かと言って非日常へ突っ込みきれる程体調が整っているわけでもない。どちらにも属する以上、これも必要な技能の一つなのだろう。要精進だ。

「正直、戦闘能力が無いって事が、こんなにも自分の中で不安になるとは思ってもみなかったよ」
「そりゃそうだろ。今のシスイは、自分の身を守る力が普段より失われているんだ。不安になってもしょうがないだろう」
「いや、自分の身とかどーでもいいんだ」
「……おいおい、物騒な事言うなよ」
「ああ、いや。そういう意味じゃないんだ。俺、実は逃げ足だけにはちょっとした自信があるんだ」

 弱小能力者には二通りの成長が挙げられる。今より強くなるか、それとも強敵から逃げ切るだけの足を鍛えるか、だ。

 アースセイバーに入ったばかりの俺がバク教官から真っ先に教わったのは、「勝てない相手には挑もうとは思わない事だ。身を危険を感じて逃走するのも、生き残りには必要な事だ」と言う事だった。

 幸い、足腰には自信がある。山暮らしで育ったのは伊達じゃないって事だ。それに実のところ、教官の言葉がそっくり爺やと同じだったから、あっさり飲み込めたというのもある。

『ええか、シスイ。金太郎や桃太郎は強い。しかし、ワシらはあんなに強くはない。熊や狼に襲われても戦おうなんて思わん事じゃ』

 ……今思うと熊はともかく、俺の住んでいた山には何で狼がいたのだろう。ニホンオオカミって確か、絶滅したんじゃなかったっけ……

「……ごめん、爺や。今の俺、熊より怖いモノと戦ってるわ」
「なんか言った?」
「いいや、別に……まぁともかく、能力が使えないからと言って、自分の身を守れないって事はない」

307akiyakan:2011/02/05(土) 18:04:38
 最悪、禁止令を破って能力を使えばいいだけの話なんだけど、それはあくまで最後の手段。
 と言うのも、日常に混じって普通に生活しているのでついつい忘れがちなのだが、アースセイバーは規律に関してなかなか厳しい。命令違反者が増えると、国家に対してウスワイヤ並びにアースセイバーの信用が失われてしまうからだ。

 俺に対する能力の使用禁止も、あくまで莉絵さんとの口約束に過ぎないが、アースセイバーという組織から考えれば立派な「命令」だ。それに調査員としてではあるものの、人並みの生活をさせてもらっている手前、アキヒロさん達との信頼にかけて気安くこの「命令」を破るわけにはいかない。

 こういう時、組織に俗していないスザクが羨ましい。彼女の翼を縛る者は誰もいないのだから。

「とっと……危うく聞き忘れるところだった。スザク。ホウオウグループの中に、生物兵器の開発に詳しい人っていなかった?」
「生物兵器の開発? ゼアの事か?」
「いや、もっとこう……人間以外の生体改造に突出していたような」

 ゼアの事は知っている。KEAさんを生み出した張本人だし、いつぞやにはその姿を直接この目で見ている。生体工学面の知識はかなり高い筈だ。でも、何となく、あの生物兵器というか、「人を止めさせるウイルス」を開発したのはあいつじゃない。そんな気がしたんだ。

「ゼア以外で? ……悪い、僕には思いつかないな」
「ああ、そっか……いやいい、ありがとう」
「昨日の怪物の一件か?」
「んまぁ、そんなところ……」

 一瞬「ウイルス」について話そうとも思ったが、彼女を動揺させるだけなのでその言葉は呑み込んだ。

 今頃シノさんは、あの「ウイルス」の特効薬を調べているところだろう。
 昨日倒したのは、加害者ではなく被害者だ。ウイルスによって人間である事を止めさせられ、自分の意志ではどうにもならない状態にさせられてしまっていた。そんな哀れな被害者だ。
 被害者が別の被害者を襲って悲劇を繰り返していく。そんなの、幾らなんでも残酷すぎる。

「……今度、新しいウイルスの被害者に会ったとして」

 俺は、全力でその人と戦えるのか。

 正直、戦えるとは言い切れなかった。

308akiyakan:2011/02/05(土) 18:05:33
「うぅぅぅぅぅ……」

 アースセイバー施設内、研究室。シノが頭を抱えていた。
 アースセイバー一の天才。本人は「あくまで記憶していた事を口にしているだけ」と言うが、彼女に勝る知識人が他にいない以上、その言葉は事実だ。
 しかしそんな天才の頭脳を持ってしても、今彼女が取り掛かっている仕事は無理難題に近かった。

「うぅ、出任せであんな事言うんじゃなかったっすよ……」

 今更ながら、シノはシスイに向かって言った己の発言を悔いていた。

「物知りなのと天才なのでは、似ているようで全然違うんすよ……物知りは知識を詰めただけの頭でっかち、天才はそれを応用出来るから天才なんすー……」

 弱音を吐いても、それでも仕事に挑む辺り真面目だ。しかしすぐに頭を抱え、「うぅぅぅぅぅ……」と聞いているこっちまで悩みごとに苛まれそうな唸り声を上げる。

「しつれいしまー……うわ。シノ、大丈夫?」

 研究室の扉が開き、入ってきたのは莉絵だった。机の上に突っ伏しているシノの姿を見て彼女は驚く。

「うぅ……莉絵、っすか?」
「どうしたのよ? 貴方が悩むなんて珍しいじゃない」
「悩みを持たない人間なんて、この世にはいないっす」

 「それもそうね」、と莉絵は苦笑を浮かべる。

「それで? アースセイバー一の大天才を悩ませる問題って、一体何なの? 参考にならないかもしれないけど、詳しく聞かせて」
「莉絵って、元々看護師だったっすよね?」
「元々、と言うか、今でもそうだけど」
「だったら、この一言で問題の難しさが分かるっす。莉絵は、『HIVの特効薬の作り方を知っている』っすか?」

 シノの言葉に納得したのか、「あぁ……」と莉絵は難しそうな表情を浮かべる。彼女は無理無理、と手を振った。

「昨日回収された、あの怪物絡み?」
「そうっす。詳しい事は隊長から止められているので言えないんすけど、この事件の解決の為にとあるワクチンを作らなきゃいけないんす。でも、そのワクチンを作るのが、HIVの特効薬を作る位難しいんすよ……」

 HIV。ヒト免疫不全ウイルス。エイズの名称で知られている、あの病気の原因だ。
 HIVの特効薬が未だに作られていないのは、HIVのウイルスが極めて変異性が高いという特徴を持っている点が挙げられる。苦心して何とか特効薬を作っても、特効薬が効いてからウイルスの性質が変化してしまい、やがて特効薬が効かなくなってウイルスが生き残ってしまう。この特徴のせいで、完全に病原体を患者の体内から除去する事が出来ないのだ。

 昨日回収された感染者の遺体から発見された、新種のプロ・ウイルス。それは、人間の体内に寄生するだけのただのウイルスではない。遺伝子を書き換え、人間を怪物に変えてしまうウイルスだ。ウイルス自体を体内から除去したとしても、書き換えられた遺伝子はそのままだ。シノに求められているのは、ウイルスを除去すると同時に、書き換えられた遺伝子を元の状態に戻す性質を持った特効薬の製造なのだ。

「つまり……シノ大先生に出された問題って言うのは、出来たらノーベル賞取れちゃうくらい大変な問題、って事ね」
「他人事だと思って……」

 泣き言を言っても、いずれ特効薬は必要になる。そしてその特効薬を作れる可能性があるのは、アースセイバーの中では現在シノ一人しかいないのだ。彼女に頑張って貰う以外に、道はない。

「まぁ……頑張って」
「のおぉぉぉぉぉぉ」

 悲痛な悲鳴が、地下に木霊する。

309大黒屋:2011/02/05(土) 19:51:50
感想が追いつかないけど沢山作品が読めるから嬉しいw(蹴

>しらにゅい様
よ、よくわかりましたね;
妹思いゆえに料理させてるの、正解です;
ただ、妹が壊滅的なのに反し、由衣はかなりうまいです。マジで;
こうして関係が広がっていくのがすごくうれしくてたまりません><
ありがとうございます!

310スゴロク:2011/02/05(土) 22:32:00
今回は自分のキャラのみです。


「……まだか。まだなのか」

教室の机に頭を乗せ、現在僕は非常にイライラしていた。
何かの準備だかなんだかで今日は午後の授業がなく、午前中で終わり。「じゃあ帰ればいいのに」と思うだろうけど、それが出来ない理由がある。

「……遅い。1時間も遅れてる」

ランカのお見舞いに行くと言う事で、朝方ゲンブが連絡して来たのだ。正午になったら学校に迎えに行くから、それまで待っていろと。
僕はその通りにしたのだが、現在時刻はPM1:00。完全にオーバーしている。
一体何をやっているんだ、ゲンブの奴。

「久しぶりにランカに会えるっていうのに……遅い、遅い、遅ーい! 何してるんだ、あの鈍ガメ!!」

イライラして来た。こうなったらあいつは無視して1人で行ってやる。
そう思った瞬間、ポケットから「BLAVE」が流れて来た。この着信は……。

「はい、火波です」
『スザク? ……もしかして、まだ学校か?」

案の定だった。こいつは……!!

「ゲンブ!! 何やってるんだ、一時間も待ったぞ!!」
『す、すまん。うっかり病院に直行していた』
「…………自分で連絡しといて忘れるなよ……まあいい、それならそのままランカに会ってやってくれ。僕もすぐに行く」
『わかった。それなら急いでくれ』

通話を切る。これがゲンブの欠点だ。一つのことに集中し過ぎて回りが見えなくなる。極端になると、このように自分で行った会話すら忘れている事がある。

「……まったく」

パチン、とデコレーションした携帯を閉じ、僕は鞄を肩に引っ掛けて教室を後にした。



目的の病院は僕の家から少し離れた所にある。仲間のひとりである、ランカがここに入院しているのだ。
ロビーに問い合わせると、既に面会の許可は降りていた。エレベータを使って4階に上り、部屋を探す。

「403、403……あった」

僕の好きなアーティストの名前と同じだから、凄く覚えやすい。ノックをすると、

「はい、どうぞ?」

鈴を転がしたような綺麗な声で、そんな返事が返って来た。
息を整えて扉を開け、中に入る。

「あっ、綾ちゃん!」
「来たか……綾音」
「ああ。……久しぶり、ランカ」

待っていたのは、窓に腰かけるゲンブ。そして、ベッドの上で身を起こす、雪のように白い肌と、対照的に真っ黒な髪と瞳が目を引く、ひとりの少女だった。
ブランカ・白波、愛称「ランカ」。14歳の女の子で、僕の仲間のひとりだ。イタリア人とのクォーターらしいが、出自に関して詳しい事は知らない。彼女とのかかわりは、「施設」を逃げ出してしばらくの頃からだ。
とにかく明るくて素直な子で、この子を疑う奴は頭がおかしい、と言いたくなる。そして、この子の前でだけ、僕は「私」―――「綾音」に戻れる。

――――ただし、だ。

彼女はとにかく体が弱い。何かと言うとすぐに体調を崩し、こうして入院している。彼女にとっては、もはや病院にいない方が珍しいと言う状態なのだ。
そこで、こうして僕……私やゲンブがお見舞いに来ている、というわけ。

311スゴロク:2011/02/05(土) 22:41:10
「久しぶり~、綾ちゃん。元気してた?」
「見ての通り。ランカ、調子は悪くないか? 気分はどう?」
「も~、綾ちゃんは心配しすぎだってば。大丈夫だよ、今日は調子いいから」
「そっか……それならいいんだ」

胸を撫で下ろした。以前はICU送りになったこともあるランカだが、どうやら今日は調子がいいようだ。
花の様な笑顔を咲かせる彼女を見ていると、衝動がすーっ、と薄れて行く。率直に言えば、癒される。

「ねぇねぇ、綾ちゃんは最近どうしてるの?」
「ああ……」

この間の王様ゲームの一件を思い出し、ちょっと気分が沈んだ。表には出さなかったつもりだが、ランカには通じなかったようだ。

「あれ、嫌なことあったの……?」
「そればかりでもないよ。実は……」

私は、最近のことを話して聞かせることにした。ただし、例のゲームで、最後の最後にどうなったかは省いて。
ランカはそれを時に驚き、時に笑って聞いていた。この表情は本当に見ていて幸せになる。

「あははっ、それホント~?」
「本当だ、この眼で見たんだから。それで……」

と、だ。

「……そこから逃げ出して、それでお流れかな」
「そっかぁ……ね、綾ちゃん」
「ん、なに?」
「どんな感じだった?」
「!? &%$#!=>!:@(%%}*=)@{%[%*)!!??!)()!=|?!」
「おい、綾音、落ちつけ。何を言っているのかさっぱりわからんぞ」

ゲンブがそう言ったが、私はそれどころじゃなかった。頭が沸騰して思考がこんがらがる。

「な、な、な、何でわかった!? そこは何も言ってないのに!?」
「いや、だって……」
「考えなくてもわかる。お前はパニックになると、なぜか行き止まり目掛けて進む癖がある。逃げ切れたとは思えん」
「そうそう」
「う、うぅ……」

言われてみればそうかもしれない。私は、そういう場合に逃げ切れたためしがない。
その事は当然ランカも知っているので、思えば当然だった。

「………ランカ、頼むからその事は聞かないでくれ。頭が真っ白になってて、思い出そうとすると物凄く疲れるんだよ……」
「そ、そうなんだ。わかった、ごめんね」
「い、いや、わかってくれれば」

―――本当に、あの事は思い出したくない。

なんとか衝撃から立ち直って、会話を再開する。それからは、病院で何があったかとか、僕やゲンブが何をしていたかを語りあった。

「――――でね、その先生が凄いんだよ。この間もね……」
「へー、それは確かに凄いな。今時珍しい」
「どこがだ。普通はそういうものだ、医者というものはな」

私とランカが語りあって笑いあい、ゲンブがたまにツッコみを入れる。そんな、いつもと同じやりとり。
今はその中でだけ、私は「私」でいられる。今はここだけが、弱さをさらけ出せる場所。

