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『会いたい人』1

『会いたい人』

最近、私はある人との約束で頭の中がいっぱいです。
時々ですが、授業中でもボーッとしてしまいます。

「カナミちゃん、具合悪いのー?」

放課後にその事を考えていると、クラスメイトのトキコちゃんが話しかけてきました。

「え、どうしてですか?」
「だって授業中、よくぽえぽえしてるもん」
「ぽ、ぽえぽえって…そんな事、無いですよ」
「ふぅ~ん?」

ニヤニヤするトキコちゃん。
……次は一体何を言い出すんでしょうか。

「もしかして、好きな人が出来たとか?」

…………は。

「はいぃぃっ!??」

私は思わず叫びました。
それに周りの人達がびっくりしてこちらを見ます。

「カナミちゃん、声大きいよ」
「ご、ごめんなさい」
「でも、その反応からしているんでしょ?」
「えっ、い、いませんよ!」
「ホントに~? あ、じゃあ恋人出来たの?」
「それも違いますーっ!」
「あれ、そうなの? モテモテなのになあ」

トキコちゃんがけたけた笑います。
うう、一体どこまでからかうつもりなんですか…。
反撃しないと…。

「…そういうトキコちゃんは、最近よく居眠りしてるじゃないですか」
「あれは単に眠いだけだよー」
「………」

全く攻撃になってませんでした。

「ねえねえ、何でなの?」
「ト、トキコちゃんには関係無いじゃないですか…」
「んー? 声に覇気が無いよ~?」

う…もう逃げ切れないみたい…とほほ…。

「あ、あの…その…ある人と、約束したんです」
「え、デートの?」
「だから違いますってば!」
「な~んだ。で、誰と?」
「え、えと…」

私は返答に困りました。
白を切らしてもトキコちゃんには無意味でしょうし、かと言ってウツロ君の名前を出せば、私がトキコちゃんがホウオウグループの一員である事を知っているのがバレてしまいますし……。
実際、トキコちゃんがホウオウグループの人でも、私は敵味方の区別をつけるつもりはありません。
でも知っている事がバレると何ていうか、話しにくいというか……。

「ねー、誰とー?」

…ああもう、ここは素直に言っちゃいましょう!

「…ウツロ君です」

すると私の言葉に、トキコちゃんが微かに反応します。
でも変わらず明るい表情のままでした。

「いつ会ったの?」
「えっと…4日前です」
「どこで?」
「屋上です」

その途端、トキコちゃんの目がキラキラし始めました。

「え、うーちゃんとデートしてたの!? というかいつ付き合ってたの?」
「何でそうなるんですか!? 一緒に夕焼け見てただけです!」
「一緒に夕焼け? ホントに付き合ってないの?」
「ホントですよー!」
「じゃあ何で顔赤いの~?」
「こ、これは違います!」

このままここにいれば弄られ続ける。
そう思った私は、逃げるように教室から出ていきました。
後ろからトキコちゃんの声が聞こえてくるけど無視です!





「はぁ…はぁ…」

ここまで来れば大丈夫ですよね……。
息を切らしながら、私は何となく学校を見上げました。

―――屋上。
私とウツロ君が出会った場所。
友達になった場所。
あれから4日。
最近でも、休み時間や放課後に行ったりしています。
でもいつの日もウツロ君に会えませんでした。

「会いたいな」

そう、呟くと、ある事が頭の中に浮かびました。

―――ウツロ君は高い所が好きだと言っていました。

もしかしたら他の場所にいるのかも。
そう思った私は、ウツロ君がいそうな場所に向かって走り出しました。
向かう先は―――ストラウル跡地。


しばらく走っていると、廃ビルが段々近づいてきました。
略してスト跡地とも呼ばれるこの場所は元々、ホウオウグループの統率者であるホウオウの弟だという男、
レイスの拠点だったそうです。
そのレイスはケイイチ君達に倒されましたが、それ以降は奇妙な出来事が多発している為、
アンバランスゾーンと呼ばれるぐらいに不気味な場所となってしまいました。
過去にも大量のパニッシャーが出現したりと、かなりの危険性もあります。
でももしかしたら。
もしかしたら、ウツロ君がいるかもしれません。
私は意を決して、中に入りました。


「階段…階段…あ、あった」

うう、やっぱり心細いし怖いです…。
でも私はアースセイバーの一員。
こういう時こそしっかりしないと―――その時。

ピチョン。

「きゃぁあああ!? …あ、雫かあ…びっくりしたあ…」

な、情けない…頭に雫が落ちてきたぐらいで…。
一般人とホウオウグループを見分けられる勘と洞察力があるとはいえ、どうしてアキヒロさんは私をアースセイバーに選抜したんでしょう…。
考えるだけでも溜息が…ああ…。
とりあえず、今は屋上を目指しましょう…。





「これで6階…後1階…」

その時―――。

ゾワッ

「!?」

一瞬、背筋に寒気が走りました。
辺りを見回しますが、誰もいません。

「…気のせい――― ッ!」

再び背筋に寒気が走り、私の頭に「殺られる」という言葉が浮かびました。
咄嗟にそこから退いた途端、そこにグレネードの弾が当たり、爆風が起こりました。

「これは…っ!」

目の前に、複眼の付いたヘルメットの様な頭をした、人型大の兵器―――パニッシャーが姿を現しました。

「どうしよう…」

私の能力、ハートブースターには一応、攻撃になる感情もあります。
主に怒りや悲しみの感情。
ですが、私はミユカちゃんとの共同任務の時しか戦闘経験がありません。
果たして倒せるのでしょうか…。

「ッ!」

パニッシャーが再び撃ってきました。
今度はマシンガンです。
私は再びそれを避けます。

「こうなったら、やるしかありませんね」

私は立ち上がり、一呼吸します。
次に怒りの感情を能力で増幅・エネルギー化し、そして―――一気に放つ!

「立ち退きなさいっ!!」

私は怒号を口にします。
その瞬間、私からパニッシャーに向かって、炎弾が飛びました。
装甲に焦げ目がつきます。
このままやり続けたらきっと倒せるでしょう。

「倒れなさいっ!」

何回も怒号を口にし、炎弾を飛ばし続けます。
焦げ目の数は増え、破損している場所も出来てきました。
でも元から無かった感情を無理矢理に増幅させている為、私も段々と気疲れしてきました。

「はぁ、はぁ…」

炎弾も少し小さくなってきました。
もう限界です。
そこにパニッシャーが再び撃ってきます。

「きゃあっ!」

私の心に浮かんだ「恐怖」が、バリアとなって現れました。
このバリアならどんな攻撃も弾きます。
しかし、元からある感情でも、長時間続けてエネルギーにしていけば、疲労が溜まっていきます。
このままでは……。

「助けて…っ!」

誰もいない事を分かっていても、私は助けを求めました。
いつもならミユカちゃんが脳裏に浮かんできます。
でも、どうしてでしょう。

今、脳裏に浮かんだのは―――ウツロ君でした。

「ウツロ君…っ!」

会いたい―――ウツロ君に会いたい。
そう思った時です。

ガッ!

「え?」

突然響いた音に、私は思わず顔を上げました。
パニッシャーの装甲に、さっきまで無かった小さな傷。
よく見ると、パニッシャーの足元に少し大きめの石が転がっていました。

「大丈夫、ですか?」

いつか聞いた声。
どこか寂しげで、でもどこか優しい。
私が、一番、会いたい人の声―――。


「ウツロ、君…?」

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最終更新:2011年06月03日 17:10