正義と人外と一般人
「やれやれ、まさかこんな所に舞い戻ってくるとはね。」
静まり返ったある日の夜更け。
いかせのごれ高校の屋上に、一つの人影があった。
黒いマントでその姿は隠れ、見えてもいいはずの眼さえも、黒い眼隠しで覆われていた。
「人外は人外らしく扱われていればいいものを。まったく、こりないものだね。」
くしゃりと前髪を握り、彼は呟いた。
彼は「正義の味方」。即ち人間の味方。
それ故か、「人外」を忌み嫌う。
妖怪、生物兵器、怪盗…。あらゆる人外を彼は敵視し、「成敗」してきた。
そう、今回この街に戻って来た「彼」も、その一人だ。
「再起不能になるまで至らしめてやったというのに、生かしていたのは間違いだったかな…。」
彼は「あの時」を思い出すように呟いていた。
「まぁ、いいか。懲りてなかったらもう一度教えてやればいいしね。弱点はもう見抜いているんだから。」
「人間の味方をするのも、楽じゃないね、全く…。」
そういって自嘲的に彼は笑うと、踵を返した。
「どういうことじゃ、そんな…。」
月明かりの下、彼は走っていた。
普段通りに過ごしていた彼の耳に、主からのとんでもない報告が届いたのだ。
「焦らないで!落ちついて!」
背後から聞こえる声も耳には届かず、無我夢中で彼は走っていた。
行き先は、かつて彼が「住んでいた」、誰も知らない土地…。
「ガラク、いるかの!?ヒキコはどこじゃ!」
そう叫びながら、彼は洞窟に飛び込んだ。
同時に彼の眼に前に飛び込んできた光景は、
血を流しながら倒れている、満身創痍のヒキコだった。
「ヒキコ!?」
慌てて彼は駆け寄る。
ヒキコは細く眼を開け、彼を見つめた。
「…
ゴクオー、来てくれたんだね…。」
「ちょっとまってろ。」
彼は包帯を取り出し、慣れた手つきで巻いていく。
白い包帯がみるみる赤くなっていくのを、彼は直視できなかった。
「この傷…まさか、「あいつ」にやられたんか?」
「…ええ。気をつけてはいたんだけど、ここまでなんて思わなかった…。」
「くそ…、何処までわしらを忌み嫌うんじゃ、あいつはっ…!」
彼は強く地面をたたいた。
「…ゴクオー、私のことはいいわ。」
「ヒキコ…?」
「急いで。あいつ、いかせのごれにいる「人外」を全部つぶすつもりだわ。」
「!!」
彼は思わず顔を上げた。
「主には伝えたけど、きをつけて。「百物語」組も危ないわ。」
「…。」
「ゴクオー、貴方が蹴りをつけるのよ。」
「えっ…!?」
「貴方にとってあいつは、唯一敗北した相手であり、忌み嫌うべき存在。貴方が倒さなくてどうするの。」
「…じゃが、わしは既に弱点を見抜かれて…。」
「貴方らしくないわね。いつもならホイホイ引き受けるくせに。」
ヒキコは無理やり体を起こした。
「貴方がどう言おうと、貴方が決着をつけるのよ。大丈夫、貴方なら、弱点をカバーする方法を見つけられるから。」
「…わしが…?」
「ええ。…さぁ、早くいきなさい。私は大丈夫。ガラクさんもいるわ。」
彼は彼女の意志に沿い立ち上がったが、後ろ髪をひかれる思いだった。
「…そんなことがあったんだねぇ。」
「そうそう。まさかあそこであいつが出てくるなんて思うか?」
凪と冬也が襲われて数日。ノラは凪にその時の話を聞いていた。
互いに能力者と知っているからこそできる話なので、小声で話しているわけだが。
「いやぁ、でも、二人とも無事でなによりだよっ!」
「いや、推測に寄れば私たちの中の誰かが狙われていた可能性が高いみたいなんだ。次また襲われるかわかんない。」
「そっか。でも、どうしようか。誰が狙われてるか分かんない以上、行動の制限もできないし…。」
「…ねぇねぇ、そこのお二人さん。」
後ろから声をかけられ、振り返った。
「今のはなし、詳しく聞かせてもらえないかな~、なんてw」
「え?な、何で?」
「面白い言葉が聞こえたからね。超常現象は僕の大好物だからっ!」
「は、はぁ…;」
「ストラウルにしょっちゅう寄るけど何にもないからね。もしかしたら良いネタになるかもしれないぞ~w」
後ろにいたのはクラスメイト。
オレンジレンズのゴーグルと腰に巻いたジャージが特徴的な女子生徒。
オカルトマニアの一般人。
新聞部の
海女海 海海(アマノ ミエ)だった。
最終更新:2011年06月03日 17:11