312スゴロク:2011/02/05(土) 22:42:01

「……綾ちゃん、まだ『あの人』を追ってるの?」
「……うん」

唐突に、ランカがそんなことを言った。

「もうやめようよ……私は大丈夫だから。綾ちゃんや大さんがいてくれれば、私は平気だから」
「ごめん、ランカ。そうはいかないんだ」

悲しそうな顔でランカが訴えるが、私は止まるわけにはいかなかった。「奴」を探しだすまで、探してこの手で叩きのめすまで、私は、「僕」は、立ち止まるわけにはいかない。

「ランカを放って自分を優先するような奴を、私が個人的に許せないんだ。だから……」
「……そっか」

やがて、ランカが諦めたように笑った。ただそれは、同時に納得の笑みでもあった。

「そうだよね。綾ちゃん、一度こうと決めたら譲らないもんね」
「……ごめん、我が儘言って」
「いいよ。その代わり、また会いに来てね」
「ああ、もちろん。必ずまた来るよ」

約束は、指切り。昔からの、そして一番信頼する相手との誓い。

「約束ね」
「ああ、約束だ」

そして、楽しい時間は終わりを告げる。

「……そろそろ時間だ。いくぞ、『スザク』」
「……ああ、わかった。またな、ランカ」
「うん、またね」



病院を出ると同時に、私はまた「僕」―――スザクに戻る。

「ランカは元気そうだな。よかった」
「ああ。……スザク、俺は一度アースセイバーに顔を出して来る」
「アースセイバーに?」

珍しいこともあるものだ。ゲンブはアースセイバーでも特殊な立ち位置で、ほとんど外部で行動している。そのため、本部に顔を出すと言う事自体めったにない。

「ああ。いずれ、ボルカノンの3機目が出て来んとも限らん。情報をまとめたい」
「そうか。なら、僕はいつも通りでいいのか?」
「そうだな。その様子では、衝動は当分表には出て来ないだろう」

確かに、ランカと話せたのは大きかった。ボルカノンの一件で再発した衝動がほどけて、あの事件以前の状態に戻れた。根本的に解決したわけではないが、当分大丈夫だろう。

「では、な」
「ああ。……今度連絡する時は忘れるなよ」
「う……わ、わかっている」

ばつの悪そうな顔をしながら、ゲンブはまたな、と去っていく。
今日は久々に楽しかった。

「晩ごはんは何にしようかな……」

足取りも自然と弾む。何だか、とても気分がよかった。
さあ、家に帰ろう。また明日、みんなに会うために。また明日、笑えるために。




ということで、スザクとお見舞いでした。

313紅麗:2011/02/06(日) 00:52:31
今回も我が家のユウイとリオト、そして再びしらにゅいさんのトキコをお借りしました!
※いつも以上に突っ込み所&矛盾があります…



「ここのはずなんだけどな…」
リオトは怪物の目撃情報のあった森の中をきょろきょろと見渡していた。
目的は勿論、怪物の排除。
作戦に支障を来さないようにするためだ。
不確定な存在は取り除か……
「………リオト?」
「ッ!?ゆっ、ユユユユウイ!!?」
背後から聞こえた不安げな声に、リオトは一メートルほどぶっ飛び、冷や汗をだらだらと流した。
そして驚愕の表情のまま、目前にいる少女へ向かって言葉を投げ掛ける。
「お、お前っ、なんで此処に!?」
「なんでって…今日一緒に帰る約束してたじゃん。それなのにアンタこそこそしながら何処かいっちゃうしさー」
その言葉を聞いた彼は、しまった!と今日の朝軽々とユウイの誘いに乗った過去の自分を呪う。

──まさかこんな失敗をするなんて…。
──こんなところで怪物が出てきたらどうする!?
──ユウイがいるから戦えない上、ユウイが危険に晒されるかもしれない!
──そんなこと、させてたまるか。

──…言うことといったら、決まってるよな。

「……帰れよ」
「え?」
「帰れっつってんだよ!!」
「ッ!」
リオトは目をつり上げながら少女に向かって精一杯の声を出す。
森全体に響くように、精一杯に。
ユウイは見たことのないリオトの表情に目を見開いて立ち尽くしていたが、やがて俯き奥歯を噛みしめて拳を作った。
「……しいよ…!」
「は?」
「リオト最近おかしいよ!いつも以上に食い物食うようになったし!」
「…元々だろ」
「違うッ!絶対違う!アタシの観察力ナメんな!包帯だって日に日に増えてきてるし!」
「………」
「それに、それにっ…笑ってたんだろ!?あいつが死んだ時…お前、笑ってたんだろ!?」
「……!」
「なんでだよ!」
ユウイがリオトの両肩を掴み、返事を急かすように激しく揺すった。
その瞳には、涙が溜まっている。
だがリオトは俯いたまま顔を上げない。
まるでユウイを殺す直前の"あいつ"のように。
「……っ…く…」
「り、リオ…」
「あははははははは!!」
「ひっ…!?」

突然笑い声を上げたリオトに、ユウイは悲鳴をあげてその場に座り込む。
恐怖で震えている彼女を彼は真紅の瞳で見下ろした。
「くっ…あははっ、…はーぁ…笑わずにいられるかよ。オレはずっと"あいつ"のこと邪魔だと思ってたんだ。オレがユウイに近付こうとしたらいっつも直ぐユウイ連れて逃げちまうからさぁ…」
「な……何、言って…」
「…それに、ユウイを殺した奴なんかが生きてて良いわけがねぇ!死んで当然なんだよ!」
「!なんで、それ、知って…」

ユウイは目の前の少年にただならぬ気配を感じ、その場を離れようとするが、腰が抜けてしまっているらしく、立ち上がることが出来ない。
とうとう彼女の頬に一筋の涙が伝った。

「…お前は"あいつ"と一緒に数学の勉強をしてて…」
「い、いや…やだ…」

あの時の風景がフラッシュバックする。
力無く俯いた友人。
その友人を揺するユウイ
自分に向けられた尖ったもの。

「"あいつ"はお前の目に向かってシャーペンを
「…いやぁあああああ!!!」
「!」

ユウイの悲痛な叫びと共に細長い灰色のものがリオトに向かって放たれる。
それに気が付かなかったリオトは身体中に鋭い痛みを感じた。



「………ぇ……?」



顔を両手で覆っていたユウイは突然訪れた静けさに小さく声を出した。
先程の騒がしさは嘘のようで、ただ静かな空間に小鳥の囀りが響いている。
しかし顔を上げた瞬間、その場には釣り合わない光景が広がっていた。
…リオトが血を流しながら地面に伏せていたのだ。
その身体にはシャーペンが深々と突き刺さっており、周りの大樹にもシャーペンが垂直に刺さっていた。

314紅麗:2011/02/06(日) 00:55:14



「り、リオト…?」

ユウイは自分の身体を引き摺るようにしながら彼に近付き、その身体に触れる。

「…嘘、だろ…?リオトっ!起きてよ!返事してよ!」
「何?」
「わぁああああああっ!」

呼び掛けと共にむくりと起き上がったリオト。
ユウイは再び叫び声を上げた。
…誰だって血を流している人が何事もなかったかのように起き上がるのを見たらそうなるだろう。
彼はぱくぱくと口を動かしているユウイをよそに刺さっているシャーペンを抜き始める。
抜くと同時に血が溢れてくるが、それは一瞬にしてパキリと固まった。
「……ナイフと同じ位の威力はある、と」
「リオト…だ、大丈夫…なの…か?」
「え、あぁ、全然平気」
「そ、か…」
「……いーからな」
「…?」
「お前は何も知らなくていいから。今あったこと、今までにあったことも誰にも話すな」
「……」
「…オレは"お前の"味方だから。……帰ろうぜ」
「…うん」

────

次の日

「ユーイちゃんっ」
「わ…ト、トキコ…」

アタシは突然、トキコに後ろから話しかけられた。
…なんだろう、なんだか、昨日のリオトを見てからトキコまで変な風に見えてくるようになってしまったような気がする。

「どお?昨日リオ君に会えた?」
「あ、うん…場所教えてくれてありがとな」

それ以上、会話を続けることが中々出来なくて。
気まずくなったアタシはトキコから目を逸らした。

「ねぇ、ユーイちゃん?」「ん?」
「ユーイちゃんはリオ君のことどういう風に思ってるの?」

汚れのない綺麗な微笑みを浮かべながらトキコはアタシにそう問いかけた。

…昨日のリオトにはビビった。
久しぶりに泣いてしまった気がする。
怖かった、恐ろしかった。
殺されるんじゃないかと思った。
…でも、最後に言っていた。リオトはアタシの味方だって。
思い返してみれば、小さい頃からそうだった。
アタシが何かされた時は必ずアイツがアタシを守ってくれてた。
…だからこそ、アタシは笑顔でこう答えるんだ。

「…信頼、出来る人。アタシが今一番信頼出来る人だ」


──────
……なにこれ
つまり何がしたいの←
見てて恥ずかし((

315akiyakan:2011/02/06(日) 15:01:56
※紅麗さんの「リオト」、鶯色さんの「ハヤト」をお借りしました! ハヤトの容姿は有さんの描いたイラストを参考にしています。
※つか、また自キャラ無しかよ! って感じですみません……シスイ使いたくても、ストーリーの展開上動かす事が今は出来ないので……
※それぞれ、「こんなん家の子ちゃうわ!」って感じでしたらすみません。その時は「無かったこと」にしますので……

 ブラッド&ソニック

「よ、リオトじゃん」
「!」

 親しげにかけられた声に反応し、俺は振り返った。

 頭にバンダナを巻き、首にヘッドホンをかけている「少年」。一見すると、華奢な体躯や服装から、少女に見間違える人もいるだろう。実際本人も「此間町歩いてたらナンパされたわー、マジ無いわー」と漏らしていた。

「ハヤト……」

 驚いた。怪物を探していれば、シスイと顔を合わせる可能性があると思っていたのに、まさかこいつと会うなんて。

「こんな所で何やってんだ?」
「散歩だよ、散歩。そう言うハヤトは?」
「あー、俺? 俺もそんなところ」

 ……嘘だな。

 学校で見るハヤトは、いつも友人何人かと一緒に騒いでいるのが好きな奴だ。そんな奴が、こんな町外れの森の傍で、一人で散歩?
 まったく、嘘をつくならもっとそれらしい嘘がつけないものか。

「なんかこの森、陰気だよな」

 そんな事を俺が考えているとも知らず、ハヤトは目の前に広がっている森の方を見上げた。
 ハヤトの言葉通り、確かにこの森は陰気だ。日が落ちかけている今、薄暗さが増して不気味でもある。
 怪物の目撃情報・被害情報を地図でマーキングしていくと、この森はそのすべての地点から一番近い場所にある。俺はそこから、怪物が恐らくこの森に潜伏しているのだと考えた。それで昨日も調査に来ていた(もっともユウイが現れたので、この場所から引き離すために一芝居打つ必要があったが)。

「リオト、暗くなる前にここから離れた方がいいぜ。ここって出るらしーから」
「出るって、何が?」
「お化けだよ。お・ば・け」
「お化け?」
「そ。何でも最近出るらしーぜ。でっけー蝙蝠みたいな奴がさ」
「……蝙蝠、ね」

 ここ近辺で出る怪物も確か、蝙蝠に似た形状をしているらしい。ハヤトが言っている「お化け」と言うのも、きっとそいつの事だ。

 正直、もし戦闘になったら何となく相性が悪いような気がしていた。蝙蝠は血を吸う。血を媒介にして戦う俺の能力とは、相性がいいとはあまり言えない。

「んじゃ、そういうわけで。俺は先に帰るわ」
「え、帰るのか?」
「そーそー。だって怖いじゃん」
「怖いって……お前なぁ、どう考えてもそんなのただの作り話に決まってるだろ」
「火の無いところに煙は立たないって言うだろ。こんな暗がりで変質者にでも会ったら、たまったもんじゃないぜ」

 そう言うと、自らの怯えを見せるかのように身を震わせた。そして、すたすたと町の方へと歩いていってしまう。

「……なんだかなぁ」

 思わず拍子抜けしてしまった。あいつもアースセイバーだったから、てっきり調査に来たと思ったのに。
 それとも、俺がいたから一旦場を離れただけか?

「……何でもいいか」

 そう思うと、俺は森の中へと踏み入った。

316akiyakan:2011/02/06(日) 15:02:51
 案の定というか、日が落ちた森は漆黒に包まれていた。俺は懐中電灯の明かりを頼りに、森の中を進む。

 何でこんな暗がりになってから森の中に入ったかと言えば、日中の調査では怪物の痕跡すら見つける事が出来なかったからだ。おそらく敵は夜行性なのだろう。日中は息を潜め、日が落ちてから活動しているようだ。道理で、噂の出現から結構経つのにアースセイバーの調査が遅れているわけだ。

 こちらから探しても埒が明かないだろう。だから俺は、獲物の振りをして向こうから出てくるように仕向けた。わざと相手の領域に踏み込み、安心して襲ってきた相手を向かえ打つ算段だ。

 足元は背の低い草が茂っている程度なので歩き辛くはない。けれども、連立する木々と暗がりのせいでとてつもなく視界が悪い。俺は意識を鋭敏に研ぎ澄ませながら先へと進んでいく。

 その時だった。

「……?」

 ビュオウと、風も無いのに何かが吹き抜ける音が聞こえた。それから、ガサガサと何かが木々を擦る音、バサッと何かが広がるような音も。

「……来たか」

 俺は彫刻刀を引き抜き、いつでも攻撃が仕掛けられるように構える。

 すると、ドサッという何かが落ちる音が聞こえた。反射的にそちらを振り返り、俺は明かりを向ける。

「え?」

 しかし、そこに怪物の姿は無かった。むしろ、全身を投げ出すようにして人が倒れている。視界が悪いので何とも言えないが、スーツを着ているところを見ると三十代のサラリーマンに見える。

「…………」

 俺は警戒を怠らないようにしながら、慎重にその倒れている人物の方にまで歩いて行く。
 耳を澄ませるが、先程のような音は聞こえない。不気味な静寂が、辺りを包んでいる。

「これは……」

 俺はライトをその人物に当てて、思わず息を呑んでしまった。

 そこにいた、と言うか「あった」のは、カラカラに乾いたミイラだった。全身の水分をすべて吸い出されてしまったかのように、そこにあったのは人間の干物だった。

 これで確実だ。こんな事の出来る生き物は、噂の怪物以外にいる筈がない。

「――っ」

 その時、背後から猛烈な勢いで何かが迫ってくるのを感じた。それをかわすべく、俺は横っ飛びにその場から離れる。暗がりの中で、俺が今立っていた場所を何かが通り抜けていくのが見えた。

