▼1番艦「広開土大王」(DDH-971)
▼2番艦「乙支文徳」(DDH-972)
▼3番艦「楊万春」(DDH-973)
■性能緒元
満載排水量 |
3,885t |
全長 |
135.5m |
全幅 |
14.2m |
喫水 |
4.2m |
主機 |
CODOG 2軸 |
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GE LM2500ガスタービン 2基(58,200馬力) |
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MTU 20V956-TB92ディーゼル 2基(8,000馬力) |
速力 |
30kts |
航続距離 |
18kts/4500nm |
乗員 |
286名 |
【兵装】
【電子兵装】
2次元対空レーダー |
AN/SPS-49(v)5 |
1基 |
3次元多目的レーダー |
MW-08 |
1基 |
航海レーダー |
AN/SPS-95K |
1基 |
火器管制レーダー |
STIR-180 |
2基 |
戦闘システム |
KDCOM-I(SSCS Mk7) |
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(ハープーン管制) |
SWG-1A(v) |
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(シー・スパロー管制) |
Mk91 mod3 |
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電子戦システム |
AR-700(ESM) |
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APECS-Ⅱ(ECM) |
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チャフ・フレア |
KDAGAIE Mk2 |
4基 |
データ・リンク・システム |
KNTDS(Link-11) |
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IFFシステム |
AN/UPX-27K |
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ハル・ソナー |
DSQS-21BZ |
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曳航ソナー |
SQR-220K |
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魚雷デコイ |
SLQ-25ニクシー |
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クァンゲト・デワン級は旧式化したギアリング級駆逐艦を代替するKDX計画の第1段階(KDX-I)として開発された韓国国産の駆逐艦。建造した造船所の名前から玉浦(オッポ)級とも呼ばれる。海上自衛隊の「むらさめ」級(満載排水量6,200t)とほぼ同等の兵装を満載4,000tに満たないコンパクトな船体に積み込んだでおり、対水上艦戦、対潜戦、揚陸作戦支援や船団護衛を主任務とする中型汎用艦である。
韓国海軍ではDDH(ヘリコプター搭載駆逐艦)とされているが世界的にみればフリゲートに分類される。設計開発は韓国の大宇造船海洋だが、仏タレス社も協力していると思われる。1995年に巨済島にある大宇造船海洋の玉浦造船所で起工した1番艦「広開土大王(クァンゲト・デワン)」は1998年に竣工し、2000年までに計3隻が就役した。建造費は1隻あたり約7056億ウォン。当初韓国海軍の主力艦艇として9隻の建造が計画されていたが、より高性能の
KDX-II型(チュンムゴン・イ・スンシン級)の建造に重点を置く事が決定したため3隻に削減された。建造された3隻は各艦隊に1隻ずつ配備されている。ステルス性を考慮していない上部構造物の形状や余裕の無い小さな船体など欠点もあるが、韓国国産駆逐艦の基礎を築いたクァンゲト・デワン級の意義は大きいだろう。
クァンゲト・デワン級は個艦防空ミサイル・システムを装備した韓国で初めての戦闘艦である。それまで韓国海軍が取得してきた旧式駆逐艦や近海防衛用小艦艇とは一線を画し、
シー・スパロー短距離対空ミサイル 、ハープーン対艦ミサイル、
ゴールキーパー近接防御火器、魚雷、対潜ヘリコプターとバランスのよい装備を有している。モノパルス・シーカーを持つ最新型シー・スパローのRIM-7Pはシー・スキミング型の対艦ミサイルを迎撃でき、Mk48 VLS(Vertical Launching System:垂直発射システム)とともにアメリカからFMS(Foreign Military Sales:有償対外軍事援助)によって導入した。RIM-7Pは将来的に、射程距離が長く(約50km)迎撃能力が高い
