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『会いたい人』2

呆然とする私をよそに、ウツロ君はパニッシャーに向かっていきました。
ウツロ君に気づいたパニッシャーは、ウツロ君に向かってライフルを撃ちます。

「……ッ!」

私は思わず目を瞑りました。
でも恐る恐る目を開けてみると―――。

「え…?」

何と、ウツロ君の撃たれた傷がみるみるうちに塞がっていきます。
何度撃たれても、傷は治っていきます。
それを見て、私はあの日に聞いたウツロ君の言葉を思い出しました。

―――不死身もどきの体。

恐らくウツロ君の能力は、とても強い再生力なのでしょう。
パニッシャーの近くまで来たウツロ君は、飛び上がってパニッシャーの頭を踏みつける様にして蹴り倒しました。
そして私の目の前に着地すると。

「逃げましょう」
「あ…はい」

立ち上がると同時に、私の手をとってくれました。
そして私たちは階段目がけて走りだします。
ふと後ろを見ると、パニッシャーは立ち上がり始めたところでした。
そこに私はもう一発炎弾を飛ばします。

「こ・な・い・で・下さーいっ!!!!」

いつもより大きな炎弾がパニッシャーに激突しました。
炎に包まれたパニッシャーは、とうとう動かなくなりました。





「ふー…」

一息ついた途端、足がふらつきました。
そこをウツロ君が咄嗟に支えてくれました。

「あ、ごめんなさい」
「大丈夫ですか?」
「何とか…でも、どうしてここに…」
「ここ、よく来るんです」

じゃあ、あの時はたまたま屋上にいただけだったんですか…。

「カナミさんこそ、どうしてここに来たんですか?」
「え」

唐突に聞かれて、私は口籠りました。
「会いたかったから」って言えばいいのは分かってますが、いざとなると恥ずかしいです……。

「えっと、その…」

私は一呼吸して。

「…ウツロ君に、会いたかったんです」
「僕に?」
「約束が忘れられなくて…」

最初は首をかしげるウツロ君でしたが、思い出したように「ああ」と、声を上げました。

「ストラウルで夕焼けを見るって約束でしたっけ」
「はい」
「でももう日沈んでるから、無理ですよ」
「え…えええっ!?」

どどどどどどうしよう!?
早くウスワイアに帰らないと!

「え、あ、あの! 助けてくれてありがとうございました!」
「別にいいですよ」
「あの、約束は今度でいいですか!?」
「構いませんが」
「じゃあ、私帰りますね!」

そう言って、走り出そうとした時。

「…送りましょうか?」
「え?」

突然の言葉に驚く私を見て、ウツロ君は続けます。

「家まで、一緒に」
「え、えと…お気持ちはありがたいのですが、私の家はウスワイアですので…」
「なら近くまで」
「…いいんですか?」
「一人じゃ危ないと思いますので」
「あら、大丈夫ですよ。さっき見たでしょう? 私、戦えますから」
「でも能力使った後、ふらついてましたよね?」

う…痛い所を突かれたような…。
でも。

「どうして送ってくれるんですか?」

するとウツロ君は目を伏せて。

「僕の約束のせいで、危険な目に逢わせちゃいましたから」
「そんな! ウツロ君は悪くないですよ! 元はと言えば私が一方的にしてしまったので」
「いや、一方的じゃありませんよ。寧ろ嬉しかったので」

嬉しかった?
どういう事でしょうか?

「じゃあ行きましょうか」
「あ、はい」





私達は何も言わないまま歩いていました。
何か喋りたいんですけど…。
あ、そうだ。

「さっき嬉しかったって、言ってましたよね?」
「はい」
「どうしてですか?」

するとウツロ君は笑いました。
本当に、嬉しそうに。

「あの時、言ってくれましたよね。ちゃんとした心を持った人間だって」
「あ…」

私が言った事、覚えていたんですか…。

「今までそんな風に、優しくされた事なくて…」
「…そうなんですか?」

私の脳裏に、トキコちゃん達ホウオウグループの生徒の面々が浮かびました。
それを見透かした様に、ウツロ君が言いました。

「トキコさん達は話しかけてはくれますよ。ただ、そう言われた事はないんです」

そしてまた目を伏せて。

「…僕を作った人達は、出来損ないとしか言ってくれませんでしたから」

また、ウツロ君の心から「悲しみ」が。
駄目です、悲しんでは。
だから私は言いました。

「私がいます」
「え…」
「私が、ウツロ君の『笑顔の理由』になりますから」
「笑顔の…理由?」
「ウツロ君が悲しまない様に…心の底から笑える様に」
「カナミさん…」

目を見開くウツロ君。
でも次の瞬間には、笑顔になりました。

「ありがとうございます」
「いえ」

そうしているうちに、ウスワイアが見えてきました。

「…送ってくれてありがとうございました」
「別にいいですよ」
「じゃあ…さよなら」

名残り惜しく、その場を去ろうとした時。

「3日後…」
「え?」
「3日後、夕焼け見ませんか?」
「え…あ…はい!」

するとウツロ君は笑って、その場を去って行きました。
私も、また。


-その後-

「どこに行ってた! お前は世間知らずだから夜遅くまで出歩くなと…」
(…そんなに見えるんでしょうか…世間知らずに……)

「あ、うーちゃんお帰りー」
「トキコさん。雑用ですか?」
「まあね。で、カナミちゃんに会った?」
「…何でそれを?」
「カナミちゃんから、うーちゃんに会ったって聞いたから、なんとなーく」
「…そうですか」
「で、うーちゃんはカナミちゃんの事、どう思ってるの?」
「どうって、凄く優しい人思ってますけど」
「そうじゃないってばー」

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最終更新:2011年06月03日 17:12