「く……」

 反撃したいが、向こうは俺の予想よりもずっと俊敏だった。木々が動きを遮り、向こうの自由を奪ってくれるものだと考えていたが、そんな事は無かった。むしろ怪物は、木々を利用して俺の死角から次から次へと飛び出してくる。こいつはとんだ誤算だ。

317akiyakan:2011/02/06(日) 15:04:01
「……仕方ない」

 消耗が激しいのでこの攻撃は出来るだけ使いたくなかったんだけど、この状況じゃそうも言ってられない。俺はあえて足を止め、向こうの出方を待つ。

 両手をだらりと下げた姿は、傍目には完全に脱力しきっているように見える。けれども、意識は四方365度全域に向けている。ちょっとした物音にも思わず反応してしまいそうになるが、それを堪えて敵の動きだけを感じ取ろうとする。

 やがて一際大きな気配が、背後から近付いて来るのが分かった。もの凄いスピードだ、空気を切り裂くような音すら聞こえる。

(……だが、それだけのスピードなら、急な方向転換なんか出来ないだろ)

 俺は彫刻刀を、左腕の頚動脈に突き立てた。激痛が腕に走るが無視。そのまま、真後ろを振り返りながら、俺は左腕を突っ込んでくる相手に向けて伸ばす。

 傷口から、まるで噴水のように赤い液体が吹き出す。それは空中に飛び出した段階では液体の形を保っているが、やがてその赤い水粒一つ一つが円錐の弾丸へと形を変え、向かってくる怪物へと殺到する。

「ギャッ!?」

 怪物の悲鳴だろうか。そんな声が聞こえ、そして無数の血液で構成された弾丸が声の主に襲い掛かる。ザクザクと、肉の切れる音が聞こえる。
やがて、ドスンと重たいモノが地面に落ちるのが分かった。

 俺は攻撃を行った直後くらいには、既に能力を使って止血に入っていた。貧血を起こした身体が悲鳴を上げる。油断すると、意識を全部もっていかれそうだ。

 血のショットガン。頚動脈を駆け抜ける血液と血圧を利用した攻撃だ。人体急所を自ら傷付けなければいけないのでリスクも大きいが、その分相手にクリティカルヒットすればご覧の通りだ。人間ならボロ雑巾どころの騒ぎじゃないだろう。

「ハァハァ……ぐっ……」

 ちょっと傷を塞ぐタイミングが甘かったようだ。身体になかなか力が入らない。これは、少し休憩しないとまずいかもしれない。

 そう思って、手近な木にもたれかかろうとした。

「ガ――ッ!?」

 突然、頭の中に焼きゴテを突っ込んだような激痛が走った。俺は堪らず、頭を抑えてその場に蹲る。

「あ……が……」

 痛い痛い痛い痛い痛い!? なんだ、これは!?

 それなりの痛みになら耐えられる自信はあるが、そんな自負が全く役に立たない程その痛みは別次元だった。

 痛みのせいで涙の滲んだ視界で、周りを見ようとする。すると、暗闇の中で、何と俺が倒した筈の怪物が上体を起こしているのが見えた。

 その外見は、「人の形をした蝙蝠」という噂のままの姿をしていた。全身が骨と皮だけであるかのように細く、嫌悪感を催させる白い肌に毛は生えていない。顔が特に醜悪で、人間の顔と蝙蝠の顔を合わせたかのようなデザインで、口は耳まで裂けている。

 奴は上体を起こした状態で、口を大きく開きながら上を向いている。その様子はまるで、空に向かって吼えているかのようだが、口腔から声は発せられていない。

318akiyakan:2011/02/06(日) 15:04:54
「超……音波か……!」

 超音波は人間に聞き取れないだけで、確かにそこに存在する音波だ。今この場は「聞こえない大音量」が鳴り響いているのだろう。それが鼓膜を震わせ、俺の頭痛の原因になっているんだ。

「や、やばい……意識が……」

 視界が明滅する。意識の照明が、消えてなくなりそうになる。

「く、くそ……俺はこんなところで……」

 死ねない、死ぬわけにはいかない。

(俺はまだあいつに……自分の気持ちを伝えられてないんだ……!)

 胸の中で想いが燃えている。その灯火が、俺の意識を繋ぎ止めてくれている。
 けれどもその炎も、この超音波で吹き消されてしまいそうだ。五体に、足に、腕に、指先に、力が入らない。

「く、そぉ……」

 悔しさや無念が、俺の胸を覆いつくそうとする。
 最後にあいつの――ユウイの顔が頭に浮かんだ。

 その時だった。不意に、頭を蹂躙していた痛みがサッと引いていった。

「……え?」

 見ると、怪物はまだ声を上げるように空を見ている。だがしかし、超音波はもう発せられていないらしく、俺の頭に頭痛の痛みはない。

 一体何が起きた? さっぱり状況が掴めない。

「ア゛ー。アッ、アー。ん゛ー」
「え?」

 その場に似合わない、間の抜けた声。まるで発声練習の最中であるような声。
 振り返るとそこには――

「よ。大ピンチだったじゃねぇか」
「は、ハヤト!?」

 立ち去ったものだと思っていたハヤトが、そこには立っていた。彼は片手を上げ、表情には笑みすら浮かべてそこにいる。

「これで貸しイチな」
「じゃ、じゃなくて……お前、何でここに……」
「そんな事より……アレ、なんとかした方がいいんじゃないの?」

 ハヤトに言われて振り返ると、怪物は翼を広げて飛び立とうとしているところだった。

「あ、あの野郎!」

 何て再生能力だ。俺から受けた傷が、もう治りかけてやがる。追撃しようとして彫刻刀に手をかけたが、その瞬間視界が暗転し、気が付くと地面に倒れているところだった。

319akiyakan:2011/02/06(日) 15:05:42
「血を流し過ぎたか……もう、これ以上の攻撃は……」
「んじゃ、俺に任せておけ」

 頭上から聞こえた声に見上げると、自信ありげな表情を浮かべているハヤトが見えた。
 一体、何をするつもりだ。

「……――――!!!!」
「え?」

 息を深く吸い込み、そして思いっきり叫ぶかのように口を開いたハヤトだったが、その喉から声は出てこなかった。怪物と同じように、大声を発している筈なのに、俺の耳ではその声を聞き取る事が出来ない。

 しかし、聞き取る事や見る事が出来ないだけで、確かにそこで現象は起きていた。見ると、その場からちょうど飛び立つところだった怪物の腹に穴が開き、向こう側が見える程きれいに貫通していた。一度宙に浮かび上がった怪物であるが、すぐに力を失って地面へと引き戻される。

 ドスン、とまた音が聞こえた。しかし今度は、怪物が再び起き上がってくる事は無かった。

「おー、おー。シノさんの助言聞いといて正解だったぜ。周りに人がいたらと使えないと思っていたのに、こんな使い方があったんだなー」

 ハヤトは何やら満足そうにそんな事を言っている。俺はただ、その姿を呆気に取られて見つめるしかない。

「ん、立てる?」
「あ、ああ……」

 差し出されたハヤトの手を取り、何とか立ち上がる。しかしやっぱり、身体に力が入らない。
 それに気付いたらしく、ハヤトが肩を貸してくれた。

「さてと。取り合えずどこ行く?」

 そう聞かれて俺が答えようとすると、それより先に身体の方が反応しやがった。きゅるるるる、と、タイミング良く腹の虫が鳴った。

「ぶ――ははははははは!! おいおい、死に掛けたのに身体は正直だな!」
「……仕方ないだろ。能力を使った後は、いつもこうなんだから」
「オッケオッケ。メシにするか、時間も丁度だし」
「……聞かないんだな」
「え?」
「俺の能力の事」
「あー……まぁ、な。ウスワイヤに保護されて自由を無くすのが嫌な能力者っていっぱいいるし、お前もそのクチだろ?」
「…………」
「だったら聞かない。ってか、聞きたくない」
「……そうか」



 ハヤトの肩を借りて歩きながら、俺はぼんやりと思った。

 ハヤト、アースセイバーの一員。俺達ホウオウグループの敵。
 だけど今日、大きな借りが出来た。

「……この借りは、いつか絶対返すからな」

 俺がそう言うと、ああ、とハヤトは笑いながら返してきた。

 俺が借りを返す、その時まで。俺はハヤトと戦うような事にならないと良いと、自分でもらしくない思いが浮かんでいた。



※劇中、怪物の超音波を掻き消したのはハヤトで、怪物を倒した攻撃は収束した音波の波動です。キャラの説明を見ると「周りを巻き込む心配が――」とあったのですが、音の悪夢ならこれ位出来るんじゃないか、と思って使わせてみました。もし都合が悪かったら言ってください……

320しらにゅい:2011/02/06(日) 17:25:04
>>302 やだぁお互い性格が悪い(*´∀`)ウフフフ←
うちのトキコが「そぉい!」とやりかねない発言ですねw
おそらくトキコに彼氏が出来たとしたら、その人数秒で(ピー)されるかと。
確かに戦闘描写出来る方は羨ましいですよね・・・!一人で無双なら私にも
書けるのですが・・・w

>>306 シスイ君の葛藤ももっともですね・・・能力者を守る為の規律とはいえ、
能力者を縛っていることには変わりありませんからね。うぬぬ・・・難しい(´・ω・`)
お互い羨ましいと思い合う、なんだか奇妙な感じですねw
そしてシノさん、お疲れ様です!確かに物知りと天才は違いますよね~・・・ここから
どう展開出来るか、腕の見せ所ですよ( ´∀`)bΣファイト←
>>315 おぉぉ!!ハヤト君とリオ君だと!?俺得きたこれ!!←
リオ君もそうだけどハヤト君かっこよすぎるだろこれェェェ(*´∀`)ウッホォォォイ
アースセイバーの男の子も女の子も皆かっこよくて困る・・・きっとハヤト君が
リオ君を助けたのは同じクラスメイトだから、という単純な理由からでしょうね。
聞かない理由もハヤト君らしいですっ!美しきかな男の子同士の友情!

>>310 何この可愛い子お持ち帰りしtすいません冗談です姐さんやめt(ry
口にも出せない出来事でしたかwwwいやぁ、姐さんの一生のトラウマになってしまって
申し訳ない・・・´`
ランカちゃんは優しい子ですなぁ、こんな子を放っておくとは・・・なんという奴なんだ!
けしからん!私が直々に制裁を(ry
にしても「あの人」とは一体・・・

>>313 これは良いヤンデr(ry トラウマが蘇ると共に能力発動のスイッチが入りましたねー
ヒイイ・・・痛そうな・・・!お互い能力を見せちゃったわけですが、それでもリオ君に味方だから、と
言って、その言葉を信じて、トキコに1番信頼出来る人だ、と答えたユウイちゃんに、思わずおぉー!と
声を出してしまいましたw良かった、良かったこの二人の仲が壊れなくて・・・!
しかし何故トキコが場所を教えたのやら・・・これは書かなくてはいけないわけですね分かります←

321しらにゅい:2011/02/06(日) 17:32:08
(あーあ、ちょっと残念。)


 そう思いながら、トキコは目の前で楽しそうにお菓子を食べている友人・・・榛名有依を眺めていた。

昨日、トキコが放課後彼女に件の怪物捜査に乗り出した高嶺 利央兎の場所を教えたのは、故意であった。
言い訳をするならば、彼女は彼と一緒に帰る約束をしていた、にも関わらず利央兎はそちらの方に気がいってしまい、彼女との約束を忘れていた。
だから、戸惑っている彼女に素直に彼の居場所を告げたのは、自分の親切心からである。
 そして本当の狙いを言うのであれば、彼女をホウオウグループに引き入れるチャンスと考えたからだ。
利央兎がホウオウグループのため、と言って作戦に参加しているのも、彼女を危険から守るためでもあるのだ。
しかし、ある事件をきっかけに彼女は能力者として目覚めてしまった。
今のところ、敵対するウスワイヤに保護されていないのが幸いだ。
彼らに悟られる前に利央兎はこちらへと引き入れようとしているらしい、のだがアクションはまだ起こしていない。
だから、自分が彼に機会を与えてやったというのに・・・


(今一番信頼出来る人、ねぇ・・・)


 その彼女の話しぶりからすると、真実を知ったまでには至ったものの、肝心の部分は話していないようだ。
やはり大切なのは、有依ただ一人か。
まぁ当然であろう、彼は彼女のことを異常なまでに溺愛している。
それは表に出ずとも、雰囲気から察することは出来る。
異常なまでの執着心、それは自分がホウオウ様を崇拝するように、はたまた子供がお気に入りの玩具を意地でも手放したくないように。
しかし、とトキコの頭の中である疑問がよぎったのだった。


「・・・ねぇー、ユーイちゃん。」
「何?」
「もしも、ユーイちゃんとリオくんが、ひょんなことで敵対しちゃったらどーする?」
「えっ・・・」


 彼女の表情が一変した。
何があったかは知らないが、昨日のことでも思い出してしまったのであろう。
彼女の警戒を解く為に、トキコは言葉を続けた。


「ほら、たとえば体育のドッチボールでー・・・」
「あ、あぁ!そういうことね。」
「うん。」
「・・・それは、仕方が無いんじゃないかな?だって、試合だし・・・」
「そう?」
「うん、・・・トキコは?」
「私?」


 分かってる癖に。そう、心の中で彼女を嘲笑した。

322しらにゅい:2011/02/06(日) 17:32:41


「私だったらー、ユーイちゃんとおんなじかな?でもねー、仕方ない、とは思わないよ?」
「うん・・・?」
「勝ちたいから、相手には容赦しないもん。」


 例え見知った友人だとしても、我らが崇拝するあの人の為ならば一切の容赦はしない。
むしろ、それがトキコの優しさでもある。
半端な覚悟では相手を打ち倒すことも、守り切ることも出来ない。
そういった意味では火波スザクと都シスイ、あの二人が思い浮かぶ。
スザクであれば、あの約束通り、迷わず自分を殺してくれるのだろう。
しかしシスイはどうだろうか。
彼は今過ごしている日常を壊したくないが故に、日々奮闘している。
過去に彼と一度だけ戦場で接触したことがあったが、その時のシスイの眼は常に真っ直ぐであった。
守りたい人の為、日常の為、その揺ぎ無い意志が彼の戦いに対する自信を支えていた。
ならば、その日常の一部が突如彼に牙を向いたとしたら、彼は一体どうするのだろうか。
その信念を、保つことが出来るのか。
もしかしたら、その時彼は・・・


