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企画されたキャラを小説化してみませんか?_ログ-851~900

  企画されたキャラを小説化してみませんか?

1サイコロ:2008/04/19(土) 08:47:37
男擬人ムリ香さんが立ち上げた「キャラ企画つれっど」で企画されたキャラを
ショートショートストーリー化(短編のアナザーストーリー化)してみませんか?
age sage構いません。
それと、できるだけ自分の企画したキャラを搭乗させましょう。
ナイアナのキャラは、性格を変えないように。

気に入らなければ消してください、(有)さん…

851スゴロク:2011/03/25(金) 00:06:45
「……そうか、トキコか」

夜の道すがら、クロウはアオイがクランケの件を知っていた理由に思い至っていた。
トキコとスザクが懇意にしていることは、こちらも情報として知っている。恐らくは、彼女を通じてアオイはその事を知り、何らかの手段で裏を取ったのだろう。

(やれやれ、余計なことをしてくれる。総帥からの命令がなければ、対処にかかっていたのだがな)

本来なら、アースセイバーの協力者に情報を流したトキコの行為は見過ごせないが、肝心のホウオウから「成すがままに任せよ」、つまりは「好きにさせておけ」という命令が出ている。これでは咎めようがない。
まあ、今回の情報はそれほど重要度の高いものではないし、大筋に問題はなかろう。

(しかし、総帥も随分とアバウトな指令を下される。好きにさせておけとは言うが、それで問題が起こったらどうす――――)

足が止まる。思考が一瞬停止する。―――待て。ちょっと、待て。

(……問題が、起こったら?)

ホウオウから出たトキコに関する命令―――それは、彼女の意志で行動させ、それをグループの意志によって制限はしないということ。つまり、彼女が誰かを敵に回しても構わない、ということだ。

そして、誰にも言ってはならぬ最重要秘匿情報として、ホウオウ本人から伝えられた事項――――いかせのごれ高校の生徒・スイネ=かつて離反したファスネイ・アイズという事実。
これがもし明らかとなれば、狂信者たるトキコはスイネ、いやファスネイを確実に敵に回す。
回す、が……。

―――その時、総帥はどちらを取る?

かつてファスネイを取り戻そうと、人工神を指し向けたのは記憶に新しい。そして、ロゼの店でのホウオウの振る舞いを考えれば、その答えは見える。
2人の少女に対する優先度、それを考えれば――――「その時」切り捨てられる札は、赤い髪をしているだろう。……だが。

(とはいえ……なぁ)

あくまでもこれは推測にすぎない。前提条件にもやや無理があるし、ホウオウが本当にそう考えているのかもわからない。所詮は強引な憶測、想像の範疇を出ない。

(やはり、俺では真実には迫れん、か)

あくびをかみ殺しつつ、クロウは益体もない想像を脇へ追いやり、夜の街を歩いて行った。



クロウ、火波姉妹と遭遇する

(鴉の推測は真実か妄想か)
(最後に欲すは赤か青か)
(全てを知るは、黒き不死鳥のみ)


というお話です。ちなみに最後の方の推測はマジで考えました。いや、私の話やしらにゅいさんの「朱鷺と蒼の奇跡」やサトさんの「仮初め幸福感」、スイネの設定やびすたさんの「鶏の止まり木」を見ていると、そういう考えになって来たので。

風邪、治りました。

852びすた:2011/03/25(金) 00:06:55
わわ!!;;いつの間にか小説がものすごい量になっている・・ッ!!
そしてサトさんとスゴロクさんと大黒屋さん!
うちのロゼさんを使っていただきありがとうございますッ(ジャンピング焼き土下座っ
感想は明日まとめて語りたいと思いますッ

今回、サトたんの「スイネ」としらにゅいさんの「ウミ」と「エミ」、
名前だけですが「ヴァイス」「白波シドウ」、大黒屋さんの「クラウチ」「キリ」「秋山春美」、akiyakanさんの「ジングウ」お借りしました!
↓ここから小説↓

行かないで、行かないで。
夢の中ロゼは何かを追いかけていた。
でもどんなに走っても彼等には追いつけない。

「ま、って・・パパ!マ、マッ・・・みんなッ」
懸命にその背中に声を発しても彼等は一度も振り向いてくれやしない。
足掻いているうちに一人、また一人と暗い暗い闇へと消えていく。
夢を見ている自覚はある。でも、身体も脳も起きてくれる気配がない。

しばらくすると何もなかったはずの周りの景色が突然変わりはじめる。
あぁ、またか。
この悪夢の終焉によく見る光景、
何度も何度も突きつけられる現実で起きた出来事。
いつだったか。
崩れていく建物。
戦場で嗅ぎ慣れた硝煙と人の焼ける臭い。
鈍く痛むみぞおち。
何もかも鮮明に覚えている。
私は必死に【あの子】を探していた。
不意打ち、とはいえ気絶してしまった自分を悔やみながら。

「ファスネイ様ーっ!ファスネイさ・・ひッ!?」
「・・ッ」
「ひ、ひどいッ・・誰がこんな事を・・ッ」
瓦礫の下から突如足首を掴んできた男、確か研究所の・・。
男は喉笛を切られていた。
出血がひどく、ヒューヒューと声にならない音を発していた。
必死で何かを話そうとしている。何を?
・・仲間にはこの能力を使いたくないと思っていたが・・仕方ない。

私はその場で座り、彼と視線を合わせる。その時脳裏に浮かんだのは。
___鎌を振り下ろすあの子の姿。

まさ、か・・・

彼が倒れたのを確認した後ケイイチの手をとり、走り去る彼女の様子が鮮明に映る。

「どう、して・・ファスネイ様は一体どちらに・・ッ!!」
男は応えない。すでに事切れていた。
急に襲い掛かる虚脱感。
私はその場で嗚咽し始めた。

苦しい苦しい気持ち悪い
もうやめて もうかつての愚かな私を見せ付けないでっ
もういや、いやよっ 
一方的にバカみたいに信じて裏切られて傷つくのはもうたくさんよっ
もう誰も信じないっ信じないわっ
やめてやめてやめてもうやめて早く目を覚まさせて・・・・・ッ!!!

853びすた:2011/03/25(金) 00:10:16
「あ、やっと気がついたみたいだよウミ!ロゼ大丈夫?」
「・・・・え?」
ふ、と意識が戻る。
真っ先に視界に入ったのは心配そうにこちらを覗き込む双子の顔だった。
彼らを背景に聞き慣れたクラシックが響く。ここは・・店?

そうだ。確か異能殺しが来店して、顔見知りらしいあの男の情報を得ようとして・・

“へぇ~。異能殺しと謎の男かぁ・・どうなの?ウミ”
“うぅん。私達が知りたい切り裂き魔じゃなさそうだわ、エミ”

ロゼが思い出したようにハッと気づく。そういえばこの双子の能力は。

「ロゼ、やっと私達の能力思い出した?ずっと思考が駄々漏れだったからわかりやすかったよね、ウミ」
そう言いながらエミはにっこり微笑む。
「そうねエミ。でも最初はロゼが死んじゃったのかと焦ったわ。打ち所が悪くなくてよかった」
そう言ってエミとは対照的に悲しそうな表情になるウミ。
・・・そういえば前にクランケが言っていたな。あの双子は苦手だと。

なんとなくだがその気持ちが今わかった気がする。
「この事はホウオウ様には・・」

「内密に?いいよ!」
「その代わりといってはなんですが」
「ジュース飲んでもいいかな?」
「あと聞きたい事があるわ」

「はいはい、こうなったらまな板の鯛だわ。でもお店閉めるからちょっと待っててね」
やったー!とはしゃぐ双子を背にロゼはため息をひとつつき、closeの看板を下げた。

854びすた:2011/03/25(金) 00:11:22
「切り裂き魔とその主、ねぇ・・」
「ロゼ何か知らない?」
エミはマンゴーオレンジに添えていたストローをくるくる回しながら尋ねた。
「切り裂き魔のとおりゃんせってわらべ唄なら知っているわ」
「うわぁ・・おっかない唄だね」
「そんなオカルトみたいな話、普通なら信じられない話だけれど・・オーケー!一応クラウチの監視をするわ。何か分かり次第貴方達に情報を提供するよ」
黙々とパイナップル・クーラーを飲み干したウミがじっとこちらを見つめた後、エミを横目で見た。
そうするとエミはそれに応えるように頷いた。
口には出さずとも彼女らの能力で会話しているのだろう、初めて見るが変な気分だ。
「・・うん、そっか。信じていいみたいだね。ありがとうロゼ!それと、ジュースごちそうさまっ」
「ごちそうさまでした」
「はいはい、お粗末さまでした」

「あ、そうそうロゼ!ジュースのお礼と言っては何だけれど一つだけ教えてあげる」
「え?なに・・かな?」

「ファスネイ・アイズはね。今スイネって名乗っているの」
スイネ、それはジングウの強化クローンが現在執心しているらしい人物の名前。
繋がっていたのね。
「そ、そう・・それで、彼女は・・」
「『昔と比べてどう変わったのか?』うーん・・今はとても幸せそうだよ?」

「・・・」
「それじゃあ、これにてさようなら!ばいばーいっ」
「そう、気をつけて帰るのよ!」
「さような、ら・・?」
カランカランと扉の鈴の音を立たせて外に出るとヒュンと冷えた風が頬を掠めた。
そしてエミはウミの僅かな反応に気付く。
“どうしたのウミ?”
“え、うん。たいした事じゃないわ。でも・・”
“でも?でも、ってなーによぉ?気になるじゃない!!”
“う、うん扉が閉まる前に見えたのだけれど・・”
“けど?”

“ロゼのあんな悲しそうな表情、初めて見たわ”

855びすた:2011/03/25(金) 00:14:12
___アダムとイブは禁断の林檎を食し、楽園を追放されたという。
でも【あの子】は自らの足で楽園から飛び出した。
そうして人並みの幸せを得たと。そう、そうだったの。
あなたは守り主の気持ちを踏みにじってまで「人間」になりたかったのね。

(ねぇ、ロゼ)
(はい、何でございましょうか。ファスネイ様)
(どうしてわたしのことをファスネイさま、ってよぶの?)
(それは、ファスネイ様が奇跡の子だからですよ)
(・・よびすてはだめなの?)
(それはできません。私は仮に、とはいえあなたの新しい世話係ですから)
(そう・・わかった)

ふと思う。
あの時、『奇跡の子』としてではなく『普通の子』として接していたら、
少しは未来は変わっていたのだろうか。
いいえ、後悔してももう遅いわ。もう手遅れ。
私があの頃のように人を信じる事も、あの子に触れる事でさえ、奇跡が起きない限り二度とないだろう。

ファスネイ様。私は仲間を傷つけた、裏切り者の貴方を許せない。
でも貴方にはすでにジングウのように立ちはだかる人がいるわ。
それが貴方への罰であり罪なのかもしれないわね。

ならば私は。
人となった神が足掻くその様を見守ろうじゃない。
きっとこれが貴方の気持ちに気付けなかった

『罪と罰』

私への罪であり罰なのね。

※個人的にスイネたんと関わりたかったという・・
なんとか大黒屋さんの>>843-847につなげられるように調整しましたっ
おかしいな?という所があったら指摘お願いします。
レス多めに使ったのは初めてで心臓バクバクしとります;;長文駄文失礼しましたッ

856びすた:2011/03/25(金) 00:18:38
「ウミ」と「エミ」はしらにゅいさんじゃなくて鶯色さんだし、
「ヴァイス」「白波シドウ」がスゴロクさんのって書き忘れました;;
すいません!!(土下座

857スゴロク:2011/03/25(金) 00:24:01
>びすたさん 深夜は頭が働きませんからね。私も時々やったものです……。

そして、早速拾って下さってありがとうございます。ロゼの心境の変化がよく描けていて、素晴らしい作品ですね。
というか、シドウが異能殺しだとホウオウグループは把握していたのか……ちょっと驚きです。

個人的なことを言わせてもらえれば、「・・」は「・・・」か「……」のように、三点リーダにすれば違和感がないかと。

では、また。

858びすた:2011/03/25(金) 00:47:15
>スゴロクさん 
おぉぉ!!「さんてん」で変換できる…ッ!
スゴロクさんありがとうございます!
実は恥ずかしくて聞けなかったので…本当に嬉しいです!!
異能殺しの情報ですが厳密に言えばホウオウ様、忠誠が高い人しか知らない程度です。
ロゼとしては忠誠が低い人はいっそのこと無能になればいいと切り捨てる考えですから。
ちなみに情報元は記述していませんが店長さんから能力で情報を得た、というつもりでした。
さすがに限界なので感想は起床後に…っ私もそれではまた!

859しらにゅい:2011/03/25(金) 11:16:24
パソコンが復活しましたのでやっと心おきなく感想が・・・!
しかし、私がいない間に作品が豊作期を迎えていたようで・・・今回は、
キャラを扱ってくださった作品関して感想を書かせて頂こうと思います。
新キャラや新しい話など全部読んでいますが、いつの間にか200作品を
越えていたみたいで喜ばしい限りです!w
気が付けばレス数も800を越えていて・・・もしやもうすぐ1000・・・!?