RIM-162 ESSM(発展型シー・スパロー・ミサイル) に換装される可能性がある。通常4,000t級の艦は76mmクラスの砲を装備する事が多いが、クァンゲト・デワン級は小さな船体に不釣合いなくらい大きい伊オットー・メララ社製
54口径127mm速射砲を装備している。この砲は発射速度が毎分45発と極めて高く対空戦闘に効果を発揮する。射程は約20km。しかし同級の砲と比べてマウント重量が重いため(約40t、Mk45は約20t)只でさえトップヘビー気味のクァンゲト・デワン級をさらにアンバランスにしている観がある。CIWS(Close In Weapon System:近接防御システム)はアメリカ製のファランクスではなく、フランスのタレス社製
ゴールキーパー30mmCIWSを艦橋上とヘリ格納庫上に装備している。
クァンゲト・デワン級はTASS(Towed Array Sensor System:引き込み式曳航アレイ・ソナー)を韓国で初めて装備しており、対潜ヘリの運用能力も持つため、これまでの韓国軍艦艇より対潜水艦戦能力が大幅にアップしている。しかしRAST(Recovery Assist Secure and Traverse:ヘリコプター発着艦支援装置) が装備されていないため、夜間や悪天候下での搭載ヘリコプターの運用は出来ない。簡易着艦支援装置は装備しているが、横方向で±5度以上、上下方向で±3度以上の揺れがある場合は使用する事ができない構造になっている。各種装備はレーダーと連動した英BAe社製のSSCS(Surface Ship Combat System)Mk7戦闘システムを三星テックウィン社がライセンス生産したKDCOM-Iにより管理されており、またデータ・リンク・システム(KNTDS:Korea Naval Tactical Data System)によってほぼリアルタイムで僚艦と戦術情報を共有する事ができる。2次元長距離対空レーダーは米レイセオン社製のAN/SPS-49(v)5で、約450kmの探知距離を有する。MW-08は仏タレス社製の3次元中距離多目的レーダーで、約100kmの探知距離(シー・スキミング型対艦ミサイルに対しては約15~20km)を有しシー・スパローSAM(Surface-to-Air Missile:地対空ミサイル)に射撃緒元を提供する。火器管制レーダーのSTIR-180もタレス社製で、発射されたシー・スパローSAMの誘導を行う(ESSMの誘導も可能)。KD-I型はSTIR-180を艦の前後に2基装備しているので、同時に管制できるSAM数は2発だ。航海レーダーはS&T大宇社(旧大宇精密工業)のSPS-95K。
艦形は世界中で採用されている独ブロム・ウント・フォス社の輸出用廉価フリゲートMEKO型の拡大改良版で、煙突を左右に分けるなど外形上の特徴も多い。主船体のスペースが足らない分は上構を大型化して補っており、トップヘビーにはアルミニウム製にする事で対応している。しかし喫水が浅いため(4.2m)波の荒い外洋での航海は厳しく、もっぱら沿岸域での行動を主任務としている。3番艦の「楊万春」は全長を10m延長し、ヘリコプター格納庫を拡大して2機運用可能になったと発表されたが、実際には1~2番艦と同じ135.5mのままのようだ。推進方式は巡航時にディーゼル、高速時にガス・タービンを使用するCODOG方式を採用している。ガス・タービンは米ゼネラル・エレクトリック社製のLM2500を三星テックウィンでライセンス生産したものを、ディーゼルは独MTU社製(フランス製という説もある)を装備している。
クァンゲト・デワン級に乗艦した乗組員たちが一番喜んだのは、鼠がほとんどいない事だったそうだ。それまで韓国海軍が装備していたギアリング級駆逐艦は旧式なため、恐るべき数の鼠が住み着いており、寝ている乗組員が鼠に齧られるなど日常茶飯事だったという。
1番艦 |
広開土大王(クァンゲト・デ・ワン) |
ROK Kwanggaeto the Great |
DDH-971 |
1998年7月就役 |
第1艦隊 |
2番艦 |
乙支文徳(ウルチムンドック) |
ROK Euljimundok |
DDH-972 |
1999年9月就役 |
第2艦隊 |
3番艦 |
楊万春(ヤンマンチュン) |
ROK Yangmanchoon |
DDH-973 |
2000年7月就役 |
第3艦隊 |
▼ハープーンを発射する「乙支文徳」
▼シー・スパローを発射する「広開土大王」
▼2007年に撮影された「楊万春」。127mm砲の巨大さが分かる。艦橋上にはゴールキーパーCIWSを装備している。
▼シースパロー用のMk48 mod2 VLS(16セル)
▼クァンゲト・デワン級の操縦室
▼食堂
【参考資料】
世界の艦船(海人社)
朝鮮日報
Grobal Security
PowerCorea
Wikipedia Korea
2009-02-07 21:28:01 (Sat)
最終更新:2009年02月07日 21:28