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さぷらいず!

さぷらいず!



なんか…変だ。

オツユウ学園いかせのごれ高等学校二年一組の自分の席で、アタシ、榛名有依は今までに無いような違和感を感じていた。

何が変かっていうと、リオの奴がアタシの所にこないってことだ。
…いや別に来て欲しいわけじゃないぞ。本当だぞ。

それに心無しかクラスの友達やトキコとかもアタシに話しかけに来ないような気がする。

……アタシ、何かしちゃったのかな。


ここ一週間くらいの自分の学校生活を頭を抱えながら思い返してみた。

………──
……──
…─


「何も…してないよな」


そうだ、アタシは何もしていない。
強いてしたことを上げるならば、リオのメロンパンとトキコの弁当を半分程食べたぐらいだ。
…天から「それが原因だ」とか聞こえたような気がしたけど、無視無視。


そうこうしている間に校内にチャイムが鳴り響いた。
ああ、やっと帰れる、とアタシは安堵の溜め息をついて鞄を持ち椅子から立ち上がった。




妙にアタシの動かした椅子の音が大きく響く。
……どうやら、放課後だというのにも関わらず椅子から立ち上がって教室から出ようとしたのはアタシだけらしい。
皆4、5人で固まってひそひそと何かを話している。
…気分が悪い。

「ねぇ…あんた達帰んないの?」
「あー、ちょっと用事があって…な?」
「そうそう、ユウイは関係ないんだし帰れば?…邪魔だし」

赤髪の少年、アカヤとその隣にいたナオヤがアタシの質問に答える。
ナオヤをぶん殴りたい衝動を抑え、ちらちらと視線を逸らすアカヤに疑問を抱きながらも
アタシはこの妙な教室から一刻も早く逃げ出したく、扉を勢いよく開けた。






「…なんなの、もう…」


リオと1日話さないだけでこんなに辛いなんて。
クラスの皆と話が出来ないことがこんなに寂しいだなんて。

気づけばアタシの視界は滲んでた。
いつからこんなに弱くなってしまったんだ。
皆も皆で、アタシが嫌なら嫌って言えば良いじゃない。
どーせアタシは数学が出来ませんよ、走り方がおかしいですよ!!

とアタシが心の中でぎゃあぎゃあと騒いでいると、ポケットの中の携帯が突然震えだした。

──だーれよりも速く走り抜けろ!もたもたしてると遅れちゃう!──


リ オ ト だ ! !


光の速さで携帯を開く。
やはりリオからのメールだ!
アタシはサンバでも踊り出しそうな勢いでメールの文章を読む。

内容は、渡したいものがあるから二年一組の教室に来て欲しい、というものだった。

正直、あの変な雰囲気の教室に行くのは気が引ける。
が、リオがアタシを呼んでるんだ。
行かないわけにはいかない。
…だから違うって、好きとかそんなんじゃないって!

アタシは携帯をポケットに戻すと、くるりと先程とは正反対の方向を向いて歩みだした。






──二年一組、教室前

……なんか、怖いぞ。

窓から中を覗こうとするが、カーテンのようなもので遮られていて全く確認出来ない。

ま、まさか調子に乗ってしまっているアタシをクラスの全員でぼこぼこにするとか…!?そ、そんな…。

アタシは教室の前で数分間立ち尽くしていた。
その理由は勿論、入るか入らないか、だ。



「……ふぅ」



暫くしてアタシは緊張が解けたように深い溜め息をつく。

悩んでいたってしょうがない。
前に進まなきゃ何も始まらないんだ。

そうやって自分で自分の背中を押すと、アタシは教室の扉をひっぱたくように開けた。


「あんた達アタシが何
『はっぴぃいいばーすでぇぇええゆーいちゃん!!!』
「そげぶ!!」


アタシが扉を開けると同時に、何か柔らかいものが顔全体に張り付いてきた。
それと共に女子生徒…多分、トキコと思われし少女の声が聞こえた。
アタシは奇声を発しながら地面へと突っ伏す。
そして慌てて顔に付いたものの正体を確かめ始めた。

なんだか、甘い。
………甘い?


「ぶっははは!ユウイ!えらい顔しとんぞ!」
「もー…トキコはしゃぎすぎ!」

マサカズの爆笑する声ととケイイチの苦笑が聞こえてくる。
アタシは顔中のケーキが落ちるのも気にも止めずにガバッと身体を上げた。

アタシの目の前にはクラスの皆が。
アタシのクラスの人だけじゃない、隣のクラスである筈のトキコやリオまでいる。

「な…何…皆、何して…」
「今日はユウイの誕生日だろ?だからオレらでサプライズパーティーしようぜって結構前から計画してたんだよ」
「リオ君が半ば強引に、だけどね」
「うっせ!!」

…すっかり忘れていた。
今日は5月25日、誕生日だ…アタシの。

「覚えてて、くれたんだ…」

皆がアタシを避けていたのもコレのせいだったのか。
アタシは身体中から重いものが抜けていく気がして、みっともないがぽろぽろと泣き始めてしまった。


「泣くなよー!プレゼントだってあるんだから!」


リオが小さな箱をアタシに差し出した。
アタシはそれを受け取ると…

「てんめリオ!!アタシがどんだけ辛い思いしたと思ってんだ!!!」
「!?な、なんで怒んだよ!いだだだだだだ!叩くな!」


クラスメートの笑い声が響く。
…皆のおかげで、今日は人生で一番幸せな日になりそうだ。

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最終更新:2011年05月25日 00:16