>>744,>>752-757,>>759,>>761
旅行編お疲れ様でしたー!みんなガヤガヤと楽しそうで何よりでしたし、これでシドウさんとも接触できそうな・・・ウフフ(´Д`*)
ですよね!旅行で女の子、同室でしかも多人数といったら恋バナですよね!wむしろよくやったと賞賛しt(ry
これがきっかけで意識し始めた、っていうケースも少なくないと思うんだ、ねぇ凪さん?(ぇ
そういえばウスワイヤ繋がりで亜音さんや星さんとも面識ありましたねぇ・・・何故気が付かなかったし自分!!
これも後々使わせて頂きましょうウヘヘヘ
そしてメールありがとうユウムちゃーん!!これは使わなきゃいけませんねぇ!!ww
旅行編のおかげで、こちらとしても書くネタが増えましたよ・・・ありがとうございますw

>>747
このコンビが好き過ぎて生きているのが辛い←
シスイくんが被害者にwwwお菓子絡みでののかの被害を被る、そして何の突拍子もない裏スイッチの被害を被る。
彼が嫌い?いいえ、愛故です!w
いつぞやか、企画キャラ中このコンビある意味最強じゃないかというコメントがありましたが・・・確かにそうかもしれませんねぇww
保健室らしくない保健室こそ、いかせのごれ高校の保健室じゃないかなぁ、と思ってますからじゃんじゃん使っちゃってください!w
タマキだって動物連れ込んできてますからね!
>>748
ある意味相性が良くて悪いコンビです、トキコとウツロくん。
片や暴力、片や不死。相手としてはちょうどいいのですが、「死なない」からこそ、何度千切っても嬲ってもどうせ生き返るだろうなぁ・・・
と殺しながら飽きしちゃいそうです、トキコはw
確かにトキコに変、って言われるとなんかイラッてきそうな・・・でもホウオウグループってわりかし変人の集まりだと思うんだ!←
仲間思いのリオトくんからいいツッコミが入ったー!そしてクロウさんが良い保護者っぷり・・・ウツロくん逃げて超逃げてー!!

>>762
うっかりがこんなところに!・・・いや今回は仕方ないの一言に尽きますな。
べ、別に姐さんのどじっ子キャラを確立させようとして言ったわけでhギャアアアアア!!!!
ってかクロウさん逃げて超逃げてー!勘違いされて殺されるよー!!
それにしてもアオイさんええ子だわぁ・・・自分よりもお姉さんのことを第一に考えてくれてますからね。
そしてここに来てシドウさんの株価急上昇、うわーい!詠人くんの活躍も期待!
>>849
不穏な空気第二段・・・クロウさんから思わぬ指摘が入りました・・・!
確かに最近のトキコはちょっとブレブレしすぎてるかもしれませんなぁ、彼女のスタイルとはいえ。
補正かけましょうかエヘヘ、ちょっと過去話も交えて・・・
しかしアオイさんかっこいいなぁ!幹部であるクロウさんを前にしても余裕の笑み!
お姉様愛故ですな・・・

>>765-767
これが思わぬ事態に発展したらもれなく私が喜びます。(ぇ
トキコの「嘘」への意識が極端だ、って思うミツくんは未熟だからじゃなくて、多分万人がそう思うんだろうなぁと思ってます。
「嘘」をつく痛み、というのが分かればきっとミツくんも人間として成長できると思うんだ!まだまだ時間はあるぞ!
そして、1番ハラハラしていたシーンが無事に終わって何よりです!うちのトキコならそう考えてると思ってたさ!w
なんでも疑心暗鬼はらしくないですからね、いやー・・・いい弄りネタが増えましたよエヘヘヘ
>>768-776
前半のシスイに嫉妬を抱かずにいられない奴がここに一人・・・お前はどこのエ〇ゲの主人公じゃー!?
羨ましいぞこのー!ハヤトに賛同せざるを得ないわ!!その横を私に寄越せぇぇぇ(^q^#)=(#^q^)
・・・とまったりしていたところにパニッシャー登場!そして黒騎士・・・だと!?おおおおお前は誰だ!?
ミツくん!?え、かっこいい!!(ぇ
そしてキャラ設定を見てみると・・・なるほど、パニッシャーと黒騎士はそれぞれ別々だったわけなんですね。
それなら、初めの黒騎士(でいいんですかね?)がパニッシャーを破壊した理由も分かります。
・・・しかし見てる限り、この人達も味方というわけじゃなさそうだなぁ・・・うーん・・・

860しらにゅい:2011/03/25(金) 11:22:10
>>828
サト様の書くトキコが私が書く以上に可愛い件について←
カクテルをストローでちゅーちゅーするトキコ・・・我が娘ながらお前・・・
可愛すぎるだろうがー!!うわーん!!(親馬鹿
トキコが変わってしまった決定的な瞬間の記憶だからこそ鮮明であって、
それを嫌でも見せ付けられるロゼさんにはなんだか申し訳ないことを
してしまったなぁ・・・(´・ω・`)サーセン
トキコの好きはきっと「like」と「love」の中間的な曖昧ななんだろうなぁ、
・・・と現段階ではそう言わせて貰いましょうかねエヘヘ

861しらにゅい:2011/03/25(金) 21:24:47
*バイオレンス表現注意。




 その日の夕方、トキコはいつものように家路につきながら、今日一日のことを振り返っていた。
 朝はいつものように火波スザクに飛び付くところから始まり、授業の途中、たまたま保健室に向かったところ、
家に篭りっきりのはずである氏型環と出会い(その際ののかと一緒にちょっとした茶会のようなことをした)、
お昼にはスザクの妹である火波アオイと初めてまともに言葉を交わすことが出来た。それまではあの時のせいか、
遠慮したい何かがトキコの中にあり、いつもの調子で話すことが出来ず、少し敬遠していたのだ。
普通に話す分はとても丁寧で優しい人であった。うっかり「殺し合う約束をしている」などと言うことはなかったのだが、
スザクを話題に出すと嬉しそうにその話を聞いていた。好きな人間の話を共に共有することはとても喜ばしいことで、
火波アオイと、スザクについての話題でお昼を終えてしまうほど、夢中になって喋っていたと思う。その話題の人物が近くにいることも忘れて、だ。
また、帰り際にマオと楽しそうに話し込むケイイチを邪魔することも出来た。ちなみにこの行為は敵だから、という陰湿な思いはまったくなく、
ただ単純に弄り甲斐があり面白いから致したまでである。
 兎にも角にも、今日はいつも以上に学校は楽しかったのだった。
そして、また明日学校があると考えれば、待ち切れないぐらいワクワクしてくる。
こんなに学校を待ち望む思いをしたのは、初めて小学校に入学する時以来だと彼女は思った。
一重にこれもホウオウ様のおかげである。そう、疑わなかった。
 そういえば、今日は帰ったら貴子が料理を教えてくれるんだった、とトキコは約束を思い出しながら、
自分の住むマンションの前へと辿り着いてみると、見慣れない黒の車が止まっていた。
その時のトキコにとっては、それが邪魔である程度しか認知しなかったので、特に気にも留めず、三階へと上がっていたのだった。

「・・・?」

 三階へと上がり、廊下の途中まで来た時点である違和感を覚え立ち止まった。
廊下の奥で、何かが揺れている。よくよく眼を凝らしてそれを見てみると、鍵をかけた筈の自分の部屋の扉が中途半端に開けられたまま、
キィ、キィ、と音を立てて揺れていたのであった。
人一人寄せ付けない、不気味な雰囲気を放つあの扉を、誰かが開けたのだ。
 ___それはトキコにとって、「警告」のサインだった。

「・・・っ・・・!」

 トキコが血相を変えると、突然走り出し、今登ってきた階段を駆け下りようとした。
しかし、それはあっけなく阻止されてしまったのであった。

「おぉ?トキコちゃんじゃねぇかぁ?ひっさしぶりだねぇ~?」
「・・・ぁ・・・」

 トキコのすぐ後ろに、男が立っていた。
スーツのような、軍服のような、若干ゴシック調の制服。
少しだけ見える白いシャツと手袋、に映える紅い華、血。
むせ返る、煙草の匂い。
そして自分を見下ろす、獰猛な獣の眼。

「あがっ!?」

 ニヤニヤと笑う男に首を握られると、トキコはそのままずるずると『家』まで連行されてしまった。
首を絞められる苦しさとこれから起こる恐怖に涙が零れ、足をバタバタさせ抵抗を試みたが、それは無駄に終わった。
男はブーツで転がる物を踏み潰しながら部屋の中央までくると、辺りを見回して、愉しそうにトキコへと問い掛けたのであった。

「おめぇー、まだこんな辛気臭ェとこに住んでんのか?」
「あ、ぅぐ・・・!」
「あの女と変なとこだけ似てんなぁ・・・物に執着するというか、未練がましいっつーの?
なぁーんかそういうの見てっとさ・・・吐き気がすんだよ、なぁ!!」

 男はトキコの首を掴んだまま、今にも倒れてきそうな食器棚へとその身体を投げつけた。
華奢な身体は床へと落ち、割れたガラスがパラパラと彼女の上へと降ってきたが、軋んだ家具自体は意外に丈夫であった為最悪のケースは避けられたのであった。
しかし、男は床に倒れ、げほ、と咳き込むトキコの脇腹へと、容赦なくブーツを叩き込んだ。

862しらにゅい:2011/03/25(金) 21:27:03

「が・・・!!」

 激痛。

「ほら、ほらほら!ほーらほらほらほらほら!!!」

 男は何度も何度も、穴を開けさせると言わんばかりに靴先を抉り込む。
先が尖ってはいないものの、男の蹴りはその小さな身体に相当なダメージを与えるだけ十分であった。
一方的な暴力、しかしトキコは抵抗を見せず、攻撃を耐え忍いでいるだけだった。
否、耐えることしか、今の彼女には出来なかった。
悲鳴を上げないトキコに飽いた男は、腰のホルスターから何かを取り出してきた。
警官が暴漢を押さえ込む際などに使う警棒であるが、
使用用途によっては相手を殺傷しかねない、十分な凶器と成り得る道具だ。
 それを、そのまま蹲るトキコの背へと叩き付けた。
「やめろ、その反応萎えるっつーの。」

「っあぁぁあ!!!」

 激痛。
 まるで鞭で打ち付けられたかのような焼ける痛みが走った。しかし、男は止めようとしなかった。
何度も、何度も、男の気が済むまで暴力は続けられて、その度にトキコは叫んだ。
その声を聞いて助けに来るものは、誰もいなかったが。
やがて、カラン、と警棒を投げ捨てる音がすると、男はその口に犬歯を見せながら笑い、
しゃがんでトキコへと声をかけた。

「おいおい?どぉーしたんだぁー?抵抗しないんですかぁー?おい。」
「・・・・・・・・・」
「シカトすんなや。」
「うぶ、」

 男は手持ちのスキットルを開け、中に入っているアルコールをトキコの顔へとぶちまけた。
擦り切れた傷口に染み渡るそれはかえって痛みを引き起こし、“長らく感じていなかった”痛みに
意識を朦朧とさせていたトキコは、涙を浮かばせた。
男にとってそれは酷く愉しくないもので、立ち上がると腹いせに彼女を踏みつけた。

「っう、ゃだ・・・いやぁ・・・」
「は?」
「やだよぅ・・・許して、お願い・・・だから・・・」
「・・・・・・・・・」
「ごめんなさい、ごめんなさい・・・」

 顔に手をあて、年相応に泣くトキコ。表情さえ見えないものの、血と涙で顔は酷く汚れ、
ぐちゃぐちゃになっているだろう。
戦意など当の昔から無くなっており、早くこの拷問から逃れたい、ただそれだけが彼女の今の望みであった。
 しかし、男はまたため息をつきしゃがむと、だるそうに頭を掻いて呟いた。

「・・・あのなぁ?俺は別に謝れーっつってんじゃねぇよ。なんだ、お前の耳はただの飾りだったのか?お?」
「・・・っひぐ、・・・ぅ・・・」
「そうかそうか、お前の耳はただの飾りかぁ!じゃーいらねぇよな!」

 男は明るくそう言うと、ポーチからサバイバルナイフを取り出し、振り上げた。
その瞬間にトキコを仰向けにさせ、わざとその眼に凶器を見せ付けた。
襲いくる刃は彼女の耳を狙っているのではなく、額、つまり頭を狙っていたであった。

「っ!!!」

 トキコは反射的に右手を突き出し、振り落とされるナイフを打ち砕いた。
そして息のつく間もなく、無理矢理身体を起こし、男を組み敷くと、

「うわぁぁああぁぁあ!!!!」

 拳を振り上げ、破壊しようと力を込めて殴った。何度も何度も、目の前の男を破壊する、
壊す、殺す、コロス、コロス、それだけを考えて殴り続けた。
しかし男は、かすり傷ひとつもつかず、健在であった。

「・・・え?」

 唖然とするトキコを余所に、男はケラケラと笑いながら言った。

「っはははは!!!すげぇだろ!?対能力者用の無効化装置だってよ!!
まぁ開発途中んとこを俺が無理矢理かっ攫ってきたわけなんだ、が・・・
へぇー、ちゃんと働くんじゃねぇか。ほれ、よく見てみろよ。」