「・・・っふふ・・・」
「トキコ・・・?」
「へ?あ、ごめんごめん!ちょっと考え事してたの!」
「そう?・・・急に笑うから、びっくりしたよ・・・何考えてたの?」
「うーん、鳥さんを次はどうやって弄ろうかなーって。」
「酷っ!」
「あははー。・・・でもね、私思うんだー。」
「ん?」
「ユーイちゃんは仕方が無いって思うかもしれないけど、リオくんなら・・・進んで投げるんじゃない?」
「え、そう?」
「うん、・・・きっとそう。」


 彼ならば、進んで彼女に投げるだろう。
何故ならば、誰にも彼女を取られたくないから。


「それに、もし私がユーイちゃんに当てたら、リオ君すっごく怒ると思うよ。」
「・・・そうかもね。」


 彼の性分ならやりかねない、と苦笑を漏らした有依であったのだった。
ほのかな狂気がそこにあることも、露知らずに。









始ノ章_ハルナユウイ編


(さぁ、そろそろ始めようか)
(朱鷺の思惑は少女に届かず)

323しらにゅい:2011/02/06(日) 17:35:29
「どーもー。」
「へ?・・・どなたですか?」
「・・・可愛らしいお嬢さん、こんにちは。」
「え、え?」
「よろしかったら、君のお名前を聞かせて貰っても?」
「わ、っわたし・・・は」
「よぉエダせんせー。」
「・・・・・・そうやって後頭部にハンドガンを突きつけてくるのはお前か!タマキシズル!!(裏)!!」
「(裏)って何だ。」
「あ、怖い方のたまちゃんだ!」
「ののか、留守番ご苦労。ほれ、土産だ。」
「わぁー!!パンダのマーチ!!」
「お、おまっ、女子高生にまで餌付けを・・・!?」
「今すぐ死ぬかじわじわ殺されるか選べ。」

・・・

「・・・して、何だ。お前の葬式の日取でも決まったのか?」
「何いきなり!?違う違う!!もうすぐ予防接種日だろ?だから学校と打ち合わせしに来たんだよ。」
「おいしい・・・もぐもぐ・・・」
「なんであの場にお前がいなかったんだと思ってたが・・・まさかの保健室でこんな可愛らしいお嬢さんと禁断のランデブー・・・
あごめんなさい銃口向けないで。」
「ただでさえ残り少ないお前の人生を今終わらせてやろうか、俺の真心で。」
「それは真心じゃなくて殺意だ!!」
「せっかくの親切を・・・はぁ」
「ため息つくところじゃないし残念そうにハンドガン磨くな!!というか学校で武器持ってるとか何なのお前!?」
「るせー。」
「・・・お医者さん、たまちゃんの知り合い?」
「あー・・・まぁ腐れ縁みてぇなもんだ。」
「ふーん・・・」
「腕も立つし、誰にでも優しくて、良い医者だ。女好きなのが欠点だがな。」
「よせやい褒めたって何にも出ないぞっ?」
「きめぇ。」
「あはは、仲良いんだねー。」
「え・・・?」
「いやいや、それは勘違いだよお嬢さん!むしろ私は君と仲良くなりたい・・・」
「ののかに触んな、菌が移る。」
「菌!?いや、むしろ触ったほうがいいんだぞ?胸がおっきくなるんだよー?ののかちゃん。」
「む、胸が・・・!?」
「そうやって騙された女は何人いたか・・・」
「騙してないし、ホントだから!!」
「はいはい・・・いいから黙れ、本気で鉛玉食わせるぞ。」
「・・・・・・・・・」
「・・・黙っちゃった。」










タカシとののかと談話中
「腐れ縁」


「胸・・・」
「ののか、胸以外も触られてみろ。マッチョなるぞ。」
「えっ?」

324しらにゅい:2011/02/06(日) 17:39:13
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・な、何か用か?トキコ。」
「・・・なんで鶴折ってるのー?」
「え?・・・あー、えぇっとチャ・・・知り合いが、千羽鶴折るから手伝ってくれ、って言ってきてさ・・・」
「ふーん・・・・・・・・・一角君、優しいもんね。」
「いやいや、優しくねーよ。これぐらい当然だろ?」
「一角君が優しいから、そう思うだけだよ。」
「そうか?」
「そう。」

「「・・・・・・・・・」」

「・・・(なんだ、この変な緊張感・・・)」
「一角君は、駄目な人だよ。」
「・・・は?」
「駄目な人。」
「・・・トキコ、いきなり酷くないかそれ?」
「だって思ったこと言っただけだもん。」
「・・・何を思ったか知らねーけど、それを言うならトキコだって駄目な人だろ?
なりふり構わず突っ込むし、学校の備品は壊すし、この前はケイイチさんのこと・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・あ・・・(やばい、泣かせたか?)・・・トキコ、その」
「私は、私のことしか考えないからそうするんだもん。
なのに、一角君はいっつも別の人のこと考えて動いてばっかり。」
「・・・・・・え?」
「自分のことは二の次で、周りしか見てない。・・・だから駄目なんだよ。
そんなことばっかりしてると、いつか心が壊れるよ?」
「っ・・・・・・トキコ、それ、どういう意味なんだ。」
「だから、思ったことを言ってるだけだよ。」
「本当に?」
「・・・なんで疑うのかなぁ?私のこと嫌い?」
「別にそんなわけじゃ、」
「言うならはっきり言ってよ。私嘘吐かれるの大っ嫌いなの。」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・あ、足曲がってるよ?その鶴。」
「・・・・・・あ、あぁ・・・」

「「・・・・・・・・・」」

「トキコ、・・・ごめん。」
「なんで一角君が謝るの?」
「・・・大切な仲間を、変に疑ったからだよ。」
「・・・・・・・・・」
「トキコがらしくないのも分かるけど、なんか、俺もらしくないな。・・・雨降ってるからかな、はは・・・」
「・・・やっぱり、一角君は優しすぎるよ。」
「そうか?」
「そうだよ。」
「・・・・・・・・・悪い、けどこれが俺の性分だから。」
「そっか。・・・いいんじゃないかな?一角君が良いって言うなら。」










シスイとトーキングin教室
「雨の日」


「・・・・・・でも、私と戦う前に壊れちゃ嫌だよ。」

(その呟きは幸いにも雨で掻き消され)
(麒麟の耳には入ることはなかった)

325しらにゅい:2011/02/06(日) 17:57:59
というわけで三話投稿させていただきましたー。
カカッ、となってやった、反省は(ry
使用キャラは次のとおりです。

>>321 榛名有依・高嶺 利央兎(紅麗さん)、火波スザク(スゴロクさん)、都シスイ(akiyakanさん)
>>323 エダ タカシ(ヨシダサン)、緑音ののか(樹アキさん)
>>324 都シスイ(akiyakanさん)

>>321>>314直後のユウイちゃんとの会話からの話です。何故トキコが場所を教えたのか~という
ことについて書いていたつもりが、なんかシスイ君いじめとリオ君ヤンデレ話に(ry
行動を起こし始めるかもしれないとの事で「始」シリーズとさせて頂きました。
・・・リオ君に怒られるのはもう目に見えてるわぁ´`
>>323はエダ先生と接触させていただきましたキャッホーイ!!ののかちゃんが普通に保健室の
マスコットとなっているのですがwwwえがったのかなぁ・・・´`←
裏だとボロクソ酷いこと言ってますが、別に嫌いじゃないんです、嫌いじゃないんです!
むしろ愛情の裏返しっていう(ry
>>324は冒頭の折り紙シーンについてですが、チャドがテレビで千羽鶴を見まして、よしそれじゃあ
蒼崎真衣ちゃんの為に千羽鶴折ろうぜ!とウスワイヤ全員を巻き込んで千羽鶴を・・・というむっちゃ
どうでもいい裏話があります。人の良いシスイ君なら倍に作ってそうだなー、って。
そんな彼の『優しさ』をトキコがどう捉えたか、という話です。
作った日が雨だったせいか、なんか全体的に暗い話になってしまいました・・・しかもシスイ君に
遠慮なく言ってるし・・・ヒイイイ(;´Д`)なんだトキコ、不器用だけど人のこと気遣ってんじゃん?
と思ったら最後にそういうことかよォォォ!?っていうのがやりたかったっていうのも・・・あったり←

326砂糖人形:2011/02/06(日) 18:59:08
「おーい!ネイロー!」

俺は前を歩いている女子に声をかけた 彼女は俺にちゃんと気づいてくれる唯一の女子だ

俺の好きな奴でもある

「ん?ああ、ショウタ」
「あ、あのさ・・・」
「何?」
「きょ、今日これからどっk「ネイロおおおおおお!」

後ろから何かが走ってくる音がした
と思ったら思いっきり突き飛ばされた

ユウムだった

「ネイロ!今日カラオケ行かない?」
「んー、いいよ。」
「やったあ!」

前にいる女子二人は楽しそうに話している

「あ、そうだショウタ、話って何?」
「いや、何でもないっす」

ネイロの隣にいるユウムは俺を勝ち誇ったような目で見た
目からソーダ水がでた


と言うわけでまたまた四コマシリーズ

今回の話はショウタがネイロを好きだという話です
そしてそれを邪魔するユウム

あ、でもユウムがネイロを恋愛対象と見ているわけではなく(まあ、見てたら百合になりますからねw
友達として大好きなので邪魔者をネイロに近づけたくないというわけです。

327(六x・):2011/02/06(日) 20:12:42
>>303 >akiyakan さん

Wikiに質問まとめといういいものがあった!
ありがとうございます!これから参考にしよ(^ω^)

「凪さんを心底邪魔だと思っていた名無しのクソ教師(実はホウオウグループ)がスキー場で雪崩を起こす→凪さん巻きこまれて死亡→復活」なら、ナイアナ成立になるでしょうか…?

もし成立なら、これで発症編書きます。シリアス初挑戦や・・・

※くそ教師は、後に復活した凪さんに倒される捨てキャラなので名前はありませんw

328(六x・):2011/02/06(日) 20:31:59
本編だよー

鶯色さんのハヤトくん、樹アキさんのののかちゃんをお借りしました。



「~♪」
「凪、ノート見せてくれる?」
「いいよ、はい。」
「ありがと。さすが凪、きれいにまとまって…ッ!?」

☆彡(∪^ω^)うんうんお
↑ただし魔法は尻からでる。う●ちじゃないから恥ずかしくないもんっ☆彡

「;::ブフォッ(;゜;Ж;゜;)な、なにこれwwうんうんおじゃねーよw」
「美少女にノートを借りたら、いささか品のない落書きを見つけてしまったとは君も災難だな^^」
「ほんとにww女子が描いていいネタじゃねぇよこれwww尻から魔法てww」
「うけたようで何よりだ。ところで、美少女ってのはジョークなんだがその点についてのツッコミは無しかい?」
「うーん。凪、結構男に人気あるみたいだし、美少女ってのは間違いじゃないだろ。」
「っ…(赤面)そ、それ写してていい、終わったら机の上に置いといてくれ。私はこれで失礼(逃亡)」
「お、おぅ。じゃあしばらく借りてる。(やけに急いでたし便所かな…)」


「あ、凪っち先輩だー」
「や、やぁ。ののか。」
「あれ?なんか顔赤いよ?」
「や…別に気にせず」
「さては、好きな人にでも会えましたか?」
「そ、そんなことはないのだよ///」
「さっきより赤ーい。怪しーい(^ω^)」
「ほ、本当に何もないから。もういいだろ…やめてくれ、恥ずかしい///」
「いつもクールな凪っち先輩がこんなに照れ屋さんだったなんて…可愛いv」
「なっ…いい加減にしないとさすがに怒るぞ!///」
「そんな真っ赤な顔で怒られても怖くないよー♪」
「くっ…後輩にここまで言われるとは…」
「凪っち先輩…お菓子食べる?(ちょっとかわいそうだったかな?)」
「…うん。」

凪さん、女子に弱いなぁw男子相手だと強いのに。それこそ「この豚が」とか平気でいいますよw
凪さんはクールでジェントルマンで、すごく…女のコです。

329akiyakan:2011/02/06(日) 21:04:54
>しらにゅいさん
どんどん増える、ヤンデレww ミキの系譜じゃww
シスイは雰囲気というか、トキコに意地悪されても何となく「あぁ、まぁ、シスイだしな」という訳の分からん納得が……
日常の一部が牙をむいた時、奴はどうするのか! ……試練としては最高の展開なのですが、トキコさん敵にするとか、私が嫌です(何。
エダさんに玉置先生との友人設定が……片や二面性を持つ動物好き保険医、片や女好きの町医者。まともなお医者様は、いかせのごれにはいないのかwww
そしてざっくりトキコさん突っ込んだー! シスイの長所にして短所に突っ込んだー!
他を優先し、自を犠牲にする。人間として尊敬されるものでも、生物としてみると長生きできないのがシスイの人間性です。ある意味じゃ、トキコの「自分のために」っつー方が、正しいと言えば正しいんですよね。
そして、ここの最後の台詞はゾクゾクしました。内容は物騒なのに、「ああ、ついにトキコに認められたんやな」って感じのゾクゾク感が。

砂糖人形さん>
ショウタが不憫でならんw 不幸属性に拍車がかかるw

(六x・)さん>
本編で言えば、「テンペスト」みたいな展開なんで大丈夫だと思いますよ。テンペストの能力を得たナオヤは、マンションの住人ごと吹っ飛んでいるわけですし。
そして何だ、この可愛い生き物はwww 凪さん、Sでクールで乙女とか、おいしすぎるww

330スゴロク:2011/02/07(月) 02:30:10
出演キャラ最多記録に挑戦です。日常→戦闘ですよ。時間軸は「オラトリオ」の後と言う以外不確定ですよ。



「やっと授業が終わった……」

机にだーっ、と体を投げ出し、僕は放課後の解放感に浸っていた。
今日は非っ常ーに疲れた。どちらかというと精神的に。啓介が何やら上機嫌で、教室の空気が妙なことになっていたのと、トキコの念押しがある。
昼休みに、

『鳥さん。「その時」が来たら、ちゃんと殺しに来てね? 私も鳥さんを殺しにいくから、ね』

と。しかもいつもの楽しそうな感じではなく、どこか不安げに。
調子が完全に狂わされ、午後の授業はまともに聞けなかった。あー、疲れた。

(何があったんだ、トキコの奴)

啓介もそうだが、ホウオウに心酔し、いつも自信溢れるあいつが調子を崩すなど、僕にとっては想像だにしないことだった。しかし、あいつも人間である以上、ありえなくはない。ないのだが、正直今でも信じ難い。
―――まあ、安心しろ。「その時」が来たら、約束通り命を貰いにいくから。

さておき、今日はとくにすることもない。まっすぐ家に帰るとしよう。
けどその前に、

「ライブあるんだよな……これは見にいかないとな」

正人の所属するバンドがライブをやるのだ。衝動の問題で告白こそ今は出来ないが、それを差し引いてもライブは見に行きたい。純粋にあのバンドが好きなのもあるし。




――――オオオオオッ!!

