アットウィキロゴ

消えた赤い鴉

「っあー!また見逃しただと!?」
ストラウル跡地を歩きながら、海海は叫んでいた。
先日の出来事を隠し通そうとするノラ達から辛うじて訊きだせた情報に寄れば、つい最近この跡地で能力者の攻防が起こったらしいのだ。
そんな大事なものを見落とすなんて、オカルトマニアとしてなんたる不覚。
…そもそも、そう言った事件に全く遭遇したことがないのだが。

「もう見逃すものかと思ってたのに、悔しいなぁ、的な。」
上空を仰ぎながら海海は呟く。
当たり前だ。超常現象を求めていかせのごれに来たというのに、何一つとして遭遇していないのだから。
オレンジがかった世界で見ると、青い空が灰色で、灰色の空が赤くなる。
そんな非日常を求めているというのに、と、彼女は黒く見える眼を伏せ、ため息をついた。

その伏せた一瞬の間。
上空を飛んでいた一羽の鴉が、溶けるように消えた。


「…全く持って、忌々しいね。」
ビルの屋上に上っていた黒ずくめの男:シン・シーは、消えた鴉をまだ見るかのように呟いた。
手元には銀色のナイフ。予備で取り出していたものだ。

「空も『人外』のものだとでも言うのかな?」
彼には見えていた。
青い空を悠然と飛んでいた鴉を纏っていた『赤いオーラ』が。
妖怪の術によるものであると判断した彼は、ナイフを放ってその鴉を撃ち落としたのだ。

鴉が消える直前、何か紙のようなものが落ちたのも見えた。
恐らく連絡手段か何かだったのだろう。確認する必要がある。
「…ナイフを拾うがてら、回収しておこう。」
彼はそういい、階段に足をかけた。
段を跳ぶように降りながら、彼はふと思いついたことを口に出していた。

「…そうだ。人外と分かったなら、オーラの跡をたどって捕まえて、一網打尽にしてしまおう。」


「…っ!?」
アースセイバーのロビーにいたノラは、急に右腕に痛みを覚えた。
反射的に右腕を抑えてしゃがみ込む。
それに気がついた由衣が駆け寄った。

「おい、どうした?大丈夫か?」
「…あ、由衣ちゃん…。」
ノラはにっこりと笑って見せた。
「うん、ちょっと腕が痛んだだけだから大丈夫w」
「ならいいんだけど…。」

由衣と別れた後、ノラは少し深刻な表情を見せていた。
痛みの理由は分かる。作り出していた「黒妖犬」が、何ものかの手によって消されたのだ。
「犬」とは言っているが、その姿はいかようにもかえることができる。
小さな鴉を作り出し、主への報告書を託して飛ばしていたはずだったのだ。

「一体、誰が…。」
ノラはそう呟いたが、深くは考えなかった。
主への報告を断たれたので、面倒ではあるがテレパシーでもつかうか、と次の方法を考えていたのだった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年06月07日 00:28