 男はトキコの目前に右手首を突き出す。細いその手首には銀色の腕輪のような物が
つけられており、小さなスイッチがいくつか付いている。
こんな小さな、なんでもないモノに自分は拒絶されたのか、そう思うとトキコは途端に怖気つき、
男の上から退いた。
 しかし、男は逃げるトキコを捕まえると部屋の隅へと投げ付けた。
勢いがあまって壁に頭をぶつけてしまい、ずるずると倒れていく彼女の額から、
また血が流れ落ちていった。

「まぁ、俺は別にこんなもんいらねぇんだけどな・・・ところでトキコ、お前・・・
さっき親の顔を殴ったよな?殴ったよなぁ?」
「ひ・・・や、やぁ・・・!!ごめんなさい!!ごめんなさい!!」

 男は腕輪を取ると、指を鳴らしながら怯えるトキコに迫った。

「親の言う事の聞かない子供には・・・お仕置きだ。」

 その時トキコの眼に映った父親の姿は、獲物を追い詰めた獣にしか見えなかった。

863しらにゅい:2011/03/25(金) 21:27:40









「・・・・・・・・・」

 トキコの耳に、朝を告げる雀達の鳴き声が聞こえてきた。
ゆっくり眼を開いてみると、いつもの散乱した部屋の光景が眼に映る。
どうやら、あの男は自分が気絶している間に退室していたようで、部屋の中には誰もいなかった。

「・・・っ・・・」

 少しでも動こうとすると、身体が悲鳴を上げる。
血は固まり、傷口には瘡蓋が出来て、正直全身から嫌な臭いがする。

「・・・はぁ・・・」

 お風呂に入らなきゃ、貴子に連絡を入れなきゃ、学校にも連絡を入れなきゃ、
やらなければいけないことが頭の中を巡る。
けれども、気力が起きない。

「・・・・・・・・・」

 お水を、飲もう。
トキコはそれだけを考えて、無理に身体を動かして台所まで向かった。
蛇口を捻り、コップに水を注ぐ。水が満たされる、そんな様子をただぼんやりと眺めていた。

「・・・ん」

 冷たい水が喉を通る、まるで生き返るような気分だ。
一息ついて、トキコは呟いた。

「・・・病院、いこう。このままじゃ、学校に行けないし・・・」

 病院に行ってから貴子に連絡を入れよう、こんな風体を見せてしまったら何を言われるか分からない。
そうトキコは考えて、飲み干したコップをテーブルの上に置き、出掛ける支度を始めようと・・・した。

「・・・え?っ?!な、なんで・・・どうして・・・!?」

 コップの下敷きになっている一枚の写真。
それは見に覚えのない写真で、そこに写っていたのは白髪の少女、火波スザクであった。
そしてその写真の右隅には、あの男が帽子につけていたエンブレムが描かれていた。
 それが何を意味しているのかは、彼女のみが知る。










籠われた朱鷺

864しらにゅい:2011/03/25(金) 21:30:55
「お疲れ様。」
「おう。」
「・・・どうだった?」
「相変わらず。泣きべそかくしか能の無ぇ餓鬼だったよ。」
「へぇ、可愛いじゃないか。」
「お前だけだ、そう思うのは。・・・早く車動かせ。」
「はいはい、仰せのままに。」
「・・・・・・・・・」
「そういえば、腕輪どうだった?」
「おぉ、ちゃんと機能してたぞ。」
「それは良かった、・・・開発部に良い報告が出来そうだよ。
あいつら、シギが勝手に持ち出したって聞いた時はかんかんに怒ってたぜ?」
「あんなとこに置いてる奴等が悪ぃーんだよ。俺は悪くねぇし。」
「・・・出された玩具を好き勝手に扱う、そういうところはなんだかトキコちゃんに似てる。」
「・・・・・・・・・」
「ちょ、シギ!車内で暴れるな!!」
「黙って車動かすか壊されるかどちらかにしろ。」
「・・・へいへい・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・シギ、」
「なんだ?」
「何で今になってあんな警告を?」
「・・・・・・・・・」
「シギがトキコちゃんに八つ当たりしに行くのはいつものことだけど、
他人を使った脅しなんて今までしたことがないじゃないか。」
「・・・べぇつに?他意なんてクソもねぇよ。」
「トキコちゃんの友人関係、ホウオウグループでの位置、そして彼女自身の心境の変化。」
「・・・・・・・・・」
「当たり?っいてててて!!!」
「事故るか?お?事故すっか?てめぇの愛車でよ。」
「ご、誤魔化さないあたり肯定と見て取れるんですけどあだだだ!!!」
「ッチ」
「っはぁ・・・あー、痛ぇ・・・」
「だいたいあの糞餓鬼はなぁ、物に執着しすぎなんだよ!!捨て切れねぇ捨て切れねぇって我儘の一点張りで、
大事なモンがどんどん増えていく・・・いつか自分の身を滅ぼすことも知らずにな!!俺はそれが気に食わねぇんだよ!!」
「痛い!!痛い!!シギ!蹴るな!!」
「大人しくホウオウの『狂信者』面してりゃぁいいものの、欲の赴くままに好き勝手暴れやがって・・・!!
子供のくせに、餓鬼のくせに!!」
「シ、シギそれひょっとして心配しガフォ!?」
「んなわけねぇだろうが馬鹿!!」
「っー・・・はいはい、自分とトキコちゃんとの親族関係が発覚するのが嫌だからですよねそうですよねー。
・・・はぁ、素直じゃないなぁ・・・」
「ッケ」
「・・・で、これからどうすんの?」
「あ?」
「能力持ちの犯罪者の回収、輸送、が今回俺らの仕事だけど、もう粗方済んでるだろ?
で、本国に帰還するまでまだあと何日かはあるけど・・・」
「まだだ、まだ終わりじゃねぇ。」
「・・・あー、例の神出鬼没の?」
「んだよ・・・俺は正直どうでもいいんだがな、能力の覚醒を促すだかなんだか、で、
間接的に事故を引き起こすだか・・・あー、忘れた。とにかく放っておけないから視察してこいっつー話らしいぞ。」
「でも、直接どうにかするのはアースセイバーの仕事だろ?俺らは関係あるのか?」
「知らねぇよ、ロビンに聞け。」
「・・・看守長、しっかりし、あだだだだ!!!」
「上の考えてることなんざ俺は知らねぇ!!犯罪者がいたら半殺しにして刑務所に叩き込む、それで良いだろうが!!」
「うわ、横暴!!」
「やかましい!!」
「いてて・・・ほんっと横暴だなぁ・・・シギは。」
「どうせ、てめぇが考えてるのはあの糞餓鬼の事なんだろ?」
「あ、バレた?」
「あの糞餓鬼、別に放置してても良いんだが・・・腐っても俺の餓鬼だからな、尻拭いはしていくさ。」
「尻拭い?」
「あぁ、・・・・・・何、簡単だ、」





「もうホウオウしか見ないようにすれば良い話だろ?」










とある父親と男の話

(その時)
(朱鷺は、)

865しらにゅい:2011/03/25(金) 21:34:11
>>861-863 名前のみで火波スザク、火波アオイ(スゴロクさん)、
氏型環(大黒屋さん)、緑音ののか(樹アキさん)、桐山貴子(サイコロさん)、
マオ、ケイイチ(本家様)をお借りしまして、
>>864 名前のみでホウオウ様をお借りしました。

866サト:2011/03/25(金) 22:26:41

しらにゅいさまの『トキコ』とわたしの家の『スイネ』を使いました





『…え?』

信じられないものをみた
いつも健康的で、
にこやかな笑顔を見せてくれる明るいわたしの“友達”トキコが、
目に見えて傷だらけで街を歩いていた

『トキコ!!』
『…っ?!』

恐怖にひきつった顔をして振り返ったトキコ
そんな表情をわたしはみたことがない
何かあったんだ
疎いわたしにもわかる

『トキコ、なにがあったの』
『スイ…ネちゃ…』
『トキコ!話しなさい!』
『う…ぇぇ…っ』
『トキコ…』
『うわぁぁぁぁぁん!!』

トキコは、目にいっぱい涙をためて
わたしの胸にすがり付いた
顔の筋肉を動かしたことで切れた頬から血が滲んで
わたしの制服についたけれど
今はそれよりも

『わた、し、なにも、できな…っちち、おや、に…っ』
『………肉親に、こんなことされたっていうの?!』
『ごめんなさい、ごめんなさいっ…ごめ…な…ああああっ』
『…!!』

“親”のことを思い出し、粟立つ心臓
しゃくりあげるトキコの頼りなげな背中が、傷だらけの彼女が

『トキコ…』
『スイ…』
『大丈夫よ、大丈夫。…このこと、スザクさんに話すべきじゃ』
『!だめっ!』

泣きながらも、トキコは血相を変えてわたしを見据えた
スザクのことを一番信頼しているはずのトキコが、スザクを拒絶している
どういうことなの

『鳥さんにはだめ!だって…だって……っ!しゃ…』
『しゃ?』
『……』

ちからなくわたしに身体を預けて、またすすり泣き始めたトキコを優しく抱き締めて、わたしはギリッと唇を噛んだ

《約束だよ、スイネ》

ごめんなさいケイイチ
わたし、どうやら本当に人間臭くなったみたい

『(殺してやるわ)』



蒼の神の憤怒
(わたしの大切な友達に)
(手を出す愚か者には)
(制裁を)

867びすた:2011/03/25(金) 23:24:13
今日中に感想をば!
>>828-829 サトさん
普段のトキコも可愛いですがこのストローでカクテルを飲む仕草がたまりません!
それとロゼがお姉さんっぽくなってて嬉しかったですw
あと彼女の不安定な感情がうまく描写されていて感動しました!
書いて頂きありがとうございましたっ

>>833-837 スゴロクさん
ヴァイスさん…敵に回したくない人物だっ
シドウさん……奥さんが亡くなった事を悔やんでいるのでしょうかね。
…そんな過去があったとは。
そしてさりげなく【ブルーアイズブルー】を拾っていただきありがとうございました!
どんな結末になるのか今後が楽しみですっ。

>>838 サトさん
おぉ!これはファーストコンタクトでしょうか!?
ケイイチのこの複雑な反応もまたいい感じ!
窓際で黙々と本を読むスイネ可愛いのぅ

>>839-840 大黒屋さん
冬也がんばれ!!超がんばれっ
そっかぁ凪姉さんとしてはまだまだ中間なのか…
早く実るといいねいいね←

>>842 サトさん
うぉお何と激しいファーストコンタクト!
ミオたんとスイネ仲良くできるのかしら…気になる展開です!

>>843-847 大黒屋さん
クランケとキリvsクロウとリオトですね!
クランケさんへたれかと思いきや戦いっぷりがまた魅力的で素敵ですっ!
ホウオウと違う理由で世界の合理化…できるといいなっ

>>848 闇音流さん
ミオさんサイドだっ
スイネさんと仲良くならないかなぁ…似たもの同志故なのでしょうかね。
続きが気になりますっ

>>849-851 スゴロクさん
おぉ、ここでまさかのアオイさん、スザクさんの登場!
クロウさん苦労性ですね…戦闘にならなくてよかった;;
そしてスゴロクさん風邪の完治したようで!よかったです…っ

>>861-864 しらにゅいさん
トキコのお父さん!!!この子供にしてこの親ありといいますか…っ
トキコの凶暴さは彼からできているのでしょうか。
しかしお父さんからしたらこの暴力は歪んだ愛情なんですね…

>>866 サトさん
そして続編がっ
天真爛漫なトキコが傷だらけで泣いていたら
さすがにびっくりしますし怒りを覚えますよね…
スイネちゃんも本気で怒っちゃいます!
どうなるんだろう…気になりますっ

868十字メシア:2011/03/26(土) 00:34:03
とりあえず少しずつですが、ミユカとシグマの外出話を書きます;
その前に感想!