「……入れない」

体育館に着いた僕は、入口で呆然としていた。――――こんなに観客が多いなんて、聞いてないぞ。
確かにこのバンドは学内でも人気が高いが、こんなに盛況とはどういうことだ?
立入禁止になっている、入口の玄関スペースの上にある物置に上がってステージを見て、そのわけがわかった。楽しげにフルートを演奏している、あの子は……。

「――――ネイロ! と、あれは……」

確か、「星神 ムーン」だ。12歳とは思えない容姿を誇る、水色の髪が特徴的な少女。
日本有数の資産家として知られる星神財閥の娘で、知る人ぞ知る事実として、歌手をしているという。
ただ、なぜか右目を眼帯で覆い、左の頬にはハート型の傷がある。ファンにとってはそれも魅力の一つらしいが、僕にはよくわからない。

それよりも今問題なのは、

「正人……は……って、いないのか~!?」

ドラム担当の正人がいない。僕としてはかなり落胆した。正人がいないなんて……。

「あーあ……」

残念だがそれも仕方ない。正人はバイトの都合で、ライブに出られないことがある。いつもはスケジュールを調整していると聞いたが、今日は無理だったようだ。

「しょうがないか……」

ライブは面白いが、一番の目的が空振った以上はもう見る気が起きない。すごすごと、僕は教室へ引き返して行った。

331スゴロク:2011/02/07(月) 02:30:58
「……ちょっと待って下さい。なぜ私なのですか。私は開発担当ですよ。しかも、前の任務に失敗したというのに」

某所。ホウオウグループ開発部、ゼアは大いに狼狽えていた。というのは、ユウム経由で伝えられた命令の内容が、あまりに問題のあるものだったからだ。

「あたしに聞かれても困りますって。ホウオウ様の仰ったことをそのまま伝えただけですからね」
「だからと言って、なぜ私が」
「七谷さんとかスキュアロウさんも送るらしいですよ」
「……前の任務のメンバーじゃありませんか……連携は望めませんね、これは」

七谷 狂夜、スキュアロウ・バルカンチ。どちらも、ゼアが失敗したボルカノン予備機の移送任務の参加メンバーだ。しかも今回は支援と護衛。これは下手をすると……。

「……またしても失敗、ですかね」
「それはあなた次第、とのことですよ。じゃ、あたしはネイロちゃんと遊びに行くんで、これでー」

それだけ言い残し、ユウムは去って行った。残されたゼアは、柄にもなく頭を抱えていた。

「……ホウオウ様は潜入中のメンバーについては触れておられない……察知されればスザクは確実に来る……ということは、間違いなくトキコが邪魔をしに来ますね……」

トキコは正直、グループの中でもかなり扱いづらい部類だ。ホウオウには忠実だが、それ以外の命令はまったく聞かない。しかも、当のホウオウから「成すがままに任せよ」との命令が出ている。つまり、止める術がない。

「……仕方がありません。奴を使いますか……」




「……また、ストラウル跡地か?」
「そうらしい。アキヒロさんから連絡があった。しかも今回は反応が恐ろしくでかい」

屋上に出ていた僕は、シスイから話を聞いていた。なんでも、ギルギガントなるロボット、ボルカノンに続いてまたしても例のエネルギー反応があったらしい。しかも、今回はそれがかなり大きな反応だとか。

「でかいって……戦艦くらいか?」
「さすがにそこまでじゃない。サイズっていうより、使われてるエネルギーが多いってことかな」

使われているエネルギーが多いと言う事は、つまりそれだけ強力な何かということだ。奴らは世間に認められない才能や技術を持った連中の集まりだ、万一試作型でもとんでもない性能を持つ。それは、かつて出現したと言うボルカノン(その時は恐らく試作型だったらしい)が証明している。

「なんにせよ、ホウオウグループ絡みなら僕が行かない理由はないな。シスイ、手伝おう」
「そうしてくれるとありがたい。何しろ、今回は大掛かりな作戦になるからな」
「大がかり?」

アースセイバーが「大掛かり」……つまり?

「何が出て来るかわからないから、ウスワイヤにいる人も含めて、出られる人はとにかく出よう、ってことになったんだ。ただ、ケイイチさんは諸事情で参加出来ないらしいけど」
「そんな緊急事態なのか? 誰が?」
「えーと……まず学生・子供組。俺、光一、ハヤト、啓介、ジミー、奈桜、アラタ、錬太郎」
「ちょっ、待て!? そんなに来るのか!?」

この時点で既に8人。いくらなんでも多すぎるだろう。
しかし、

「大人組が……修斗さん、聖さん、蒼さん、ゲンブさんの4人。シノさんとバク教官は後方指揮だ」
「おいおい……」

まだそのエネルギーの源が何かもわかっていないのに、総勢12人が前線へ。これはさすがに異常な事態だ。
シスイ曰く、エネルギーの規模が桁違いに大きいため、最悪の場合これでも足りないらしい。

「ま、まあ、そのくらいはするか……する、よな?」
「驚くのはわかるけど、それくらい非常事態なんだ。原子核砲の半分ちょっとくらいの反応だから」

――――納得した。

「……それは、なおさら行かないとな」
「すまない、スザク」
「気にするな。……ただ、今回はさすがに無事で帰る自信はないな」

シスイがちょっと心配そうな顔になった。そうは言っても、実際それほどの何かを相手にする自信はない。
戦闘力は高い方だと自負しているが、マシンが相手だと……。

「……弱気になってたら戦う前から負けるな。とにかく、頑張ってみよう。で、いつだ?」
「今夜だ。手遅れは避けたい」
「……サッカーが見たかったんだけどな……仕方ない」

332スゴロク:2011/02/07(月) 02:32:01
――――夜。

「……では、お願いしますよ」

狂夜とスキュアロウを引きつれて目的の場所――――ストラウル跡地にやって来たゼアは、今回呼び出した相手に念を押していた。

「任せなさい。他ならぬホウオウ様の命令です、きっちりと仕事はしましょう」
「……本当に頼みますよ?」
「信用のないことだ。しかし、そういうならばあなたもあなたの仕事をきっちりとこなすのですね」
「わかっています。わかっていますとも、チネン……」

ゼアが話しているこの男の名は、チネン。ホウオウグループの庸諡(中級)幹部にして、上等諜報員。
元傭兵で、航空機のエキスパートでもある。偵察・諜報など情報関係の外部連続任務が主な役割だが、今回この男を使ったのは理由がある。

「……『ブラストル』はスタンバイ出来ていますか?」
「もちろんですとも」
「了解。……二人とも、すぐに戦闘の準備をしてブラストルへ。アースセイバーが来るはずですので、迎撃をお願いします」
「キヒヒッ、任せろ」
「おう。……ゼア、あんたはどうするんだ」

狂夜に問われ、ゼアは足早に「目的地」へ向かいながら言った。

「後始末です」





ストラウル跡地は、いつもとは違う雰囲気に包まれていた。
人の気配。そして、戦意。あるいは、動揺。恐怖。
それぞれの位置で待機するメンバーを、僕は眺める。

都シスイ。麒麟の力で自身を強化して戦う、戦友。

蒼崎 啓介。並みはずれた超能力を持つ、本物のエスパー。

ハヤト。実はアースセイバーにいた、ぱっと見女の子の見た目不良。

闇野 光一。レーザーを自在に操る、超奥手。

アラタ。星型の盾で仲間を守る、家族思い。

ジル・ミナル。爆発を操る、猫系の女の子。

藤岡 奈桜。時間を操る、ツッコミ属性。

錬太郎。四次元への扉の鍵を持つ、パソコン好き。


そして大人組。

水波 ゲンブ。格闘術を極めた、僕の監視役。

蒼井 聖。武器の扱いに長けた、能力者嫌い。

森山 修斗。ロープを手足の如く操る、マジシャン。

篠崎 蒼。大気を操る、元警官。


最後に僕、火波 スザク。決戦能力の紛い物を持つ、兵器のなりそこない。


これだけの人数が動員されるということは、感知されたエネルギーというのは相当に大きいのだろう。
全員が耳につけている通信機から、シノさんと七篠さんの声が流れて来る。

『全員配置についたっすね? 目標のエネルギーは、座標207-229より動かず。引き続き警戒をお願いするっす』
『戦闘に陥る目算がかなり大きい。各員、能力の使用と限界反応に、くれぐれも注意せよ』

――――了解。

全員の声が、それぞれに重なる。そしてそれっきり、人の気配は消えた。
全員息を殺し、気配を静め、何かが起きるのを待つ。何が出てこようと、このストラウル跡地から出すわけにはいかない。
時間だけが過ぎて行く。一分、二分……。
あとになって計算してみると、わずか12分しか待っていなかったというのに、感じられた時間のなんと長かったことか! 僕はてっきり、もうすぐ夜が明けるはずだとさえ思った。


そして、「来た」。

333スゴロク:2011/02/07(月) 02:32:41
「来る……!!」

啓介が呟く。ほぼ同時、シノさんの叫びが走る。

『当該座標のエネルギー反応、移動開始! そっちに向かっているっす!!』
「来ますよ!! 全員、戦闘態勢!!」

蒼さんがそう叫び、全員がそれぞれに構えを取った瞬間、「それ」は現れた。

廃ビルを一つぶち破って現れたそれは、蜘蛛の様な姿をした戦車。

「ダルセノンだと!?」
「違うわ、あれは……!?」

奈桜の言うとおり、「それ」はダルセノンとはあちこちが違っていた。
足の先端に車輪。一瞬見えた背部に砲口。
奴らの新兵器なのか? 


『これはこれは、アースセイバーの皆さん。こんばんは』


「それ」の中から声が響いた。どこか癇に障る、男の声。声は続ける。

『私はチネン。もう気付いたでしょうが、栄えあるホウオウグループの一員です』
「けっ、栄えあるとは冗談が過ぎるな。まあいい、どっちにしてもてめぇは消す」

聖さんが対戦車ライフルを呼び出し、早速血気にはやっている。それを抑えるようにして、蒼さんが問いかける。

「お前の目的は、なんだ!?」
『さあ、なんでしょうねえ。知りたければ想像してみることです。ハハハハ……』

いちいち苛つく。物言いと言い、態度と言い。ハヤトや啓介辺りには効果覿面だったようで、苛々と足を踏み鳴らしたり舌打ちをしたりしている。

『さあて、せっかくお会いできたことです。この「ブラストル」の力、味わってみなさい』

戦車―――ブラストルがこちらに向き直る。それが、始まりだった。




「おら――――!!」

いきなり聖さんが仕掛けた。ライフルを構え、一発、二発と続けざまに撃ち込む。しかし、着弾する端から装甲に弾かれてしまう跳弾をアラタが防いでくれたが、効かなくてはどうしようもない。

『ハハハハ、無駄ですよ。その程度の攻撃ではね』

チネンの声が響く。くぅぅ、苛つく。
だが実際その通り、通用していない。――――それで詰みかといえば、まったくそんなことはないが。

「なら、こいつだ!!」

光一が両手をかざし、光を集め始める。しかし、それを見逃すような相手では決してない。耳障りな笑いと共に、背部からミサイルを放って来た。―――スタービングチルドレン!!