>しらにゅいさん
ト、トキコちゃんの父親・・・だと!?
無敵のトキコちゃんがあんなにズタボロにされるとは・・・
今後の動向が気になります・・・

>サトさん
そしてズタボロのトキコちゃんを見て驚くスイネ!
猛烈にお怒りですね・・・
彼女にとってトキコちゃんを含めて「友達」は大切な物なんでしょうね・・・


でわでわ、ミユカとシグマの外出もとい半脱走話の始まりです。

『蛇、獣と一緒に外に行く』


「キッシシシシ・・・パクリにイタズラするの、ホントに楽しいな~」

某日、ウスワイア。
アースセイバー独立隊員、ミユカはこの日も趣味のイタズラをしていた。
哀れな事に、先程KEAがそれの餌食になってしまった。

「やーさんやこうちゃんにもやったから、もういいかな」

などと、若干、爆弾発言の様な事をぼやきながら歩くミユカ。
その時、彼女の目に1人の少年が映る。

「あれは・・・シグたん?」

ミユカがシグたんと呼んだ少年―――シグマは、1週間程前に保護された能力者。
正式には、元『ホウオウグループの生物兵器』である。
彼の能力は、『スロウディングスビースト』、又の名を『環境獣化』。
周囲の環境により、あらゆる獣の体つきや能力を得るという、かなり強力な能力。
にも関わらず、彼を生み出したホウオウグループは彼を捨てた。
その理由は―――彼が兵器にとって重要な戦いを『全く理解していなかった』から。
生み出されてすぐ、やせ細った森の中に捨てられた彼は、わずかに実る木の実等を食いつなげていたのだ。
ウスワイアに保護された当時、彼はやせ細っていたが、十分な食料と暖かい寝床を与えられた今、健康的な体つきになっていた。

「シーグたーん!」

ミユカはシグマを呼び止める。
だが、本人は呼ばれているのが自分だと分かっていないのか、周りをキョロキョロと見渡す。

「シグたん!君の事だよ!」
「・・・俺?」

ようやく気づいたシグマ。
それでも、彼の金色の瞳には、疑問の色が浮かんでいた。

「・・・ミユカ、俺の名前ってシグマだよね?」
「そうだよ?何で?」
「だって俺の事、シグたんって」
「あー、なるほど!」

ニンマリと笑うミユカ。
それにシグマはキョトンとした表情を浮かべる。

「シグたんっていうのは、シグマのあだ名だよ」
「あだ名?」
「自分の持っている名前とは別の、名前の事だよ」
「ふーん?」

半分理解していないかの様な表情のシグマ。
彼は常識等にも疎かった。
とはいえ、知能は人並みなのだが。

869スゴロク:2011/03/26(土) 00:43:34
しらにゅいさんの急展開を受けまして、スザクに迫って見ました。



――――4年前。それは、僕にとって3度目のターニング・ポイントだった。
僕を助けてくれたランカの父親が消え、大悟……今は「ゲンブ」と名乗る彼がアースセイバーに入り、「私」が「僕」に、「綾音」が「スザク」になった日。

僕の目的は、二つ。
一つは、僕から全てを奪った、ホウオウグループの壊滅。
一つは、ランカを置いて姿を消した、彼女の父親を見つけ出し、ランカに謝らせること。

それが、僕のやるべきことの、全て。
それこそが、僕の存在意義だ。


―――本当に?


ああ、そうさ。
ランカが見つけてくれなかったら、僕もゲンブも今頃死んでいた。
彼女が、僕達の道を繋いでくれたんだ。だから、僕はランカのために、あの子の父親を見つけ出す。
そして、僕達から全てを奪ったホウオウグループを倒す。


―――それは、本当にキミの望み?


僕の望みだ。それ以外に、何がある。


―――それは違うよ。それは、「私」の望み。キミの望みは、別にある。


何だ。何が言いたいんだ。


―――もう、気付いているんじゃない?



それで初めて、僕は自分が、街の中に立っている事に気付いた。ただ、そこは記憶にない街。
そして、色のない、モノトーンの世界。人がいない。明らかに現実ではないのに、僕はなぜか、その場所にいることに、違和感を全く覚えなかった。

僕の前には、同じ顔で、赤い髪をした少女が一人。

870スゴロク:2011/03/26(土) 00:44:05
「誰、だ……?」
「誰だ、はないんじゃない? 私は、キミだよ」

僕と同じ顔の「彼女」が、言う。

「僕?」
「そう。いや、正確に言えば……私は『火波 綾音』。4年前にキミが心の底に封じ込めた、弱さそのもの」
「綾音……弱さ……?」

そう、と頷く「彼女」――――火波 綾音。

「キミは『スザク』。キミが『斯く在りたい』と願った、強さの具現たる、仮初の人格」
「な……!」
「もっとも、それを望んだのは私でありキミ自身。長く分かれていたせいで、こうやって半ば独立しちゃったわけだけど、ね」

肩をすくめる綾音。弱さそのものだという彼女は、髪が赤いことを除けば僕とそっくりだった。斯く言う僕も、昨日までしばらく髪が赤く染まってたんだけど。
思えば彼女は、僕と比べて言葉遣いが若干女らしい。

「キミのその髪は、弱かった自分に決別するための、無意識の防衛反応」
「え?」
「赤という色は、キミにとっては近しいと同時に忌むべき色。血の色。弱さの色だから」

言われてみれば、そんな気がする。能力を使って戦う時は、いつも僕の髪は赤く染まる。だけどその都度、忘れたはずの弱さが顔を出していた。その後は、決まって悪夢にうなされるか、殺戮衝動に蝕まれるかだった。

「弱さの色……」
「そう。だからキミは、弱さと一緒に、赤を封じ込めた。それまでの自分を捨てて、生まれ変わった。だからこそ、こうして私がいるわけだけど」
「……どういうことだ?」

よく、意味が分からない。綾音は、苛立つでもなく言う。

「私はさっきも言った通り、キミが封じ込めた弱さそのもの。
言って見れば、キミの『弱さ』に該当する記憶を存在の核とする、己を得た意志。近い言葉で言えば、『ドリーマー』って奴かな? ホントはそれとも違うんだけどね」
「………」
「ランカの父親を見つけたい。全てを奪ったホウオウグループを倒したい。
それは、『綾音』が……私と一緒だった頃のキミが、望んだこと。だけどキミは、弱さと一緒に、その願いをも封じ込めてしまった」
「え――――」
「気付いてない?」

そして、綾音は言う。モノクロームの街を背景に、ただ静かに。


「最近キミは、ランカの父親を探していない。ホウオウグループに自分から関わってもいない。はぐれ能力者と戦ってもいない」

871スゴロク:2011/03/26(土) 00:44:42
「!!!」
「キミは、『私』だった頃の願いに縋っているだけ。そうしなければ、自分を保てないから」

言い返せない。あまりにも、それが真実だったから。
綾音は言う。責めるでもなく、怒るでもなく、ただ諭すように。

「アオイにしてもそう。あの子が求めているのは、『綾音』。でも、あの子が知っているのは『スザク』。
多分、あの子もうすうす気づいてるよ。キミが、『綾音』じゃないって」
「僕は……」

僕は、僕だ。ただそれだけの言葉が、言えない。音のない世界に、その呟きがひどく反響して聞こえた。

「キミは『スザク』。弱さを切り捨てた、強さだけの仮面。素顔をなくした道化師。仮面なくしては、自分を保てない」
「僕は―――――」
「仮面はひび割れる。支えているのは、素顔の名残である願いの残照。それもやがて消え、仮面は割れる」
「でも……」


「それなら僕は……どうすればいい」


縋るような思いで、呟く。答えは来ないと思っていた。だけど、


「そうだね」


綾音は、笑っていた。

「ランカのお父さんとホウオウグループのことは、私の願い。それを叶えるために、キミは私を切り捨ててキミになった。
だけど、それはキミにとっては『役目』であり、『義務』。だからキミは、キミ自身の願いを見つけなくちゃいけない」
「僕の、願い?」
「そう」


そうして綾音は、笑う。赤い髪をなびかせてくるり、と回り、まるで花のように。


「『火波 スザク』の願いを。『火波 スザク』の、愛する人を」
「それは……」

あの子の、ことだ。

「そう。キミはその片方を、自分で見つけた。強さの仮面じゃなく、『スザク』って言う一人の人間として」

赤い少女は、微笑む。

「旅行で『約束』した時。キミの中には確かに、弱さがあった」

872スゴロク:2011/03/26(土) 00:45:22
「それは……!」

否定しようとすると、唇に人差し指が当てられた。

「弱さを持ってるってことは、悪い事じゃないよ。誰かに甘えられる、誰かを信じられる。そんな、絆の源泉でもあるんだから」
「絆……」
「強さだけの人間は、孤独なもの。傷つかない、傷つけられない。自分だけで何とかなる。それじゃ、他人はいらない」
「………」

少し前までの僕は、確かにそうだった。

「誰かを殺したいと、そうしてでも自分のものにしたいと願ったのは、キミが寂しかったから」
「寂し、い?」
「そう。強さはあくまで仮面。封じ込めても、弱さが消えてしまうわけじゃない。
だからキミは、弱さを埋めるために、誰かに傍にいて欲しかった。殺戮衝動の源泉は、それ。心に空いた、埋まらない欠落」
「それは……」

綾音の赤い瞳は、どこまでも真剣で、誠実で。

「『スザク』という強さの仮面を被っているのに、素顔である弱さの『綾音』は封じ込めてる。
そんなアンバランスなことじゃ、自分を保てなくなる。だからキミは、無意識に人との繋がりを、弱い自分を欲した」
「え……」
「『あの子』に惹かれたのも、それがキミの弱さを見せてくれたから。自分が人でいられたから。
ゲンブさんに『弱さを受け入れろ』って言われて、キミは自分なりに考えて結論を出した。けど、気付いた?」


「キミ、弱さは結局封じ込めたままで、『スザク』のままで結論出したでしょ?」


「あ――――」

そういえば、そうだ。

「弱さを受け入れずに結論出したから、こうして『私』が生まれた。キミが、弱さも自分だと受け入れてくれなかったから、私が出て来た」
「う」

そう言われると、返す言葉がない。何だかんだ言っても、僕は今まで逃げ回っていたのか。他ならぬ、自分自身から。

873スゴロク:2011/03/26(土) 00:45:58
「でも、それじゃ……僕は」
「キミであることをやめろとは言わないよ。ただ、弱さを、『私』を受け入れて。元々、私達は一人だったんだから」
「でも、それじゃ……僕は、お前はどうなるんだ」

綾音は、微笑む。

「私は私じゃなくなるし、キミもキミじゃなくなる。今、こうして話している私達は、なくなるよ」
「……!」

背筋を寒気が走った。それは、存在の消滅への、恐怖。
だけど、綾音は笑ったままだ。恐れる事はないと言うように、手を広げる。

「怖がらないで。私に強さを、キミに弱さを。足りないものを与えあって、私達は元に戻る」
「そして、最後に残るのは……」

す、と手を差し出し。

「それは、キミが決めることだよ。弱さと同居する『スザク』として在るのか。それとも、強さを隠し持つ『綾音』として在るのか」
「スザクか、綾音か……」
「そう。キミが、自分の意志で、決めるんだよ」
「僕の、意志で……」

そして、僕は。


「……ああ、決めるよ」


その手を、取った。


「――――ありがとう」


反対の手も、す、と取り合い、絡ませる。どちらからともなく歩み寄り、目を閉じ、


「私には、強さを」


静かに、


「僕には、弱さを」


唇を、重ねる。


急速に遠のく意識。解け、溶けて行く自分の存在。だけど、不思議と怖くはなかった。あったのはただ、安らかな気持ちだけ。
そうだ、覚えてる。記憶の片隅に、残ってる。母さんが優しく抱きしめてくれた、幼かったあの日。
隣で歌ってくれたあの子守歌が、記憶の彼方から響いて来る。



―――ゆりかごの歌を カナリヤが歌うよ ねんねこ ねんねこ ねんねこよ…………



気付けば、モノクロームの世界は消え失せ、一件の家の前に立っていた。そこに待っていたのは、綺麗な山吹色の髪を風に揺らす、一人の女の人。こちらを見つめ、微笑む。


『おかえりなさい』


その人に愛してもらったのは、たったの3年。もう、顔も覚えていないのに、嬉しそうに笑うその人が誰なのか、はっきりとわかった。
あまりにも懐かしいその声に、姿に、知らず、涙が零れていた。


『……ただいま、母さん』



そして、夢は終わる。

874スゴロク:2011/03/26(土) 00:48:24

「……様、姉様」
「………」

気付くと、アオイが起こしに来てくれていた。雀たちの声が聞こえる……もう朝か。

「姉様、おはようございます」
「………」
「姉様?」

返事がないことに、少し心配そうな表情をするアオイ。だけど、心配いらない。

「……おはよう、アオイ」

僕は、僕だ。
ほっ、とアオイが胸を撫で下ろす。

「おはようございます、姉様」
「ああ」

いつものように挨拶をかわし、ベッドから降りて伸びをする。ああ、気持ちのいい朝だ。

「ん、ん―――――……っ」

体をほぐし、朝食の支度をしようとキッチンへ向かう。と、

「あの、姉様」
「ん?」

アオイが話しかけて来た。何かな。

「何か、ありましたの? どこか、雰囲気が変わったような……」

ああ、そういうことか。アオイの知ってるのは、『スザク』の方だけだったもんな。けど、心配ないよ。

「大丈夫。ただ、整理がついただけさ」
「整理?」
「そう―――」


「自分を、一つに戻せたんだよ」


「???」

疑問符を浮かべるアオイ。よくわかっていないようだ。いや、簡単にわかるとは思えないけど。

「よく、わかりませんけれど……姉様は、姉様ですわよね」
「ああ。僕は、僕。火波 スザクだ」

『スザク』と『綾音』は一つに溶け合い、道を選択した。そして選ばれたのは、弱さと共にあること。
その結果目を覚ましたのが、ここにいる僕ということだ。

(――――と、カッコつけてはみても)

結局の所、弱さを受け入れて、改めて自分の道を進むことを決めた、それだけの話だけどね。



朝食を済ませ、学生服に着替えて登校の準備をする。鞄も持った、靴紐も結んだ、教科書と時間割も確認した、お弁当も持った。準備万端、よし。

「アオイ、そろそ――――」

ふと、

「―――― ! ?」

脳裏を、大好きなあの子の顔が過ぎった。

(トキコ……?)

純粋な狂気、鳳凰の信奉者。それでいて誰かを大切に思うことをやめない、僕の愛しい人。いつものように、昨日のように、元気いっぱいで登校して来るだろう彼女のことが、胸騒ぎになって僕を急かす。

「ごめんアオイ、僕、先に行くから!」
「え、ちょっ、姉様!?」

アオイの慌てた声が聞こえたが、僕は何かに突き動かされるように走った。逢いたい。逢いたい。
一刻も早くトキコに逢いたい。今すぐ逢わないと、今すぐ駆け付けないと、二度と彼女に会えなくなる、そんな予感が僕を支配していた。

「行って来まーす!」

いつもの習慣でそう叫び、僕は一目散に、トキコの姿を求めて疾走していった。



『いってらっしゃい』



夢の終わり、戦いの始まり


(優しい声が見送っていることを)
(彼女たちを見守るひとがいることを)
(彼女たちは、知る由もなかった)



というわけで、スザク独り立ちのお話でした。微妙にしらにゅいさんのお話に絡めて見ましたが、いかがでしたでしょうか?

875スゴロク:2011/03/26(土) 01:31:13
書き忘れました。スザクの髪は、これ以後赤になります。

876大黒屋:2011/03/26(土) 11:57:02
かけるうちにさっさと書いておこうという策略。携帯から書き込みできればいいのにorz
名前のみスゴロクさんから「火波スザク」「火波アオイ」「ブランカ・白波」「白波シドウ」「ヴァイス」、しらにゅいさんから「トキコ」をお借りしました。

自己嫌悪

「…何が起こってやがる、この周辺で…?」
近くの公園に立ち寄った由衣は、ブランコに座って頭を抱えた。

隣のクラスのスザクの妹が現れ
娘を捨ててまでシドウが追っていた能力者がこの街に現れ
ホウオウではまた離反者が出
とらえられていた月光の姪が救出され
同じく隣のクラスのトキコが急に学校を休んだ

自分が把握できているのはこのくらいだ。
それも、自力で何とかして手に入れた情報。
アースセイバーと繋がりがある店長は、こんなこと微塵も教えてくれなかったのだから。

「…たく、いつまでも子供扱いかよ、私は…っ!」
店長の気持ちは重々承知だ。
預かっている「娘」を危険にまきこみたくない。そういう気持ちがあったのだろう。
しかし、どうしても由衣には納得いかなかった。

周りで今何が起こってるか。
それを知るのが、自分はあまりにも遅すぎた。
気がつけば、自分の周りはがらりと変わっていた。
その光景は、かつての「記憶」と重なり過ぎて――!

「うああああああっ!!」
日が沈もうとしている空に、由衣は吠えていた。
なにも…、能力者がこんなに苦しんでいるのに、なにも自分はできないのか。
そう考えただけであまりにも苦しかった。

不良をやってたあの時代。
ただ悪さをするだけでなく、家族のため、借金取りとも戦っていた。
時がたち、力を「不条理」で手に入れ、強くなったはずなのに、以前より何もできてないじゃないか。

青く染められた髪をめちゃくちゃに掻き回し、その場に崩れた。
弱い。私は弱い。人のために何もできない私は弱い。
その事実だけが、彼女を追いつめていた。
大粒の涙が、地面に歪な円を描く。

喧嘩はしないと決めた瞬間にこれだ。
あまりに護られ過ぎて、世界を見失っていた。
でも、喧嘩をすれば、自分の世界は再び赤く染まる。
自分に、自分に何ができるというんだ。
問いかけても、かえってくるのは自己嫌悪だけだった。

大声で泣く由衣を、通りゆく人は見て見ぬふりだ。
誰も、そばによって励まそうとしない。
青い髪の不良の噂は広まっており、誰もかかわろうとしなかったのだ。

だが、彼女の後ろで自転車のブレーキがかかる音がした。
足音が近づき、誰かが駆け寄ってくる。
肩をたたかれ顔を上げると、褐色の青年が白いハンカチを差し出していた。

「どうした?大丈夫か?」
「…。」
由衣はぽかんとした。泣きすぎで頭が回らないのもあるが、それ以上に自分に声をかけてくる人がいることに驚いたのだ。
そんな由衣の涙を、青年が白いハンカチで拭った。

「あ…どうも…。」
「いいっていいってw女の子の泣き顔なんて、誰も見たくないよ。」
やっと晴れてきた視界で、青年を見る。
褐色の肌に緑色の髪。まだ寒さが残るこの時期に白いTシャツと短パン、そのうえから黄色いエプロンをつけている。
出前の帰りなのだろう。空になった白いケースが、少し離れた自転車にくくりつけられている。

「何があったんだい?何なら、うちの店で話聞こうか?」
誘われたが、由衣はためらった。
能力者の話を、普通の人に話せるわけがない。
由衣は首を振り、立ち上がって無言で一礼すると、その場を走って立ち去った。

また、不意に涙がこぼれてきた。
無力な自分を嫌悪することは、終わってなかったのだから。



追記
「あーらら、逃げちゃった。折角いい女の子ゲットかと思ったのに。」
残された青年は、由衣の後ろ姿を見ながら呟いた。
「…ま、いいか。街中にいるならまた会えるよな。「主」に報告することできたし、今日くらい報告いれよっと。」

877サト:2011/03/26(土) 13:52:00

しらにゅいさまの『トキコ』『シギ』とわたしの家の『スイネ』スゴロクさんの『スザク』


『ひどい傷ですね…化膿しそうになっているので薬を出します』

スイネちゃんが病院に着いてきてくれた
傷の理由を話したくないとスイネちゃんにお願いして、
誤って山道を滑り落ちてしまったというふうに説明してもらった
いつものように笑えない。
スイネちゃんは、ずっと肩を抱いていてくれた

『トキコ。昨日からなにも食べていないんでしょ。
自販機の野菜スープだけど…
なにか口にしたほうがいいわ』
『…』
『いい子ね』
ぽん、と頭を撫でられてまた胸がざわつく
優しい、優しいスイネちゃん
ロゼに話したように、私の大切な友達
…ほんとうにそれだけ?

『トキコ。少し休まないと…
あなたの家よりわたしのマンションの方が近いわ。
歩ける?』
『うん…』

能力者だから優しくしてくれてる?
いや、違う。スイネちゃんは私が能力者であることを知らない
ならなんで?

数分歩くと、マンションに招き入れられる。
エレベーターで上へ上る
頭が朦朧としていて
階数までは見られなかったけれどそれなりに登った気がする
そのフロアの一番端の部屋に入ると、そこはスイネちゃんの匂いで満たされた、殺風景で生活感のない部屋だった
とても、白い

『ベッドを貸すわ。寝なさい』
『ねぇ、スイネちゃん』
『なに?痛む?』
『…どうしてこんなに優しくしてくれるの?』
『…どうして?』

スイネちゃんは、私の大好きな柔らかい笑みを浮かべて
私の頭を撫でた

『“友達を助けるのに意味はない。”そう教えてくれたのはあなたじゃない』
『スイネちゃ…!』

ああ、そうか
この微笑みは

『う…わあああああん!!』

優しかった頃の、『お母さん』に、にているんだ






878サト:2011/03/26(土) 13:53:05


トキコが眠りについたのを確認すると、携帯電話を握りしめて意識を集中させる
擬似的なもの。こんな能力の使い方はしたことがないから
うまくいくかはわからない
でも、今のトキコに必要なのは
きっと私ではなく

『…スザクさんですか』
《だれ…スイネ?!なんでお前僕の携帯…》
『トキコがうちにいます。はやく来てください』
《…?!トキコに何があったんだ?!》
『説明は後程させていただきます
意識として部屋の場所を飛ばします
…わたしは、別の用事があるもので』
《スイネ、おい、スイ》

電話を切ってトキコの額に触れた
…あの日以来、この能力を使うのは初めてだ
トキコの頭の中に流れる時間を逆行する。
浮かび上がる男の顔

『トキコ、少し待っていて。スザクさんが来てくれるわ』

スイネの双眼が緋と蒼に揺らめき、
彼女は重たい鉄の扉を開け放ち
外へ足を踏み出した


交差する、点と線
(ツキススメ)

879大黒屋:2011/03/26(土) 14:20:13
自キャラオンリーです。
他の話と絡むのって、難しいorz

生存報告

「「カンクロー」さんからまだ報告来てないの!?」
夜、春美は素っ頓狂な声を上げていた。
「ええ。まぁ、何につけてもマイペースでありマシたから、また女の子引き込んでそうでありマスね。」
「それ以前に無事の一報くらいくれればいいのに…。」

クランケの手により救い出された春美は、とにもかくにも妖怪たちの無事を確認してまわっていた。
能力封じを解かれた今、本来の力を使えるようになった妖怪たちから無事の一報と共に近況報告が飛ぶように来る。
それもいくらか落ち着き、残り少しとなっていた。
「確か、私がつかまる前に『沖縄の店に閑古鳥が鳴き続けてるから、そろそろいかせのごれに移転する』って報告したきりで…。」
「移転したのは確認したのでありマスが、当のカンクローは見なかったのでありマス。」

『…お、やっとつながった。おーい、もしもーしw』
春美の耳に声が届いた。春美も声を上げる。
「カンクローさん!どうしたんの、遅くなって!心配してたのよ!?」
『ごめんごめんw出前にいってたら帰りに泣いてる女の子見かけちゃってさ。放っておけなかったわけよー。』
「それみろ、やっぱり女の子がらみでありマス。」
「まあまあ;」

『…で、お聞きの通りこっちは無事だから。安心していいよ。』
「「アカノミ」も大丈夫ね?」
『一回枯れかかったけど大丈夫。正直これ以上「主」が能力使えなかったら危なかっただろうね。』
「よかった…;」

『まぁ、力が使えなかった分本来の活動はできなかったわけだけどね。』
「ちょっと、それは駄目だって何度も言ったじゃない。」
『あらら、そうでしたっと。まぁ、主がいなかった間、誰も人間襲えてないはずだから、そこはラッキーじゃないの?』
「本人の心情知らないでよく…。」
「落ちついて、キリ君;」

『そうそう、そんなに気がたってたら、間違って主斬っちゃうかもよーw』
「ちょ、ちょっとカンクローさん!;」
この一言には流石のキリもキレたらしい。
立ち上がり、その場にいない相手に怒鳴った。

「黙って聞いてれば調子にのって!今夜面貸せでありマス!今日こそ思い知らせてやるのでありマスよ!!」
『ああいいさ、かかってこいよ!返り打ちだこの野郎!』
「二人とも落ちついて!ていうかいつも途中で止めるけど、カンクローさん勝ったことないじゃない!」
『今回は勝ってやるから!』
「いや今回も…。」

「いい加減にして!!」
悲鳴とも近い春美の声が響き、一瞬閃光のようなものが弾けた。
それがきっかけだったように、二人のいい争いがぴたりと止んだ。

「『…主…;』」
「二人だけならともかく、毎回周りの被害が激しいじゃない!それに、どっちも怪我されちゃ困るよ!」
「『…。』」
「いい?地下牢にいたときにきいたけど、今あっちこっちで能力者絡みの事件が多発してるの。霊や妖怪とは直接関係ないけど、私たちもアースセイバーよ。いざというときは協力しないといけないんだから。だから喧嘩しないで!」

「…はぁ、またしてやられたのでありマス。」
『お互い様だね。ごめんよ、主。』
「分かってくれればいいの。ね?」
憤慨していた3人の空気は、丸いものにかわった。

「じゃあカンクローさん、何かあったら直ぐに連絡頂戴ね。」
『了解っ。そっちも、ピンチの時はいつでも呼んでくれよw』
じゃっwと軽い声が聞こえ、通信が途絶えた。

「…確かにそうでありマスね。妖怪絡みではないにしても、事件が相次ぎ過ぎているのでありマス。」
先に受けていた他の妖怪からの報告でも、能力者が巻き込まれたり事情が絡みあったりと平穏ではない。
自分にも何かできないだろうかと、春美は思考を巡らせることにした。

「とりあえず、クランケさんのお礼も兼ねて…。」



追記
「ところで、なんでキリ君ってカンクローさんとあんなに仲悪いんだったっけ?」
「スカした面が気に入らないのでありマス。向こうもそんなこといってたような気がするのでありマスが。」
「あ…そ;」

880十字メシア:2011/03/26(土) 16:06:17
「もうウスワイアには慣れた?」
「まだ。だから色々見て回ってる」
「そっかー」

そこで会話が途切れ、沈黙が流れる。
と、シグマが再び言葉を発した。

「なあ、ミユカ」
「んー?」
「外って、本当に面白い物があるのか?」
「あるけど…どうしたの急に」
「俺、あの森の外に行った事無い」
「そっか…」

ミユカはシグマを見下ろす。
ホウオウグループの都合にで生み出され、捨てられたシグマ。
広い外の世界を知る事なく、只々命を繋ぐ為に生きてきた彼が、外の世界に興味を持つのも無理は無い。
そんな事を思いながら、ミユカは考え込むような表情をし、シグマにこう言った。



「シグたん、一緒に外に行かない?」


「…へ?」

ミユカの口から出てきた突然の言葉に、シグマは驚きを隠せなかった。

「だから、私と一緒に外に行こうよ」
「で、でも俺…まだアースセイバーに入ってないし…」

戦闘能力を持つシグマは、アースセイバーに入る訓練生とはいえ、身分はまだ『ウスワイアに管理されている能力者』。
安易に外に出る事は出来ない。
しかしミユカは―――。