「させないっ!」

アラタが盾を展開するが、それだけで防ぎ切れる量ではない。だから、

「龍義鏡ッ!!」
「ここは、通さない!」

僕が鏡を展開して割り込むと同時、錬太郎が空間を割り、ミサイルを次々と防ぎ、呑み込む。そして、ミサイルをしのぎ切った時には光一のチャージは終わっていた。

「スザク、錬太郎!!」

警告の声に僕らが飛び退ると同時、光一は巨大なレーザーをブラストル目掛けて放った。最大出力なら加粒子砲に匹敵すると言うあれを受けては、機体が無事でも中のパイロットはそうはいかない。

「これでどうだぁぁ!!」
「よし!!」

シスイが快哉を上げる。コクピットの直撃コースだ。
――――これがダルセノンだったら、だが。

『無駄です、と言ったでしょう』

チネンがそう言うと同時、ブラストルがその巨体からは想像できない素早さで横に移動した。目標を失ったレーザーはそのまま突き進み、虚空を切り裂いて消えて行った。

334スゴロク:2011/02/07(月) 02:33:22
「な!?」
「そんな……」
『どうしました、もう終わりですか?』

嘲笑するようなチネンの声が響く。どこまでも余裕を崩していないが、そこに割って入るものがあった。

「んなワケがあるかよ、ボケがっ!!」

それと同時、今度は機銃掃射がブラストルを襲った。この乱暴に過ぎる言葉遣いは、聖さんだ。戦いになると非常に荒っぽくなると聞いていたが、本当だった。
ブラストルに実弾は効かないが、チネンの気を引くには有効だったようだ。

『やれやれ、諦めの悪い』
「悪いさ。俺達アースセイバーが、ホウオウグループを見逃すはずがない』

修斗さんが力強く言うと、それに背を押されるようにして、学生組の表情に覇気が戻る。
すると、チネンの反応が変わった。

『我々に勝てるつもりですか、アースセイバー』
「当然だ」

即答したのはゲンブだった。

「戦う前から負けを覚悟する者はいまい。だからこそ、あの暗殺者は勝ったのだ」
「大体、あんたらの頭はケイイチに何度も負けてるだろ!」

錬太郎がそれに続けて言い放った。が、それはどうも逆効果になったらしい。

『…………』

しばらくの沈黙。そして、

『とんだ戯言を……人間という動物は脳の思考回路まで腐敗しているのか?』

口調も調子も変わった。――――逆鱗に触れた、のだろう。

『我らホウオウグループが、絶対者の手足たる我々がいかに恐ろしいか、少々わからせる必要がありそうだ』

そして、悪夢が始まる。

『さあ、お前たち。我らの力を見せてやるのだ!!』
「言われるまでもないっ!!」
「てめぇにだけは言われたくねぇなぁ、オイ!!」

ブラストルの両側から、二つの人影が飛び降りて来た。1人は月光の色を宿した、銀色の髪の青年。
そして、もう一人は、

「ス、スキュアロウ!?」
「ま、マジかよ……」

シスイと光一の叫びが全てを語っていた。僕も実際に見るのは初めてだ。
スキュアロウ・バルカンチ。ホウオウグループの中でも上位に位置する男で、特徴的なのはその6本の腕。
それぞれから鋭い刃を出して敵をせん滅する、恐らく生身での戦闘力はホウオウに次ぐ。
そのホウオウは、様々な事情で自由に力を使えないことを考えると、実質グループ最強と言っても過言ではない。ケイイチやアキヒロさんならともかく、こいつと正面からやり合って勝てる奴が何人いるか。少なくとも、数の差はこいつの前では無力だと言うのは間違いない。

「おぉっと、どこかで見たツラがいるな。ボルカノンの事は忘れてねぇぜ、キヒヒッ」

シスイ、続けて光一に視線を移し、スキュアロウが嗤う。射すくめられた二人は、心なしか硬直したように見えた。
しかもこれに加え、ブラストルともう一人がいる。状況は最悪と言ってよかった。

俄かに緊迫する状況の中、蒼さんが叫んだ。

「スキュアロウともう一人は俺達が引き受ける!! お前たちはブラストルを!!」
「え!?」

確かに現状ではそれが最善だろうが、どうするのか。スキュアロウと銀髪は自由に動き回る事が出来、それにブラストルの行動範囲は広い。個々に相手すると言っても、どうやって。

「地割れでも起こすかぁ?」

からかうような銀髪の言葉に、修斗さんが答えた。行動で。

「そんなことはしないさ。こうするんだよ!!」

瞬間、修斗さんはいつの間にか正面に伸ばしていたロープを思い切り引っ張った。同時、聖さんがロケット砲をそちらに向けて撃ち込む。と、次の瞬間だ。

「!? な、なん……」
「う、おおおおおお!?」

敵味方問わず、全員が驚愕した。――――ビルが二つ、こちらに倒れてきている。

「まずいっ!!」
「くそが!!」

スキュアロウと銀髪は左へ、ブラストルは右へかわした。
僕達はというと、アラタと錬太郎が粉じんや瓦礫を防いでくれる中、ブラストルを囲い込むべく右へ右へと走った。
そして、完全にビルが倒壊した瞬間、轟音と粉塵が舞い上がり、戦場はきっかり分断されていた。

――――そう、三つに。

335スゴロク:2011/02/07(月) 02:34:01
「やってくれるな、紐使い」
「フォレスト・マジシャンと呼んでくれ」

聖と組んでの大技を成し遂げた修斗は、どこか得意げにそう言った。前に進み出たゲンブがそれを嗜める。

「修斗、何をしている。相手はホウオウグループ最強の男と、正体不明のもう一人だ。気を抜くな、死ぬぞ」
「わかっています」

それを境に表情から笑みが消え、真剣そのもの、戦場の顔になる。蒼も手をかざし、空気を集め始める。

「行くぜ、スキュアロウ……ってどした?」
「冗談じゃねぇ、冗談じゃねぇんだよ。俺はあいつらに借りを返しに来たんだよ、借りをよ。なんでこんな連中の相手しなきゃならねぇんだ」

わかりやすくスキュアロウは苛ついていた。これはいける。どんな相手であろうとも、冷静な判断力が鈍れば、わずかなりとも勝機が見える。
が、

「よし、それなら俺がなんとかしてやる」
「は?」

スキュアロウが間抜けな声を上げるのと同時、銀髪の男はその足の下に手を入れると、

「おい、狂夜、何を」
「どっせぇぇぇぇい!!」

思い切り、放り投げた。倒壊したビルの、向こうへ。

「うおぉぉぉぉぉぉ……」

叫び声を残して、スキュアロウが吹っ飛んで行く。その行く先は、

「し、しまった!! あいつらの方へ!!」

蒼が叫んだ。力があるとはいえ、実戦経験で言えばスキュアロウの足下にも及ばない。このままでは、みんな殺される。

「くそっ、そうはいくかよ!!」

聖が瓦礫の山を乗り越えんと走る。が、その行く手を銀髪―――狂夜が阻んだ。

「行かせねぇよ、これが」

そして、その体が変貌を始める。





「参ったな……みんなと分断されてしまった」
「ここからでは援護出来ないな……どうする、シスイ」

僕とシスイは途方に暮れていた。走りこんだ際、ちょうどハヤト達と僕らを分断するように瓦礫が降ってきたため、戦場の外へ僕達二人だけが締め出されてしまったのだ。これではどうしようもない。

「身体能力を強化して、よじ登るか?」
「ダメだ、それだと向こうについてから足手まといになる」

僕の提案はあっさり却下された。となると、どうしたものか。

「……」
「……」

上手い手が思いつかないまま時間が過ぎる。と、その時だ。


「……ぉぉぉぉぉおおおおおおっ!?」


「「!?」」

突然上から声がした。驚いてそちらを振り仰ぐと、少し欠けた月を背に何かが降って来る。
――――腕が6つ!?

「な!!」

ズドォン、と轟音を立て、そいつは頭から地面に突っ込んだ。そして、粉塵を割って、立ち上がって来る。

「何しやがんだ、あの野郎……っと、いつかのガキ共じゃねぇか」

――――スキュアロウ・バルカンチが、そこにいた。

「なんで、こっちに……」
「狂夜のバカが無茶しやがったのよ。まぁそれはいい……せっかくだ」

ジャキン、と音を立て、6つの腕から鋭利な刃が飛び出る。

「ハデにやろうぜ、ガキ共っ!!」

応えるようにして、僕の髪が赤く染まり、シスイがオーラを纏う。
絶望的な戦いが今、幕を開ける。

336スゴロク:2011/02/07(月) 02:35:15
「ぬおおおお!!」

咆哮を上げ、ゲンブが狂夜に襲い掛かる。しかし、狂夜は繰り出された神速の拳を軽くいなし、逆に痛烈なカウンターを叩き込んで来た。

「そらよっ!」
「!! が、ふっ……」

ハンマーで殴られたかのような痛みに、思わずゲンブが後ずさる。入れ替わりに聖がガトリングガンを乱射するが、人間離れした動きでアクロバットに回避され、まったく当たらない。

「ちぃっ、化け物が!!」
「同類に言われたかねぇよ、武器商人が」
「だぁれが商人だぁぁっ!!」

見え見えの挑発にあっさり引っ掛かり、聖はさらに弾丸をばらまく。当然の如く回避した狂夜は、跳躍して一気に躍りかかろうとしたが、

「ぐほっ!?」

顔面に蒼の放った空気の弾丸をくらい、仰け反りながら墜落した。

「聖さん、熱くなりすぎっす!」
「ちっ……」

舌打ちしながら聖が次の武器を呼び出す。サモンアームズ……一度使った武器と同じ種類の武器を呼び出す能力だ。現れたのはマシンガンだ。
その銃口が狙う先で起き上がった狂夜は、人間の姿をしていなかった。
全身が獣毛でおおわれ、手には鉤爪、顔は狼そのもの。狼男――――おとぎ話の中の存在のはずの者が今、ここにいた。
だがここはいかせのごれ。何が起きても不思議ではない。そもそも神だの巨人だのがいる世界だ。狼男がいてもおかしくはない。

「当たらねぇって、そんなもんはよ!!」

ばらまかれる弾丸を、再び獣の動きで避けにかかる狂夜。だが、その動きが突如止まる。

「ぐお!? な、なんだ、動けねぇ!?」

気付けば、彼の四肢を黒いロープが縛っていた。修斗がひそませていたものだ。

「聖さん、蒼さん、今です!」
「わかってらぁ!」
「いけぇぇぇっ!!」

聖のマシンガンが火を吹き、蒼の空気弾がぶつかる。もんどりうって倒れた狂夜目掛け、さらにゲンブが跳躍からドロップキックを見舞った。

「ふんっ!!」
「あぐ、ぉおっ!!」

優勢だったが、相手は腐ってもホウオウグループ。そう簡単に崩れはしない。

「なぁめんじゃ、ねぇぇぇぇっ!!」
「!! うおおっ!?」

跳ね起き様にゲンブの足を掴み、振り回した挙句に聖達目掛けて放り投げて来た。

「危ない!」

修斗が咄嗟にロープで網を作り上げ、それをキャッチした。しかし、それは隙となる。
一瞬で肉薄した狂夜が、その体を尋常ならざる力で蹴り飛ばした。

「がっ!!」

修斗の体が鞠のように弾み、転がる。

「修斗!? う、おっ!!」

聖が新たな武器を召喚するより早く、狂夜の一撃が襲う。声を上げる間もなく吹き飛ばされ、残るは二人。

「くっ、ここまでとは……」
「あまりのんびり相手はしてやれんのだがな」

337スゴロク:2011/02/07(月) 02:35:47
『ハハハハハ、どうしたアースセイバーの諸君!!』

完全にスイッチが入ったチネン駆るブラストルを相手に、啓介達は激戦を繰り広げていた。しかし、決め手を欠いた状態ではどうしても防戦一方になってしまう。
不規則にばら撒かれるミサイルの雨は、ハヤトの「音」が、アラタの盾が、錬太郎の「扉」が防ぐ。奈桜が時折時間と共に敵の動きを止め、そこに啓介と光一、ジミーが攻撃を加える。全力を尽くした攻撃も、ブラストルの特殊装甲の前では悪足掻きに過ぎなかった。

「だからと言って、足掻かないわけにはいかん……!!」
「ああ、でなきゃ死んじまうからな」

未だ戦意を折らない啓介に、ハヤトが同調する。

「そーよ、こんなに服を汚してくれちゃって……絶ッッッッ対に許さない!!」

ジミーが憤怒の形相で言い切る。明らかに丈の合っていない真っ白なローブを着ているが、これが戦闘でボロボロになっている。怒るのも当然だった。

『戯言はその辺にするのだな!!』

瞬間、ブラストルが跳んだ。そしてその頂点で、腹部からミサイルを乱射して来た。

「またか!!」
「ええい、性懲りもなく!!」

再びアラタや錬太郎が防御を行うが、疲労が激しい。何発か防御を抜け、周囲に着弾して爆音を上げる。

「ぐわああ!」
「あう、うっ!」

また、何人かが傷を負う。ここまでで無傷なのは防御を担当していた内のアラタと、感知能力で攻撃を避けまくっていた啓介のみ。その2人も消耗して来ており、長くは戦えない。
ズズン、と音を立てて着地したブラストルだが、ここでチネンがさらに動いた。

『ふむ、先ほどから避けられるはずの攻撃を何度か喰らっている……ここは』

ブラストル正面の黄色い目が、ギロリと奈桜を捉える。

「!!」
『貴様を潰すべきだな』

言うや、ブラストルが奈桜目掛けてミサイルを発射した。咄嗟に彼女はその空間の時を止め、安全地帯へ走る。これ以上、アラタや錬太郎を消耗させるわけにはいかないからだ。しかし、

『逃がすわけがないだろう』

ブラストルがそちらに回り込みながらまた撃って来た。

「!! くぅぅっ!」

歯噛みしながらまた止める。そして走り、回り込まれる。
何度かそんなやり取りを繰り返した後、

「しまった……!!」

奈桜はようやく、己の失策に気付いた。気付いた時には、周囲が己が時を止めた空間に固定されたミサイルで埋まっており、逃げ場がなくなっていた。
これこそがチネンの狙い。

『ハハハハ!! お前の能力、そして行動パターンはわかっているのだ!!』

動揺が、精神を乱す。そしてそれは、能力の維持の終わりを示す。


――――そして時は動きだす。


「――――ッ!!」


鉄の火矢が―――――。

338スゴロク:2011/02/07(月) 02:36:20
スキュアロウはまさに怪物だった。
6つの手を、まるで初めからそうだったかのように自在に操り、鋭い刃で確実に命を狙いに来る。事実、ここまでの全ての攻撃が急所狙いだった。

「く、この……」
「どうしたガキ共。それで終わりか?」

こちらも何度か攻撃を当てていると言うのに、まるで効いた様子がない。一方の僕達は、避け損ねた何発かが当たり、またここまでの疲労も相まって満身創痍の状態だった。特にシスイは深刻だった。疲労に負傷、さらに限界ギリギリの「天子麒麟」でダウン寸前の状態だ。
このままでは、二人とも殺される。
どうする? どうすればいい? 必死で考える僕に、シスイが囁いた。

「スザク……ここは、俺が食い止める……君は逃げろ……!!」
「!? 何を言うんだ、シスイ!!」

こんな状況で、こんな状態のシスイを置いて行けるはずがない。しかし、シスイは言う。

「冷静に考えろ……こんな状態じゃ、二人とも死んでしまう……だから君はアースセイバーに行って、助けを……」
「ダメだ!! それでは君が助からない!! コロネや玉木先生に何て言えばいいんだ!」
「いいから行ってくれ……!! 天子麒麟を限界以上まで使えば、足止めくらいは……!!」
「聞けるか、そんな頼み!! 僕は……僕は君を死なせたくないんだ!!」


迸ったのは、嘘いつわりのない本心からの叫び。そうさ、僕はシスイに死んでほしくない。僕にとって、絶対に欠くことのできない、大切な大切な日常のひとつなのだから。日常を護る。それこそ、アースセイバーのみんなが命をかける理由。組織に属していない僕も、その想いは同じだ。