「大丈夫、大丈夫!アースセイバーに入る前に、外の事を色々知っておいたほうがいいと思うし、問題さえ起こさなきゃ怒られないから!」
「ほ、ホントに…大丈夫?」
「私が保証する!」

自信満々に胸を叩くミユカ。
その姿に安心したのか、シグマは笑顔を浮かべた。

「じゃあ、行く!」
「そうこなくっちゃ!」
「お、ミユカにシグマじゃないっすか」

2人に声をかけたのは、アースセイバーの知恵袋的存在の、ナイトメアアナボライザー、シノである。

「あ、百科事典さんに真衣ちゃんだ」
「相変わらず変なあだ名つけるっすねー。気にしてないけど」
「ひゃ、ひゃかじえん…?」

聞き慣れない上に(自分にとって)発音しにくい言葉に戸惑うシグマ。
笑いを堪えながらも、ミユカはシグマに「百科事典」の発音を教える。

「ひゃ、ひゃっか…じてん?」
「そうそう、オッケー」
「シグマも随分元気になったみたいっすね」
「そういえば、シグたんを見つけたのって、百科事典さんだよね」
「そうっすよ。首輪にホウオウグループのマークついてた時はびっくりしたっす」

趣味であるバイク乗りで街を駆け回っていたシノは、森の中に何かがいるのに気づき、入ってみると、骨と皮だけの様な体つきになっていたシグマを見つける。
その時、首輪にホウオウグループのマークがついてるのを見つけ、ホウオウグループに捨てられた能力者である事に気づいたシノは、すぐさまシグマをバイクに乗せ、ウスワイアへ連れて来た。
色々調べた結果、シグマが人間をベースに、様々な動物の遺伝子を組み込まれた生物兵器である事が判明したのだ。

「3日間は何も食べなかったみたいすから、発見が遅れたら餓死してたかもしれないっす」
「……」
「シグたん?」

シグマの様子に疑問を感じるミユカ。
すると、シグマが小声で話し始めた。

「あ、あの……ありがとう…」
「…別にいいっすよ」

シグマのお礼に、シノは笑みを浮べ、シグマの頭を優しく撫でた。

881サト:2011/03/26(土) 19:19:04
『スイネ』とびすたんの『ロゼ』本家の『ケイイチ』『ホウオウ』をお借りしました



近頃目に見えてわたしはおかしい

人を斬ることに対して
躊躇などなかったはずなのに
わたしは、ホウオウ様に勝利を導くための
女神なのに

『ファスネイ様。エナジー補給の時間です』
『うん…』
『近頃どうかなさいましたか?何か…』
『へん?』
『は…』
『わたし、へんなの?』
『い、いえ、そんな滅相もありません』
『………ロゼ、わたしへんなの、こわい…』
『ファスネイ様…』

《“友達”になりましょう、ファスネイさん。こっちたちの仲間に…!》

『ロゼ、わたしたちは、友達にはなれないの?』
『…それはできません』
『どうして?』
『あなたは神ですから』
『…』

そう、わたしは女神
だから孤高の存在でいなくてはならないの。それなのに
期待と不安がないまぜになる
知りたい
“友達”が何なのか
わたしにできていいものなのか

『(けいいち…わたしあなたに、あいたいよ…
わたしにもともだち、できるのかな…)』



“神”に手に入らないもの
(ほしいよ、ほしい)
(これが、“欲求”という感情)

882しらにゅい:2011/03/26(土) 19:24:52
「ファスネイ、そんなに怒りっぽい顔をしてどこに行くんだい?」
「・・・・・・貴方は・・・」
「ハンプティダンプティも転げ落ちてしまうほど恐ろしい顔をしているよ、
女の子がそんな顔をしているなんて、感心しないねぇ。」
「貴方には、関係無いでしょ。」
「まぁ、確かに関係無いね。」
「・・・・・・・・・」
「もしや小さなアリスを縛る暴君を、殺しに行くのかい?」
「・・・・・・・・・」
「いけないよ、それは絶対にしてはいけない。」
「っどうして!?」
「ファスネイ、君の、君達の力は決してそんな風に扱ってはいけないんだよ。
よくよく冷静になって御覧よ?」
「トキコの、っあの子のあんな姿を見て冷静になれる・・・!?
そんなわけないじゃない!!」
「そうさ、小さなアリスに関わった者であれば、決して許すことの出来ない
所業だろうねぇ。特に、紅きハムレットの怒りは憎悪の色に染まるだろうし。」
「だったら!!」
「けどねぇ、それは所詮『私怨』に過ぎないのさ。
・・・人殺しさ、君が行おうとしているのは。」
「っ・・・」
「君達の主観からすれば、あの男さえいなくなれば小さなアリスは解放される。
だが、もっと広い視野を持って御覧なさい?君達が相手にするのは化け物でもないし、
いかせのごれの平和を脅かす能力者でもない。・・・ただの一般人さ。」
「あんなのが一般人だなんて言える・・・!?」
「言えるね。確かに彼も能力者ではある、が・・・悪党を世間に逃さない番人さ。
そして、父親でもある。」
「・・・・・・・・・」
「こればっかりは簡単に済む問題ではないんだよ、ファスネイ。
とてもとても難しい、人間の情が絡み合った複雑なロジックなんだ。」
「・・・だったら、私達はただ・・・あの子を見ているしかないの・・・?」
「そういうわけでもない。」
「・・・?」
「オイラは忠告をしただけであって、決して『無理』とは言っていない。
99%無理な事象であっても、1%の解決出来る可能性がある。
それに縋りなさいな、あきらめたくないのであれば。
解決策を出したいのはファスネイだけじゃない、皆一緒さ。」
「・・・・・・・・・」
「さて、忠告はしたからオイラはそろそろ消えるよ。
ファスネイ、この後は君の好きにするといい。
別に君が帰ろうがあの父親を殺そうが、止める権利はオイラにはない。」
「・・・・・・チェ、」
「ただ、一つだけ覚えておくんだよ。
そこにどんな思いや信念があっても、人殺しには変わりはないと。
・・・それをよぉく、覚えておくんだよ。」










表題
「猫、ファスネイに忠告をする。」

(そうして猫は)
(にんまりとした口を残して消え去った)

883しらにゅい:2011/03/26(土) 19:54:48
>>882
ちょっと牽制するような形になってしまいましたが・・・とにかく書いた本人が
言うのもあれですが、一旦落ち着いてー!な話でした(;´Д`)w
お借りしたのはスイネ(サト様)でした!


以下、感想。


>>866,>>877-878
ふ、普段は菩薩の如く麗しいスイネちゃんを怒らせてしまっただぁ・・・!!(;´Д`)
けど友達の為に怒り、助けになろうとする、その当たり前の優しさがあの時の
トキコにとっては、凄く嬉しかったのだろうなぁと思います。
お母さん・・・(´;ω;`)ブワッ

>>869-874
ようやく『綾音』と『スザク』が一つになれたのですね・・・!
強い面の『スザク』、弱い面の『綾音』二つの面が今ようやく合わさって、
『火波スザク』として一人の人間へと戻ることが出来た。
長い長い道のりでしたね・・・うぅ(´;ω;`)ブワッ
言葉にするのもなんだかもったいないなくて多くは語れませんが、
とにかく、スザク姐さんの願いが叶いますように・・・
と願いたかったのに自分はなんてものを(ry

>>876
危険に巻き込みたくない亜音さんの気持ちも分からなくはありますが・・・
由衣ちゃんの葛藤もなんだか分かるような気がします(´・ω・`)
この苦しみが後々の由衣ちゃんに影響しなければ良いのですが・・・うーん・・・
そしてなんだこの軽そうな兄ちゃんは!?「主」ということはもしや・・・?
>>879
やはりそうでしたかぁぁ!!春美ちゃんと愉快な妖怪たち!!(ぇ
キリさんが言うのも最も分かるかもしれませんねww
春美ちゃん、流石妖怪を束ねる(?)だけありますなぁ(´ω`)

メシアさんのお出かけ話は完成次第返信したいと思いますっ!

884サト:2011/03/26(土) 20:19:33

今日はびっくりするぐらい飛ばしてますなw


チェシャに言われた言葉が胸に突き刺さった
…そうだろう。わかっては、いる
《友達になろっ!》

『…トキコ』

そう、わたしにとって純粋な意味では初めての友達
こんなに怒り狂ったのは、きっとイヴにケイイチを殺されかけた時以来だ

『わたし、何もできないなんて…』

ギリリと強く唇を噛むと、鉄の味が口一杯に広がる
鬼畜でも、実の娘をあんなに殴り倒すことのできる父親でも
一般人には、違いない

『…ッ』

瞬間、背筋を走る悪寒
まさか、あの男か?!
振り替えると、そこには金髪碧眼の女性が、にこりと笑った

わたしによく似た顔で

『…っ誰?!』
『見つけましたわ、ファスネイ・アイズ』
『その名を…?!』
『私の名前は、ベガ。早速だけど、死んでくださいな?』
『なっ…』

ぶわりと辺りに漂う霧
足を絡めて動けなくなる
能力者…いや、この力は

『あなた、人工神ね』
『よくおわかりになりましたね』
『その顔…どういうつもり』
『これはあなたへのアンチテーゼです。
主のイメージにはあなたと
あの男の姿が一番色濃く残っていたので』
『あの、男?』
『…あなたに多くを語る気はありません』

――――来る!!

素早く、わたしの中の“執着”を具現化させる
鎖が霧を追い払うと同時に、素早く背後を取り、頭の中にイメージを張り巡らせる

『間に合いますかしら』
『黙りなさい!』

以前に、黒騎士に襲われたときに出現させたユニコーン
鮮明な記憶と共に、現れたそれの毛並みは朱色をしていた
そう、これは
トキコの色

『独創的な創造物ね。何を意味しているの』
『…今のわたしに出会ったのが運の尽きね、ベガ』

その朱色の翼馬を携え、瞳は熱く燃えたぎる

『わたし、今とても虫の居所が悪いのよ』




二人の神
(…スイネちゃん?)
(トキコは、友のいない部屋で目覚めて、なぜか胸がざわついた)




『スイネ』とakiyakanさんの『ベガ』しらにゅいさんの『トキコ』『チェシャ』お借りしました

885しらにゅい:2011/03/26(土) 20:38:37
過去話の感想忘れるとか失態・・・ッ!!

>>881
お付人という立場は結構親しい関係ではあると思うのですが、
それでも『神』であるが故に『友達』という関係は作れない・・・
それはそれでなんだか寂しいですね・・・。
しかし、あの時知らなかったその存在を今知ることが出来て、
スイネちゃんは幸せだと思いますよ!・・・ロゼさんは、また別な気持ちでしょうが。

そして新たな展開うわぁい!!

>>884
ベガさんキタァァァ!!!不穏な中の更なる不穏が舞い降りた・・・!!
対峙する二人の女神、スイネちゃんの能力がだいぶしっかりとしてきた
ような気がします。・・・が、トキコ同様私もなんだか胸騒ぎがします・・・!
スイネちゃん、ぶ、無事だよね!?だよね!?(´;ω;`)

886スゴロク:2011/03/27(日) 01:16:39
いきなり前途多難なスザクの恋路。時間が経てば経つほど困難が増えて行くという。

>しらにゅいさん トキコの過去話を読んだ時から、「これ、後で絶対何かあるな」と思ってたら案の定でしたね。シギ、歪みながらも己を貫く男。さて、彼はこれからどのように物語に関わって来るのか……?



今回はこんなお話です。時間軸としては「交差する、点と線」と「二人の神」の間の話です。



「……何だ? 今日は火波もトキコもいないのか」

登校して教室を覗いた啓介は、いつもなら真っ先に目に入る2人組の姿がないことに気付いた。元気一杯のトキコと、どうもそんな彼女に想いを寄せているらしいスザク。色々とアンバランスな2人組が、今日はそろって不在。

(逢引きか?)

一瞬、本気でそんな事を考えた。と、1組を見た時の違和感にも同時に気がついた。

(そういえば、今日はスイネもいなかったな)

アースセイバーの仲間のひとり、二度に渡って謎のバイクスーツに襲われた少女。襲撃そのものは最近ないが、油断は出来ない。もしかすると、何かの任務に就いているのかもしれない。

(ま、何にしても。俺はまず、真衣のことが優先か)

いつものように席につく啓介は、トキコの葛藤を、スザクの変化を、スイネの危機を知らない。



「ランカちゃん、退院おめでとう」
「ありがとう、真衣ちゃん」

白波家。ようやく調子が戻って退院を許可されたブランカ・白波は、待つ者のない自宅へ久々に戻っていた。
父の姿は未だなく、母も既に亡い。今この家の主は、ランカ一人。

そんな彼女の数少ない友人の一人、最近新しく出来た友達の名前は、蒼崎 真衣。自分共々名義上はウスワイヤ預かりとなっている、「流れ」を操る能力者。
その真衣が、ゲンブの計らいで遊びに来てくれていた。

「でも、無理はダメだよ? 体が弱いんだし、ただでさえ病み上がりなんだから」
「うん」

微笑ましい2人を、壁際に座るゲンブが眺めている。真衣は一応、現在は啓介の「監視」下にあるのだが、彼の本業は学生。そのため、登校中はこうしてゲンブが代行するのだ。

(今の所暴走の気配はゼロ、と)

死への恐怖をトリガーに覚醒・暴走する、真衣の「流動制御」。正しく使えば、それは強力な力だ。流れるもの、それは全て真衣の味方。それは水であり、電気であり、風であり、血液であり、果ては時間さえも。
しかし、今の彼女ではそれを制御しきれない。事態が落ち着き、彼女が全てを受け入れられるようになるには、まだ時間がかかる。

(それまでは、こうして見張らねばならんか……締まらん話だ)

ため息をつくゲンブは、仲間の一人が呼び出しを受けて走っているのを、知らない。

887スゴロク:2011/03/27(日) 01:17:11
どさり、
鞄を取り落とした。

「な……んだよ、これ……」

走っている最中に突然かかって来た、スイネからの連絡。彼女は僕のアドレスを知らないはずなのに、どうして? まず困惑が先に立った。しかし、直後に送られて来た思念、スイネの部屋の場所が頭に浮かんだ。
そこに向かって全力疾走したのが、ついさっきまでの話。
そして、
今、
僕の前に、

傷つき痛んだ、トキコが眠っている。

頭の中を駆け巡るのは、形にならない思考の断片。

―――なぜ? どうして? 何があった? どうして、トキコはこんなに傷ついている? どうして、そんなに、何かに怯えたような表情をしている?