「キヒヒヒッ、悪ぃがそこまでだ!!」

スキュアロウが嗤い、そして刃を振りかざして襲ってくる。
そのスピードに、避ける事はおろか、考える事もろくに出来なかった。刃が目前に迫り、そこに映る僕の顔がこわばり、


突然、その全てが視界から消えた。


「…………え、っ?」

一瞬何が起きたか理解できず、目を瞬く。と、


「ぐ……な、何が……!?」

何かに吹き飛ばされてうめく、スキュアロウの姿があった。そこから視線を移すと、さっきまで奴がいた場所に、別の誰かが立っていた。
背中に看板を背負った、赤いざんばら髪の男。

「紅、蓮……!?」
「…………」

紅蓮。僕も一度だけ共闘した事がある。束縛を嫌い、いかせのごれ中を放浪している孤高の能力者。
異様に発達した身体能力と、相手の思考をぴたり当てるという特技を利用し、ほとんど無敵を誇る。一言もしゃべることはなく、看板に字を書いて意志疎通を行う。
スキュアロウとまともにやり合って勝てる能力者は、ケイイチ以外に何人いるか、というレベル。紅蓮は、その「何人か」にカテゴライズされるのだ。
立ち上がるスキュアロウに向けて、紅蓮は地を蹴った。

339スゴロク:2011/02/07(月) 02:36:52
狂夜との戦いはこう着状態に陥っていた。ヒットアンドアウェイを徹底して翻弄するゲンブと、空気の密度を変えて移動を妨げたり、呼吸を妨害したりして援護する蒼。対する狂夜は、的を絞られまいと動きまわる。

「ちっ、ちょこまかと」
「ええい、鬱陶しい連中だよまったく!!」

ゲンブは大きな一撃を叩き込めず、狂夜は蒼の妨害を受けて攻めきれず、お互い決め手を欠いたまま戦いが続いていた。
それが崩れるのは、このもう少し後の事。



「はぁ……はぁ……」
「あ、ありがとう、啓介兄……」
「ぶ、無事なら、結構だ……」

奈桜は無事だった。啓介から飛ばされた強烈な思念がミサイルの制御を乗っ取り、全て別方向へ飛ばしたのだ。操作をミスしたものはアラタが防ぎ、錬太郎が「扉」の向こうに消した。ただ、三人ともそれで力を使い果たし、倒れてしまった。奈桜もこれ以上時間操作は出来ず、戦力としては外れた。

「くそぉぉぉっ!!」

現在はハヤトと光一が応戦しているが、光一は溜めの時間が得られないため、大きな一撃が叩き込めない。ハヤトの能力である「音」と両手に持っている短剣はブラストルとの相性が最悪だった。しかも、回りに仲間の多いこの状況では大声で攻撃するわけにもいかず、防戦がせいぜいだった。

『フハハハ、そこまでかアースセイバー!!』

チネンの哄笑が響く。

「黙んなさいって言ってんのよ!!」

ジミーが怒声を上げ、ブラストルのあちこちで爆発が起こる。彼女の特殊能力「ダイナマイトキャノン」によるものだ。
任意の地点を起爆させるというシンプルかつ強力なものだ。しかし、ブラストルの装甲の防御を破るには至らない。

『無駄、無駄、無駄ァ!!』
「くっ……!!」

車輪の回る音を立て、ブラストルが向き直る。

『クックククククク……さあ、贖罪の時間だ! 愚鈍なる人間諸君、迷え、惑え、苦しめ、そして非力たる己を蔑み、苛み、憎み、恨みそして自らの魂を滅ぼし死ぬがいい!!! ハーッハッハッハッハッハ!!』

340スゴロク:2011/02/07(月) 02:37:23
紅蓮の力はまさに圧倒的だったが、スキュアロウもよく粘っていた。互いに攻撃を見切り、かわし、防ぎ、また攻める。
そんな繰り返しで、ここに来て紅蓮の方が押され始めていた。原因は、ここに来た手段。
スキュアロウはブラストルに乗っていたが、紅蓮の方は歩いてここに来たのだ。つまり、体力の差が現れ始め、徐々に、しかし確実に、紅蓮は追い込まれていく。

「……!」
「ハッ、どうやら限界が近いらしいなぁ!!」

スキュアロウの言葉が全てだった。紅蓮が倒されれば、今度こそ僕らの死は確定する。―――だけど、それを甘んじて受け入れる気はない。

「……シスイ」
「何、スザク……?」

問いかけるシスイに、僕は言う。

「一か八かだ。切り札を使うよ」
「切り札……龍精落か? でも、あれじゃ……」

そう。僕の「偽」では、ケイイチやゼア程の威力はとうてい見込めない。しかし、ここで意味を持つのがシスイだ。

「君の『天子麒麟』で、僕の力を一気に強化するんだ。上手くすれば、一気に状況を引っ繰り返せる」
「け、けど……それは」

シスイが迷うのも当然だった。強化された龍精落は、瓦礫の壁を突き破って別の戦場へ到達する。下手をすれば、仲間達を消し去ってしまう可能性があるのだ。
だけど、僕には不思議な確信があった。

「大丈夫」
「え……」
「僕の力は、それだけじゃ破壊にしか使えない。だけど、君がいれば大丈夫。きっと、みんなを救う力になる」
「スザク………」
「……僕は、信じてる。だから、シスイ」



「僕に、力をくれ。みんなを守るための、力を」



沈黙は一瞬。そして、

「……わかった、スザク……俺は、君を信じる」

無言で頷き、立ち上がる。両手を右腰に引き付けるようにして構え、隣に立つシスイが手を重ねる。
高められる「龍義真精・偽」の力が、「天子麒麟」によってさらに増幅される。

(ぐ、うぅ……)

今にも破裂しそうな力を、渾身の力で押さえつける。まだだ。まだ足りない。
と、

「!! させるかよっ!!」

スキュアロウが気付いた。紅蓮を跳ね飛ばし、こちらに急接近して来る。

「スザク……!」
「まだ……今、逃げるわけには……ッ!!」

しかし、最悪の事態は、またも現実とはならなかった。
突然僕達の視界を、黒が覆ったのだ。

「な、ぶっ!?」

突撃の勢いをそのまま蹴りで跳ね返され、スキュアロウは吹き飛んで瓦礫の壁に激突した。
即座に飛びのいたその姿は、喪服を来た黒髪の青年。

「龍牙!?」

呼び声には答えず、彼は無言で促す。―――――今だ。
こくりとそれに頷き返し、次いでシスイと目を合わせる。

―――行くぞ。
―――ああ。


力は既に光球を維持する限界まで達しており、電光や火花が散り始めていた。チャンスは、一度。
互いに頷き、そして前を見据える。

「二度と……!!」
「姿を……成すんじゃない!!」


声が、心が、重なる。


「「龍・精・落――――――ッ!!!」」


重ねた両手を、解き放つように伸ばす。光が――――――。

341スゴロク:2011/02/07(月) 02:37:57
「うおおおおっ!?」

突如瓦礫の壁の向こうから襲って来た巨大な光の奔流に、啓介達は成すすべなく呑み込まれていた。
しかし、死を思ったのは一瞬。すぐに気付く。破壊がやって来ない。力が戻る。傷が癒える。

『ぬおっ、ぐおわああっ!?』

ブラストルだけは、その恩恵を受けられずにいた。光の奔流に呑まれ、各部が瞬く間に崩壊していく。
今がチャンスだ、と光一が動いた。チャージを一瞬で完了し、

「吹き飛べぇぇ―――――ッ!!」

極大のレーザーを放った。ブラストルはそれをまともに喰らい、次の瞬間各部を誘爆して炎に包まれた。




状況は修斗達も同じだった。狂夜は間一髪で気付いてかわしたが、光を浴びた4人は、活力が再び漲って来るのを感じていた。

―――今だ!!

起き上がり様に修斗が動いた。忍ばせていたロープを一気に展開し、狂夜を完全に拘束する。

「うぐっ!? この、離しやがれ!!」

そうはいかない。ここぞとばかり、蒼は特大の空気弾を、聖はハンドミサイルを叩きこむ。

「くらえ―――ッ!」
「おらおらおらおらおらっ!!」

回避も防御も出来なくてはどうしようもなく、狂夜はふたつの攻撃をまともに喰らってしまう。
そして、

「おおおおおおッ!!」

飛び込んだゲンブが、それこそハンマーそのものの蹴りを叩きこんだ。

「ゴ、ハッ!!?」

あまりの勢いにロープがちぎれ、狂夜は廃ビルの方へ吹っ飛んで行った。





「や、やった……」

瓦礫に空いた穴から、僕は戦いが終わった――――勝利した事を確認した。気付けば、紅蓮も龍牙も、姿をとうに消している。
ふと隣を振り返ると、シスイの姿がない。見れば、力を使い果たしたらしく倒れ込んで眠ってしまっていた。無理もない。あれだけ消耗した後に全力の「天子麒麟」など使ったんだ。――――というか、僕もそろそろ眠くて仕方がない。とても、疲れた。

「ふ、ぁ……」

足に力が入らず、ばたりと倒れる。そしてそのまま、シスイに寄り添うようにして意識を手放した。




「………完了です」

アンバランスゾーン地下。ゼアは、操作を終えていた。
これが、彼の任務。即ち、「開発中のトラストラ及びバラトストラ、ボルカノン完成機のデータの削除」。
万が一これがアースセイバーに漏れるようなことがあれば、それはホウオウグループに著しい不利益を齎す。それは避けねばならなかった。
しかし、ここはギルギガントやボルカノン試作2号機の一件でアースセイバーに目をつけられている。
そこで彼は一計を案じた。強力なエネルギーを放射し、わざとアースセイバーにここの事を警戒させる。
そして、人員が集まった所でブラストルを出撃させ、目がそちらを向いている隙に地下の隠し部屋にあるこの端末を操作し、登録データを全て抹消する。
本当はこちらをチネンにやらせたかったのだが、ブラストルは操縦系統が「マンダラオペライズ」を前提にしている上、各部の制御に電子技術を用いていた。そのため、バツがまだ「姿を成して」いない現在、チネンしか動かせる者がいなかったのだ。

(とにかく、これで任務は完了しましたね)

続けて地上の様子をモニターする。
どうやら連れて来た3人は全員敗れてしまったようだが、回収は完了したらしい。

(さすがにリイです。こういう時には役に立ちますね)

密かに部下への賛辞を送り、

「では、お暇しましょうか」

ゼアは、その姿を闇の中に消した。

342スゴロク:2011/02/07(月) 02:39:01
「シノさん、教官、任務完了しました。犠牲者ゼロです」
『応。一時はどうなるかと思ったぞ」
『お疲れっす。こっちからも何度か指示出したんすけど、聞こえてました?』

シノにそう言われ、蒼は頭を掻いた。

「あー……すんません、戦いに集中してて聞こえなかったです」
『そっすか。まあ、無事だったんだからいいっす』
『さあ、早く帰還してくれ。無事に帰るまで任務完了とは言えない』

獏也の忠告に「了解」と苦笑いしながら呟き、蒼は声を張る。

「さーて、本部に帰還するぞー!!」
「了解ー!」

返事が一斉に帰って来たが、その中に聞き覚えのある一つの声がない。

「あれ、シスイはどこに?」

言って見回すと、ハヤトが笑いながら親指で瓦礫の向こうを指している。
何かと思って行って見ると、

「……あらら………」

すっかり安心した表情で寄り添って眠りこけている、シスイとスザクの姿があった。

「どうします、蒼さん。起こします?」

ジミーの問いに、首を振る。

「いや、さすがにそれは可哀想だ。啓介、ゲンブ、送ってやってくれないか」
「わかりました……」
「……まったく、世話の焼ける」

苦笑しながら、二人がシスイ達を背負う。
それを見届け、一行は本部へ帰還すべく歩きだす。その道中で、錬太郎が言う。

「しかし、今回は大変だったなぁ」
「おお。まったく、二度とこんな戦いはゴメンだぜ」

ハヤトが肩をすくめて同調する。そこに、

「まあまあ、いいじゃないですか」

最後尾から空を見上げる、奈桜が言う。


「終わったんですから、ね」


視線の先には、今にも登ろうとしている太陽が、彼らを照らしていた。




というわけで、今回は3シーンの戦闘ものに挑戦してみました。な、長い……予想以上に長くなりました、すいません。
スザクの場面は彼女視点、それ以外は第三者視点です。
お借りしたのは名前のみ含みで、
想像者さん「闇野 光一」
鶯色さん「ハヤト」
ムーンさん「星神 ムーン」
サイコロさん「森山 修斗」
結構暇人さん「錬太郎」「ジル・ミナル」
445さん「D-201I 02(龍牙)」
遊び盛りの学生 Lv15さん「ゼア」「リイ」
プランクトンさん「七谷 狂夜」
youさん「藤岡 奈桜」「篠崎 蒼」
アルファルグ・フォーデスさん「スキュアロウ・バルカンチ」
akiyakanさん「都シスイ」「紅蓮」
くわいさん「アラタ」
地獄振起(ヘルシンキ)さん「チネン」
しらにゅいさん「トキコ」
砂糖人形さん「ユウム」「ネイロ」
十字メシアさん「シノ」
ネモさん「七篠 獏也」
そして家の子達「火波 スザク」「蒼崎 啓介」「水波 ゲンブ」「蒼井 聖」。お借りしたキャラは総勢22人です。

そしてメカはakiyakanさんの「万能陸戦歩行戦車 ブラストル」をお借りしました。


稚拙なところもありますが、どうでしょうか。

343スゴロク:2011/02/07(月) 09:23:55
うお、見直したら12レスも使ってしまっていた!? ちょっとやりすぎましたかね。

344しらにゅい:2011/02/07(月) 09:56:17
>>328 落書きwwwなんつーものを描いていらっしゃるの凪サマ!
褒められると赤面・・・ベタ褒めするとデレるということですね!?←

>>330 超大作キターーー( ゜∀゜)ーーー!!!いやいや、むしろお疲れ様ですよっ!
乙女だ、姐さんの乙女っぷりを見たぞ!ウフフ←
いやー、にしてもアースセイバーvsホウオウグループのエース達が集うと
こんなことになってしまうとは・・・本編並の迫力感がありますね!始終読んでて、
ウオオオオオ(゜∀゜*)=(*゜∀゜)ウハアアアアってなってました。スゴロクさんクオリティが
ハンパない・・・!!シスイとスザクがピンチになったところに現れる紅蓮、奈桜ちゃんの
回避、龍精落、燃える展開がありすぎる!しかも最後の2人は可愛いし、奈桜ちゃんの
最後の台詞は本編のセキ戦後を彷彿させますね!いやぁ・・・ありがとうございました!!
良いものを見させて頂きました!w

345akiyakan:2011/02/07(月) 10:24:05
スゴロクさん>
出たー!! 大人数が一つの話に入り乱れる、久々のスゴロクマジック!
特定に主人公と言えるものがなく、逆に言えばそれぞれが主人公と言える群像劇。こういうの、いいですねぇ。
ってか、ブラストルが飛び出して来た時は「なぬー!?」ってなりましたよ。作った本人、「これ、どうっすかな」と完全に放置決め込んでましたから、まさかこんなところで使ってもらえるとは……
ピンチからの逆転劇はいつも燃える展開ですが、今回は三つの戦いに三つの逆転劇! 血が、血が滾るうぅぅぅぅぅぅぅぅ!!
もう、紅蓮来たー!! 使おうと思って散々思案していたけど、なかなか使う機会が来なかっただけに、使っていただけた事に大感謝ですよ!
そして朱雀と麒麟の合わせ技! 「二度と姿を成すんじゃない!」 脳内で「赤碧の空」が自動再生される展開でしたね!
12レス使用の大作、お疲れ様でした!!

346ネモ:2011/02/07(月) 11:25:12
「あ、なんか長いレスがある」
とりあえず一旦読む

謎の感動、もう1度読み直す

(・∀・)ス、スゲー←今ここ
この感情は筆不精な私には表現できませぬ故ご容赦を。

347しらにゅい:2011/02/07(月) 12:24:08
 今日一番の不幸が、桐山貴子の元に訪れていた。

「タカコー、タカコー」
「・・・・・・・・・」

 この時間帯、普通の生徒であればもうとっくの昔に下校しているはず。
なのに今目の前には、この高校の生徒である朱色の少女・・・もっとも苦手なホウオウグループであるトキコがいる。
この少女は事あるごとに自分に接触してきては、能力者の存在を聞くか自分を凡骨だと罵って楽しんでいる。
学校にいる以上、誰よりも気苦労する相手だ。
極力接触を避けていたのにも関わらず、何故これから家に帰ろうとする時にこの少女と出会ってしまったのであろう、と貴子はため息をついた。
いっそ、無視してこの場を去りたい、いやそうしよう。

「・・・・・・・・・」
「タカコー、ねぇ、タカコー・・・」

 彼女の横を通り過ぎて、そのまま帰ろうとする。
背後にはいつまでも自分を呼ぶ少女の声が・・・

「・・・ん?」

 そこで貴子はふと、ある違和感に気が付き、振り返って校門まで戻ってきた。

「あ、やっと気付いた。」
「元から気付いていました。・・・何故そこから動こうとしないんですか?」
「動けないもん。」
「は?」

 そう言ってトキコが下を見ると、貴子もそれに合わせて視線を足元に下ろしてみた。
周囲が暗いのでよくよく目を凝らしてみると、トキコの両足は血に染まっていた。
わずかに足も痙攣しており、今立っているのがやっとだという様子は誰から見ても分かるぐらいだ。

「ちょ、ちょっと何でこんな・・・?!」
「うーん、まぁ色々あったの。だから、歩けないからタカコおぶってー。」
「は!?」
「おんぶー。」

 子供のようにトキコは両手を伸ばし、貴子にせがんできた。
貴子に2つの選択肢が迫る。自分の保身の為、トキコを見捨ていずれ拾われるのを待つ。
もう一つは、無条件の善意で彼女を送ってあげる。しかしこちらを選択してしまえば、
これから始まるタイムセールスに間に合わず、今日の夕飯はパァになる。
少し悩んでしまったが、貴子は心を鬼にすることは出来ず、伸ばされた両腕を掴んだ。

「・・・はぁ・・・」

 今日の晩御飯どうしよう、そんなことを考えながらトキコをおぶったのであった。

348しらにゅい:2011/02/07(月) 12:34:00
「ゆぅーやーけー、こーやーけーの♪」
「・・・・・・・・・」

 自分の背中でトキコが無邪気に歌う。
ご機嫌そうだが自分の気分はそれとは反対に最悪だ。
横を通り過ぎる通行人の視線が痛い、いや、微笑ましいと眺めているのだと思うのだが、
間違いなく、母親と勘違いされているに違いない。
決して娘ではない、まだそんな歳じゃない。
それでもそう思われるのは自分が年増だからか、トキコが幼すぎるのか。
・・・後者であって欲しい、いや後者だと思わないと心が折れる。

「あ、ここ、ここ!」
「・・・ここ?」

 ふとトキコが声を上げたので見上げてみると、目の前には何の変哲もないマンションがあった。
意外だ、てっきり一軒家にでも住んでいるかと思っていたが・・・

「・・・ここの何階ですか?」
「三階。」
「・・・上がれと?」
「歩けると思う?」

 背後でニヤニヤと笑う気配がした。
仕方なく、おぶったまま階段を上がることにした。

「・・・それで、この階の・・・」
「あ、1番奥だよー。」
「はぁ、1番お・・・く!?」

 貴子は、トキコの言われた通りの部屋に着いたが目の前の光景に驚愕した。
ドアには死ねだの売女などの罵詈雑言が書かれ、蹴られたのか酷く傷がついている。
それだけではない、郵便受けには大量の紙が投函されており、借用書という単語が目に入った。
こんなところに、この子が住んでいるというのか。

「あ、あの・・・トキコ・・・部屋間違えたのでは?」
「ここだよ?」
「え?」
「はやく中入って、鍵は開いてるから。」
「・・・」

 とりあえず今は詮索しないでおこう、そう思った貴子は言われた通り、部屋の中へと入った。
部屋の中もまた酷かった。
何かが暴れた後のように家具は散乱しており、とても人が住めるような環境だとは思えない。
ここも壁の至る所に落書きや傷があり、戸棚は倒れ、中身は床に落ちていて一歩間違えれば怪我をしそうだ。
唯一の食料庫である冷蔵庫も斜めになっており、ちょっとした衝動ですぐに駄目になってしまいそうなほど劣化していた。
入った当初は何にも驚かないと思っていたが、想像以上のものだったので驚きを隠せずにはいた。

「・・・・・・・・・」

 いつの間にか背中から降りていたトキコは、足を引きずりながら壊れかけの戸棚から包帯や薬を取り出し、治療をし始めた。
こんな環境の中で、一体どんな生活をしているのだろうか。

「・・・あれ、貴子まだいたの?」
「え?」
「もう帰ってもいいよ、送ってくれてありがと。」

 トキコは無邪気な笑顔を浮かべると、また治療に専念し始めた。
しかしその処置は、どんなに謙遜しても決していいものだとは言えなかった。
見ていられない、そう思い貴子はトキコの手から包帯を奪うと今彼女が巻いていた包帯を取り始めた。

「わ、何すんのさ!?」
「悪いけど、貴方のまき方全っ然なってない。」
「むー・・・いっつもこうだもん。」
「・・・いっつも?」
「うん、おうちだといつも自分で巻いてるもん。」
「・・・・・・・・・」
「・・・タカコ上手いねー、器用器用!」
「トキコは、」
「ん?」
「トキコは、いつもここで一人で過ごしているの?」
「そだよ。」
「どうして?」
「ここが私のおうちだから。」
「・・・お母さんは?」
「いないよ、殺した。」
「っころ・・・!?」
「うん、殺した。」
「・・・・・・・・・」

 トキコはまるで他人事のように、変わらぬ調子で話す。

「・・・そーだなぁ、タカコになら喋っていいかなぁ。包帯巻いてくれたし。」
「え?」
「私の昔話。どうせ包帯巻いている間暇だし、聞いてってよ。あのね・・・」

349しらにゅい:2011/02/07(月) 12:46:26
 生まれた時から私の環境は少し特殊だった。
少なくとも、普通の人とは違う・・・何故なら、私の母は娼婦だったからだ。
母がどうしてそうなったのかは、もう死んでしまった今では分からない。
いつもどこぞの馬の骨とも分からぬ男に足を開き、毎日生きる為にお金を稼いでいた。
だから私が生まれても、父親はいなかった。当然だ、誰のせいで孕んだかも分からないのだから。
普通なら堕とすことも出来たけれど、母はそれを望まずに出産することを希望した。

『生まれてくる子供に罪はないの、だからお願い、この子を育てさせて・・・!!』

 母はそう言って、赤子の私を抱えて仕事を辞めた。
そしてここへ引っ越してきて、新しい生活を送ることにしたのだった。
母は新しい仕事を見つけ、私も物心が付いてからは母の仕事の手伝いをして、一生懸命彼女を支えた。
決して良い生活ではなかった、けれど母と一緒にいるだけで私は満足だった。

 そんなある日のこと、私に突然“力”が目覚めてしまった。
それが発覚したのは、小学校で友達と遊んでいた時のことだった。
何気なく突き出した手に“力”がかかり、同級生を壁に叩きつけてしまった。
全治3ヵ月だった。始めは何が起こったか分からなかった、私も、彼らも。
その日は逃げるようにすぐ早退した。母には、何も話さなかった。
次の日から私に対するいじめが始まった。直接仕返しすることはなかった。
痛い目にあわせたい気持ちはある、けれども怪我を負わせれば治療代を払わなければいけなくなってしまう。
だから学校では何もしなかった、物を投げられても、バケモノだと罵られても、私は我慢した。
絶対に“力”を使うような真似はしなかった。しかし、“力”がまた私を苦しめていたのも事実だった。
人を傷つけることはなくても物を傷つけることは度々あった。
その都度先生に叱られ、母には弁償しろとの請求が押し付けられた。
母は薄々私の異常に気がついていたようだったが、何も言わなかった。ただ黙って、お金を支払っていた。
度重なる出費はついに母の限界を越えてしまった。
サラ金を借りざるを得なくなってしまったのだ。返します返します、といってもお金は作れない、他の機関から借りる、
それで返済してもまたそこから請求がくる、そして私の破壊も重なり、結果悪循環となってしまった。
借金取りは毎日私達の家に来た。貴子が見たドアや壁がその証拠。・・・そうだよ、中にも入ってきたんだ、あいつらは。
私はその度に母に押入れに入れられてたから、直接彼らから暴力を受けることはなかった。
ただ、母がその間彼らに何をされているかも分からなかった。
いつも押し入れから出てくれば、ボロ雑巾のような風体で倒れている母がいた。
身体を揺すって起こせば、母は私を力強く抱きしめてくれた。ごめんね、ごめんね、と、ただ謝っていた。

350しらにゅい:2011/02/07(月) 12:47:24
 私はこの現状を打破したかった。
母をこれ以上泣かせたくない。学校で私をいじめる奴等や先生よりも、その時はあの借金取り達がただ憎かった。
母が仕事で出掛けた日、私はこっそり学校から帰ってきた。“力”を使って、あいつらを殺す為だ。
いつもと違い、押入れではなく、部屋の中央でやつらを待ち構えていた。ただあいつらが憎い、憎い、憎い。
ドアが乱雑に叩かれ、蹴破られると視界にはあの借金取り達が入った。
下卑た笑み、汚い言葉、奴等が私をどうしようかなんて考えなかった。だって、今から死ぬのだから。
肩を掴んできた借金取りの一人の腕を掴み思いっきり捻りあげた。驚いた、捻ったつもりが肘から千切れてしまったのだった。
耳障りな悲鳴が部屋の中を木霊する。いつも自分たちが上だと思って見下していた奴等が、悲壮にまみれた顔で私を見る。
これ以上なく、嬉しかった。
その先はあまり覚えていない、初めての人殺しは思っていたより簡単であんまり印象強く残っていないから。

 嬲って殺していたら、いつの間にか時間はだいぶ経っていたようで、玄関に母がいた。
・・・その時のことは、どの記憶よりも鮮明に覚えてる。
母は部屋の中の異常を見て、信じられないような表情をしていたが、私は嬉しくて母に駆け寄った。

『おかあさん!あのね、わたしっ』

お母さんをいじめた奴をやっつけたんだよ、そう言葉を続けたかった。
しかし、母がそれを遮って私にかけた言葉は、予想と反したものであった。

『こないで!!』

 ・・・足が止まった。聞き間違いかと思った、でも母の顔はあきらかに私を拒絶していた。
その顔は、学校で同級生や先生が私に向けるものと同じものだった。
私が勇気を出してもう一歩近付けば、母は慌てて台所にある包丁を手に取り、私に向けた。

『こないで、こないでこのバケモノ!!』
『おかあ、さん・・・?』

 違う、こんなの私は望んでいない、そう思っていたのかその時声は震えていた。
それでも母は私を裏切って、思いのたけを叫んだ。決して娘には明かさなかった無念の想いを。

『なんで、なんでこんなことしたの!?私が、っわたしがどれだけ苦労したと思ってんのよ・・・!?
あんなみたいな、あんたみたいな望んでもない子供を生まされた私の気持ちが分かる!?ガキのあんたにそんなのが分かる!?
それでもあんたを育てたのは報われるからと思ったからよ!!あんたが変に力を強くなっても、いつか私に素敵な未来がくる、
そんなことがあると思ったからよ!!必死で働いて!!近所の人たちから学校から何を言われても!!借金取りから逃げていても!!
いずれ報われるとおもったからよ!!なのに、なのにあんたのせいで!!あんたの馬鹿な行いのせいで何もかもめちゃくちゃよ!!
この化け物!!化け物なんて私の子供じゃない!!死ねよ!!死ねよこのクソガキ!!!』

母が私に掴みかかって包丁を振り上げた。
まるで映画のワンシーンのように、その時はスローモーションに見えた。
反射的に私は母の首を掴み、捻った、いや、へし折った。
包丁は私の横に落ちて、母の首はその反対に落ちた。全身に母の血を浴びた。

その時の私の頭の中は、ひたすら真っ白だったと思う。



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月24日 20:09