しばしの時をおいて、僅かながらの理解が及ぶ。

(――――誰かが、トキコを、傷つけた。スイネが見つけて、助けて、連れて来た)

そこまでだったけど、僕には十分だった。
トキコを傷つけた。こんなにまで、怯えさせた。――――僕が敵とするには、十分以上の理由だった。

(許さ、ない)

紆余曲折を経て赤に戻った自慢の髪が、ざわり、と揺れるような錯覚を覚える。

(絶対に、許さない)

多分彼女は、こんな姿をスイネ以外に今見られるのは嫌だろう。そう思って鞄を拾いなおし、僕は踵を返してその場を後にした。




「スザク」
「!」

さすがに今日は学校に行く気にならなかった。携帯で欠席の連絡をし、鞄を家において街を歩いていると、背後から誰かに話しかけられた。聞きなれたこの声は、

「……マナ」
「久しぶり、ね」

最近姿を見なかった、黒の少女のものだった。

「ストラウル跡地に付き合って。話がある」
「? あ、ああ」

マナから話を振って来るとは珍しいこともある。少々驚きながらも、僕は後を着いて言った。



跡地についた僕に、開口一番マナが切り出したのは、

「スザク、ハッキリ言う。あの子に関わるのは、もうやめた方がいい」
「!?」

トキコから離れろ、というものだった。

「ど、どうして!?」
「忘れたわけじゃないでしょう? あの子はどこまでもホウオウグループ。あなたとは相いれない」
「そんなことはない、マナ」
「いいえ、それは違う。交わした約束は、いずれ戦う事が前提。その時が来るとすれば、それはホウオウグループとの決戦。それであなたが負ければ、あなたの道はそこで終わる。あなたが勝ったとしても、アースセイバーを、秩序の護り手を敵に回した彼女に未来はない。あなたは、闇に向かって進んでいるだけ」
「……そんなことはわかってる。それでも僕は、あの子が好きなんだ」
「なぜ? どうしてそう思うの?」

妙に強い調子で言うマナに、僕は。

「……誰かを好きになるのに、理由がいるのか?」

888スゴロク:2011/03/27(日) 01:18:04


―――驚いた。
いつものスザクなら、ここで「それは……」と答えに窮したはず。あの赤い髪といい、今日のスザクは何か違う。

「どうした、マナ?」
「え……」
「どうしても何もない。気が付いたら好きだった。それだけさ。理由がいるなら、あとからいくらでも付け足せばいい。違うか、マナ」
「そ、れは……」

今度は私が窮する番だった。どうしたんだろう、本当にいつもと感じが違う。迷いや恐れが消えて、肩の荷が下りたような、そんな涼やかな感じがする。

「というか、マナ」
「?」
「この間、僕にトキコとのことでアドバイスをくれたのは、他でもないお前だったよな? どうして、今になってそんなこと言うんだ?」
「う、そ、それは」
「詰まるってことは、何か言えない理由があるんだな?」
「そ、その」

完全に詰んだ。というか、簡単に説き伏せられると甘く見ていた。
いつものスザクは、強いようでいてその実「自分」がなくて、誰かのアドバイスがそのまま行動の指針になっていた。
だけど、今の彼女は違う。以前ほどの「強さ」は感じないけど、何だか……そう、しっかりしている。
自分の足で立って歩き始めた子供というか、そんな感じがある。自分で自分を律している、そんな感じがする。
答えに困っていると、ふ、とその表情が和らいだ。

「でも、ま、いいよ。事情はわからないけど、僕を心配してくれたんだろ?」
「………」
「それが本当なら、それでいいよ。ありがとう、マナ」

そう言って、スザクは微笑んだ。まるで、自由を取り戻した鳥のごとく。

(……あの事は、言わない方がいいかな)

彼女に言うには憚られる事実が、三つある。
目下、彼女の想い人であるトキコを痛めつけたのが、他ならぬ彼女の父親であり、彼は能力犯罪者を収監する監獄の番人であること。
彼がトキコに対し、スザクの写真とエンブレムで「警告」を送った事。
そして、未だ不確定ではあるが、トキコを―――予想だが、潜入以前の「狂信者」に戻そうとしているらしいこと。

もしそれが実現すれば、スザクはまた、大事なものを失う事になる。
下手をすると、彼女は二度と立ち直れない。それだけは、スザクの仲間として、受け入れられない。

(だから、先んじてトキコから離そうと思ったんだけど……)

考えて見れば、スザクはトキコの素性や先の事、一切合財を承知した上で恋路をひた走っていた。説き伏せられるはずもなかった。
と、

「……マナ、どうしたんだ? やけに深刻な顔してるけど」

気遣わしげな声がかかった。だけど、この事をスザクに言う訳にもいかない。
どうしようと困っていると、向こうから答えが来た。

「……言えないなら、それでもいいよ。僕は、しばらくトキコから離れておく」
「え……」
「今のあの子は、多分、僕に会う事を拒むと思う。だから、しばらくはスイネやお前に任せるよ」
「わた、し?」

ああ、と頷くスザク。赤い髪が、風に揺れる。

「――――頼む。トキコを、守ってくれ」

これ以上ない真剣な瞳で、彼女は私に、大切な人を託した。
だから、答えは一つ。

「――――任せて。私の全てをかけて、あの子を守るから」

889スゴロク:2011/03/27(日) 01:18:45
「ク、ク、ククククク……」

その時、ヴァイスは人目につかぬ場所で、含み笑いを抑えきれずにいた。
気まぐれに立ち寄ったある場所から、遠く目にしたのは、自分もその噂を聞く、ある男の暴虐。そして、その男がいかに人として歪み、プライドを持っているかを知った。

「素晴らしい。なんと、素晴らしい」

久方ぶりに面白いものを見つけた。いや、そんな言葉では足りない。
自分が好むのは、エゴを抱いた人間が、エゴによって破滅する姿。両親がそうやって破滅したのを見た時、得も言われぬ感覚が胸の奥に湧きあがって来たのを、15年経った今でも思い出せる。
そこへ行くと、あの男はどうだ!?

人を人とも思わぬ傍若無人な振る舞い。
己を中心とする傲慢な考え方。
自らの基準にそぐわないものを淘汰する器。

――――そんな男が破滅する時、いったいどんな表情をするのだろうか。破滅など考えていないような、あの男が終わりを迎える時、どんなものを見せてくれるのだろうか。

不意に、肩が震える。しかしそれは恐怖ではない。顔に浮かぶのは、紛れもない、喜悦。

(ああ、楽しみだ。楽しみで仕方がない。シギと言いましたか、アナタは一体、どのように破滅するのですか……!?)

そうして、す、とその姿を消す。
まずはどこから始めよう。すぐに壊れてもらってはあまりにつまらない。ゆるりと、ゆるりと、蟻地獄のように、少しずつ追いつめ、最後の最後で完全に壊してしまおう。

そんなことを考えつつ、壊れた男はいずこかに消えた。



彼女を巡るエトセトラ


(朱雀は友に愛を託した)
(道化師は標的をその眼に捉えた)
(先に待つは何か、誰も知らない)


余談、とある喫茶店。

「エイト。誰かが、言っていた」
「はい?」
「空を飛ぶ『鳥』は、いつか必ず墜ちると」




ということでした。

890ネモ:2011/03/27(日) 01:28:32
リアルタイム更新だキャホー

891(六x・):2011/03/27(日) 03:14:32
>サトさん
自分でも凪姉がどっちなのかわからなくなってきたw
冬也可愛いですか!ありがとうございます。
だってショタだもの^^


>しらにゅいさん
これがきっかけで意識するとな!?
凪さんはヤンデレにはなりませんがボコデレにはなりそうだ。
「凪姉かわいい。マジ天使!」
「ちょw照れるww///(バチーン」
「痛い;;」
「すまん(キリッ」
ただの変人になった・・・もともと結構変だけど←

トキコを叩いたクソ豚野郎はどこだ!!
探し出して袋叩きに・・・(六言・)

>びすたさん
そうですね。確かに中間ですw
最近忘れられてるかもだけど、凪姉は照れ屋です。あとは…わかるな?(え

>スゴロクさん
スザクが一つになりましたね!
某サッカーゲームの吹雪くんを思い出したよ。
スザクもパワーアップするんでしょうか?


本編です。後半はまさかの親父のターン。


氷と嵐

「冬也、こないだはキーホルダーありがとな。お礼だ。」
「え、悪いよっ」
「私が返したいんだ。黙って受け取れ。」
「あ…ありがと。凪姉、そういうとこ細かいよね。見てもいい?」
「どうぞ。」
「ヘアピンだ…あ、緑と青のラインストーンがついてるんだね。(俺と凪姉の髪の色だ)」
「いつまでも汚いのつけられても困るからな。この機会に付け替えろよ。」
「うん。・・・・・似合うかな?」
「あぁ、すごく可愛いぞ。」
「えへへ。凪姉、大好き!(ぎゅっ」
「うぁ、冬也!?///」
「凪姉?心音が急激に上がってますよ?」
「そ、そりゃいきなり抱きつかれたらびっくりするよ!しかも校内で恥ずかしい!」
「ぎゃー!(^q^;)」
「凪さーん!(^q^;)」
「ショタっ子場所かわれえええ(^q^;)」
「しかし、豚共が発狂しているのは愉快だな。冬也、もうちょっと絡んでみるか?(ニヤニヤ」
「えっ…あっ…ボク帰りますっっ/////」
「あ。やっぱ変な奴。」

892(六x・):2011/03/27(日) 03:29:57
「ただいま。」
「おかえり。今日は早く帰ってきたんだな。」
「早く帰らないと親父が泣くからなw…って、何見てるんだ?」
「ん?薄い本。」
「うわ…母さんに見つかったらまたなんか言われるぞ。」
「わかってるよ。そうだ、こないだ言ってた剣術のことだけど、日本式?それとも西洋剣術?」
「どっちでもかまわないよ。」
「わかった。じゃあ調べてまとめておくね。」

最近、凪が急に「剣術について知りたい」と言い出した。
そういう部活の助っ人でも頼まれたんだろうか?


「凪?こんな夜中に何を…素振り?バットじゃないな、剣か。」
「む…大剣サイズは使い勝手が悪いな。耐久性はありそうだけど重い。やっぱいつものがいいな。」

凪がそう言うと同時に大剣が融け、わずか数秒でサーベルが生成される。


ああ、そういうことだったのか。
それにしても、氷の剣とは凪らしいな。俺みたいな先天性の能力はなかったから、おそらくナイトメアなんとかというやつだろう。

「今度、誰かに聞いてみるかな。」



凪さんに散々な言われようの親父は能力者でした。設定は決まり次第企画スレに上げます。

893大黒屋:2011/03/27(日) 15:59:26
思ったより長くなった。反省も後悔もする気はない(
自キャラオンリーです。

一喜一憂

人気のない平原にぽつりと映える巨木。
傘状に開いた枝葉には点々と、赤い木の実がなる。
その実を一つとり、太い枝に座って彼は実を齧った。

風で草木が揺れる音だけが平原に響く。
小鳥が2,3羽、木の麓に降り立った。
そんなこと気にするわけでなく、彼は語りだした。

「気持ちいい風だねぇ。お前もそう思うだろう?」
返事はない。だが彼は満足そうにうなづいた。
「主が帰ってきて、お前も生き生きとしてきた。いいことだ、うん。」

もう一口実を口に含み、彼は顔を上げた。
平原より遠く離れたストラウル跡地。
そこに見知った顔が入っていくのが、彼にははっきりと見えた。
「あれは…昨日の女の子か。」

彼は枝から飛び降りると、振り返った。
「ちょっといってくるよ。また直ぐ戻るけどね。それまで好きにしてていいから、「アカノミ」。」
草木を踏み分け、立ち去る彼の後ろで、巨木が根を伸ばし、一匹鳥をとらえていた。


地面に突き刺さっていた鉄柱は、いともたやすく折れ曲がり、倒れた。
店長には内緒で自分を鍛えることにしたのには、訳がある。
もう一度、皆を守れる自分になりたかったから。弱いままの自分でいたくなかったから。
それだけの理由で、彼女は鉄柱を作り出しては、殴り倒していた。

「…まだ、何か足りない。」
小さく、彼女は呟いていた。
倒れた幾本もの鉄柱が、砂鉄へと変化し、引き寄せられていく。
現役当時の腕力や脚力に戻すまでに時間はさほどかからなかった。
ただ、本当に腕っ節だけで何とかなる相手だろうか?
だとしても、これ以上どうやって修行を続けようか?

「お、やっぱり昨日の子かw」
不意に、後ろから声が聞こえた。
振り返ると、先日の褐色の青年が窓の淵に座り、「よw」と片手をあげていた。

「あんたは…。」
「昨日泣いてると思ったら今日は顔が怖いぞ?どうした?」
だから、一般人に能力者の話なんて…。
「別にかまわないけど?俺も能力者だしw」
「…えっ?」

「幹久郎」と名乗った青年は笑いながらこちらに近づいた。
「君、名前なんていうの?」
「…由衣。」
「由衣ちゃんか。で、一体何があったんだい?」
由衣は少しだけ心を開き、彼に今の悩みを告白した。

「皆を守れるように…ねぇ。アースセイバーに入ることとか考えなかったのか?」
「そんなの、店長が許してくれるわけない。でも、このまま守られるわけにもいかねぇんだ。」
といっても、一人では行き詰ってたところである。
相談してどうこういう話ではないが、他人に話すと意外にすっきりした。

「うーん、わかった。その特訓、俺にも手伝わせてw」
突然の申し出に、思わず顔を上げる。
「え、でも…。」
「その様子からだと、独りで行き詰ってたんだろ?ちょっと位協力するよw」
人の親切に触れることは、毎度ながら身にしみる。
その親切に、ほんの少しのってみることにした。

894大黒屋:2011/03/27(日) 16:00:03
「ほ、ほんとに実践なんてやってもらってよかったのか?;」
「いいのいいのwこっちは少し手加減するけど、そっちは全力でおいでよw」
少し広い場所まで移動してきた二人。既にビルが倒壊しているところで、足場が結構悪い。
しかしその足場は由衣には慣れたものである。
全力で行くことは控えようと決め、地を蹴りだした。

避けやすいように正面から突っ込み、右手を握りしめて突きを放った。
スピードも加減したのだが、幹久朗は動こうとしない。
(何やってるんだこいつ!このままじゃ当たるぞ!)
由衣の意志に反して、拳は真っすぐ胸へと向かった。

動きが見えなかった。しかし、当たる直前に右手が受け止められていた。
「…!?」
「手加減してくれたんだ。ありがとう。でも、そんなんじゃいつまでたっても弱いままだよ。」
「っ;」

拳をつかまれたまま地面を蹴って飛び上がり、回し蹴り。
足を受け止められるのを見計らい、拳を払って逆立ちになった。
「ったぁ!!」
あいている足を後頭部にからませ、ブリッジの感覚で放り投げた。
現役時代の血が、まだ活きている。由衣は改めてそれを感じ取った。

放り出された幹久朗は空中で体勢を立て直して着地した。
「…てぇ;なかなかやるね。こっちが油断してたよ;」
立ち上がり、由衣に歩み寄る。その姿にダメージは微塵も感じられない。

「嘘…だろ?普通なら今のですぐにのびるのに…。」
「能力者だって普通だよ。でも、君の考えてる普通とは違う。」
こちらを見る金緑色の眼に、真剣味が帯びられる。

「君はまだまだ弱いんだ。能力者としてはね。」
「!!」

改めて叩きつけられた「弱い」という事実。
重なった過去と今が、再び眼の前に広がる。
苦しむ仲間や、家族の顔。
見たくない。見たくない。見たくない。見たくないのに…!!

「うわぁぁぁ!!」
振われた右手。砂鉄は空中で形を作り、幾本もの太い鉄柱と変わって放たれていた。
「!」
「しまっ…!!」
由衣は正気に戻ったが、放たれた鉄柱の勢いが止まるとはない。
幹久朗を巻き込んで、大きく砂埃を上げた。

「…な…。」
何をしていたんだ自分は。
力が抜け、その場にへたり込む。
避ける間なんてなかった。つまり、幹久朗は…!

「いっ…ててて;」
砂埃が揺れ、そこから彼は這い出てきた。
「幹久朗さん…!」
「うん、今のは悪くなかったよ。やればできるじゃないかw」

「大丈夫なのか?」
「うん、大丈夫w」
服を払いながら幹久朗は笑った。由衣はまた泣き出しそうになっていた。
「よかった…、本当に…。」
「おいおい、泣きそうだぞ?大丈夫か?」
幹久朗がよりそう。由衣はもう一度、大声をあげて泣いていた。

895十字メシア:2011/03/27(日) 16:00:46
「ところで…ホントに外に行く気なんすか?」

シノの予想外の言葉に、2人は体を強張らせた。

「…聞こえてた?」
「もちろん」
「お願いッ!シグマをどーっしても!外に連れて行きたいの!」
「ミユカ」

真剣な顔つきになったシノは、冷静な声で話し始める。

「シグマはまだウスワイアの能力者っす。安易に外出出来ない事を、知らない訳じゃない筈っすよ」
「うう…」

シノの厳しい言葉に、ミユカは思わず後ずさりする。
が―――。

「なーんてね」
「へっ?」

急に笑顔になったシノ。
ミユカは訳が分からないような表情をする。

「外に出かけていいっすよ。勿論、シグマを連れて」
「え、いいの!?」
「シグマはあの通り、世間知らずで常識に疎いから、勉強のつもりで連れてって欲しいっす」

シノの優しさにミユカは満面の笑みを浮べ、大きく「うん!」と頷く。

「この事は黙っとくから、安心して行くっすよ。シグマの事、よろしく頼むっす」
「ありがとう、百科事典さん!シグマ、行こう!!」
「う、うん!」
「行ってらっしゃーい」

好奇心に満たされた瞳の獣の少年を連れて外に行く蛇の少女を、シノは手を振って見送った。





「とりあえずどこ行こうかな~…」

グゥ~…

突如耳に入ってきた、空腹の音。
どうやらシグマの様だ。

「あれ、昼ごはん食べてないの?」
「…忘れてた」

シグマの顔が見る見るうちに真っ赤になった。
そんなシグマに、ミユカはクスクスと笑う。

「わ、笑うなよ~」
「ごめんごめん。じゃあ、ご飯食べに行こうか!」
「え、戻るのか?」

シグマは眉をひそめる。
おそらく、彼にとってご飯を食べる場所=ウスワイアなのだろう。

「違うよ。別の、ご飯を食べる所に行くの」
「???」
「まあ、行ってみれば分かるよ」

まだ疑問が解決していないかの様な表情のシグマを連れ、ミユカは目的地へと走り出した。

896サト:2011/03/27(日) 16:07:45
ちょっと長いかな
『スイネ』と
しらにゅいさまの『トキコ』『チェシャ』
スゴロクさんの『火波スザク』
akiyakanさんの『ベガ』『ジングウ』『クオ』
本家の『ケイイチ』『ホウオウ』『タカユキ』です




『そのユニコーンはあなたの思念体ですわね』
『そうね』
『…以前見た形とは違うようですが』
『以前?』
『あなたとのお喋りは問いかけが多くて楽しくありませんわ』

霧がさらに深いものになる
思念体としての鎖をベガへと差し向けるが
霧が液状化して溶かされていく
ユニコーンへ指を滑らせて、ベガへと誘導すると
朱の翼をはためかせて突進していく

『ユニコーンは白馬であるから美しいのですわ』

ベガは、左手に霧を集めると、銃へと具現化させそれを構える
放たれた銃弾がユニコーンの左胸を貫いた

『一種の幻覚ね、そんなものにわたしが惑わされると思う?』
『さぁ、どうでしょう』
『…っ?!』

とたんにチリリと痛んだ左胸
…まさか

『なるほど、…わたしと似て非なる能力ね』
『あなたの場合は不利ですわね
思念体であるユニコーンの的が大きすぎますわ
それに、思念が不死身で有るがゆえ
あなたにダメージが蓄積されやすくなりますわよ』
『おもしろいじゃない』

897サト:2011/03/27(日) 16:09:38
目の前の女…ベガは
わたしによく似た顔をしている
いや、顔だけじゃない

『思念を複数具現化させるのは、負担がかかるのではなくて?』
『無駄口はあなたのためにならないわよ』

確かに体力は削られる
けれど弱音を吐いてもいられないのだ
人工神を相手にするのは骨が折れるものだ。知っているからこそ
手加減をすれば痛い目を見る

『なんでこんなことをするの?……ホウオウが差し向けた人工神ではなさそうだけど』
『…あんな者と主を比べないでくださる』

憎しみにかられた瞳
さっきまでのわたし

『…自分の顔を見るたび、思っていましたの。あなたが憎いと。殺したいと』
『随分と嫌われたものね』
『この世に神は二人も要りませんのよ』

またも銃を構えるベガ
ユニコーンに跨がりそれを避ける。
スイネがそれを幻覚だと割りきっている分、ベガには部が悪い

『ちょこまかと…っ』
『“執着の鎖”』
『!?』

ベガの足に絡み付く鎖
それは、ずっしりと地に食い込み彼女を拘束する

『あなたの幻覚に触れたとき時間を逆行したの。
それは、あなたが"主"に抱く執着の形よ』
『……っ』

ベガの幻覚のつららがスイネへ向かう。けれど、ユニコーンから発せられる炎により消し飛んでしまった

なんだ、こいつは
データと違う圧倒的な、強さ
これが“奇跡の神の子”だというのか

898サト:2011/03/27(日) 16:10:21
『…自分が特別だとでも思っているの』
『私は…神ですわ』
『あなたは神じゃない』
『何…』
『憎しみと私怨にかられた時点で、あなたは神ではないわ
…わたしと同じよ』

スッと手をさしのべてくるスイネ。それを見つめて困惑するベガ
この手は何を意味している?
殺意がない。意味がわからない

『あのとき、わたしを暗闇から救い出してくれた存在がいた。
だからわたしは今のわたしを手に入れた
…あなたはどう?』
『…ふざけるのでは、ありませんわ!!!』

ガキィン!!という音と共に鎖が砕け散って、ベガは幻覚を身に纏う
その姿は
囚われの頃の彼女…ファスネイ・アイズの形をしていた

『私は主を殺したジングウを、
図らずもジングウの産物となったお前を
この世のすべてを破壊したい!
同情をしているつもりならば不愉快ですわ!
お前は、こんな、醜い神を模したヒトガタじゃありませんの
私こそが、神ですわ!!』

あの頃のように釜を振りかざし、向かってくるベガに、スイネは新たな想像をする
それは、彼女を縛る鎖を断ち切った少年の緑の光と
彼女に新たな感情を芽生えさせた……獅子の金の光

ベガの右胸をつらぬく光の剣
ファスネイの姿をしたベガは驚愕に瞳を見開いた

『な…』
『あなたは神じゃない
…わたしも、神ではない
偶像にすがるだけのわたしは今、私の手によって死ぬのよ!』

ジジ、とベガの胸が焼ける音がしてベガは我に返ると、
幻覚の鋏でそれを断ち切り
真紅を流す胸を押さえて跳躍する

『…ベガ』
『ファスネイ…あなたは必ず私が殺しますわ』

ベガは純白の翼を広げて飛び立っていった。
スイネは、がくりとその場に座り込む。
朱のユニコーンがスイネに溶け
彼女は小さく笑った

『……そうよね。ありがとうチェシャ』
フードを被った彼の言葉が胸をこだまする
そして、今のわたしがどれだけ幸せなのかを実感した
帰らなくては。トキコとスザクさんの様子が心配だ


ブシュッ


『え…?』

右胸に、なにかが突き刺さったような鋭い痛みが走って
動脈と静脈を一度に傷つけられて鮮血が噴水のように涌き出した

『が…は…』

胸を押さえて倒れ込む
…ここは、ベガを刺した場所と同じ場所

『…わたしの姿の幻覚を纏ったのは、そのためだっていうの
はっ…最後に爆弾残していったわね…がはっ』

逆流した血液が喉を通り吐き出される
……これが決意と決別の痛みか

『…あう、あ…』

脳裏に浮かぶのは
かつてわたしに優しく手をさしのべたケイイチではなく

とても広い…獅子の背中

『タカユキ…くん…』


温度を失っていく身体を抱き締めることも叶わず
わたしは冷たいコンクリートで意識を闇へと落としていった



過去に決別の一太刀を
(とてもさむいわ)
(とても、とても…)

899名無しさん:2011/03/27(日) 18:28:37
 通りすがりの名無しの者ですが、ちょっと疑問に思ったので……

サトさんの企画小説なのですが、ユニコーンって書いてありますが、あれって一角獣だったような……翼があるのはペガサスですよね?

900サト:2011/03/27(日) 19:33:05
>>名無しさん
ふっつうにミスりましたw
セーラームーンのペガサスにも角があってごっちゃになったんだわ!

翼のあるユニコーンってことでみなさんお願いします(^3^)/
指摘ありがとうございました!



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最終更新:2011年05月24日 20:45